AI時代に求められるのは人間的資質にあふれながら、高度な対人関係構築力を備えた人材です。
AIを人の仕事を奪う敵だと考えずに、協力するパートナーとして考えそれぞれ適した役割をこなす姿勢を持ちましょう。
今回はAI時代に求められる人材像、AIの普及により変化したこと、人間に必要とされる能力を解説します。
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AIの普及により変化したこと
現在は第三次AIブームの真っただ中です。技術の発展が日進月歩で、AIができることも日に日に増えています。
人工知能の普及によってビジネスを取り巻く環境も大きく変化しました。
AIの台頭がビジネスにどのような変化を与えたのか解説します。
機械学習による技術の実用化
機械学習は取得した膨大なデータのなかから共通する要素を見出し、ルール化してその規則に基づく予測や判断ができる技術です。
画像の判別や将来予測に役立てられ、たとえばFacebookの画像判定は学習によって人の顔を判別したからこそなせる業です。
将来予測は今まで獲得した経験知に基づいて、未来がどのような世界に変わるか高精度で予測します。
機械学習は現在実用化の期待が持てるレベルにまで達しており、株価やスポーツの試合結果を予測することも、今後は可能になるかもしれません。
膨大な量のデータから特徴を見出す学習方法のほか、自ら回答を導き出す強化学習という手法もあります。
ビッグデータによるデータの蓄積
ビッグデータは機械学習に不可欠なさまざまな種類・形式の膨大なデータ群です。
総務省によると国や地方公共団体が提供するオープンデータ、暗黙知を構造化したデータ、生産現場におけるIoT機器から生成されたストリーミングデータ、個人の属性にあたるパーソナルデータに分類されます。
上記4つに共通するのは速度(Velocity)や多様性(Variety)、量(Volume)という3つのVが高いレベルで備わっている点です。
ビッグデータは規則性や利用のしやすさによって、構造化データ・半構造化データ・非構造化データに分類できます。
特定の形式で整えられた構造化データのほか、音声や動画、SNSの投稿のような規則性が存在しないデータ群も徐々に分類・構造化できる土壌が備わりつつあります。
ビジネスでの活用を考えると抽出のしやすさは不可欠のため、今後はよりビッグデータの利用頻度や幅が広がるでしょう。
ディープラーニングの産業利用の拡大
ディープラーニングは機械学習の進化版とも呼べる技術で、蓄積されたデータを分析して、状況に応じた柔軟な判断を可能とします。
機械学習と比べてより高精度な分析が可能で、トレーニングに時間を要する分、優れたパフォーマンスを実現します。
複雑な処理を担うことができ、人間と同等レベルでの力を発揮するでしょう。
ディープラーニングを駆使すれば、今まで人間が行ってきた一部のタスクを代替するのも夢ではありません。
AIの普及と雇用の影響
AIの台頭によるリストラは決してSF小説で描かれるようなファンタジーではなくなりました。
人工知能を業務に採り入れる企業は徐々に増加し、すでに雇用へ影響が出ています。
AIによる代替可能性を示した米国の研究結果では、就労者の約半数が人工知能に代替できる業務に従事しているとのことです。
AIと人間の雇用に関しては、仕事が奪われる「脅威」に焦点が当たりがちですが、人工知能の強化は不安を煽るばかりではありません。
総務省の平成28年版情報通信白書では、人工知能の影響が日本の雇用にどのような影響を与えるか有識者に問うたところ、27人中23人が「少子高齢化に伴う労働力の減少を解消できる」と前向きな回答をしています。
くわえて労働時間の減少や生産性の向上に寄与し、新たな市場やニーズを創出して雇用の増大を生み出す可能性も示唆されています。
雇用がなくなるかどうかは人間の賃金とAI稼働のコストを比べて、どちらが安価かという点が重視されるのではないでしょうか。
両者が同じ生産性を発揮したとして、コストの削減に意識を向けなければならない経営者がどちらを選択するかは明白です。
AI時代でも人間が行う仕事とは
AI時代の到来によってさまざまな仕事が人工知能に代替される反面、人間にしかできない業務もあります。
いくら人工知能でも、完全にある職業の代わりを担うのは難しく、担う範囲は業務単位にとどまる場合が大半です。
将来的に安泰で需要を見込める仕事に就きたいなら機械に代替不可能な職業を見つけましょう。
