コラム

人型ロボットとは?歴史・開発の最前線・今後の可能性などを紹介

人型ロボットは歩いたり会話したりなど人間に似た動作が可能な機械です。

近年は技術の進歩によって、空気を読んだ会話ができるほか、アクロバティックな動きをする人間に近い存在へと進化しています。

将来的には介護ロボットや産業用ロボットとして、すべての人の生活に不可欠なものになる可能性もあるほどです。

今回は人型ロボットの特徴や歴史、研究開発の最前線、今後の可能性について紹介します。

人型ロボット(ヒューマノイドロボット)とは

人型ロボットは二足歩行ロボットのように、外見や動作が人間と似たように作られた機械です。

近年は人工知能の急速な発達により、人との会話や感情を読み取れるモデルも開発されています。

従来の二足歩行ロボットにおいても、機械特有のよろよろした動きが改善され、人間に近いスムーズな動作が可能なレベルにまで進化を遂げています。

効率化や自動化といった元々ロボットに期待されていた機能から脱却し、人間らしさまで備えるようになりつつあるようです。

ビジネスや研究だけでなく私たちの日常生活にも活躍の場を広げており、人型ロボットの開発・推進は多方面で注目を集める分野となっています。

空想の世界から始まった人型ロボットの歴史

人型ロボットの開発は、SFに出てくるような存在を現実化しようという試みからスタートしています。

当初はエンターテイメント的な活用がメインで、人々の見物を誘うものでした。

技術の進歩によって、人間とのコミュニケーションが可能なモデルや、産業分野で作業に従事するものも登場しています。

人型ロボットの開発がどのような変遷を辿ってきたのか、簡単に解説します。

人々の強い憧れから始まった人型ロボットの構想

ロボットと一括りにしても、ビジネスや学術、芸術などそれぞれの世界において定義は異なります。

多くの方にとって身近なのは、物語や映画で出てくるスーパーマンのような憧れの存在でしょう。

現実で最初に人型ロボットが作られたのは1928年のことです。

人類初のロボットは鋼鉄製で非常に大型、重さが100kg以上あるものでした。

その後も人型ロボットの開発は行われてきましたが、エンターテインメント分野での普及がメインで、実用的なジャンルでの推進は進みません。

実用性の観点ではアーム型の産業ロボットのようなモデルが適しており、人型である必要性が低かったためです。

ASIMO(アシモ)のような人の形をしたロボットが登場

20世紀後半から21世紀にかけて人型ロボットの開発が再燃します。

ホンダのASIMO(アシモ)のように、自由な動きや簡単なコミュニケーションが取れるモデルも登場し始めました。

しかし、一つひとつの動作が遅いため実用的な分野での普及が進まず、主にプロモーションにおいて活用されていました。

たとえばパフォーマンスをしたり、ペット型のような人々の笑顔を誘う存在としての役割です。

ペッパー(Pepper)登場以来、日常生活でみられるように

近年はソフトバンクのペッパー(Pepper)のような、対話型の人型ロボットが登場しています。

店舗の入口や商業ビルの受付など日常生活で見かける機会が格段に増えており、ロボット社会の到来を感じられます。

愛嬌あふれるコミュニケーションを武器に、エンターテインメントでも活躍しているのが特徴です。

産業分野における人型ロボットの台頭もいよいよ現実味を帯びてきました。

労働現場でロボットを導入し、今まで人間が従事していた作業を代わりに行ってもらいます。

人型ロボットに置き換わることで、人間は単純作業から開放されます。

労働生産性が向上し人々は今まで以上に、独創的・芸術的な活動に時間を使えるようになるでしょう。

日進月歩で進化する人型ロボットの技術動向

日進月歩で進化する人型ロボットの世界では、次々に新たな技術が登場しています。

たとえばバク宙をしたり、雪の中でもつまずかずに走り続けられたりする高い運動能力を持つモデルも出ています。

YouTubeでアクロバティックにスポーツをする動画が公開され、驚異的な視聴回数を記録しました。

ほかにも、雑談で空気を読めるユニークなロボットも出てきました。

自分から質問をして、ちょうどよいタイミングで話を切り上げるなど、人間と同等の自然なコミュニケーションが可能です。

実用面では介護用ロボットとしての用途が期待されており、老人ホームや介護施設で人型ロボットが、入居者と日常会話をする光景が見られる日もそう遠くはないでしょう。

産業ロボットでは人間の腕や手の形を模したロボットアームの開発が進行中です。

5本指でやわらかいものを掴むことや持ち上げることも可能なため、さまざまな分野での利活用が期待されます。

侮れない!最先端人型ロボット「Optimus」の技術革新

「ロボットだから作業の代替ができるくらいでしょ」と侮ってはいけません。

人型ロボットの世界では技術革新が日々起きています。

たとえば、テスラの最先端人型ロボット「Optimus」は遥かな可能性が期待されています。

