メドテック(MedTech)はAIなど最新テクノロジーを活用し、医療の課題を解決する取り組みです。
少子高齢化や医療従事者の人材不足などの課題を解決するものとして、注目を集めています。
本記事ではメドテックが注目される背景や実現できるサービス、代表的なベンチャー企業を紹介します。
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メドテック(MedTech)とは?
メドテック(MedTech)とは、医療とテクノロジーを融合した取り組みを指します。
Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。
似た言葉にヘルステックがありますが、対象とする医療の内容が異なります。
ここでは、メドテックの概要や日本の現状を解説します。
テクノロジーを医療に活用する取り組み
メドテックは、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みのことです。
IT技術の進化は著しく、ビジネスに大きな変革をもたらしています。
医療の分野も例外ではなく、メドテックとしてさまざまな取り組みが行われている状況です。
I技術はただ業務を効率化するだけではなく、これまでは実現が難しかった診療や診断も可能にするなど、医療の質を向上させる役割を果たしています。
ヘルステック(Healthtech)との違い
メドテックと似た言葉に、ヘルステック(HealthTech)があります。
「ヘルスケア(Healthcare)」と「テクノロジー(Technology)」を合わせた言葉です。
ヘルステックもメドテックと同じく、テクノロジーを医療に活かす取り組みです。
しかし、メドテックは病気が発症したあとの治療を目的に使用する技術であるのに対し、ヘルステックは病気の予防や健康管理を対象としている点が異なります。
また、ヘルステックは介護やフィットネスなど、医療従事者が関与しないサービスも対象に含まれます。
日本の現状
高齢化社会の到来により、医療機器市場は拡大しています。
特に治療系の機器の需要が高く、今後も成長が続くと予想されています。
2023年には医療・ヘルスケア分野のスタートアップを支援するオーストラリアのメドテック・アクチュエーターが日本に進出することで話題になりました。
大阪市内を活動拠点とし、有望企業を育成するプログラムを提供する予定です。
国内で主要企業が取り組んでいるメドテックの事例について、いくつかみてみましょう。
トヨタ自動車株式会社「ウェルウォーク」
ウェルウォークは、脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリテーション支援を目的としたロボットです。
トヨタでは「すべての人に移動の自由を、そして自らできる喜びを」というビジョンのもとにリハビリテーション支援ロボットの開発に取り組み、医療現場での実証実験や全国の医療機関で臨床的研究を行ってきました。
2017年に医療機器承認を取得し、ウェルウォークのレンタルを開始しています。
株式会社メディカロイド「hinotori」
株式会社メディカロイドは、医療用ロボット開発を目的に、川崎重工業株式会社とシスメックスが共同出資した会社です。
hinotoriは国内初の手術支援ロボットで、主に内視鏡手術を行います。
手術に必要な細かい術者の動きを再現し、高精度画像により細部を確認しながら手術ができるロボットです。
メドテックが注目される背景
メドテックが注目されている背景には、医療産業が日本経済の発展のために期待されていることがあげられます。
また、高齢化社会で医療のニーズは高まる一方で、人手が不足していることも注目されている理由のひとつです。
ここでは、メドテックが注目されている背景を紹介します。
医療産業への期待
医療産業は、日本の経済発展のために期待されている分野です。
医療分野を世界的規模で見ると、日本は海外諸国よりも医療開発や承認のスピードが遅れています。
これと同じく、メドテックもグローバル企業には後れをとっているのが現状です。
しかし、メドテックの分野における日本とグローバル企業におけるギャップは小さめです。
例えば、日本の製薬企業が研究開発に費やす割合は10%と、グ ローバル企業の平均20%を大きく下回ります。
