BNPLとは、与信審査や分割手数料なしに手軽に利用できる後払い決済サービスです。
今後クレジットカードに並ぶ代表的な決済手段となると予想されており、海外諸国ではすでに多くのユーザーを抱えています。
BNPLの仕組みや国内外の利用状況、メリット・デメリットを紹介します。
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BNPL(後払い決済)とは?
BNPLとは「Buy Now Pay Later」の頭文字を取った言葉で、後払い決済を意味します。
日本で一般的に使用されている後払い決済としては、クレジットカードをイメージする方も多いでしょう。
今後クレジットカードに代わる新しい選択肢として、BNPLへの注目が高まっています。
支払いの仕組みや、クレジットカード決済との違いを紹介します。
クレジットカードに変わる後払い決済の仕組み
現金志向が強いと言われている日本ですが、ポイント付与などの特典に魅力を感じたり、オンラインショッピングの際の利便性を優先したりする層の増加により、クレジットカードを始めとする後払い決済の利用が進んでいます。
- 与信審査なし
- 分割手数料不要
クレジットカードは分割払いを選ぶと金利が発生するため、毎月の支払い負担を軽減したいと考えている消費者には不向きな決済方法です。
そこで登場したのがBNPLで、クレジットカードを使うことなく、コンビニ払いや口座振替、銀行振込から選択して支払いを済ませられます。
国内外におけるBNPLの利用状況
海外発祥のBNPLは、多くの消費者に選ばれている後払い決済方法です。
しかし、日本ではクレジットカードの利用が一般的で、まだまだBNPLに関する知識が十分広まっていないといえるでしょう。
与信審査や手数料なしで利用できる決済方法として、知っておいて損はないのがBNPLです。
海外での利用者が増加している背景や、今後の日本での利用拡大見込みについて解説します。
海外でBNPL利用者が急増している背景
海外市場では、日本よりも積極的にBNPLが利用されています。
日本総研の調査によると、2024年には欧州でのオンラインショッピングの際の決済方法として、クレジットカードと同等程度まで増加すると予想されているのです。
クレジットカードの持てない若年層のニーズが高いほか、高額な商品の分割決済が手軽に行える点でBNPLが選ばれています。
参考:日本総研/拡大するBuy Now, Pay Later(BNPL)市場の動向と今後の展望
BNPL市場は日本でも拡大傾向
消費者にとって新しい選択肢となり得るBNPLは、日本でも少しずつ注目が高まっています。
株式会社矢野経済研究所の調査によれば、後払い決済サービスの利用は2016年から拡大を続けているとされます。
今後も年平均で20%以上の成長が見込まれており、私たちの生活に身近な決済方法となるのもそう遠い話ではありません。
参考:株式会社矢野経済研究所/EC決済サービス市場に関する調査を実施(2021年)
BNPLのメリット
BNPLは与信審査や分割手数料が必要ないという点で、利用者側のメリットが大きいイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、利用者だけではなく、導入する店舗にもメリットの大きい決済方法です。
それぞれの立場におけるメリットを理解しておけば、ビジネスやプライベートで決済方法を選択する際の判断材料となるでしょう。
利用者側のメリットと、店舗側のメリットを3つずつ紹介します。
利用者側のメリット
BNPLを利用する消費者側のメリットは、次の3点です。
- 与信審査がなく登録のハードルが低い
- 分割払いの手数料がかからない
- マイナーなサイトでも安心して購入できる
クレジットカードと比べて手軽に利用できるうえに、分割払いの際の手数料を抑えることができるのがBNPLならではの特徴だといえるでしょう。
各ポイントを詳しく解説します。
与信審査がなく登録のハードルが低い
BNPLの利用には与信審査が必要なく、メールアドレスや電話番号のみで登録を済ませられるのが1つ目のメリットです。
クレジットカードの発行には身分証や就職先の情報の提示が必須で、カードを受け取るまでに時間がかかってしまいます。
一方でBNPLは利用者が気負いせずに、必要なシーンですぐに登録して利用できる便利さが特徴的です。
事情によりクレジットカードの発行が難しい場合でも、与信審査のないBNPLであれば選択肢の1つとなるでしょう。
分割払いの手数料がかからない
分割払いを選択しても、手数料を支払う必要がない点は、BNPLならではのメリットです。
大きな買い物をする際には、毎月の支払額を調整して少しずつ支払いをしたいと考える利用者も多いでしょう。
そんな時、クレジットカードでは分割する回数が多ければ多いほど、手数料負担が重くなります。
