DAO(分散型自律組織)はリーダーや権力者がおらず、参加者同士で合意形成を図ることで運営する組織です。
フラットで民主的な運営が可能で、自由に参加しやすいという従来型の組織とは異なる特徴を持っています。
今回はDAOのメリットやデメリット、事例を紹介します。
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DAO(分散型自律組織)とは?
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、絶対的な権力者がいない民主的な組織形態を指す言葉です。
ブロックチェーン技術を駆使し、メタバースとの融合も可能なこともあり、近年数が急増しています。
大型プラットフォームの影響を弱める非中央集権型の新たなインターネットの仕組みである、Web3.0の実現に適した組織としても注目されています。
DAOの定義
日本語で「分散型自律組織」と訳される組織形態で、ブロックチェーン技術を用いて、世界中の人が協力して運営します。
ブロックチェーンは取引履歴を保存するデータベースのようなもので、取引や契約の改ざん防止に役立つ技術です。
DAOが一般的な組織と異なるのは、代表者が存在しない点です。
参加者同士に上下関係がないフラットな組織で、かつ国籍や性別にとらわれず誰でも自由に参加できます。
運営上必要なルールを決める際は、ブロックチェーン技術によるスマートコントラクトを活用します。
スマートコントラクトを使うことで、条件を満たせば人の手を介さずに自動でブログラムが適用される仕組みです。
DAOが注目される背景
DAOの数は急増しており、年々注目度が高まっています。
人々がDAOに魅せられるようになったのは、メタバースと融合できる点が大きいでしょう。
2021年はメタバース元年とも呼ばれ、仮想空間上で土地を購入したり、アバターを使ってゲームを楽しんだりといった新しい経済活動や楽しみ方が現実のものになりました。
詳しくは後述しますが、DAOの土台であるスマートコントラクトによって、メタバースを活用したさまざまな活動が実現しました。
同時に新たな会社の在り方としても注目を集めています。
DAOはブロックチェーン上で、誰でもいつでも組織を設立できます。
設立した瞬間から投資家たちとコンタクトを取れるため、資金調達のスピードが従来の方法と比べて段違いの速さです。
Web3.0とDAOの関連性
Web3.0は次世代型の新しいインターネットを示す概念です。
限られた企業が実権を握る現在の中央集権的な仕組みに取って代わるものとして、世界から熱視線が注がれています。
従来インターネットの世界は、大型プラットフォーマーが事実上の支配権を握っていました。
親分に管理される強権的な体制を崩し、情報管理を民主化するために登場した概念がWeb3.0です。
トップを設けず各参加者に権限を移譲するという点で、Web3.0とDAOはコンセプトが同じです。
つまりWeb3.0を実現する組織体制として、DAOは適しているといえます。
DAO(分散型自律組織)の特徴は3つ
DAOの特徴は「権力を握る管理者が存在しない」「民主的な組織運営が可能」「国籍や性別関係なく誰でも参加できること」です。
既存の組織形態の問題点である、リーダーや社長が独断的に意思決定をし、部下たちが振り回されるという事態が起こりえません。
口だけでなく実質的にも、民主的でフラットな組織形態を実現できる在り方です。
特徴1.管理者が存在しない非中央集権組織
DAOは組織を管理するリーダーや権力者が一人たりとも存在しないのが特徴です。
意思決定やルールの変更などは、ブロックチェーン上に書き込まれたスマートコントラクトによって行われます。
スマートコントラクトとは、事前にルールを設定し、条件を満たした場合に自動で処理が実行される仕組みのことです。
DAOでは上記のように、機械的に運営・管理がなされます。
突然の方針変更をはじめ、管理者による独断・専制的な意思決定を排除できる点がメリットに挙げられます。
特徴2.民主的な組織運営
参加者全員が平等でフラットなDAOは、民主的な組織運営が実現しやすいのも特徴です。
従来の組織では社長や代表取締役など上の役職が権力を握り、下の立場の意見がないがしろにされるケースが少なくありませんでした。