しかし、海外のメドテック企業は売上の6〜7%を研究開発に費やすのに対し、日本のメドテック企業は売上の4〜5%と、わずかに下回るにとどまります。
また、政府は医療産業を奨励するため、以下のようなさまざまな施策を行っています。
- 医療系ベンチャーを支援する「ベンチャー等支援戦略室」を設置
- 「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)」を開催し、医療分野で開発に取り組む個人・ベンチャー企業を表彰
- 厚労省の窓口「医療ベンチャー・トータルサポート事業(通称:MEDISO)」と経産省の窓口「経産省ワンストップ窓口(通称:InnoHub)」が連携
医療産業への期待が、メドテックへの注目度を高めているといえるでしょう。
高齢化と人手不足
メドテックが注目される背景には、少子高齢化により医療のニーズは高まる一方で人手不足という課題もあります。
人手不足は地域格差による偏りもあり、一部の地域ではより深刻な状況です。
少ないリソースを効率的に配分するため、介護の現場に活用するロボット技術や遠隔医療など、メドテックによる業務の効率化が期待されています。
また、高齢化による医療の需要が高まることで、医療費の増加も深刻化しています。
少子化により、1人あたりの負担が増えて高齢者の医療費を支えるも難しくなっている状況です。
医療費を減らすためには、病気の予防や早期発見によって病気の発症を抑える、発症しても早期に治療するといった取り組みが求められます。
メドテックでは、過去の医療データを分析した結果を予防・早期発見に役立てられます。
遠隔治療など診療の効率化によって人件費を抑えることもコスト削減に役立つでしょう。
メドテックのメリット
メドテックの取り組みにより、以下のようなメリットが期待できます。
- 病気の予防や早期発見
- 人手不足の解消
- 新薬の開発を促進
メドテックを活用して病気の一次予防に役立てるサービスが多数あり、病気の予防・早期発見につながります。
人手不足の解消で、医療従事者の負担も軽減できるでしょう。
メドテックのメリットを3つ紹介します。
病気の予防や早期発見
メドテックでは、健康管理アプリやAIによる診断など病気の一次予防に役立つサービスが多数あり、病気の予防や早期発見に貢献しています。
通院や入院をせずに病気の診断が可能で、患者の医療費や医療従事者の負担を抑えるのがメリットです。
診断はIoTやビッグデータにより多くの情報を集めてAIにより解析するため、医師だけでは見落としがちば細部の診断を支援し、正確性と業務効率を高めます。
人手不足の解消
メドテックによりロボット技術も進みます。
手術用ロボットなどはすでに一般化していますが、現場で活用する医師の技術も高くなり、より安全で正確性が向上しています。
体力を要する介護にもロボットが役立ち、介護用ロボットの実用化が進められている状況です。
遠隔での診断や遠隔治療も可能になり、高齢化による受診者の増加や医療現場の人材不足といった問題の解消が期待できるでしょう。
新薬の開発を促進
メドテックはビッグデータや遺伝子工学、バイオテクノロジーを融合しながら、新薬の開発にも貢献します。
ビッグデータを分析した結果を活用することで、より有効性の高い成分を早期に見つけることが可能です。
これにより、これまで膨大な時間とコストがかかっていた新薬の開発期間の短縮・コスト削減が期待できるでしょう。
メドテックで活用される技術
メドテックで活用されるテクノロジーは、主に以下の5つです。
- AI
- loT
- 5G
- ロボット
- ブロックチェーン
これらテクノロジーの概要と、メドテックでどのように活用されているかをみていきましょう。
AI
AIとは、人工知能のことです。
データを分析し、学習して人間の知能に関連するタスクを実行するコンピューターシステムを指します。
AIはさまざまな分野で採用されており、医療現場でも活躍しています。
治療や診断が向上するには、過去の蓄積や統計データなど膨大なデータの解析が欠かせません。
AIによる機械学習により難病治療や新薬開発などに新たな知見を得られる可能性があり、AIの積極活用が期待されています。
loT
loTとは、モノをインターネットに接続し、ネットワークを通じて相互に情報交換をする技術です。
