スタートアップ企業もベンチャー企業も、いずれも成長期にある企業です。
しかし、成長期と一口にいっても、いくつかのフェーズに分かれており、フェーズごとに課題や必要な人材が異なります。
本記事では、スタートアップ企業・ベンチャー企業の成長フェーズについて解説します。
また、フェーズに合わせた転職対策も紹介するので、ぜひ希望するスタートアップ企業・ベンチャー企業への転職活動に活かしてください。
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スタートアップ企業の成長フェーズ
スタートアップ企業とは、革新的なアイデアやビジネスモデルを持ち、短期間で成長する創業数年以内の企業のことです。
成長スピードが速く、社会に変革をもたらすことや貢献することを意識しているのも、スタートアップ企業の特徴です。
スタートアップ企業の成長フェーズは、次の4つに分けられます。
- シード期
- アーリー期
- ミドル・グロース期
- レイター期
なお、スタートアップ企業にとっては「どの程度まで成長しているか」によってフェーズに分けられますが、投資家にとっては「どのような投資が必要か」によっていくつかの段階に分けられます。
投資ラウンドとは、スタートアップ企業に対して投資をする段階のことです。
投資ラウンドについては、次の記事をご覧ください。
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スタートアップ企業のシード期
スタートアップ企業のシード期とは、誕生したばかりのビジネスアイデアを市場展開するか検討するフェーズを指します。
アイデアは存在するものの、商品やサービスといった具体的な形になっていない段階、もしくはプロトタイプのみ完成している段階のため、従業員も少なく数人程度のことが一般的です。
シード期では、営業すべき商品・サービスがないため、事業計画書の作成や、競合商品・競合サービスやニーズを分析するための市場調査がメイン業務となります。
営業や生産に関わっていないことから、資金調達を必要としないスタートアップ企業も多いです。
スタートアップ企業のアーリー期
スタートアップ企業のアーリー期とは、アイデアが製品・サービスといった具体的な形になったばかりのフェーズです。
量産体制に入っている段階ではないため、企業運営を維持できる程度の利益さえあればよしとします。
少数の商品・サービスを社会に出し、反応を見つつ、事業戦略を練っていきます。
アーリー期では、自社商品・自社サービスの認知度を高めるために、オンラインで情報提供を行うことが多いです。
ホームページやSNSで情報を発信し、少しずつクライアントを開拓していきます。
シード期に比べるとアーリー期は活動が広範囲に渡るため、多額ではないものの資金調達の必要性も高まります。
しかし、事業や企業の認知度が低いため、金融機関から融資を受けることが難しく、個人投資家やクラウドファンディングなどの方法を活用することも少なくありません。
スタートアップ企業のミドル・グロース期
スタートアップ企業のミドル・グロース期とは、アーリー期で販売を開始した商品・サービスがコンスタントに売れるようになり、収益が安定し始めるフェーズです。
社員も増え、20人以上になる企業もあります。
ミドル・グロース期では、より収益を増やすために、試供品として提供していた商品を有料にしたり、無料お試しプランに制限を設けて有料化したりすることがあります。
また、売上急増により量産体制に切り替えるため、大規模な資金調達が必要です。
事業や企業の認知度も上昇しているため、アーリー期と比べると金融機関から融資を受けやすくなるだけでなく、ベンチャーキャピタルや個人投資家から出資を打診されることも増えます。
スタートアップ企業のレイター期
スタートアップ企業のレイター期とは、事業が軌道に乗って、ミドル・グロース期よりも高い水準で収益が安定し始めるフェーズです。
余剰金も生まれるため、新規事業を開拓したり、他地域や海外に事業を拡大したりする企業も多いです。
従業員も増え、30人以上になることもあります。
ある程度の実績も積み重ねているため、ミドル・グロース期と比べると、より金融機関から融資を受けやすくなるでしょう。
また、事業拡大のために、株式公開を行うスタートアップ企業も増えます。
ベンチャー企業の成長フェーズ
ベンチャー企業とは、独自技術や独自アイデアを積極的に形にし、企業成長につなげる企業のことです。
新しく起業した企業を指すこともありますが、既存企業であっても、新規事業に積極的に取り組む企業はベンチャーと呼ぶことがあります。
ベンチャー企業の成長フェーズは、スタートアップ企業と同じく次の4つに分けられます。
- シード期
- アーリー期
- ミドル・グロース期
- レイター期
フェーズごとの状態について見ていきましょう。
ベンチャー企業のシード期
ベンチャー企業のシード期とは、ビジネスアイデアはあるものの、商品やサービスとして形になっていない時期です。
