コラム

フードテックとは?意味や将来性・SDGsとの関連性・ビジネス領域を解説

食糧不足やフードロス、労働力不足などの問題を解決するフードテックが注目されています。

最新のテクノロジーにより、幅広い食品関連サービスに変革をもたらす取り組みです。

本記事ではフードテックの概要や重視される背景、将来性について説明し、ベンチャー企業の事例についても解説します。

フードテックとは?

フードテックとは食を表すフード(Food)と、テクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉です。

最新のテクノロジーにより新しい食品を開発したり、流通を変えたりする技術です。

今後も成長が期待される食の産業分野において、大きな注目を集めています。

ここでは、フードテックの概要や重視される背景について解説します。

SDGsのひとつ「フードロス対策」達成の鍵

フードテックは、国連で決定した17の国際共通の目標である「SDGs」に関連しています。

SDGsでは目標のひとつとして、2030年までに世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させ、フードロスを減少させるというゴールを設定しています。

テクノロジーを活用して食の問題を解決しつつ食の可能性を広げるフードテックは、SDGsが目標に掲げる「フードロス対策」を達成する鍵として重要視されているのです。

フードテックが重要視される背景 

フードテックが重視される背景には、食糧不足や飢餓問題・フードロスの増加など、さまざまな要因が絡み合っています。

世界人口が増加するに伴い、増え続ける食糧の需要に供給が追いつかないという問題があります。

2055年に世界の人口は100億人を超えると予想されており、食糧不足を解消する方法としてフードテックに期待が寄せられているのです。

また、年々深刻化している発展途上国の飢餓問題も、フードテックへの注目と無関係ではありません。

飢餓問題がある一方で先進国ではフードロスが増加しており、食糧のバランスが均衡を欠いているのが実情です。

フードテックでは食材を長期保存する方法の研究・開発も進んでおり、食のアンバランスを解決できる可能性があります。

安全な食事へのニーズが高まっていることも、フードテックが注目される背景のひとつです。

フードテックには食品の傷みなどを診断できるツールがあり、食中毒や異物混入などを防止し、食の安全性を確保できます。

フードテックは人材不足を解消するためにも重要です。

少子高齢化による労働人口の減少は、農業や漁業などの第一次産業や食品製造業などにも大きな影響を与えています。

フードテックでは生産工程にロボットやAIを導入することで省人化や無人化を実現できれば、少ない人数でも効率のよい生産が可能です。

フードテックの将来性

フードテックの市場規模は拡大しており、これまでにない新たなビジネスの創出も期待されています。

フードテック分野での技術開発では世界に立ち遅れていた日本ですが、近年ようやく本格的な取り組みを開始したところです。

また、家電やITなどの異業種もフードテックに参入を始めています。

ここでは、フードテックの市場規模や将来性、ベンチャー企業の取り組みなどをみてみましょう。

市場規模は700兆円にのぼる見込み

フードテックの市場規模は着実に拡大を続けており、世界では2025年までに約700兆円規模になると試算されています。

これまでアメリカや中国などがフードテック分野へ多額の投資をしているなか、日本はフードテックの開発や活用に積極的ではありませんでした。

出遅れている状況に危機感を持った日本政府は、フードテックを活用して国際競争力を高めるための取り組みを開始しています。

その一歩として2020年10月、農林水産省は産学官連携による「フードテック官民協議会」を立ち上げました。

家電やITなどの異業種も参入

フードテックは食品関係の企業だけでなく、家電メーカーや住宅設備メーカー、IT企業など異業種の参入も可能にしています。

食の可能性を広げるために自社の技術を他社と共有し、新たなサービスも生み出す取り組みも行われています。

例えば、キッチン家電向けにレシピを提供するスマートキッチンサービスも登場しました。

