デットファイナンスとは、金融機関からの融資などから借り入れをする資産調達法です。
さまざまな種類があり、自社の状況に合わせて資金調達先を選べます。
エクイティファイナンスと異なり、返済義務と期限、利息が発生するのが特徴です。
本記事ではデットファイナンスの意義やエイクティファイナンスとの違い、向いている会社などをご紹介します。
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デッドファイナンスとは
デットファイナンスとは、借り入れによる資金調達のことです。
主に銀行からの融資や社債の発行などがあげられます。
返済期限までに利子をつけて返済する義務があり、デットファイナンスにより資金調達を行うと貸借対照表(バランスシート)では負債に計上されます。
ここでは、デットファイナンスの意味や特徴を確認しておきましょう。
借入による資金調達のこと
デットファイナンスは、利子をつけて期限までに返済する義務のある資金調達を指します。
負債や借金という意味のデット(Debt )と資金調達という意味のファイナンス(Finance)を組み合わせた言葉です。
企業の代表的な資金調達手段のひとつで、信頼性や担保により資金を借り入れます。
デットファイナンスの一例として、銀行や信用金庫などの金融機関から資金を借り入れる融資や、投資家から資金を集めるために債権を発行する社債などがあげられます。
デットファイナンスには返済期限と返済義務があり、利息が発生します。
公的融資や銀行融資、ビジネスローンなど、資金調達の選択肢は豊富にあるのが特徴です。
それぞれ融資の条件は異なり、幅広い調達先から会社の事情に応じて選択できるのがメリットです。
エクイティファイナンスとの違い
デットファイナンスと比較されるものに、エクイティファイナンスがあります。
エクイティ(equity)とは株式という意味で、エクイティファイナンスは新株発行による資金調達方法です。
投資家からの出資で事業を行い、成果を還元します。
両者の違いは、以下のとおりです。
比較項目 | デットファイナンス | エクイティファイナンス |
返済義務・期限 | あり | なし |
利息 | あり | なし |
貸借対照表の記載 | 負債 | 資本 |
経営に関する権利の有無 | なし | 議決権や配当など株主の権利を得る |
返済義務
デットファイナンスには返済期限と返済義務があり、借入金額や期間に応じた利息が発生します。
これに対し、エクイティファイナンスは投資家による出資であり、基本的に返済義務や利息はありません。
会社は出資を受ける代わりに会社の株式を渡し、出資者は株式の値上がり益を得るほか、株式を売却して出資金を回収できます。
貸借対照表の記載
デットファイナンスとエクイティファイナンスは、貸借対照表上の記載が違います。
貸借対照表とは、一定の時点における企業の財政状態を表す書類です。
デットファイナンスは返済が必要な借入金であるため、貸借対照表の「負債」に計上されます。
一方、エクイティファイナンスは株式資本を増やす資金調達であり、資本に組み入れられます。
貸借対照表に計上するのは「純資産」です。
経営権の有無
デットファイナンスは借り入れのため、経営に関する権利が付与されることはありません。
これに対し、エクイティファイナンスでは株式を取得して株主となり、議決権や配当など株主としての権利を与えられます。
株主は株式の保有率に応じて経営に対する発言権を獲得するため、過半数以上の株式を渡してしまうと経営権を失う可能性もあります。
デットファイナンスの種類
デットファイナンスは公的機関や民間の金融機関からの融資など、さまざまな種類があります。
主な借入先として、以下の7つがあげられます。
- 公的機関からの融資
- 民間の金融機関からの融資
- 制度融資
- 社債の発行
- コマーシャルペーパー
- シンジケートローン
- ソーシャルレンディング
会社の事情に応じて、適した調達方法を選ぶことが可能です。
ここでは、代表的なデットファイナンスを7つご紹介します。
公的機関からの融資
公的な金融機関とは、民間の金融機関から融資を受けることが困難な中小企業や小規模事業者への資金提供を目的に、政府が全額または一部の資金を出して融資を行っている機関を指します。
代表的な公的金融機関は、日本政策金融公庫の国民生活事業・中小企業事業、商工組合中央金庫があげられます。
公的金融機関は金利や融資期間・審査基準などの借入条件が民間の金融機関より低く、借りやすくなっているのが特徴です。
日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業の支援を目的とした政府系金融機関です。
創業や新規事業を支援するものなど、資金の用途や事業の状況に応じてさまざまな融資を提供しています。