スタートアップ企業のシード期と同じく、プロトタイプを作成してフィードバックを受け取ったり、市場調査を実施したりすることが日々の業務になります。
多額の資金調達が必要ではないため、自己資金で賄うことが一般的です。
また、自己資金で不足する分については、知人や親戚からサポートを受けることもあります。
ベンチャー企業のアーリー期
ベンチャー企業のアーリー期は、アイデアを商品やサービスといった形にし、顧客に提供してフィードバックと改善を繰り返してブラッシュアップしていくフェーズです。
事業を拡大するためにマーケティング活動にも注力しますが、マーケティングや研究、生産にかかる費用に収益が追いつかず、赤字が続きます。
事業実績が乏しいため、資金調達が難しいのもベンチャー企業のアーリー期の特徴です。
国が実施しているベンチャー企業向けの補助金制度や助成金制度を活用し、活動資金に充てている企業も少なくありません。
ベンチャー企業のミドル・グロース期
ベンチャー企業のミドル・グロース期とは、商品やサービスに一定の顧客が付き始めるフェーズです。
顧客数は加速度的に増え、売上も急増します。
しかし、営業活動や研究開発にコストがかかるだけでなく、社員を増やすためのコストもかかるため、依然として赤字状態は続きます。
アーリー期と比べると活動範囲が広がり、金融機関やベンチャーキャピタルから多額の資金調達が必要です。
また、ミドル・グロース期は、社内制度を整えるフェーズでもあります。
社員が増えているため、人事制度や評価制度を確立し、企業文化を根付かせる必要が生じます。
ベンチャー企業のレイター期
ベンチャー企業のレイター期とは、商品やサービスによる収益がコストを上回り、黒字が続くフェーズです。
社員は50人以上に増え、大手企業と協業する企業もあります。
また、社会的な認知度も高まるため、ベンチャー企業というよりは一般企業として認識される時期です。
企業によっては上場の準備を始め、さらなる事業拡大を目指します。
スタートアップ・ベンチャーのフェーズごとの課題
成長フェーズによって、スタートアップ企業やベンチャー企業が抱える課題は異なります。
どのような課題を抱えるのか具体的に紹介し、各課題がそのフェーズで生じる理由について見ていきましょう。
シード期の課題
スタートアップ企業・ベンチャー企業のいずれも、シード期には次の課題を抱えることがあります。
- 顧客を獲得できない
- 資金が不足する
シード期は企業や事業の社会的認知度が低いため、資金調達が難しい時期です。
そのため、集客に費用をかけられず、顧客を獲得できないことがあります。
また、資金が潤沢ではないため、商品の改善に費用をかけられないのも課題です。
SNSやホームページを活用したコンテンツマーケティングでコストを抑えて認知度を高め、商品・サービスのブラッシュアップに費用を回す必要があるでしょう。
アーリー期の課題
アーリー期には、次の課題を抱えることがあります。
- 予実管理ができない
- 資金が不足する
シード期と比較すると売上は上昇しますが、商品開発費や人件費も増えるため、予実管理が難しくなります。
予実管理ができていないときは、運転資金が不足し、商品・サービスの生産どころか企業存続も危うくなるかもしれません。
赤字が続く前に、金融機関や投資家から資金調達する必要があります。
しかし、資金調達ができても返済できないなら、倒産の時期が遅くなるだけで企業存続が危ういことには変わりがないため、返済が可能なのか吟味してから調達することが必要です。
ミドル・グロース期の課題
ミドル・グロース期には、次の課題を抱えることがあります。
- 人材が不足する
- 社内制度が整わない
- 社風が流動的で一貫性がない
ミドル・グロース期は、成長著しい時期です。
しかし、事業の成長に企業成長が追いつかないときは、人材不足や社内制度の不備、社風が定まらないなどの課題が生じることがあります。
事業成長に見合った企業成長を実現するためにも、社内制度の確立や社風醸成に時間を確保するようにしましょう。
公平かつ公正な社内制度を早期に確立できないときは、人材が流出し、事業成長がおぼつかなくなることもあります。
雇用や育成には時間とコストがかかります。
今までかけたコストを無駄にしないためにも、事業だけでなく企業そのものに注力してください。
レイター期の課題
レイター期には、次の課題を抱えることがあります。
- 資金調達の規模が拡大する
どの成長フェーズにおいても資金調達の課題を抱えることになりますが、レイター期は必要な資金の規模が拡大するため、課題の深刻度も深まります。
また、上場を目指す場合は、次の課題が顕在化することもあるでしょう。
- 多額の残業代が未払いになっていた
- コンプライアンス意識が低く、監査結果が思わしくなかった
課題を解決するために社内変革を実現する場合、変革の方向性によっては社員流出につながることもあるため注意が必要です。
将来的に上場を検討しているスタートアップ企業・ベンチャー企業は、シード期やアーリー期の時点から、人事や会計について厳正に管理しておきましょう。
