革新的なコンテンツを生み出す手法として、ジェネレーティブAIが注目されています。
従来のAIとは異なり、データが十分でない領域でも活用できる画期的な技術です。
本記事ではジェネレーティブAIの概要や開発にもたらす効果、活用の領域や事例をご紹介します。
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ジェネレーティブAIとは?
ジェネレーティブAIとは、コンテンツやモノについてデータから学習し、これまでにない新しい創造を可能にする機械学習の手法です。
従来のAIが既存のデータから学んで予測するのに対し、ジェネレーティブAIはデータの少ない領域で新たな創造ができる点に違いがあります。
ここでは、ジェネレーティブAIの概要やAIとの違いを解説します。
新しいアウトプットを生み出す機械学習手法
ジェネレーティブAIはデータから学習し、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法です。
アメリカのIT系調査会社であるガートナー社が2022年に発表した「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」にリストアップされ、ビジネスの成長を加速させる新しい技術として注目を集めました。
ジェネレーティブAIは近い将来、市場に生産性革命をもたらす可能性があると期待されおり、研究・開発が進められています。
クリエイティブや製造分野、ヘルスケアなど、幅広い産業で実証実験が行われている状況です。
従来のAIとの違い
ジェネレーティブAIは従来のAIとは異なります。
AIとは人工知能のことで、知覚や思考など人間の知能をコンピュータ上に再現する技術です。
従来のAIが大量のデータから特徴を学んで予測する技術であるのに対し、ジェネレーティブAIはデータの生成を目的としています。
そのため、データがない領域においても、探索や計画を行って新たなアウトプットを生み出せる点が特長です。
例えば、2022年7月に公開された「Midjourney」と呼ばれるジェネレーティブAIは、画像のキーワードを入力することによって、数十秒後に4枚のイラストが生成されます。
AIはキーワードに合致する画像を生成するのではなく、既存の画像を学習し、新たな画像を生み出しています。
絵心がなくてもオリジナルのイラストを作成でき、そのクオリティが高いことも特徴です。
ジェネレーティブAIはまったく新しいコンテンツやデザインを生み出せるため、データが少なく従来のAIでは対応が難しかった分野でも応用できると期待されています。
ジェネレーティブAIが製品開発にもたらす効果
ジェネレーティブAIは、製品開発に大きな影響をもたらすと期待されています。
革新的なデザインを創出し、多くの設計案を導き出せるためです。
条件変更があっても迅速に代替案を出すことができ、作業の工数を減らすという効果もあります。
ジェネレーティブAIが製品開発にどのような効果をもたらすのか、詳しくみていきましょう。
革新的なデザインを創出する
ジェネレーティブAIは制約条件を設定し、その範囲内でさまざまなデザインを検討できるもので、革新的なデザインの創出が期待できます。
視覚的なデザインの設計をデザイナーが行う場合、知識や過去の経験による先入観から生み出される可能性があります。
知識や過去の経験に基づいたデザインは、良質ではあるものの革新的なアイデアは生まれにくい傾向にあるでしょう。
一方、ジェネレーティブAIはそのような先入観による制約がなく、多様なデザイン案をもたらすのがメリットです。
数多くの設計案を導く
ジェネレーティブAIによる製品開発では、まず材料や重量・コストなど、設計に必要な制約条件を設定します。
設定後、ジェネレーティブAIは条件の範囲内において、許す限りの設計案を短時間で数多く作り出します。
設計者は大量の設計案のなかから最適なものを選べるだけでなく、適したものがなければ制約条件を見直して再検討を促すことも可能です。
作業の工数を減らす
従来の設計手法では、制約条件を成立させる設計案を設計者自身で考えなければならず、検討する量には限界がありました。
設計案が条件を満たしているかを検証することにも多くの工数が必要です。
ジェネレーティブAIであれば、実現可能な設計案を短時間で大量に導き出すため、作業の工数を減らすことができます。
条件が変わった場合でも速やかに代替案を出せるため、設計を変更するための工数も削減できるのがメリットです。
コスト削減につながる
ジェネレーティブAIのデザインでは、部品の質量を最小限に抑えられるのもメリットです。
質量が減ることで使用する原材料も少なく、コストを抑えられます。
製造工程が短くなることで、時間にも余裕ができます。