銀行融資と比較すると融資を受けやすく、民間の金融機関から融資を断られた場合でも、融資を受けられる可能性があります。
金利は1〜2%程度と低く、無保証で借入できる融資もあるのが特徴です。
商工組合中央金庫は、政府と民間団体が共同で出資する唯一の政府系金融機関です。
中小企業を専門に活動し、全国47都道府県と海外4ヵ所に拠点を持ちます。
80年以上にわたって培った中小企業金融のノウハウがあり、長期・短期の融資のほかにも財務改善や事業再生・経営改善など、中小企業のさまざまなニーズに対応するサービスを提供しています。
融資は一般的な融資だけでなく、「組織化、組合共同事業支援のための融資」や「業界団体の制度融資」など、幅広い制度を設けているのが特徴です。
民間の金融機関からの融資
銀行など民間の金融機関からの融資は、多くの会社に利用されている資金調達方法です。
民間の金融機関からの融資は大きくプロパー融資とビジネスローンに分かれます。
プロパー融資とは、信用保証協会による保証を受けず、金融機関と直接に契約を交わす融資のことです。
主に銀行からの融資を指します。
プロパー融資は信用度の高い企業が対象で、厳格な審査が行われます。
金利は比較的低めで、融資限度額は高めです。
ビジネスローンとは、事業資金の利用に特化したローン商品のことです。
金融機関のほか、信販会社や消費者金融などでも提供しています。
法人もしくは個人事業主を対象に、開業資金や運転資金などの用途で融資を行います。
ビジネスローンは一般的な融資よりも金利が高い傾向にありますが、プロパー融資と比較して審査が早いのは特徴です。
また、原則として無担保・無保証人で借り入れができます。
また、公的融資やプロパー融資に比べて金利が高めで、借り入れの限度額は低めです。
制度融資
制度融資は、金融機関と地方自治体・信用保証協会が連携して提供する融資です。
地方自治体と信用保証協会の協力により長期・低金利の融資を実現し、中小企業や小規模事業者を支援しています。
自治体は中小企業・小規模事業者の信用保証料を補助しており、金融機関に対しては融資の貸付資金を一部預託し、金利負担を軽減しています。
信用保証協会は金融機関に融資申込者の保証をし、融資の実施をサポートする役割です。
これら自治体と保証協会の補助が入るため、審査のハードルは低くなっています。
現在は厳しい経営状況にある企業でも将来的に回復して成長できる見通しがあれば、融資を受けられる可能性があるでしょう。
制度融資は日本政策金融公庫と並び、中小企業・小規模事業者にとっては資金調達の大きな選択肢のひとつです。
社債の発行
社債とは、企業が設備投資などの事業資金を調達するために発行する債券のことです。
個人投資家を含め、広く資金調達ができます。
投資家は社債を購入することで企業にお金を貸すという仕組みです。
企業は満期までの利息を定期的に支払い、満期時に元本を償還して返済が完了します。
社債は「公募債」と「私募債」の2種類があり、公募債は市場に情報を公開して多くの投資家を募る債券です。
私募債はそれ以外の方法で購入を勧誘します。
公募債は市場に情報を公開して多くの投資家を募るのに対し、私募債は市場に情報が公開されず、個別に投資家へ依頼する形式が一般的です。
公募債は債権者の数が多く、投資家保護の観点から社債管理者の設置や有価証券届出書・有価証券報告書の提出義務など、発行に際して数多くのルールが設けられています。
公募債発行は厳しい条件を満たす必要があるため、発行するには上場企業が中心です。
発行額も数百億から数千億円に上ります。
私募債は「少人数私募債」と「プロ私募債」の2種類があり、発行条件がそれぞれ異なるため注意が必要です。
少人数私募債は勧誘対象が50人未満、発行総額は1億円未満に限定され、譲渡制限があります。
プロ私募債は人数制限がない代わり、適格機関投資家(プロの投資家)のみが対象です。
私募債は公募債と比較して規制が緩やかで、手軽に資金調達しやすいというメリットがあります。
コマーシャルペーパー
コマーシャルペーパーとは、公開市場において割引形式で発行する無担保の約束手形のことです。
短期資金調達の目的で発行されます。
無担保のため、発行は財務状況が良好で信用度の高い企業に限られています。
額面金額は1億円以上で、証券会社や金融機関が発行を引き受けて投資家に販売される仕組みです。
企業の信頼力が担保になっているため、コマーシャルペーパーを発行していることは企業の信頼性を判断する指標の1つだといえるでしょう。
市場から資金を調達する点で社債と似ていますが、両者は償還期間が異なります。
社債が1年以上であるのに対し、コマーシャルペーパーは通常1年未満で償還されます。
1~3ヵ月以内と短期のものが多く、必要な金額を素早く調達できるのがメリットです。