サイトに投稿されたレシピのデータベース情報を機器が読み取り、キッチン家電に提供するサービスです。

フードテックは今後も異業種との連携を加速させ、新たなビジネスチャンスへと広がる可能性を秘めているといえるでしょう。

ベンチャー企業のビジネス創出においても期待されている

フードテックは、ベンチャー企業のビジネス展開でも大きな期待を寄せられています。

食品宅配を行うオイシックス株式会社は、日本で初めてフードテック関連への投資・提携を専門に行う投資部門「フードテックファンド」を立ち上げました。

栄養学や味覚に関する研究・技術、食とヘルスケアに関する研究・サービスなど、フードテック分野に特化した投資・提携を目指しています。

フードテックは代替食の研究開発や生産工程のICT活用など扱う分野が幅広く、多くの企業にビジネスのチャンスを与えています。

食の生産や加工、流通とは直接関連のない企業でも、今後開発する技術やサービスがフードテックに関わる可能性は大いにあるでしょう。

フードテックが参入している6つのビジネス領域

フードテックにより最新テクノロジーが生み出され、食品製造の工程や食品そのものが変化しています。

製造工程ではフードロボットが普及し、食品では代替肉が開発されています。

異常気象や害虫などに左右されない植物栽培もフードテックの代表的な技術です。

フードテックが参入している6つのビジネス領域について、みていきましょう。

1.ロボット

フードテックの参入により、フードロボットの普及が進んでいます。

フードロボットとは、飲食店や調理施設などで調理・配膳・後片付けなどを行うロボットです。

実証実験が行われ、すでに実用化している外食産業もあります。

食品工場など製造工程ではロボットの活用が一般的となっていますが、細かい作業の多い飲食店での活用はまだ限られています。

しかし、人材不足と食の安全性の観点からフードロボットの需要は高く、今後はより広範に普及していくことが予想されるでしょう。

2.代替肉

食品そのものに対するフードテックの最新テクノロジーが、本物の食用肉に近付けた代替肉です。

植物原料や培養技術で作られた代替肉によって、本物の肉を食べなくても栄養を摂取できるようになります。

代替肉は大きく「植物性タンパク質の代替肉」と「培養肉」の2種類に分けられます。

植物性タンパク質の代替肉で代表的なのは大豆ミートで、これまで日本でも大豆を使った代替肉は利用されていました。

近年は、ひよこ豆やえんどう豆をベースとした代替肉も多く登場しています。

アメリカでは「ビヨンド・ミート」や「インポッシブル・フーズ」など代替肉のベンチャー企業が台頭しており、マクドナルドやケンタッキーといった大手チェーン店でも採用されています。

培養肉とは、肉の細胞の一部から作られた人工的な肉です。

環境に優しく衛生管理もしやすいなど多くのメリットはありますが、生産コストが高いというデメリットもあります。

市場に広がるのは、今後のテクノロジーの進化を待たなければなりません。

培養肉については、細胞培養の項目で詳しく解説します。

3.植物栽培

食糧を生産する農業は、異常気象や害虫など外的要因の影響を受けやすいという問題があります。フ

ードテックは、そのような外部の要因に左右されない植物栽培が可能です。

フードテックによる植物栽培はこれまでのようなビニールハウスによる栽培ではなく、太陽光をLEDで、土を培養土などで代用して内部環境を徹底管理する方法です。

最新テクノロジーにより光や培養液・温湿度などをコントロールし、野菜を大量に生産できます。

食糧の生産が天候や害虫に左右されず、砂漠など栽培に向かない場所でも農業の推進を可能にする技術です。

4.細胞の培養

細胞培養とは動植物の細胞を抽出し、培養させる技術です。

細胞培養により、本物と変わらない肉や魚、野菜などの食糧を生産できます。

アメリカでは、設立まもないベンチャー企業が哺乳類細胞の培養による牛乳の開発に成功しています。

また、代替肉をより本物に近づける代替脂肪の開発も進められており、シンガポールでは細胞培養により魚由来の脂肪を開発するベンチャーも登場しました。

近年は住友商事やネスレなど、日本の大手企業が欧米の細胞培養肉ベンチャーへの投資や共同開発・事業開発を進めており、細胞培養肉市場が形成され成長していくと予想されています。

