転職コラム

GovTech(ガブテック)とは?意味やメリット、活用事例を紹介

ガブテック(GovTech)は申請手続きや問い合わせ対応、定型業務の自動化、情報発信のデジタル化によって行政サービスの効率的な推進を目指す取り組みです。

政府にとっては業務効率化やコスト削減、市民にとっては利便性の向上をもたらします。

今回はガブテックの意味やメリット、活用事例について紹介します。

ガブテック(GovTech)とは?

ガブテック(GovTech)とは、government(政府)とtechnology(技術)をあわせた造語です。

行政と民間が協業してデジタル化を進め、行政サービスの効率化を推進することを意味します。

ガブテックは、テクノロジーを活用してビジネスや社会の在り方を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の一つです。

シビックテック(CivicTech)との違い

ガブテックと似た用語にシビックテックがあります。

両者には明確な違いがあるため区別は必要です。

シビックテックは市民が主体となって課題解決につながる環境づくりを指します。

つまり市民がテクノロジーを活用して、課題を解決しようとする取り組みです。

ガブテックとの違いは、デジタル技術と連携する主体です。

シビックテックは市民が主体となって課題解決を目指すのに対して、ガブテックは行政がテクノロジーを駆使して、新たな行政サービスの開発に取り組みます。

コロナ禍や災害の頻発によって、行政だけで有事に強い街づくりを行うのは不可能な状態が訪れました。

「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」を掲げるデジタル庁の理念とも相まって、未来の社会に不可欠な概念として期待されます。

デジタル・ガバメント実行計画の3原則とは?

デジタル・ガバメントはガブテックとおおむね同義語として捉えられます。

2018年に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画に基づき、デジタル社会の到来に向けて、具体的な方針が定められました。

デジタル・ガバメント実行計画では、「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンストップ」「デジタルファースト」の3原則が掲げられます。ここでは上記3つの原則の詳しい内容を解説します。

ワンスオンリー

ワンスオンリーとは平たくいえば、行政手続きにおける添付書類の撤廃です。

端的にいえば、一度提出した情報を二度提出する手間や無駄をなくすことです。

マイナンバーの活用で行政が保有している情報の提出を不要とする取り組みがあります。

各種手続きでの登記事項証明書・住民票の写し・戸籍謄本等の提出の省略が挙げられます。

コネクテッド・ワンストップ

コネクテッド・ワンストップは民間サービスと連携し、複数の手続きをワンストップで実現することです。

たとえば引っ越しや介護、死亡・相続などが対象です。

役所が関わる手続きでたらい回しにされて時間を浪費することがなくなります。

また、必要な手続きを漏れなく実施できるため、利用者の負担の大幅な軽減が期待されます。

デジタルファースト

デジタルファーストとは手続きのオンライン化を徹底し、一貫してデジタルで完結する取り組みです。

従来の紙ベースの資料がなくなるため、業務効率化に寄与するほか、利用者にとっても迅速な行政サービスの活用が実現します。

デジタルファーストの原則を徹底すれば、確定申告や住民票の発行をはじめ行政手続きのすべてがデジタル上で完結します。

ガブテック(GovTech)のサービス内容(効率化される業務)