モノがインターネットと接続することで、これまで埋もれていたデータを活用できます。
医療現場では、IoTの活用により患者と医師がリアルタイムで情報共有することも可能です。
患者のデータは遠隔医療やオンライン診療にも活かせます。
収集されたデータを分析し、その結果をアプリと連動させて健康管理に役立てることも可能です。
5G
5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、「高速大容量」「多数同時接続」「超低遅延」の3つが特徴です。
5Gはスマートフォンの利用に貢献するだけでなく、機械やモノの接続性も向上させます。
医療分野では、高速通信と多数同時接続という特性が遠隔医療に活かされています。
精度の高い映像を介して、適切な診療が可能です。
医師不足に悩む地域でも、都市部と変わらない診療が受けられる可能性はあるでしょう。
ロボット
ロボットは人の支援を目的としたサービスロボットと、人の作業を代替する産業用ロボットがあります。
日本はロボット工学が発達しており、産業用ロボットは世界のトップシェアを占めている状況です。
医療現場でも、リハビリや介護支援のロボット、手術用ロボットが広く活躍しています。
さらに、遠隔で手術を支援する医療用ロボットの実用化も進んでおり、ロボットを活用したメドテックは今後も発展が続くと予想されています。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、情報を記録するデータベース技術のことです。
仮想通貨で採用されている技術で、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それぞれをチェーンのように連結してデータを保管します。
データの改ざんに強い仕組みのため、患者の個人情報や診療記録など、秘匿性の高い情報を守るために活用できると期待されています。
メドテックに期待できること
メドテックにより、医療は大きく変化しています。
オンライン診療が実現し、今後もサービスは拡大していくと予想されます。
健康維持のアプリなどが普及することで、自己管理が推進され、医療現場の負担を軽減するでしょう。
AIやloTの活用は、診療技術の向上にもつながります。
今後、メドテックに期待できることをみていきましょう。
オンライン診療の実現
メドテックの活用により、オンライン診療のサービスの実現・拡大が期待できます。
インターネットを通して画面上で診断を行い、IoTを搭載した医療機器・診断機器を使って情報の記録も可能です。
新型コロナウイルスの拡大によりオンライン診療の需要が高まり、対面の診療と変わらないオンライン診療を目指して技術の向上が進められています。
今後はさらにオンライン診療の範囲が拡大すると予想され、5Gの通信技術でスムーズな受信が可能になります。
自己管理の推進
メドテックでは、健康維持や増進を目的としたデバイスやアプリのサービスが普及しています。
また、AI診断により、病気の予防や早期発見を実現できます。
サービスの利用で自己管理が推進され、医療の需要を減らせるでしょう。
また、医薬品や医療機器に続く第三の治療として「治療アプリ」が注目されている状況です。
診療外の時間帯に、医学的なエビデンスに基づいたフォローがアプリを介して実施されます。
診療技術の向上
メドテックの活用により、診療技術の向上も期待できます。
高齢化で医療の需要が高まる一方で医師の不足という状況が続くと、医療従事者の負担は大きくなり、患者は十分な診療を受けられない事態にもなりかねません。
メドテックの活用で、このような課題の解決が可能です。
IoTやビッグデータにより膨大な情報を集め、AIにより解析することで、高度な診断治療を可能にします。
ロボットの活用
すでに医療現場で活躍しているロボットは、今後さらに進化して活用されことが予想されるでしょう。
医療ロボットの開発は積極的に進められており、今後も医療業界のロボット市場は拡大する傾向にあります。
近年、診療を補助するロボットも開発されました。
デジタル画像分析機能やセンサーでデータを収集する機能により、遠隔地でもロボットを介して診察できる仕組みです。
また、手術を補助するロボットもあります。
体力を必要とする介護・リハビリの現場では、さらにロボットの活用が進むと考えられるでしょう。
注目されるメドテックのベンチャー企業