AI時代でも人間が行わなくてはならない業務は次のとおりです。
AIを開発・管理する仕事
あらゆる領域で人工知能の存在感が増すとはいえ、AIの開発や導入は人間にしか担えない仕事です。
ビジネス現場で通用するIoT機器やツールを生み出す人の力は、AI時代にあってはむしろ需要が増すと思われます。
開発職では、ビッグデータの収集・管理やデータベースの設計・運用を担うデータエンジニア、データの分析に適したアルゴリズムの開発・検証を担当する機械学習エンジニアへの需要が高まるでしょう。
ビッグデータの分析や解析によって企業の課題解決につながる解決策を示すアナリストも、AI管理に欠かせないポジションです。
要望どおりのシステムを実現する高度なスキルを有したAIエンジニアを求める職場は多々あります。
人工知能・機械学習系エンジニアの数は高い需要もあいまって圧倒的に足りておらず、ポジションに見合う力を持った人材なら、高い報酬を得られるでしょう。
定型化できない仕事
AIは定型化した単純業務を得意とする反面、現状の技術では複雑で定型化できないタスクを担うのは困難です。
裁量の範囲が広い仕事、マニュアルでは足りず臨機応変な対応が求められる仕事は人間が力を発揮しなくてはいけません。
たとえば伝票処理や請求書の作成といった入力や計算作業は人工知能を活用すると、人間よりも高速かつ正確にタスクをこなします。
一方で顧客に応じて提案のスタイルや接し方を変えるのが好ましい営業職は定型化とはほど遠い職業のため、人材需要は今後も高いままでしょう。
同様に企業の課題解決を目指して伴走するコンサルタントも臨機応変な対応が必要な仕事で、人工知能の台頭が難しいと考えられています。
創造性のあるクリエイティブな仕事
AIはプログラミングやデザイン、ライティングなど技術的な業務では高いパフォーマンスを発揮しますが、クリエイティブな仕事は不得意です。
新たなニーズを発見したり奇抜な商品アイデアを立案したりと、創造性が問われるタスクを人工知能に行わせても、期待を大きく下回る成果しか得られないでしょう。
プロンプトを入力することで望む回答が得られる要約ツールはすでに登場していて、大いに注目を集めています。
しかし感傷的で情緒豊かな詩のような文章を生み出すのは難しく、芸術家や音楽家、作曲家などは人間でこその職業です。
高度なコミュニケーションが必要となる仕事
AIは簡単な会話はできても、人間の心の微妙な起伏を感じ取ることはできません。
人の感情を動かすような温かみのある言動は、人工知能では難しい領域の一つです。
たとえば患者の精神的・身体的な状態を察して臨機応変に対応する医師や看護師は、AIが代替できない代表的な仕事です。
レントゲンで病変を特定するように、画像解析技術はすでに現場へ採り入れられていますが、診察で患者の病状をヒアリングし、病名や適切な治療を提案するのは機械では難しくなります。
ほかにも、教師や保育士のように人間らしい愛情を持ったコミュニケーションが必要な仕事も人間しかできません。
AI時代で求められる人材・能力とは
AI時代で求められる人材になるには、機械が不得意とする人間らしい力を身につける必要があります。
具体的な能力は、人間的資質(チャレンジ精神や主体性など)や発想力・創造性、対人関係能力、課題解決能力です。AI時代で生き残るための必須スキルをみてみましょう。
チャレンジ精神や主体性などの人間的資質
今後はチャレンジ精神や主体性、洞察力などの人間的資質を持った人間が転職市場で引く手数多になる時代が訪れます。
今まで重要だと考えられてきた基礎的な素養や業務遂行能力はAIに置き換えられますが、人工知能は自ら考えて動けるレベルには到達していません。
定型的な仕事は機械に任せ、人間は空いた時間で意思決定やクリエイティブな業務に従事すると良いといわれます。
人間的資質はAIでは難しい上記のタスクをこなす基盤になるスキルです。
企画発想力や創造性
AIはデータの処理は得意ですが、無から有を生み出す力はありません。
売れるモノを企画する発想力や創造性はなく、アイデアが問われる仕事は人間でなければ高いパフォーマンスを発揮できません。
新しい商品・サービスの開発やプロモーション、問題解決や業務改善の提案、UI/グラフィックデザインなど創造性に富む業務は、人間でこそ力を発揮できます。
時代に応じてニーズは変化するため、まだ誰も発見したことがない市場や需要が出てくる可能性はあります。
AIは過去のパターン分析は得意であっても、今を生きる人間の感情を先読みするのは難しいのです。