ガブテックの具体的な取り組みには申請手続きのデジタル化や相談・問い合わせのデジタル化、定型業務の自動化、情報発信におけるデジタル化が挙げられます。

従来、行政手続きの多くは対面でのやり取りが主流で、待ち時間や煩雑な手続き方法を理由に効率的な業務が図られているとはいえない状況でした。

ガブテックにより行政サービスのどのようなものが効率化されるのか、それぞれ解説します。

申請手続き

オンラインでいつでもどこでも手続きが可能になります。

転入・転出はもちろん、補助金の申請、登記など幅広い申請が対象です。

オンライン申請の導入によって、申請のために直接市役所に出向く必要がなくなるため、市民や事業者の手間が大幅に削減されます。

役所での煩わしい待ち時間がなくなり、時間の有効活用につながります。

住民が自ら申請書の記入を行う手間が省けるため、「待たない窓口」だけでなく「書かない窓口」が実現するともえいるでしょう。

相談・問い合わせ対応

AIチャットボットを導入することにより、窓口が閉まっている時間でも問い合わせが可能になります。

行政手続きの種類は多いため、自分が関係する手続きを探し出すだけでも大変です。

スマートフォンで回答するだけで必要な手続きを自ら絞り込める、案内のデジタル化に取り組む自治体も登場し始めています。

ホームページのQ&Aで対応可能な問合せ内容については、SMSの自動送信で代用することで職員の電話対応の大幅な短縮につながります。

定型業務

行政サービスは定型のものが多いため、AIやRPAの導入による効率化を期待できます。

大量の定型業務を機械で代替できれば、業務の効率化や職員の長時間労働の是正につながるでしょう。

請求書の作成や給与計算、報告書の作成などの毎月発生する業務は、基本的には作業手順が明確で、ツールやシステムの導入による自動化の余地が大きいタスクです。

情報発信

SNSやLINEを活用した情報発信は、市民に情報を届ける一助です。

一般的にみられる傾向として、若い世代は行政が発信する情報に触れる機会に乏しく、せっかく情報発信に励んでも住民にリーチしない、または必要なものだと認識されません。

デジタルツールを活用した情報発信の魅力は「即時性」と「情報拡散性」です。

SNSによる情報発信はインターネット上でトラブルに見舞われるリスクがある反面、安価で情報を拡散できる点がフォーカスされています。

ガブテック(GovTech)推進のメリット

ガブテックは政府と市民のどちらにも有益な取り組みです。

デジタル化によって煩わしい手続きの多くが省略できるため、市民の利便性が著しく向上します。

自動化・省力化が進み、行政側の人手不足の解消や業務効率化にも寄与します。

デジタル化に伴うコストを考慮しても、推進による恩恵が上回るといえるでしょう。

ここでは、ガブテック推進が関係者に与えるメリットについて詳しく紹介します。

市民の利便性向上

従来は少しの手続きでも役所に行き、長時間待たされるということが往々にしてありました。

ガブテックの推進によって、場所にとらわれない手続きが可能になります。

空いた時間で家族と過ごしたり、別の事業を始めたりと時間の有効活用にもつながります。

田舎でも東京でも同様のサービス水準が実現し、地域間格差の解消も期待できるでしょう。

行政の業務効率化

ガブテックの推進によって紙や窓口の業務が減るため、効率化や人手不足の解消、コスト削減の期待が持たれます。

具体的には紙で提出を受けた申請書の内容を手作業で入力する、目視で書類の内容をチェックし赤ペンで修正を入れるなどの作業がなくなります。

業務の効率化が進むと、コスト削減や職員の働き方改革につながる可能性が高いです。

リソースの有効活用にもつながり、本来力を入れたいコア業務に予算や人員を集中的に投下できます。

海外のガブテック(GovTech)を取り入れている国と事例

世界中で海外のガブテックは急速に拡大しつつあり、日本より先進的な取り組みを展開する国も出始めています。

行政分野は他の産業に比べて、デジタル化が遅れやすい領域です。

政府は保守的になりがちで、低リスクの運用が重視されるため、テクノロジーの進化は後回しになります。

海外でのガブテックの事例を参考に、学べる部分は学びましょう。

エストニア

エストニアはガブテック先進国で、世界に先駆けて行政サービスの99%をオンライン化しています。

2001年にはデータベース連携用プラットフォーム「X-Road」を構築。

行政手続きの簡略化にとどまらず、データベースとの連携によって国家規模での効率化とコスト削減を実現しています。

また、15歳以上の国民すべてに電子IDカードの所有を義務付けました。