その分もアイデアの検討に時間をかけられるため、より良い製品の開発につながるでしょう。
さらに、材料の条件変更があった場合は製品の品質やコストに影響し、全体を一から再検討する必要があります。
ジェネレーティブAIであれば条件を変更する場合でも迅速に代替案を提示できるため、作業工数を減らすだけでなく材料削減も容易です。
ジェネレーティブAIの課題
メリットの多いジェネレーティブAIですが、課題も少なくありません。
フェイクコンテンツが作成されるリスクもあり、フェイクの精度が上がればそれに対応する手段が必要になります。
また、クリエイターの仕事をジェネレーティブAIが行えるようになることで、収入や雇用にも影響するでしょう。
ジェネレーティブAIが抱える課題について解説します。
不正利用のリスクがある
ジェネレーティブAIはフェイクニュースや詐欺サイトなど、偽情報の生成や不正に利用されるというリスクがあります。
例えばコラージュ画像を作成し、本人が実際にはしていない言動の捏造も可能です。
ジェネレーティブAIの技術が高いほど人の目による判別が難しくなり、新たな判別方法が必要になるでしょう。
SNSの普及で情報が拡散されるスピードは早く、真偽に関係なく情報が広がってしまえば、発生する損害・ダメージは大きいものがあるでしょう。
ジェネレーティブAIが適切に利用されるためには、利用する人の倫理観に依存する部分が大きいのも事実です。
ジェネレーティブAIが広く普及するためには、倫理観の向上やフェイクを見極めるリテラシーが求められます。
クリエイターの収入・雇用に影響する
ある程度のレベルにあるクリエイティブはジェネレーティブAIが代用できるようになり、それまで創造を担ってきたクリエイターの収入や雇用に影響を及ぼす可能性があります。
ジェネレーティブAIに自身の作品が学習されることは、クリエイターのアイデンティティを失うことにもなりかねません。
そのため、作者の名前を明記する、来歴を記録して自分の作品に「Do Not Train(学習禁止)」のタグを付けるなどの自衛策も行われています。
権利関係に問題が起きやすい
ジェネレーティブAIが自動生成したコンテンツは、著作権法に触れる可能性があります。
AIの開発者は、AIが画像を使って学習することはアメリカの著作権法における「フェアユース」や日本の著作権法における「情報解析」にあたり、著作権侵害にはあたらないという見解です。
一方、アーティスト側は、無断・無償による作品利用に反発もあり、アメリカでは訴訟に発展しているケースも少なくありません。
また、ジェネレーティブAIでクリエイターの作品をブラッシュアップした場合、著作権が誰に帰属するかも問題になります。
いずれにせよ、ジェネレーティブAIがさらに普及する将来において法整備の必要性は高いといえるでしょう。
また、AIの学習データに個人情報が含まれる場合、プライバシーの侵害が発生したり、個人情報を含むコンテンツが生成されたりするなど、セキュリティ上の問題が起こる懸念もあります。
ジェネレーティブAIの活用事例
ジェネレーティブAIは住宅のレイアウトデザインや自動車のコンセプトデザインなど、さまざまな領域で活用されています。
海外では開発に力を入れている国も多く、画像や動画、文章などのコンテンツ生成に関する技術が進んでいる状況です。
ジェネレーティブAIの活用事例や、日本・海外での取り組みについてみていきましょう。
住宅のレイアウトデザインに活用
ジェネレーティブAIは、住宅のレイアウト設計に活用されています。
従来は担当する営業や設計士がプランを作成し、プランの内容が優れているかは営業や設計士のスキルにかかっていました。
この作業を、ジェネレーティブAIに置き換える取り組みが行われています。
実際にジェネレーティブAIを取り入れている住宅メーカーもあります。
建物を利用する人の使い方や好み、眺望などの条件を設定することで、数多くの設計案が導かれる仕組みです。
豊富な設計案が提示され、より条件に合い、斬新なレイアウトが得られるようになっています。
自動車のコンセプトデザインに活用
イギリスの自動車メーカーでは、レーシングカーの部品設計でジェネレーティブAIを利用してレーシングカーの軽量化に成功しています。
ジェネレーティブAIで作られたホイールは美しいデザインを保ちながら約35%の軽量化を実現し、わずか570kgのストリートリーガルレーシングカーの製造に成功しました。
また、韓国の自動車メーカーは「歩く自動車」のコンセプトデザインに、ジェネレーティブAIを採用しています。
「歩く自動車」は、人が歩くように段差を乗り越えられるといった、自動車の新しい可能性を追求した乗り物です。
強度や重量、コストなどの制約条件が設定され、製品化のアイデア創出が進められている段階です。
日本と海外における活用事例の違い