スタートアップ・ベンチャーの各フェーズに必要な人材
成長フェーズに応じた人材を採用することで、課題を解決し、次のフェーズに進みやすくなります。
スタートアップ企業・ベンチャー企業の各フェーズに必要な人材について見ていきましょう。
シード期に必要な人材
アイデアを具体化するシード期に必要なのは、エンジニアです。
優秀なエンジニアを大量に採用したいと目論むスタートアップ企業・ベンチャー企業は多いです。
しかし、シード期は社内体制がまだ整っていない企業も多いため、正社員として採用しないケースもあります。
まずは業務委託やアルバイトの形で関わってもらい、技量や人柄をチェックし、社内体制が整った時期を見計らってから、正社員として採用することも少なくありません。
アーリー期に必要な人材
商品やサービスの販売を開始するアーリー期には、営業担当者が必要です。
経営層の事業にかける思いを正確に理解し、顧客開拓に反映できる人材が求められます。
また、顧客をサポートするカスタマーサクセスも必要です。
顧客に寄り添うだけでなく、事業のマネジメントからシームレスに業務を行う人材が適切とされます。
カスタマーサクセスの経験がなくても、ルート営業からカスタマーサポートを一貫して実施した経験や、SIerで保守運用を担当していた経験があるなら、採用される可能性があります。
ミドル・グロース期に必要な人材
事業を加速度的に拡大するミドル・グロース期には、営業・人事の責任者が必要です。
社員の増加に伴い、統率する人材が求められるようになります。
営業責任者には、5~10人程度の部下を統率した経験があり、本人自身も営業活動において優れた実績を上げてきた人材が適切と考えられます。
また、人事責任者も同様です。
ある程度の集団を管理しつつ、個人の業務も高いレベルで同時並行的に遂行できることが求められます。
レイター期に必要な人材
事業が軌道に乗るレイター期には、マーケティング責任者とCFO(最高財務責任者)が必要です。
企業によっては年商10億円程度に到達していることもあるため、新たに見込み顧客を創出するだけでなく、異なる事業に取り組む必要性が生じます。
そのため、マーケティングを遂行するというよりは、マーケティングの戦略を立てられる人材が求められます。
また、事業が拡大しても、経営が破綻することは珍しくありません。
財務を管理するCFOを配置し、リソースを切らさないように回していくことが必要になります。
レイター期では、経営の中枢に関わる重要人材を採用するため、採用に半年~1年ほどの時間をかけることもあります。
スタートアップ・ベンチャーのフェーズごとの転職対策
スタートアップ企業・ベンチャー企業の成長フェーズを見極めると、求められる人材を把握でき、転職対策がしやすくなります。
フェーズごとの転職対策について紹介します。
シード期・アーリー期の転職対策
シード期・アーリー期の企業は、社員は20人以下、社員の年収は600万円以下のことが一般的です。
求められる経験と特質について見ていきましょう。
創業期の業務に携わった経験が求められる
創業期の企業に関わった経験があると、採用されやすくなります。
創業期のスタートアップ企業・ベンチャー企業で働いた経験があるときは、どのような業務に携わったのか詳しく職務経歴書に記載しましょう。
自発的な行動力を備えていることが望ましい
社員が少ない段階のため、指示系統が確立されていないこともあります。
そのため、自発的に行動できる人材が求められます。
ミドル・グロース期の転職対策
ミドル・グロース期の企業は、社員は20~50人程度、社員の年収は500万~700万円程度です。
求められる経験と特質を紹介します。
営業や開発での経験が求められる
事業拡大のために、営業や開発に注力するフェーズです。
そのため、営業や開発の経験があると、採用に有利に働くことがあります。
リーダーシップは必須とされる
社員も増え、ある程度の統制が必要になる時期です。
リーダーシップのある人材に対するニーズも高まります。
レイター期の転職対策
レイター期の企業は、社員は50~150人程度、社員の年収は600万~1,000万円程度です。
求められる経験と特質を紹介します。
マーケティングや財務での経験が求められる
事業基盤を固めるために、マーケティングや財務の経験者が求められます。
責任者の経験があれば、さらに適任と考えられます。
指導的な立場としての適性と俯瞰的な視野が必要
責任者として採用するケースも多いため、指導的な立場の適性が必要です。
また、自分の業務に取り組みつつも、俯瞰的に部署や業務全体を見る力も求められます。
フェーズを見極めた転職活動を始めよう
スタートアップ企業・ベンチャー企業のフェーズの見極めは、転職活動の方針を決める上で重要といえます。
フェーズについての理解を深め、転職活動に活かしていきましょう。
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