さらに世界ではじめてオンライン投票システムを導入し、実際にオンライン投票を実現させています。

デンマーク

デンマークもデジタル推進国の一つで、国民のデジタル行政サービスに対する満足度は91%に達しており、驚異的な数字を誇ります。

一例として電子認証サービス「NemID」を紹介します。

国民一人ひとりに与えられる国民番号に紐づき交付され、日本でいうマイナンバーと近い存在です。

デンマークではNemIDの普及率が90%を超え、マイナンバーカードと比べても高い数字を誇ります。

行政サービスや公共料金の支払いだけでなく、親戚への送金やオンラインショッピング、病院の予約などさまざまなシーンでNemIDによる認証が行われています。

シンガポール

シンガポールも「Digital Government Blueprint」のポリシーを打ち出し、いち早くガブテックの実現に取り組んだ国です。

2014年には市民・行政・企業の3部門でテクノロジーの連携を図る「スマート・ネーション構想」を表明。

インフラ基盤として「GeBIZ」というプラットフォームを構築し、行政と企業の情報をオンラインで集約し、膨大な入札案件の迅速な処理を可能にしました。

2016年には個人情報管理サービスとして「Myinfo」を導入し、婚姻証明や出産証明などのデジタル化を推進しています。

ガブテック(GovTech)を取り入れている国内の自治体と事例

官民連携が必須のガブテックですが、正しい知識や必要性を認識していない自治体もあります。

人手や予算などリソースの不足も関係し、進めたい意向はあれど施策に取り掛かれていないのが現状です。

順調とはいえないながら、自治体単位ではガブテックをうまく取り入れた市も存在します。

参考にしたい自治体の事例を紹介します。

広島県広島市

広島市は、災害発生時に被災者が支援策をWeb上で簡単に確認できる「被災者支援ナビ」を導入しました。

従来は窓口で相談しながら、自分にとって何が足りないのか、個別具体的な支援策を確認する必要がありました。

Webサービスの導入によって、市は被災者に必要な支援を迅速に行え、窓口業務の負担も軽減できます。

スマートフォンで簡単な質問に回答するだけでよいため、手続きも簡単です。

神奈川県横浜市

横浜市は新型コロナウイルス感染症の融資関連手続きのオンライン申請を導入し、コロナ禍における申請・来庁時の待ち時間や混雑の解消を実現しました。

職員の業務負担の軽減も確認でき、確かな効果の感触を得られています。

横浜市は今回の件が自信につながり、今後オンライン申請の範囲を拡大する予定です。

コロナ禍で多くの自治体が給付金の手続きで混乱を招いた中、稀有な成功事例だといえます。

大阪府四條畷市

四條畷市は全国ではじめてGraffer電子申請を導入し、住民票の交付請求のオンライン受付にかかる実証実験を行いました。

請求にあたり行うべきことはアプリ上でのアカウント登録、クレジットカードによる手数料の納付、マイナンバーカードでの電子署名手続きのみです。

受付が完了すると、住民基本台帳の登録地に住民票が郵送される仕組みとなっています。

茨城県つくば市

つくば市は官民連携で先進的な取り組みを積極的に行っています。

デジタルIDアプリで個人認証を行うことでインターネット投票を可能にしたり、行政DXサービスで手続きのオンライン化を評価・判断したりしています。

ブロックチェーン技術も率先して取り入れていて、スタートアップ企業の誘致にも積極的です。

つくば市のスタートアップ立地推進奨励補助金は、新たに事務所を市内に開設したスタートアップについて、上限5万円で事務所の月額賃料を補助する制度です。

福島県会津若松市

会津若松市は、スマートシティ会津若松の実現を推進しています。

さまざまな分野でDXを進めていて、ヘルスケア・モビリティ・フィンテック・教育・観光・エネルギー・農業・ものづくり・防災の9分野が対象です。

市民はプラットフォームに登録されたデータのうち、自分に必要なサービスを選択し、利用できます。

コンサルティング会社の雄アクセンチュアとも連携し、強烈なサポートを得ながら、官民一体となって連携を進めています。

兵庫県加古川市のかこがわアプリ

加古川市は「かこがわアプリ」を通じて、リモートでの見守り機能をはじめ、情報提供やサポートを行っています。

子どもの誘拐や高齢者の深夜徘徊の監視などに役立ちます。

とくに子育て世代から支持されており、子どもの安全を見守れると好評です。

また市の公式ホームページとも連携し、アイコンをタップするだけで各種サービスを利用できます。

緊急時に市からの重要なお知らせがプッシュ通知として届くのも見逃せない利点です。

ガブテック(GovTech)企業から求められる人材・スキルセットは?