DAOなら立場の違いがないため、誰でも自由に意見を表明しやすいのがメリットです。
運営方針の決定は、ガバナンストークン(DAOで必要となる仮想通貨)の保有者による投票によって行われます。
投票結果はブロックチェーン上で永久的に記録されるため、不正や改ざんが起こりにくく、透明性が高い組織形態だといえます。
特徴3.性別国籍問わず誰でも組織に参加できる
DAOはネットワークにつながっていれば、性別や国籍関係なく、誰でも自由に参加可能です。
さらにガバナンストークンを保有することで、組織の運営にも携われます。
一般的な会社の場合、入社時には雇用契約を締結しなくてはなりません。
また組織に所属していても、株式を保有していないと意思決定に関与するのは難しいです。
DAOは面倒な手続きの手間を省き、誰でも組織の一員になれる気軽さが特色です。
DAO(分散型自立組織)のメリット
DAOの参加者は上下関係や出自にとらわれず全員平等のため、組織運営に関して自由に意見を述べられます。
選挙権の役割を持つガバナンストークンは、有価証券のように扱うことで資金調達にも活用できます。
さらにブロックチェーン技術によって意思決定の内容は永久的に記録されるため、公正性や公平性が担保されるのも特徴です。
組織参加者の立場が平等
DAOでは階級や役職、性別、年齢、国籍などにかかわらず、参加した者はみな平等です。
一般的な会社では入ったばかりの新参者が運営に携われるチャンスはほぼありませんが、DAOではガバナンストークンがあれば誰でも関与できます。
また匿名性も確保されており、氏名を明らかにせずとも活動できます。
参加や離脱の自由度が高いのも特徴です。
合わないと感じた時点で退社したり、同時に複数の組織に属したりできる柔軟性が担保されています。
ガバナンストークンによる資金調達が可能
意思決定時における投票権の役割を有するガバナンストークンは、資金調達の手段にも使えるものです。
STO(Security Token Offering)と呼ばれ、セキュリティトークンを有価証券のように扱い、資金調達に活用できます。
セキュリティトークンは株式や国債、社債などの一般的な有価証券に加えて、著作権のような実体のないものまで対象です。
現在ではセキュリティトークンの発行から流通まで、一気通貫で行えるデジタルプラットフォームも登場しており、誰でも迅速に資金調達できる手段となっています。
ブロックチェーン技術による公正な意思決定の実現
構成員全員が組織の運営に携わり、ブロックチェーン技術で不正も起こりにくいDAOでは公正な意思決定が実現します。
組織を作る際はルールの形成が欠かせません。
我が国でも法律や会計、税制などさまざまな分野でよりどころとなる規則が定められています。
しかし法律の制定に直接携われるのは、政治家や国会議員に限られます。
一方DAOの場合、すべての参加者がルールの形成に関与できるので、意思決定の仕組みを根底から覆す組織形態といえるでしょう。
DAO(分散型自立組織)のデメリット
DAOは現段階では法的な枠組みが整備されておらず、トラブルが生じた際、解決のよりどころがない状態です。
またセキュリティ上の脆弱性やバグに対する対応も万全ではなく、ハッキングによる情報漏洩が起きる可能性も低くありません。
さらに多くの参加者が携われる民主的な運営が確保される反面、意思決定に時間を要するリスクも認識しておきましょう。
法的な枠組みが整備されていない
DAOは誕生して間もない組織形態であるため、取引の安全性を担保する法的な枠組みが整備されていません。
DAOの基盤となるブロックチェーン技術に関する判例もほとんどなく、法的なトラブルに発展した場合に解決する方法がない状況です。
日本ではDAOの運営上で生じた争いの解決に役立つ法律が存在しないばかりか、DAOの法的根拠となる法令もありません。
一方、米国ではワイオミング州やテネシー州において、定款に示すべき事柄を示したDAO法が施行されています。
米国のDAO法によって、人の手で行われることが当然とされていた組織運営に関する業務をプログラム化し、人の手を離れてコントロールできる仕組みが構築されました。
我が国でも米国のDAO法を参考にしつつ、日本組織に適応する法令の整備を進めるべきでしょう。
