アントレプレナーシップとは、新しい事業を創造するため、失敗やリスクを恐れず挑戦する精神や姿勢のことです。
起業家精神とも定義されますが、起業家にとどまらず、企業で働く社員にも求められるものです。
本記事ではアントレプレナーシップの意義や求められるスキル、政府や大学の取り組みを紹介します。
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アントレプレナーシップとは
アントレプレナーシップとは、新しい事業を創造し、リスクを恐れず挑戦する姿勢のことです。
変化が激しく先行きの見通しができない現代において、社員一人ひとりのアントレプレナーシップが注目されています。
ここでは、アントレプレナーシップの意義や日本の現状、注目されている背景などを解説します。
起業家精神のこと
アントレプレナーシップとはフランス語の「Entrepreneur」を語源とし、日本語では企業家精神と定義されています。
より具体的には、社会に変革をもたらし、新たな価値を創出するためにリスクに立ち向かう精神や姿勢を指すものです。
アントレプレナーシップは、単に起業家だけに求められるものではありません。
あらゆる職業・立場でアントレプレナーシップの精神・姿勢が必要とされます。
日本の現状
日本は諸外国に比べ、アントレプレナーシップに関わる指標が相対的に低いとされています。
大学におけるアントレプレナーシップ教育の受講者は300万人中の3万人で、1%の学生にしか提供されていないのが現状です。
世界のアントレプレナーシップに関するランキングでは137カ国中26位で、アジア諸国では6位に甘んじています。
参考:文部科学省「アントレプレナーシップ教育の現状について」
イントレプレナーとの違い
アントレプレナーシップは、イントレプレナーとは異なります。
イントレプレナーとは「社内起業家」のことで、社内で新規事業を立ち上げる際に、その責務を担うリーダーとなって活躍する人材を指します。
社内起業では経営層や部署間の調整が必要であり、より調整力が求められる立場です。
新たな事業を立ち上げるという点では、どちらも違いはありません。
しかし、アントレプレナーシップは社員も含めて広い範囲の起業家精神・姿勢を指すのに対し、イントレプレナーシップは社内に属しながら新たな事業創造を行うことを指す点が異なります。
アントレプレナーシップが注目される背景
現代は社会の変化や技術の進化が激しく、先行きが不透明な時代です。
企業が目まぐるしい変化に対応していくためには、新しいことを恐れずに挑戦できるアントレプレナーシップが求められています。
また、終身雇用・年功序列制度の崩壊と成果主義の導入が進んでいることや、企業の海外進出が進んでビジネスがグローバル化していることも、アントレプレナーシップが注目される理由です。
ただ指示を待つだけの人材ではなく、リスクを恐れず積極的に新しいことに挑戦でき、ビジネスのグローバル化にも対応できる人材がこれからの企業に必要とされています。
アントレプレナーシップに求められるスキル
アントレプレナーシップを身につけるためには、次のようなスキルが求められます。
- メンバーを率いる強いリーダーシップ
- リスクを恐れないチャレンジ精神
- 新しいアイデアを創出できる創造力
- 幅広い人脈を構築できるコミュニケーション力
それぞれ、詳しくみていきましょう。
メンバーを率いる強いリーダーシップ
新たな事業の創造は、1人ではできません。
アントレプレナーシップを発揮するには多くの人の協力が必要であり、さまざまなチームメンバーをまとめてひとつの目標に率いるリーダーシップが求められます。
新たな事業は先行きが読めず、試行錯誤で進むことも多いでしょう。
プロジェクトではメンバーの意見をまとめ、目標に向かって導いていかなければなりません。
そのためにも、強い統率力が必要です。
リスクを恐れないチャレンジ精神
新しい事業を開拓していくためには、常に前向きで、リスクを恐れないチャレンジ精神とポジティブな姿勢が求められます。
前例のないチャレンジはリスクも多く、失敗する可能性もあります。
しかし、それを恐れて挑戦をしないままでは、成功の可能性もありません。
失敗を恐れず挑戦し続ける精神・姿勢がアントレプレナーシップの発揮に必要です。
新しいアイデアを創出できる創造力
アントレプレナーシップでは、新たな事業を立ち上げるために必要なアイデアを創出する創創造力が求められます。
変化の激しい時代に、既存のビジネスモデルを踏襲するだけでは取り残されてしまうこともあるでしょう。
固定概念にとらわれず、これまでにない新たな製品・サービスを市場に送り出すアイデアを創り出すスキルが必要とされます。
幅広い人脈を構築できるコミュニケーション力
新たなビジネスの創造には、さまざまな人と協力し合えるコミュニケーションスキルが必要です。
他部署の社員とも円滑にコミュニケーションを取り、社外では積極的に人脈形成をしながら関係者と連携し、情報を共有していかなければなりません。
多くの人と良好な関係を築くことは、新しい事業の創造に向けたアイデアの創出にもつながります。
アントレプレナーシップが発揮されやすい企業
アントレプレナーシップは社員だけに必要とされるだけでなく、企業自体にアントレプレナーシップの精神や姿勢が発揮されやすい風土の醸成が求められます。
ここでは、アントレプレナーシップが育まれやすい企業の特徴を紹介します。
失敗を許容する風土がある
アントレプレナーシップを促進するためには、社員が失敗を許容できる社内風土が求められます。
失敗を責める風土がある会社の場合、社員は失敗を恐れ、新しいことにチャレンジできません。
周囲の反発から守られ、失敗が認められる環境を構築することで、自由な発想・アイデアが生まれやすくなります。
たとえば、大手化学メーカーの3Mは、1948年の創業以来、伝統である「15%カルチャー」を採用し、社員に対して勤務時間の15%を自分自身の好きな研究に使うことを奨励しています。