日本では、産業技術総合研究所 (AIST) が「人工知能研究センター」を設置し、データが少ない領域でも機能する次世代のAI・ジェネレーティブAIの可能性について、さまざまな研究を進めています。
例えば、知識を取り入れて酵素を自動設計する技術や、花火大会の人流を計測しモデル化・最適化できる技術の研究が行われています。
コロナ禍により人々の動きや動線の制御は重要性を増していますが、そのために必要な人流の解析は、従来のAIでは難しいテーマのひとつです。
ジェネレーティブAIの技術を用いることで、実際の現場に活用することが模索されています。
海外では、米国や中国などがジェネレーティブAIの開発に力を入れています。
特に画像や動画、文章などのコンテンツ生成に関する技術が進んでおり、テキスト記述から画像を生成する人工知能プログラム「DALL・E (ダリ)」や、高性能な言語モデル「GPT-3 」などの有名な事例があります。
また、オープンソースとして提供された画像生成AI「Stable Diffusion 」は、画像生成分野において革命的な変化をもたらしました。
開発したスタートアップ 「Stability AI 」は、2022年に1億100万ドルの資金を調達しています。
ジェネレーティブAIの領域
ジェネレーティブAIは幅広い領域で活躍します。
その多くは画像や動画など視覚的な領域ですが、文章を書く、記事を要約するといったテキストの分野でも利用されています。
また、合成音声でゼロからメディアを作成するなど、音声の分野でも活躍している状況です。
ジェネレーティブAIの4つの領域について、みていきましょう。
画像
画像生成AIでは、絵の修正やオブジェクトを追加するだけでなく、ゼロから絵を作成することもできます。
また、2Dの写真から3Dモデルを生成したり、数十枚の静止画を数秒で学習し、3Dシーンをレンダリングすることも可能です。
画像生成AIは今後も進化し、実用に耐えうるレベルのデザインや、プロのデザイナーもしのぐようなプロダクトデザインが可能になると予想されています。
動画
動画の領域でもジェネレーティブAIが活用されています。
ゼロからシーンを作成する、既存の映像を新しい映像に変換するといった利用が可能です。
2022年に「DALL・E2」が発表されてから画像生成AIが急速に広がり、画像やテキストの情報をもとに新しい動画を生成する技術が登場しています。
2023年3月には「Stable Diffusion」の開発に携わったAIスタートアップが、テキストからビデオクリップを生成する画像生成AIを公開しました。
将来は、第一線で活躍するクリエイターを超える量と質の動画生成が可能になると想定されています。
音声
ジェネレーティブAIでは、合成音声を使ってゼロからメディアの生成も可能です。元の声の性質を維持しながら、自動的に別の言語で読み直すこともできます。
ゼロから生成できるという特性を活かし、ニュースやコマーシャルの音声など独自の音声が必要になる場合や、長い音声を必要とするシーンに利用できると予想されています。
テキスト
テキストのジェネレーティブAIで有名なのが、「ChatGPT」です。
言語モデル「GPT-3.5」をベースにしているAIで、入力した質問に対し、人間のように自然な対話形式の回答がかえってきます。
日本語の質問では、英語に翻訳したのちに生成した文章を英語から日本語に翻訳するというプロセスを経なければなりません。
それにもかかわらず、文章には高いクオリティが保たれています。
ChatGPTはインターネット上にある過去の情報を学習しており、幅広い知識に対応できます。
文章生成やテキストの要約、翻訳にも対応可能です。
報道によると、中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は、ChatGPTに似た対話型AIサービスを投入すると伝えられています。
将来の検索機能はキーワードを入力してサイトを探し回るのではなく、ChatGPTのように質問に対し直接回答してくれる形式になることも考えられるでしょう。
ジェネレーティブAIがもたらす革新的な未来
ジェネレーティブAIは、従来のAIでは難しかったクリエイティブの領域で高いパフォーマンスを発揮します。
画像生成をはじめ動画やテキスト、音声の領域で活用が進められ、クリエイティブ性の高いコンテンツを生成できるのが特徴です。
革新的なアイデアの創出や設計工数の削減など、製品開発にもたらすメリットは少なくありません。
今後の市場に生産性革命をもたらすと注目されています。
ジェネレーティブAIに関わる企業は、今後もスピーディな成長が期待できるでしょう。
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