ガブテック企業への転職を検討中なら、どのような人材が企業から求められているか知っておく必要があります。

最先端の技術を扱う業界のため高いスキルセットが求められ、中でも重要なスキルは英語力や柔軟性、提案力(営業力)です。

海外展開の可能性が高いうえ、いまだかつてない領域でビジネスに取り組むため、対応力の高さが必要です。

ガブテックの転職に役立つ能力を詳しく解説します。

英語力の高い人材

ガブテックが進んでいる海外事例を研究して取り入れたり、自社サービスを海外展開したりすることが考えられます。

そのため、英語力は必須スキルといえるでしょう。

自信をもって英語でコミュニケーションを取れる人材は、ガブテックに限らず転職市場で市場価値が高い人材になれます。

必ずしもTOEICのスコアが求められるわけではないですが、客観的なアピール材料として履歴書やSNSのプロフィール欄などに明記があると有利に働くでしょう。

柔軟な考え方のできる人材

今後社会がどのような状況になっても、必要なものを提供できる、ビジネスチャンスと捉えられる人材が求められます。

前述したコロナ禍での導入事例もあり、社会の急激な変化への対応は急務です。

不測の事態にも柔軟に対処し、新たなチャンスを確保できる人材に対して熱視線が注がれます。

状況に応じて臨機応変に対応できる、常に前向きな思考で挑める、多角的な視点を持っているなどの特徴をアピールすると有利です。

提案力がある人材

ガブテックではいまだかつてないサービスを構築する必要があるため、自主的に提案できる能力が重要です。

行政のニーズに対して臆することなく新たなサービスの導入を目指せる強い人材が求められます。

提案力は主に、要求を引き出す傾聴力、適切な対応策を導く課題解決能力、説得力のある提案を行うプレゼンテーション能力に大別されます。

提案力があると、営業力の向上が見込めるほか、信頼関係の構築にもつながるのが利点です。

提案力が高い人材になるにはベースとなる知識を身に付けるための積極的な情報収集や、PDCAサイクルの日常的な実施などが有効です。

ガブテック(GovTech)分野のベンチャー企業

ガブテック分野で有望なベンチャー企業を紹介します。

一社目が株式会社グラファーで、自治体・官公庁向けにさまざまなソリューション開発に役立つプラットフォーム「Graffer Platform」を展開しています。

二つ目がマイナンバーカードを活用したデジタルソリューションの提供に取り組むxID株式会社です。

どちらも崇高な理念を掲げ、社会のデジタル化に有用なサービスを展開しています。

ガブテックへの転職を検討するなら押さえておきたい企業です。グラファーとxIDの事業について詳しく解説します。

株式会社グラファー

グラファーはプラットフォーム「Graffer Platform」によって自治体・官公庁向けにソリューションを提供しています。

『行政サービスを一歩先へ』を合言葉に、行政と市民をつなぐプロセス全体の変革によって行政サービスの利便性を高め、業務全体の最適化を目指しています。

「Graffer Platform」の特徴は、前例のない機能拡張スピード、行政手続きに特化したサービス設計、豊富な導入実績およびユーザーからの高い評価です。

2018年のサービス開始からスピーディーに事業の拡大を続け、手続き案内からオンライン申請、窓口のペーパーレス化、業務改革に至るまでさまざまな場面に対応しています。

ユーザー視点のインターフェースを備え、3,795万人(2023年6月時点)の市民を対象にサービスを展開してきました。

都道府県や政令指定都市から小規模な町まで規模やエリア問わず、多数の公共機関で導入実績を有します。

単に実績が豊富なだけでなく、導入先の市民や職員から満足の声も聞かれます。

信頼性と品質が非常に高いことが強みです。

自治体の職員はガブテックの推進をツールに任せ、安心して日々の業務に取り組めます。

xID株式会社

xID株式会社はマイナンバーカードを活用したデジタルIDソリューション「xID」を中心にサービスを提供しています。

xIDはマイナンバーカードさえあれば誰でも無料で利用できます。

従来のように何度も同様の個人情報を入力したり、身分証を撮影して本人確認したりする手間がかかりません。

すべてが一つのアプリ内で完結します。

また、自治体が住民個人宛てにメッセージを送付する「SmartPOST」というサービスも提供。

行政が能動的に住民と関わることで、本当に必要な人に対して必要な行政サービスをタイムリーに届けられます。

xID株式会社が掲げるミッションは、『信用コストが低い社会を実現する』です。

マイナンバーカードとの連携を通じて、今まで交わる機会がなかった官民の境界を溶かし、共創へとつなげます。

新たな掛け合わせから次世代のサービスや事業を創り出すきっかけとなるような、唯一無二のインフラへの成長を目指しています。

ガブテック(GovTech)推進に伴い相応な人材が求められている

ガブテックの推進にはメリットが多く、今後成長する分野であるのは間違いないでしょう。

ただし、いまだかつてない領域であり、未知の分野をドライブするのにふさわしい人材が求められます。

備えるべきスキルは高い英語力や柔軟性、提案力です。

すべてを兼ね備えた人材になるのは簡単ではありませんが、高い志と豊富な経験があればきっと企業の目に留まります。

フォルトナベンチャーズは、ガブテックに取り組むスタートアップやベンチャー企業と豊富なコネクションを有しています。

内定に直結するサポートが可能なため、ぜひお気軽にキャリアコンサルティングをご活用ください。

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