サードパーティCookieとは、アクセスしたウェブサイトとは異なる別のドメインが発行したCookieのことです。法律や企業の規制により、2023年以降は廃止されることが見込まれています。廃止によりどのような影響が想定されるのか、またどのような対応が必要になるのかまとめました。
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「サードパーティCookie」とは?
サードパーティCookie(3rd party Cookie)とは、アクセスしたウェブサイトのドメインとは異なるドメインが発行したCookieのことです。
アクセスしたウェブサイトのドメインで発行されたものではないため、ユーザーがどのようなウェブサイトを経由してそのウェブサイトにたどり着いたのかを知る手段にもなります。
そもそもCookieとは
Cookieとは、ウェブサイトを訪問したユーザーの情報を一時的に保存する仕組みのことです。保存した情報もCookieと呼ばれることがあります。
Cookieとして保存される情報は、ウェブサイトを訪問した日時や訪問回数などのアクセス情報だけではありません。ユーザーのメールアドレスや、ウェブサイトにログインしたときのID、パスワードなどがあり、多岐にわたります。
Cookieは、ユーザーがより便利にパソコンやスマートフォンなどを利用するために必要な仕組みです。CookieにIDやパスワード、ユーザーのメールアドレスなどの情報が保存されることで、ウェブサイトへ簡単にログインできたり、インターネットショップのカートに商品を残したりできるようになります。
なお、Cookieは文字情報として専用の場所に保管されますが、いつまでも残るのではありません。それぞれの情報には有効期限があり、期限を過ぎると自動的に削除されます。また、ユーザーがCookie削除の操作をすることでも削除可能です。
Cookieの種類
Cookieは、アクセスしたウェブサイトのドメインが発行したものかどうかによって、ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの2つの種類に分けられます。それぞれの違いについて見ていきましょう。
1.ファーストパーティCookie
ファーストパーティCookieとは、アクセスしたウェブサイトのドメインが発行したCookieのことです。ブラウザによってブロックされにくいため、同じドメインのウェブサイトの中でユーザーがどのように行動したかを高精度で記録できます。
ウェブサイト運営者がアクセス解析などを行うときは、ファーストパーティCookieを利用した解析ツールを使うことが多いです。ただし近年では、ファーストパーティCookieが取得した情報もユーザーのプライバシーに関わるとの見方が強まり、情報の取得制限が行われることもあります。
2.サードパーティCookie
サードパーティCookieは、アクセスしたウェブサイトのドメイン以外のドメインが発行したCookieです。特定のウェブサイト内でのユーザーの行動だけでなく、複数のドメインにまたがる複数のウェブサイト内での行動も記録できるため、ユーザーアクションの分析にも広く用いられます。
しかし、プライバシー保護の観点から、サードパーティCookieを活用して取得した情報については制限されるケースも増えてきました。実際にサードパーティCookieをブロックする仕組みも開発され、従来のように自由な情報取得は難しくなっています。
広告業界におけるサードパーティCookieの役割
サードパーティCookieは、インターネット広告にも活用されています。例えば、インターネット広告の手法の1つ、リターゲティング広告においてサードパーティCookieは欠かせません。
リターゲティング広告とは、過去に特定のウェブサイトを訪れたことがあるユーザーが閲覧している画面に、特定のウェブサイトの広告を表示させる手法です。他のウェブサイトでの行動履歴を調べる必要があるため、サードパーティCookieを活用してユーザーの履歴を調べます。
また、広告効果を評価する際にアトリビューションを測定しますが、この測定にもサードパーティCookieが不可欠です。アトリビューションとはメディアごとのコンバージョンへの貢献度のことで、リターゲティング広告と同じく、サードパーティCookieを活用したユーザーの行動履歴に基づいて調べます。
2023年にはサードパーティークッキーが完全廃止の見込み
Cookieの存在により、ユーザーはより便利にパソコンやスマートフォンなどを利用できます。また、ウェブサイト運営者側はサードパーティCookieを活用することで、より効果的な広告活動を実現することが可能です。