対してBNPLであれば手数料を心配することなく、計画的な支払いプランを立てられるのです。
マイナーなサイトでも安心して購入できる
あまり有名でないサイトを利用する場合に、安心して支払いができるのもBNPLのメリットです。
クレジットカードは個人情報が紐づけされているため、情報が抜き取られてしまうと金銭的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
しかし、BNPLであれば登録に際し必要な情報がメールアドレスや電話番号程度であるため、万が一の事態にも安心な決済方法です。
初めて利用するショッピングサイトなどでは、リスクに備えてBNPLを選択するのもよいでしょう。
店舗側のメリット
次に知っておきたいのが、BNPLを導入する店舗側のメリット3つです。
- 客層が広がる
- 高額商品の購入率が上がる
- カゴ落ちを防止できる
メリットに惹かれた利用者の増加が期待できるだけではなく、具体的な売上向上にもつながります。効果も今後の利用拡大が見込まれているBNPLのメリットを今のうちに知っておくことで、ビジネスを有利に進められるでしょう。
客層が広がる
顧客の求める決済方法を揃えておくことは、事業を営むうえで欠かせないポイントです。
実際にクレジットカードやQRコード決済を導入していないが故に、ビジネスチャンスを逃してしまうケースもみられます。
今後BNPLの利用が拡大していくのに備えて、利用できる環境を整えておけば、後払い決済を望む客層を大きく取り込めます。
また、豊富な支払い方法に対応できるとして、ライバル店との差別化にも効果的です。
海外ではすでに多くの利用者がいる点では、新たな決済方法の導入は海外進出の足がかりとなる可能性もあるでしょう。
高額商品の購入率が上がる
高額な商品の購入率向上にも、BNPLが効果的に働きます。
これまでの後払い決済では、支払い負担が大きすぎて、高額商品を諦めた利用者も少なくないでしょう。
しかし、BNPLは分割手数料がかからないため、毎月の支払い額をコントロールでき、値の張る商品にも手が届きやすくなります。
BNPLの導入は、店舗にとって顧客単価を上げるきっかけとなり得るのです。
カゴ落ちを防止できる
BNPLの導入によって、オンラインショッピングでのカゴ落ち防止効果も期待できます。
カゴ落ちとは、利用者がカートに商品を入れた後に、なんらかの理由で決済まで辿り着かなかった状況を意味する言葉です。
カゴ落ちの発生と深く関連しているのが、支払い処理だとされます。
希望する決済方法がなかったり、クレジットカードが手元になかったり、気付けば有効期限が切れていたりと、考えられる理由は数多くあります。
BNPLであれば登録も簡単で決済をスムーズに済ませられるため、利用者のサイト離脱を防げるのがメリットです。
BNPLのデメリット
主なデメリットは、次の2つです。
- 日本ではBNPLの浸透率が低い
- 店舗側は手数料の負担が大きい
まだ日本では成長段階だといえるBNPL、利用・導入の際には気を付けたいポイントがあります。
メリットとデメリットの両方を、正しく把握することが大切です。
日本ではBNPLの浸透率が低い
海外では早くも数年後にクレジットカードに迫る勢いで普及が進んでいるBNPLですが、日本ではまだ浸透率が低いのが事実です。
BNPLが誕生した背景としては、分割払いの際の負担を軽減したいという利用者のニーズがありました。
しかし、日本ではそもそもクレジットカード払いで分割払いが選択できないサイトも多く、BNPLのメリットが活かせず、今後も導入に踏み切れない事業者も出てくるでしょう。
BNPLで支払いをしたいと考えている利用者は、日本市場での普及率が上がるまでは利用できるサイト探しに困難が伴う可能性があります。
店舗側は手数料の負担が大きい
BNPLの導入によって、店舗側は手数料の負担を負うことになります。
支払いに伴う手数料負担のほか、初期費用や月額利用料金が必要となる場合もあるでしょう。
海外ではBNPL支払いごとに、4~6%の手数料が発生するのが一般的であるようです。
日本でも今後さまざまなサービスが登場してくることが予想され、運営企業ごとの支払い条件や手数料額を比較検討する必要があります。
【国内】代表的なBNPL企業
注目の高まっているBNPLサービスを提供している国内企業を4つご紹介します。
- Paidy「ペイディ」
- ネットプロテクションズ「NP後払い」
- GMOペイメントサービス「GMO後払い」
- メルペイ「メルペイスマート払い」
実際に店舗への導入を検討する際にも、各社の特徴や違いを認識しておくことが欠かせません。
いち早くBNPLを取り扱っている企業の情報をご紹介します。
Paidy「ペイディ」
Paidyは、すでにアマゾンなどの大型サイトにも採用されているBNPLサービスです。
利用の際に必要なのはメールアドレスと電話番号のみで、消費者のオンラインショッピングをより便利なものにしています。