シンジケートローン
シンジケートローンとは、金融機関が協調融資団(シンジケート団)を組成し、同じ条件・契約書で融資を行う手法です。
複数の金融機関から融資を受けることで多額の資金調達ができるのがメリットで、貸す側もシンジケート団を組織することで融資に伴う負担やリスクを軽減できます。
シンジケートローンには以下の種類があります。
- コミットメントライン方式:事前に設定した金額と期限内でいつでも短期的な融資を受けられる
- タームローン方式:証書借入により長期的な融資を受けられる
- コミット型タームローン方式:事前に設定した金額と期限内でいつでも長期的な融資を受けられる
シンジケートローンで資金調達を行う流れは、以下のとおりです。
- 融資を受けたい顧客が、アレンジャー(幹事役の金融機関)を指名する
- 指名されたアレンジャーが、シンジケート団を組織する
- エージェント(事務代行者)を介して契約書の作成・調印を行う
- 借入を申請し、融資が実行される
複数の金融機関から融資を受ける仕組みですが、借り入れる側と対応するのはアレンジャーとエージェントのみで、事務手続きの負担が軽減されます。
シンジケートローンでは複数の金融機関と契約を結ぶため、多くの金融機関と関係を築けるのもメリットです。
返済を滞りなく完了すれば信用を獲得し、実績を積むことができます。
ソーシャルレンディング
ソーシャルエンディングとは、企業がインターネットを通じて不特定多数の出資者から資金を調達する方法です。
事業資金を調達したい企業と、資金を提供して利息を得たい投資家をマッチングします。
金融機関からの融資を受けるのが難しい新興企業などでも、資金調達しやすいのがメリットです。
審査期間も短く、申請をしてから迅速に融資を受けられます。
ソーシャルレンディングによる資金調達は、次の手順で行います。
- 企業がソーシャルレンディングのサービス会社にアクセスし、融資条件を決める
- サービス会社がファンドを組成し、インターネット上で投資を募る
- 投資家が事業内容や利率、投資期間などをふまえて投資判断する
- サービス会社が集めた資金を融資する
- 融資を受けた企業が条件に従って利払い・返済を行う
- サービス会社は元利金から投資家へ分配や償還を行う
まず、ソーシャルレンディングを運営するサービス会社とコンタクトを取ることから始めます。
サービス会社が融資条件を決め、ファンドを作り資金を調達するという流れです。
デットファイナンスのメリット
デットファイナンスには、以下のようなメリットがあります。
- 節税できる
- 経営権に影響しない
- 返済実績で信用力が上がる
節税できるのは、利息が法人税の対象外となるためです。
また、エクイティファイナンスと異なり、経営権に影響しないというメリットもあります。
借入金を期限内に完済できれば返済実績が残り、信用力が上がるのも利点です。
ここでは、デットファイナンスのメリットをご紹介します。
節税できる
デットファイナンスで借り入れた金額は、利息をつけて返済しなければなりません。
融資を受けない場合と比較して損をしていると感じられますが、利息の支払い分は経費に計上できます。
一方、エクイティファイナンスは利息の支払いはないものの、株主に配当金を支払います。
一般的に会社が支払う配当金は借り入れに発生する利息よりも高いリターンが求められ、経費にも計上できません。
デットファイナンスは所得から支払った利息分を差し引けるため、利息が多い場合はそれだけ税金も軽減されます。
節税効果が高いことはメリットといえるでしょう。
経営権に影響しない
株式を発行するエクイティファイナンスは経営権に影響を及ぼす可能性はありますが、デットファイナンスをしても株主の比率は変わらず、経営権に影響が出ることはありません。
エクイティファイナンスで株主が増えれば、それだけ経営に意見できる人が増えることになります。
そのような状況を避けたい場合に、デットファイナンスが役立つでしょう。
ただし、デットファイナンスの場合でも会社の経営状態が悪化した場合は、融資を受けている金融機関から経営上のアドバイスを受ける場合はあります。
返済実績で信用力が上がる
デットファイナンスの借入金を期限内に完済すると、返済実績として残ります。
金融機関から評価され、信用力が上がるのはメリットです。
信用を築くことで将来的に融資を受けやすくなり、借入条件も良くなる可能性があります。
ただし、これはあくまで期限を守って返済した場合です。
返済が滞った場合は反対に信用がなくなり、状況によっては信用情報機関に記録を残される可能性があります。
記録が残された場合はほかの金融機関からも借り入れできなくなり、経営に大きな影響を与えます。
そのため、デットファイナンスを利用する際は返済計画をしっかり立てることが大切です。