5.流通

フードテックは、流通の領域にも変化をもたらしています。

従来の食の流通構造では、生産者から卸売市場、製造・小売・外食事業者を経由して消費者へ届けられるというのが大きな流れです。

生産物の種類によって市場の形態や輸入率などに差はありますが、多くの段階を経て多数の業者が関わるという点では共通しています。

この過程では食糧廃棄が多く、非効率的な業務が生産性を下げているのが現状です。

また、流通事業者間で情報が分断され、異物混入などの事故が発生した際に原因が特定しにくいという問題もあります。

フードテックではICTを活用し、これらの問題を解決します。

生産者から必要な食材を必要な量だけ仕入れられるため、配送状況を確認できるなどニーズに合わせた流通が可能です。

例えば、既存の流通構造では難しい「少量」「生鮮食品」といった配送を可能にし、ICTの活用により飲食店に効率よく届けるサービスが提供されています。

また、登録飲食店のメニューを一般の配達員が届けるデリバリーサービスも、食の流通領域を変える取り組みとして注目されています。

フードテックでICTネットワークが普及すれば、大量仕入れができない小さな飲食店や個人でも、求める食材を手軽に手に入れることが可能になるでしょう。

6.外食

外食産業もフードテックが大きく参入している領域です。

フードテックの外食産業における取り組みのひとつに、フードシェアリングがあります。

フードシェアリングとは、食品廃棄を防ぎたい飲食店や小売店・生産者と、食材を必要とする人・団体をマッチングするサービスです。

まだ飲食できるにもかかわらず廃棄される確率の高い調理品や食材について、安く提供・入手することを目的としています。

食料が有効に行き渡り、フードロスをなくすことでSDGsの目標を達成できるでしょう。

フードテックがいち早く導入されている最新のサービス事例

フードテックへの取り組みは、さまざまな企業で推し進められています。

代替肉や新食材の開発、陸地のプラントで魚を育てる陸上養殖、IT技術を活用したレストランテックなどの分野で、いち早く最新のサービスが提供されています。

ここでは、フードテックを導入した最新のサービス事例について分野別にみていきましょう。

代替肉や新食材の開発

大豆などの植物由来の原料で作った代替肉の開発で成功しているのが、アメリカのBEYOND MEAT(ビヨンド・ミート)です。

2009年に設立され、マイクロソフト社のビル・ゲイツが出資していることでも注目されています。

2019年には代替肉製造会社として、世界で初めてナスダックに上場しました。

また、フードテックで開発している食材は代替肉だけではありません。

株式会社ユーグレナは、植物と動物の両方の性質を持ち、栄養価が高いミドリムシを使った食材の開発に成功しています。

また、株式会社アイルでは、原材料が100%野菜のシートを開発して注目を集めています。

シートは長期保存が可能であり、災害に備えたローリングストックや食糧危機にも貢献できる商品です。

陸上養殖

陸上養殖とは、陸上の人工施設で魚を育てる技術です。

海から離れていても魚介類の養殖ができ、飼育環境をきめ細かく管理できるため生産性も向上します。

消費地の近隣で養殖することで、新鮮な魚を迅速に届けることも可能です。

陸上養殖に取り組むベンチャーとして注目されているのが、2020年に設立された「さかなファーム」です。

「日本の陸上養殖を世界で戦える産業に」というミッションを掲げ、魚の生産から商品の企画・販売までを手がけています。

自治体や企業とのプロジェクトや、養殖プラットフォームのグローバル展開も計画しています。

レストランテック

レストランテックとは、IT技術を活用して飲食店のサービス改善や運営をサポートすることです。

フードテックのひとつであり、特に外食サービスに特化した取り組みを指します。

レストランテックの種類は、以下のとおりです。

  • インターネット上で予約・テーブル管理ができるシステム
  • デジタルメニューや待ち時間の管理
  • 調理ロボットや設備の自動化
  • 人員配置や勤怠管理