医療産業は日本経済の発展に貢献する分野として注目されており、その要となるのがメドテックです。
メドテックによる事業を展開するベンチャー企業も少なくありません。
その中でも、特に注目されている2社を紹介します。
CYBERDYNE株式会社
CYBERDYNE株式会社は、2004年に設立されたベンチャー企業です。
高齢化社会が直面する社会課題の解決に向け、筑波大学発ベンチャーとして設立されました。
現在は東証グロースに上場しています。
同社では人・ロボット・情報系を融合した「サイバニクス技術」を活用し、医療・福祉・生活・職場に向けて革新的サイバニクスシステムを研究開発・製造しています。
サイバニクスとは、筑波大学教授で同社の代表取締役社長・CEOである山海嘉之氏が確立、命名した新学術領域です。
主力商品の医療用HALは世界初の装着型サイボーグで、医療・福祉の分野だけでなく、介護や重作業分野でも幅広く活用されています。
人が体を動かすとき、脳から筋肉へと動作意思を反映した微弱な生体電位信号が流れます。
センサーがその信号を受け取り、自分の体の一部になったかのように一体化して動いてくれる商品です。
山海氏は、これを装着するだけで人をサイボーグ化する革新技術と説明しています。
介護現場で介護用HALを使えば、腰部への負担が大きく軽減されます。
介護の重い肉体労働をテクノロジーによって支援するイノベーションであり、業界の人手不足解消に貢献しています。
医療用HALは日米欧で医療機器となり、アジア・中東領域でも展開が始まるなど、取り組みを加速させています。
Ubie株式会社
Ubie株式会社は、2017年に設立された企業です。
「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに、医師とエンジニアが立ち上げました。
AIをコア技術とする個人向けのアプリ「ユビー」と、医療現場の業務効率化を図る「ユビーメディカルナビ」を開発・提供しています。
ユビーは症状検索エンジンで、気になる症状について医師監修の質問に答えるだけで、関連する病気や対処法・近くの医療機関を無料で調べられるアプリです。
ユビーメディカルナビは、ユビーAI問診やユビーリンクなど複数のソリューションを総称する医療機関様向けパッケージです。
診察・受付業務の効率化や医療機関の認知度アップなど、さまざまな角度から診療の質を向上するための支援を行っています。
同社は役職がない新しい組織を目指しており、ヒエラルキーや上下関係がないのは特徴です。
それぞれの働き方や考え方が自立して進化し続け、自分らしく最大のパフォーマンスを発揮できる組織を目指しています。
働き方はリモートワークを推奨しており、ミーティングも遠隔で行います。
勤務時間は完全フレックス制で、各自のライフスタイルに合わせた働き方ができる会社です。
メドテックの業界がおすすめな人
今後、少子高齢化の影響により医療分野はさらに需要が高まると予想されるため、メドテックの業界は成長が期待できます。
メドテックを推進する企業は将来性があり、転職におすすめの業界といえるでしょう。
メドテックの業界は、特に以下のような人に向いています。
- 社会貢献ができてやりがいのある仕事がしたい
- 医療に関する専門知識を身につけたい
- IoTやAIなど、最先端のIT技術のスキル・知識を身につけたい
- これまで医療関係の業務に携わっており、経験を生かしたい
- IT関連の仕事に従事しており、知識を活かせる仕事がしたい
テクノロジーの進化で劇的に変化していく医療業界で、その一端を担いたい人におすすめです。
メドテックは医療業界の未来を担う
メドテックは医療とテクノロジーを融合した取り組みで、日本経済の発展のために期待されている分野です。
少子高齢化により医療の需要は高まるものの、医療従事者は人材不足という現状があります。
メドテックの活用はそのような課題を解決する取り組みとして、注目と期待を集めています。
メドテックの業界で働くことは社会貢献性が高く、大きなやりがいを感じられるでしょう。
メドテックの業界で、医療や最先端のIT技術を身につけたいと考えている方におすすめしたいのが、転職サービスのフォルトナベンチャーズです。
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