しかし、ユーザーの行動履歴が記録されているということは、ユーザーの個人情報が第三者に流出しているということを意味します。プライバシーを保護するためにも、今後はサードパーティCookieの廃止という流れは加速すると想定されるでしょう。
実際、2023年にはサードパーティCookieが完全に廃止されると見込まれています。法律や企業によりどのような規制が実施されるのか見ていきましょう。
法律によるCookie規制
2022年4月1日から施行された改正個人情報保護法では、サードパーティCookieによって取得された情報は個人情報ではなく個人関連情報として扱われます。個人関連情報を第三者に提供するときは、情報を利用する側が提供する側、つまり、Cookieを発行したドメイン側に、第三者提供に関してユーザーの同意が得られているか確認することが義務付けられました。
参考:個人情報保護委員会/令和2年改正個人情報保護法リーフレット
Apple・GoogleによるCookie規制
Appleでは、ターゲティング広告はプライバシー侵害に相当するとし、ブラウザの1つ、Safariへのサイトトラッキングを防止する機能を導入しています。この機能では、2018年からファーストパーティCookieの利用を制限し、2020年からはサードパーティCookieを完全削除しました。
一方、Googleではブラウザの1つ、ChromeでのサードパーティCookieの完全廃止を計画していますが、何度か延期されており実現には至っていません。最初は2020年1月に「2年以内の完全廃止」と発表しましたが、2021年6月には「2023年後半の完全廃止」と延期し、2022年7月には「2024年後半の完全廃止」と、2度に渡って廃止時期を延期しています。
Cookieの廃止が広告業界にもたらす4つの影響
法律やブラウザなどでCookieが廃止されることで、インターネットを利用する人々やウェブサイト運営者には大きな影響が及ぶと考えられます。特に広告業界には大打撃が想定されるでしょう。広告業界が受ける主な影響としては、次のものが挙げられます。
- リマーケティング広告機能が使えなくなる
- DMPによる分析・セグメント化ができなくなる
- アフィリエイト報酬の正確性が落ちる
- アトリビューション分析ができなくなる
それぞれの影響について解説します。
1.リマーケティング広告機能が使えなくなる
リマーケティング広告は、過去に訪れたことがあるウェブサイトの広告を、ユーザーが他のウェブサイトを閲覧しているときに表示する広告手法です。ユーザーが別のウェブサイトを閲覧しているときに広告を表示させるためには、サードパーティCookieによる情報が欠かせません。
そのため、サードパーティCookieが廃止されると、リマーケティング広告は機能しなくなると考えられます。ユーザーの行動履歴とは無関係に広告を表示するなど、リマーケティング広告以外の広告手法を選択する必要も生じるでしょう。
2.DMPによる分析・セグメント化ができなくなる
DMP(Data Management Platform)とは、ウェブ上で蓄積されたデータを管理するプラットフォームです。DMPに集められたデータを分析することで、顧客の関心などを分析したり、セグメント化したりします。
しかし、サードパーティCookieが利用できなくなると、DMPでは従来ほどの膨大な情報を集められなくなるでしょう。DMPを利用することも難しくなり、顧客の関心や行動履歴を高精度で分析・セグメント化することも難しくなります。
3.アフィリエイト報酬の正確性が落ちる
アフィリエイト広告では、クリックや注文などのユーザーのアクションによってウェブサイト運営者に報酬が発生する広告手法です。しかし、アフィリエイト広告の配信や報酬発生の仕組みにはサードパーティCookieが活用されているため、サードパーティCookieが廃止されると今までのようなサービスは提供されません。
例えば、ユーザーの関心を正確に把握できないため、適切な広告が表示されない可能性はあります。また、ユーザーの行動も正確に把握できないため、ウェブサイト運営者への報酬が正確に計測されない可能性もあるでしょう。
4.アトリビューション分析ができなくなる
アトリビューション分析は、そもそも複数のウェブサイトを横断的に分析し、広告の成果を判断する手法です。サードパーティCookieが廃止されることで、異なるウェブサイトからユーザーの行動履歴などを取得できなくなり、アトリビューション分析そのものも不可能になると考えられます。
ただし、分析ツールによっては、サードパーティCookieを使用しないアトリビューション分析が可能です。例えば、アドエビスではサードパーティCookieではなくファーストパーティCookieを用いて、アトリビューション分析を実施しています。