デットファイナンスのデメリット
デットファイナンスにはデメリットな側面もあります。
エクイティファイナンスと異なり、返済義務・期限があることはデメリットといえるでしょう。
利息が発生し、返済期間が長くなるほど利息額も大きくなることや、結果的に自己資本率を下げてしまうこともデメリットといえます。
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
返済義務・期限がある
デットファイナンスの特徴でも説明しましたが、デットファイナンスには返済義務があり、期限までに返済しなければならないのがデメリットです。
万が一返済期限内に返済できないと延滞利息が発生したり、督促を受けたりします。
督促を受けても返済できないと、最悪の場合は資産の差し押さえなどの強制執行に至る場合もあります。
そのような事態にはならなくても、返済期限を過ぎた支払いは会社の信用力に影響するでしょう。
エクイティファイナンスに返済義務・期限はありませんが、そのために資金調達法として優れているとはいえません。
返済義務・期限がない代わり、会社が多くの利益を出した場合に配当金の支払いを行います。
返済義務に代わる支出はあるため、一概に「エクイティファイナンスは返済義務がないから良い」とはいえないでしょう。
利息が発生する
デットファイナンスは利息が発生するのもデメリットです。
利息は返済期間と利率に応じて計算され、返済期間が長引くほど利息額も大きくなります。
審査基準が厳しいほど金利は低く、基準が緩いほど高めになる傾向にあります。
融資を受けやすいからと多額の資金を借り入れしてしまうと、利息の支払いに苦しむことにもなるでしょう。
融資を受ける際は利息の支払いを視野に入れ、しっかり返済計画を立てることが大切です。
自己資本比率が下がる
デットファイナンスで調達した資金はすべて負債(他人資本)に分類されます。
その結果、自己資本比率を下げてしまうというのがデメリットです。
自己資本とは返済の必要がない資本のことで、貸借対照表の純資産が自己資本にあたります。
自己資本比率は総資本のうち自己資本の占める割合で、経営の健全性を判断する指標になります。
自己資本比率は「自己資本÷総資本」の計算式で求められ、高ければ高いほど財務的に安定した会社と判断することが可能です。
自己資本比率が高いということは、デットファイナンス以外の方法で資金を調達していることになります。
デットファイナンスの利用が増えて自己資本比率が下がると、他人資本に依存する不安定な会社経営を行っていると判断されることもあるため注意しなくてはいけません。
金融機関から融資を受けにくい、補助金や助成金の利用が難しいといったことが起こりやすくなるでしょう。
デットファイナンスが向いている会社
デットファイナンスの特徴やメリット・デメリットからみて、以下のような会社が向いていると考えられます。
- 中長期的に売上の見込みがあり、返済できる可能性が高い
- 借入れのための担保を用意できる
- 企業の経営権を保持する意向が強い
デットファイナンスは返済義務・期限があり、返済できる見込みが必要です。
借り入れの資金を活用して事業の拡大や組織体制の構築などを行い、中長期的に利益が上がる具体的な事業計画を策定している場合は、デットファイナンスの利用が向いています。
また、万が一期限内に返済できない事情ができた場合でも、担保となる資産を保有していれば対応が可能です。
エクイティファイナンスの資金調達をメインにする場合、経営に発言権を持つ株主を増やすことになります。
エクイティファイナンスによって株式所有比率が大きく変われば、会社の意思決定が第三者に左右されてしまう可能性があります。
そのような事態はどうしても避けたい場合には、デットファイナンスによる資金調達が向いているでしょう。
一方、負債を増やしたくない会社にデットファイナンスは向いていません。
自己資本比率を下げず貸借対照表を健全に保ちたい場合は、自己資本比率の向上が見込めるエクイティファイナンスによる資金調達を検討した方がよいでしょう。
また、将来は事業規模を縮小する予定があるなど長期的な返済に不安がある場合、デットファイナンスはおすすめできません。
デットファイナンスは計画的な利用が大切
デットファイナンスは借り入れによる資金調達方法です。
公的機関や銀行からの融資など、さまざまな種類から自社に合うものを選んで利用します。
期限内の返済義務が発生するため、十分な返済計画のもとに利用しなければなりません。
調達した資金で利益を上げる事業計画があり、返済する見込みがある会社に向いている方法です。
転職活動での企業研究では、デットファイナンスの理解が必要になることもあるでしょう。
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