支払金額は翌月10日までに、コンビニ払い・口座振替・銀行振込から選択して支払いを済ませる仕組みです。
さらに本人認証をすれば、分割手数料無料の3回払いが利用できるオプションも備えています。
事前に登録をする必要もなく、ECサイト利用時にSNSの認証コードで本人確認を行える手軽さが特徴的です。
ネットプロテクションズ「NP後払い」
BNPLとして早くも2002年にサービスを開始したのが、ネットプロテクションズの提供するNP後払いです。
後払い決済のパイオニアとも言われ、オンラインショッピングの代金をっ後日コンビニ払い・郵便局・銀行振込・LINE Payなどで支払えます。
大手企業のオンラインショッピングサイトにも導入されており、すでにある程度の知名度を誇っているBNPLサービスです。
会員登録は任意ですが、登録をしておけば支払額200円ごとに1Pが付与されます。
請求書の発行日から14日以内に支払いを済ませればよいため、余裕をもって利用できるでしょう。
GMOペイメントサービス「GMO後払い」
GMO後払いは、GMOペイメントサービスの運営するBNPLで、未回収リスクの保証付きです。
ただし保証が受けられるのは、与信審査を通過している、正常に取引が完了したケースに限られます。
コンビニ・銀行・郵便局での支払いが可能で、多様な支払いニーズを求める利用者の獲得に役立つBNPLサービスです。
業界の中でも、利用手数料が低い点は大きなメリットだといえます。
事前登録の必要はなく、気軽に利用できるのも嬉しいポイントです。
メルペイ「メルペイスマート払い」
メルペイスマート払いは、国内にも多くのユーザーをもつフリマアプリ「メルカリ」に搭載されているBNPLサービスです。
メルカリでの取引の他にも、メルペイ加盟店のサイトであれば利用できます。
該当月の支払い分を、翌月末までに登録口座からの振替やコンビニ振込で支払う仕組みです。
利用に際しては事前に本人確認や口座登録を済ませ、決済時にメルペイスマート払いを選択する必要があります。
クレジットカードを持たない利用者にも、簡潔で利用しやすい決済方法です。
【国外】代表的なBNPL企業
海外ではBNPLサービスを提供する企業も多く、すでに長い間消費者に利用されているサービスが存在します。
今回は国外の代表的なBNPLサービスの中から、以下の3つをご紹介します。
- アメリカ「Affirm」
- オーストラリア「Afterpay」
- インドネシア「Kredive」
国内のサービスとの違いにも着目しながら、海外ならではのBNPLの特徴を解説します。
アメリカ「Affirm」
2012年にPayPalが運営を開始したAffirmは、健康器具関連のECサイトで採用されたことから利用が拡大したBNPLサービスです。
アメリカは元々クレジットカードの保有率が高い国で、与信調査をクリアできずカードの発行ができない人々にBNPLのニーズが存在します。
Affirmの特徴は、利用者の信用度をAIが診断している点です。
過去の支払い実績に応じては、従来の審査方式では信用度が低いと判断された場合でもBNPLを利用できます。
単なる支払い手段としてだけではなく、利用者の購入履歴に合わせたおすすめ商品を割安に購入できる「マーケットプレイス」などのサービスも展開しています。
オーストラリア「Afterpay」
BNPLの利用が盛んである国の1つであるオーストラリア生まれのBNPLサービスとしては、アメリカの決済サービス会社Squareに買収されたAfterpayが有名です。
サービスの利用者は1,600万人以上とされ、オーストラリアのみならずニュージーランドやアメリカなど5ヵ国で利用されています。
オーストラリアでBNPLが早くから好まれていたのは、「今手持ちのお金が無くても買い物を楽しみたい」伝統的なLaybyの考えに基づくとされます。
インドネシア「Kredive」
市場の成長が著しい東南アジアは、クレジットカードの保有率が低く、代替できる後払い決済のニーズが大きいのが特徴的です。
Krediveは、そんなインドネシアの大型モールで採用されるなど、高いシェアを誇っています。
支払い方法は銀行振込かコンビニ払いに限られ、多様とはいえません。
しかし、インドネシア全土に店舗を構えている大手コンビニチェーンIndomaretでの支払いが可能であり、利便性は充分です。
右肩上がりの成長を続けるBNPL市場の今後に注目
国内外で今後も注目が高まると予想されているのが、クレジットカードよりも手軽に利用できるBNPLサービスです。
利用者と導入企業両方の視点からサービスを評価することで、新しいビジネスチャンスが開ける可能性があります。
BNPLのような成長力のある市場に関心を持っていれば、将来性のある企業を見極める力を養えるでしょう。
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