会社の設備を活用して、自分の好きなテーマに時間を費やすことができ、その結果として「ポスト・イット」のような革新的なアイデアが生まれました。
新たな試みに挑戦できる土壌がある
アントレプレナーシップが社内で発揮されるには、新しい試みに挑戦できる土壌が必要です。
社員の新しいアイデアに耳を傾け、「どうすれば実現できるか」を考える風土が求められます。
経営陣が既存の考え方から脱却できず、新しい取り組みに対して批判的な環境のままでは、新しいアイデアは生まれません。
これまでにない発想の新しいビジネスモデルやアイデアは奇異に感じることもあり、現実味がないと思われることもあるでしょう。
しかし、これまでも時代を切り拓いてきたのはそのような新しい発想・アイデアです。
「前例がない」というだけで否定せず、実現の可能性を考える土壌を作り出すことが、アントレプレナーシップの育成につながります。
新しいアイデアを自由に発言できる場を提供することも必要です。
発表する場・機会がなければアイデアが表に出ることもありません。
発表会や社内オーディションなど、アイデアを発信しやすい環境を作ることが大切です。
社員に仕事の裁量権がある
アントレプレナーシップの醸成には、自由な発想が育まれる環境が必要です。
そのためには、ただ与えられた仕事をするのではなく、仕事の裁量権を持つ働き方が求められるでしょう。
裁量権を持つことにより社員は責任感を養い、自ら考え自発的に仕事を進める姿勢が身につきます。
裁量権のもとで、社員はより良く仕事を進め、成果を出そうと思考を巡らせるでしょう。
その過程で、アントレプレナーシップも育まれます。
自分の仕事に責任感を持つことで、社員のモチベーションも向上し、仕事に対する積極的なアプローチが促進されることも、アントレプレナーシップの育成に役立つでしょう。
アントレプレナーシップ教育の事例
日本のアントレプレナーシップ教育が諸外国に比べて遅れていることは、前にお伝えしました。
このような現状を鑑み、政府や大学ではアントレプレナーシップ教育の取り組みを推進しています。
ここでは、現在進められているアントレプレナーシップ教育の取り組み事例を紹介します。
政府の取り組み
文部科学省では、これまで各地の大学おいて取り組まれてきた、アントレプレナー教育で得られた成果や課題を踏まえ、2017年~2021年度に「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」を行っています。
大学等の研究開発成果をもとにした起業や新事業創出に挑戦する人材の育成、関係者・関係機関によるベンチャー・エコシステムの構築を目的とした補助事業です。
学生や若手研究者を中心とした受講者に対する、アイディアの創出・ビジネスモデルの構築を中心としたプログラムの実施で、受講者が将来の産業構造の変革を起こす意欲を持つことを目指しています。
アントレプレナー育成のための実践プログラムでは、起業家や経営者などを講師に迎え、授業やセミナー ・ シンポジウム、ビジネスコンテスト ・ 海外研修などを行いました。
2017~2020年度の成果として、プログラム参加者数は延べ約3万9,000人、起業件数は135件となっています。
さらに2021〜2025年度は「スタートアップ・エコシステム形成支援」を開始しています。
自治体・産業界と連携し、大学等における実践的なアントレプレナーシップ教育と起業支援体制を構築し、大学等発ベンチャー創出力を強化する取り組みです。
参考:文部科学省「アントレプレナーシップ教育の現状について」
大学の取り組み
各大学でも、アントレプレナーシップ教育への取り組みが積極的に行われています。
いくつかの事例をみてみましょう。
東京大学
東京大学では、学生や研究者などを対象に、起業・スタートアップ(ベンチャー)について初歩から体系的に学ぶ一連のプログラム「東京大学アントレプレナー道場」を実施しています。
起業家をゲスト講師に迎え、アントレプレナーシップのマインドセットやスタートアップのアイデアなどを学ぶプログラムです。
早稲田大学
早稲田大学では、学生・教職員のアントレプレナーシップを育成するため、「アントレプレナーシップセンター」を設置しています。
起業家教育や起業活動支援などを実施し、起業家の卵からベンチャー企業の経営者に至るまで、成長をサポートする取り組みです。
武蔵野大学
武蔵野大学では、「アントレプレナーシップ学部」を設置しています。
プロジェクト型の「実践科目」を中心にカリキュラムが組まれ、社会に対する好奇心や挑戦する情熱を育む「マインド科目」や、アイデアを実行し形にするための「事業推進スキル科目」を設けています。
授業はグループ学習・事例研究・ゲスト起業家との対話など、双方向に学ぶアクティブラーニングスタイルを徹底しているのが特徴です。
東京工業大学
東京工業大学では、アントレプレナーシップのためのスキルやマインドを醸成・強化する「アントレプレナーシップ育成プログラム群」を設置しています。
アントレプレナーシップを養うカリキュラムは、以下の3つのカテゴリーに分かれます。
- カテゴリー1:スキル・マインドセットを行うプログラム
- カテゴリー2:課題を設定して解決する実践型プログラム
- カテゴリー3:起業を視野に入れた事業創出プログラム
アントレプレナーシップを身につけよう
アントレプレナーシップとは、社会の課題を解決するために新しいビジネスを創造し、リスクを恐れず挑戦する姿勢・精神を指します。
これは起業家精神と訳されますが、起業家に限らず、これからの時代に仕事をする上で、求められる積極的な姿勢や柔軟な考え方を指します。
アントレプレナーシップを養うには、強いリーダーシップやチャレンジ精神、新しいアイデアを創出できる創造力などが求められます。
失敗を許容する風土や新しいアイデアを自由に発言できる環境のある企業であれば、社員はアントレプレナーシップを発揮しやすいでしょう。
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