Cookieレス時代における対応策
サードパーティCookieだけでなくファーストパーティCookieも、今後は制限を受けると考えられるでしょう。実際にAppleではすでに2018年からファーストパーティCookieの制限に取り組み、ユーザーの情報保護に努めています。
Cookieレス時代においてどのような対応が取れるのか、ツールベンダーと広告主の立場から見ていきましょう。
ツールベンダーの対応策
ツールベンダーは、サードパーティCookieなしに利用できる分析ツールや広告の仕組みなどを開発することが求められます。今後はファーストパーティCookieも利用を制限される可能性があるため、Cookie全般を使わない分析ツールや広告手法などが必要になるでしょう。
また、GoogleやAppleなどの巨大プラットフォームベンダーが、Cookie制限に取り組んでいることから、小規模のプラットフォームもCookie制限への対応が求められるようになると想定されます。
広告主の対応策
サードパーティCookieによる情報を活用した広告活動を行っている場合にも、Cookieの規制や廃止に対して何らかの対応策を講じることが必要です。主な対策としては次の2つが挙げられます。
- コンテクスト広告を行う
- 消費者の合意を得る
それぞれの対策について解説します。
コンテクスト広告を行う
コンテクスト広告とは、ウェブサイトの内容をキーワードや文章、画像などから解析し、内容に合う広告を配信する手法のことです。ユーザーが閲覧している内容と関連した広告が表示されるため、高い広告効果を期待できます。
コンテクスト広告は、インターネット広告の仕組みとしては決して新しいものではありません。しかし、ユーザーの行動履歴とは無関係に広告を表示することから、Cookieを使用しない広告として注目を集めるようになってきました。Cookieレスの時代に対応するためにも、コンテクスト広告の利用を検討できるでしょう。
消費者の合意を得る
日本の法律では、Cookieにより取得したユーザーに関する情報は個人関連情報です。個人関連情報は取得する際にユーザーの合意を得ることが求められています。
広告主が特定のブラウザなどから情報を取得するときは、Cookieにより取得した情報を利用することに対してユーザーが合意しているか確認することが必要です。手間はかかりますが、ウェブサイトごとにユーザーの合意を確認できる仕組みを構築するようにしましょう。
サードパーティCookieに代わる技術とは?
サードパーティCookieを利用しなくても、ユーザーの行動履歴の分析を行うことは可能です。次の技術は、サードパーティCookieに代わるものとして注目されています。
- デバイスフィンガープリンティング
- ビッグデータ
- IDFA・AAID
それぞれの技術について解説します。
デバイスフィンガープリンティング
デバイスフィンガープリンティングとは、ユーザーのソフトウェア設定を分析することで、デバイスやブラウザを特定し、ユーザーの行動を追跡する技術です。言語設定やタイムスタンプ、画面解像度、プラグイン情報などを活用し、ユーザーのデバイスのプロファイルを分析していきます。
なお、この分析によって確立された情報は、他の個人情報と組み合わせて用いることも可能です。例えば、既存のプロファイルやデータブローカーが保有する情報と組み合わせ、ユーザーの行動履歴を追跡することもあります。
ビッグデータ
今までに蓄積したデータやSNSを活用したユーザー分析、特定のサービスに蓄積されたデータなどをビッグデータとして分析することで、ターゲット層に狙いを定めた広告配信を実施することも可能です。
膨大な情報を元に分析するため、サードパーティCookieに頼らなくても高精度の分析と広告配信を実現できます。また、ビッグデータの分析を専門に請け負うサービスもあるので、自社で対応が難しいときにも利用できる点も特徴です。
IDFA・AAID
IDFAとはiOSの広告識別子、AAIDとはAndroidOSの広告識別子です。それぞれユーザーの行動をトラッキングし、獲得した情報を元に広告配信を行う際に利用されています。
IDFAとAAIDはいずれも個人情報の特定ができないため、個人情報関連の法規制に抵触しません。そのため、サードパーティCookie規制後に利用可能な技術として注目を集めています。
来たるCookieレス時代に向けて対策をしよう
個人情報保護の観点から、Cookieに対する規制が厳しくなると想定されます。Cookieに頼らず、広告配信やユーザー分析する方法を構築しておくことが必要といえるでしょう。
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