セキュリティの脆弱性やハッキングリスクがある
誕生して間もないDAOは未成熟な組織であり、セキュリティの脆弱性やハッキングによって、個人情報の流出や詐欺被害に遭うリスクも小さくありません。
実際、過去にDAOを狙った大きな事件が起きています。
2016年、自律分散型投資ファンド「The DAO」は、取引基盤であるイーサリアムのブロックチェーンがハッキングを受け、仮想通貨が流出してしまいました。
攻撃者はスマートコントラクトの脆弱性を突き、攻撃を仕掛けています。
人間の手で構築したプログラミングのため、どうしても人為的なミスによるバグや脆弱性が起きるリスクはあります。
この事件ではブロックチェーンを元の状態に戻すことによって、資金を取り戻せましたが、世間に与えた衝撃や余波は大きく、DAOのリスクを浮き彫りにした事案です。
意思決定が遅くなる可能性がある
民主的な組織運営が行われるDAOでは、意思決定に時間を要するというデメリットがあります。
ルールの作成・変更は、ガバナンストークンの投票によって各参加者が合意を形成する形で行われます。
先述の「The DAO事件」でも、以前のブロックチェーン技術に戻すかどうか決定する際に参加者の合意形成が行われました。
中央集権者による専制的な判断を取り除けるのはメリットですが、その反面、合意形成に至るまで時間を要し、参加者が多いほど時間がかかることを意味します。
自由な組織と思いきや、確実にそうとは言いきれない面もあります。
慎重に話し合う時間を確保できるともとらえられますが、不測の事態へ迅速に対処できる組織とはいえないことを知っておきましょう。
主要なDAOの事例
ここまでの記事を読んで、今までにない組織形態のDAOに興味を持たれてはいませんか。
「自分も入りたい」と思っても、基盤が不安定で情報も少ない団体に入るのは怖いと感じるのが正直なところでしょう。
実際に活動しているDAOの事例を知れば、不安を払拭できるかもしれません。
新たな仮想通貨を発行したり、NFT投資を実現したりとビジネスシーンで注目すべき成果を挙げているDAOはいくつも存在します。
DAOでは米国に後れを取っている日本でも、関連団体が誕生していることは見逃せません。
ここでは、海外・国内の主要なDAO事例を紹介します。
「MakerDAO」イーサリアムのブロックチェーンを活用
DeFi(分散型金融)のプロジェクト「MakerDAO」は、イーサリアムのスマートコントラクトを利用しています。
分散型ステーブルコインを世に出した最初の組織であり、使用されるのはDaiという仮想通貨です。
今やDaiは分散型金融領域で最も流通している通貨の一種となりましたが、分散して運用できているのはイーサリアムのスマートコントラクトがあってのことです。
Daiの発行を希望するユーザーは「Vault=金庫」に担保となる暗号資産を預け入れることで、通貨を入手できます。
以前は引き換え可能な暗号資産はイーサリアムのみでしたが、リスク分散を目的にプロトコルがアップデートされてから、20以上の暗号資産が担保に活用できるようになりました。
従来の金融サービスでは証券会社や銀行などの管理機関が運営しており、サービスを利用できるかどうかは運営機関の一存による部分がありました。
DAOではプログラムのソースコードがオープンになっているため、誰の目にも審査基準が明確です。
不正が起きにくく、透明性や公正性が担保された仕組みを有しています。
参考:MakerDAO An Unbiased Global Financial System
「PleasrDAO」NFTの収集
ひとくちにDAOといっても、さまざまな目的や用途の組織があり、PleasrDAOはNFTを収集するものです。
PleasrDAOは、保有しているNFTを担保に出すことによって暗号資産の調達に成功しています。
DeFiプロトコルを利用し、かつNFT担保ローンから資金提供を受けた世界初の事例として注目されたのです。
NFTとは端的にいえば、ブロックチェーン技術を活用して、デジタルアートに所有権の概念を付したものです。
今まで代替可能な作品の一つでしかなかった芸術が、NFTを付すことで唯一無二のものに変化します。
NFTアートを担保に資金調達を行えるようになると、獲得した資金を元手にNFTの収集を続けることが可能です。