レストランテックを手がけるベンチャー企業は、数多く生まれています。

そのうちのひとつ、株式会社diniiはモバイルオーダーアプリを提供する会社です。

モバイルオーダーで顧客情報を活用し、リピーターを増やす仕組みを提供しており、飲食業界のBtoB企業として注目されています。

フードテックのメリット

フードテックは食品業界や消費者、さらには地球環境に多くのメリットをもたらします。

まず、食糧の生産が安定することは大きなメリットです。

天候に左右されない生産方法の確立や代替肉・新素材の開発などで、食糧不足や飢餓問題を解消できます。

また、フードテックの活用で生産や流通の無駄をなくすことで、食材の売れ残りや廃棄を減らすことも可能です。

フードロスを削減し、SDGsの目標達成につながるでしょう。

生産工程にフードテックを取り入れることで、人材不足の解消も可能です。

農業や漁業などの一次産業に携わる労働者は年々減少しており、人手不足を解消する手段としてフードテックが注目されています。

フードテックで食の安全を確保できるのもメリットです。

食中毒や異物混入、産地偽装といったトラブル防止にフードテックのテクノロジーが役立ちます。

フードテックでは食品を「誰が」「どこで」生産し、加工したかといった情報を効率的に管理でき、万が一トラブルが起きた場合でもスムーズな原因究明が可能です。

フードテックのデメリット

フードテックにはデメリットな側面もあります。

まず、取り組みに多くのコストが必要になることが最大のデメリットです。

システムを開発するための設備費や人件費、運用に必要な管理費が必要になり、太陽光の代わりとなる光源や雨水の代わりとなる水道代など、光熱費にも多額の費用がかかります。

そのため、本格的な取り組みを始めているのは一部の大手企業がメインであり、ベンチャー企業が新たに事業展開するには資金面でのハードルは高いのが実情です。

国内の代表的なフードテックベンチャー企業

フードテックの市場規模は拡大しており、日本でもようやく大手企業を中心に本格的な取り組みが開始されています。

フードテック分野に乗り出すベンチャー企業も数多く、資金を調達して大掛かりな事業展開をする企業も少なくありません。

ここでは、国内でフードテックのさまざまな分野で活躍するベンチャー企業を3社紹介します。

ベンチャー企業1. デイブレイク株式会社

デイブレイク株式会社は、冷凍テクノロジーとインターネットでフードロス削減に取り組むベンチャー企業です。

食材の細胞を破壊せず新鮮なまま冷凍し、美味しさを損なわずに解凍する「特殊冷凍ソリューション」を提供しています。

同社では「特殊冷凍機械販売」と「特殊冷凍コンサルティング」「業務用特殊冷凍食材販売」の3つを事業の軸に、ハード面の保有テクノロジーとソフト面の保有ノウハウの提供が可能です。

冷凍事業に参入する企業のパートナーとして、機械選定から納品後の冷凍品質最大化、冷凍ビジネスの成功までをサポートしています。

参考:DAY BREAK

ベンチャー企業2. 株式会社スプレッド

株式会社スプレッドは、植物工場の分野で注目されるベンチャー企業です。

業における諸問題の解決や食料供給の安定化を目指し、研究開発から技術開発、商品開発、生産、流通、販売までをワンストップで行っています。

なかでも消費期限を延ばすカット野菜の加工技術や、健康と環境を基軸とした独自ブランドが注目されています。

同社は2007年、当時では世界最大規模である日産21,000株のレタスを生産する人工光型植物工場「亀岡プラント」を建設し、6年間の試行錯誤を繰り返して独自の栽培・生産管理技術を確立しました。

2013年には大規模植物工場では難しいとされる黒字化を達成しています。

参考:SPREAD

ベンチャー企業3. ルートレック・ネットワークス

IoT技術により、持続可能な農業と社会の確立に貢献するベンチャー企業です。

AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」を開発し、全国の農家や農業試験場に累計300台以上提供しています。

インターネット経由での安定稼働を可能にするIoT技術とAI技術が潅水と施肥を自動化し、農業の負担を軽減しながら、タイマーや手動では不可能だった精密な少量多頻度の潅水と施肥を実現しました。

ゼロアグリは気候の異なる地域、異なる土壌、異なる作物での栽培データを集めて改良を重ねており、本格的な社会実装を目指しています。

参考:ROUTREK NETWORKS

めざましい成長を遂げるフードテックの今後に期待

フードテックは食糧不足や飢餓問題、フードロスなど現代が抱える多くの課題を解決するものとして注目を集めています。

近年は日本の企業も本格的な取り組みをはじめ、フードテックの新規事業を展開するベンチャー企業には多額の投資も行われています。

市場規模は急速に拡大しており、フードテックを扱うベンチャー企業は今後も増えていくことが予想されるでしょう。

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