発想力や創造性が問われるクリエイティブな仕事は、人間が先陣を切って進めていくことが求められるでしょう。
コミュニケーション能力やコーチングなどの対人関係能力
コーチングやコンサルティングに必要とされる高度なコミュニケーションスキルや対人関係力は、AIの台頭が難しいスキルです。
人工知能は与えられた業務をミスなくこなせますが、業務上の細かい配慮や、空気を読むことは苦手です。
仕事の種類に関わらずクライアントとの商談は人同士の信頼関係に基づく場合が多く、良好な人間関係を構築する力に長けている人は、職場環境に左右されず力を発揮できるでしょう。
情報処理能力・課題解決能力
野村総合研究所の行った調査によると、人工知能が一般化する時代に求められる能力を米国の就労者に質問したところ、「情報収集能力や課題解決能力」と答えた割合が多くみられました。
同質問を日本人の就労者にして得られた回答では「コミュニケーション力や対人関係力」が上位を獲得しました。
日米で結果に相違があるのは、米国では自分のスキルに見合ったタスクをこなすのに対して、日本は業務の種類によらず多様な仕事をこなす必要があるためです。
いずれにせよ、正しい情報を集めて精度が高い仮説を構築する力や、顧客ごとに異なる課題へ柔軟に対処できる力は今後も求められるでしょう。
参考:総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)
AI時代で求められる人材になるには
残念ながらデータ分析力や正確性、業務の処理速度はAIには敵いません。
人工知能と共存するには、人間にしかできない力を伸ばす鍛錬が必要だといえます。
AI時代でも人が担う業務が何かわかれば、どのようなトレーニングが必要か導き出せるはずです。
人工知能が存在感を増す将来において、求められる人材になる方法を紹介します。
最新の知識を身につける
人工知能やブロックチェーンをはじめ、最新の技術やビジネスの情報にキャッチアップする姿勢が不可欠です。
上記は業界や職種に関わらず、必要な知識となるため、すべてのビジネスパーソンが獲得したい力です。
AIを開発・管理する仕事は不可欠とお伝えしましたが、今後はどのような業務でもAIツールを駆使する場面の増加が想定されます。
人工知能を業務へ採り入れる試みは数多くの企業が実践していますが、スムーズに導入できていないケースもみられます。
その要因はAIを使いこなして業務を刷新できる人材の不足です。
人工知能をはじめ、テック領域の知識を積極的に吸収することで、AI時代でも求められる人材になれるでしょう。
高度なコミュニケーションスキルを習得する
営業やコンサル、カウンセリングなどの高度なコミュニケーション力を習得できれば、AIの台頭にも負けず、自分らしいキャリアを構築できるでしょう。
個々の状態に応じた適切な解決策を提案し、顧客に安心感を与えられる存在になる必要があります。
傾聴力や豊富な知見などは一朝一夕で身につく力ではなく、習得には時間を要するでしょう。
コミュニケーション力を伸ばしたい人は会話力に焦点を当てるとおすすめです。
職場での人間関係をはじめ、プライベートでも良好な関係の構築に役立ちます。
相手の話を最後まで聞く、自分の意見を押し付けない、褒め上手になるなど普段の心がけで改善できるため、ぜひ実践してみてください。
創造力・想像力・企画力を身につける
AIが苦手な創造力や想像力、企画力を身につけるには、何事にも興味を持って探求する好奇心が欠かせません。
新しい価値を生み出す力が伸びれば、おのずと企画力も付帯して成長するでしょう。
クリエイティブな力を一段上に伸ばすためには、読書で成功者からの知見を得る、日頃から物事を多面的に捉える、遊び心を忘れないといった取り組みが効果的です。
感性の豊かさも極めて重要な素質のため、動植物や自然に触れる、音楽や絵画をはじめ芸術作品を鑑賞することが重要です。
休日は都会の喧騒から離れて、普段は行かない場所に出向き、第六感を鍛える活動に興じてはいかがでしょうか。
AI時代に求められる人材になるには自己研鑽が必要
AI時代が到来すると人間が担ってきた業務の多くは、機械に取って代わられます。
仕事を奪われずに生き生きと働くには、人にしかできない業務を把握し、AIが不得意なスキルを磨くことです。
今後は人工知能がありとあらゆるビジネスで必要になると想定されます。
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