所有や売買の対象としてNFTを扱うことは珍しくありませんが、投資にも活用できるとなったら、新たな商圏やビジネスモデルが登場する可能性もあります。
「Augur」分散型予測市場プラットフォーム
Augurは参加者自身が予測市場を作れる画期的なプラットフォームです。
参加者は予測市場が提供するトピックに関して仮想通貨をベットし、予測が当たると配当を受け取るという仕組みです。
例えば「ある選挙の候補者Aは当選できるか」という議題を対象とし、参加者は「Yes」「No」を選択して自身が持つトークンを賭けます。
Augurが登場する以前にも予測市場は存在していましたが、規制を受け、市場からの撤退を余儀なくされるケースがありました。
国や地域によっては、予測市場の運営や参加が法令で禁止されている場合もあります。
予測結果の判断や配当金の支払はブロックチェーン上で自動的に行われるため、不正が生じる心配は基本的にありません。
人為的なミスによる誤送金や支払いの遅延が起こるリスクもなく、ギャンブル初心者の方でも存分に楽しめる安全性を備えています。
宝くじや競馬のように仲介業者に支払う手数料の負担もないため、今後の需要の伸びが期待できる市場です。
「和組DAO」Web3.0について話し合う日本のコミュニティ
和組DAOはWeb3.0の最新情報について議論を交わす日本発のオープンコミュニティです。
組織の目的はWeb3.0の知見を持つ日本人を増やすことで、実際にDAOの意思決定に関与する人材を育成しようと日々活動に励んでいます。
これからNFTを購入しようと検討中の初心者からWeb3.0の技術で世界に挑戦しようとしている経営者まで、幅広い層が参加しており、Web3.0に興味を持つ人を広く受け入れている組織です。
和組DAOが重視しているのは、Web3.0の体験者を増やすことです。
表面的な知識を得て理解しているふりをするのではなく、ガバナンスに参加したりNFTを購入したりといった実体験を通じて、理解を深めることを大切にしています。
現時点でWeb3.0の世界を席巻しているのは、まぎれもなく米国です。
DeFiプロトコルの多くは米国発ですし、リスクマネーのプールも潤沢です。
一方でプロダクトを開発する起業家やエンジニアの数不足が問題視されており、この分野は日本が入り込める隙がある部分だといえます。
和組DAOは知識がない初心者もあたたかく受け入れているだけでなく、知識やリソースを共有することで質の高いコミュニティ運営にも努めています。
将来的にWeb3.0関連のビジネスに携わりたいと考えているなら、和組DAOの力を借りてはいかがでしょうか。
参考:和組DAO 公式HP
社会を劇的に変えるWeb3.0とDAO!今後の動向に注目しよう
分散型・自立型組織のDAOは、インターネットの非中央集権化を目指すWeb3.0と親和性がある組織形態です。
大規模プラットフォーマーが権力を握る世界から、それぞれのプレーヤーが権利を持つ時代へと変化することで、今まで当たり前とされていた事実が覆るようなパラダイムシフトが起きるかもしれません。
DAOとWeb3.0が合わさり新たな世界を切り開ければ、ビジネスの可能性も広がるでしょう。
つまりDAOは、新たな働き方やキャリアの道筋を提供する概念でもあります。
DAOは非許可型の組織なので、誰の許可を得ずとも自由に作れます。
将来的にDAOに所属するキャリアが一般的な未来が到来するかもしれません。
「将来有望なDAOの会社を探している」「Web3.0を活用したビジネスに携わりたい」という方は、フォルトナベンチャーズで転職支援を依頼してみるのはいかがでしょうか。
フォルトナベンチャーズはハイキャリア人材の転職支援に強みを持つ転職エージェントです。
東大・京大など日本トップクラスの大学を卒業し、スタートアップ領域で活躍してきた人材の転職支援において多数の成功実績を有します。
ハイキャリア人材エージェント大手「ビズリーチ」で2年連続最高賞を受賞したヘッドハンターも在籍しており、自信をもって皆さんに適した転職先を紹介しています。
豊富なネットワークを駆使して、DAOやWeb3.0に取り組む最先端のスタートアップも見つけられるよう最大限の努力を尽くしますので、ぜひお気軽にご相談ください。