現在ではまだ試作品の段階にとどまりますが、将来的には人々の生活に必須のものとなるかもしれません。

Optimusの特徴や今後の可能性、課題などを紹介します。

テスラのOptimusは深遠な研究の結晶

「Tesla AI Day 2022」ではOptimusのプロトタイプがすり足で動いたり、手足を振り上げたり、腰から体を折り曲げるといった動作を見せました。

一見すると地味に見えますが、テスラの深遠な研究成果が組み込まれた自信作です。

たとえば、筋肉のような機能を果たすアクチュエーターはロボット全体で6つ使用しています。

自動車の駆動ユニット設計チームが、コスト・製造の容易さ・速度・質量・効率などさまざまな観点を考慮のうえで出した数字です。

ほかにも、人間の膝を模した複雑な4本棒の関節構造をはじめ、最新技術をふんだんに取り入れています。

期待されるOptimusの可能性

Optimusは将来的に人間に代わって買い物をしたり、生産ラインできつい肉体労働を行ったりする存在になるかもしれません。

実用化にはまだ数年の期間を要するとみられていますが、うまくいけば自動車やスマートフォンのように生活必需品となる可能性も十分あります。

アナリストからは「2020年代後半にはOptimusが株価のけん引役になる未来が到来しても不思議ではない」との声が寄せられています。

将来的に数十億、数百億の市場価値を持つ可能性も秘めた重要な存在です。

Optimusの今後の課題

Optimusの課題は自動車と異なり、すべての工程でAIが必要になることです。

自動車の場合、運転するのは人間のためAI技術の搭載は電気自動車の販売後でも間に合います。

一方、自律の必要がある人型ロボットは、はじめからAIが十分に機能しなければいけません。

現在のAI技術は現実世界における膨大な量のデータをパターン化して、微妙なニュアンスの理解も伴うような複雑な判断も可能になっています。

しかし、ロボットが遭遇するシチュエーションは非常に多種多様で、現実に起きた事象を取り込むだけでは補いきれない可能性が高いです。

各家庭の環境は家によって異なりますし、オフィスや商業用ビル、店舗なども考慮すると多様性の規模は甚大です。

テスラ社は上記課題の克服法として、テスト運用によって訓練データを得る方法を検討しています。

十分なデータを蓄積できれば、飛躍的な進歩を遂げることも可能でしょう。

人型ロボットに期待される役割

人型ロボットに期待される役割は工場での単純作業や、人間との端的な意思疎通などにとどまりません。

今後は意図を汲み取った自然な会話を実施することや、災害現場で危険な作業に従事するといった活躍をみせることでしょう。

人間的で温かみのある言動が可能になるうえに、人命救助にも役立つとなれば価値は非常に高いです。

具体的に人型ロボットはどのように成長するのか解説します。

人間との自然なコミュニケーション

人型ロボットのコミュニケーションというと、片言や受け答えがズレるなど、どこかぎこちなく不自然なイメージを持たれがちです。

現在はAIやロボットに関わる技術が進歩し、限りなく人間と近い言動が可能になりました。

簡単な会話なら問題ないため、商業ビルの受付や介護施設で導入されるケースも増えています。

言語的な側面にとどまらず、機械的で不気味なイメージもだいぶ和らぎつつあります。

見た目も人間に近いため、親しみや安心感を抱かれやすい存在になり、誰とでもフランクに接することができるでしょう。

人口減少によって労働者不足が深刻化するなか、ビジネスシーンで簡単なコミュニケーションを行う代替要員として注目されています。

災害現場のような危険な環境での作業

人型ロボットに期待するもう一つの役割は、災害現場のような危険な環境での作業です。

災害時に稼働する設備や機械は人が使う前提で設計されているため、「人型」ロボットの必要があります。

災害や事故の現場では、救助者側にも危険が及ぶケースが少なくありません。

救助する側の安全性を考えると、人間ではなくロボットで代替するのが有効です。

危険を伴う現場で人型ロボットが機能すれば、救助事故による死傷者の減少にも役立ちます。

【最新事例】話題の人型ロボット7選

人々の間で話題を博した最新人型ロボットの事例を紹介します。

人間と見紛うほどのリアルな表情ができたり、走る速さでギネス記録を取ったりと革新的でユニークなモデルが多数登場しているのが特徴です。

現段階ではプロトタイプにとどまるものも多く、今後のさらなる進化に注目が寄せられています。

話題の人型ロボット7種類について、特徴や最新の開発状況などを紹介します。

ソフィア|世界で初めて市民権を獲得した人型ロボット

香港の企業が開発した人型ロボットで、2017年にサウジアラビアで市民権を獲得しています。

ロボットが市民権を獲得したのは歴史上初めてのことで、世界中を驚かせました。

ソフィアの特徴は、ロボットとは思えないほど人間らしく作り込まれている点です。

会話ができるのはもちろん、微笑んだり戸惑ったりするなど表情が豊かで、言語以外の要素も使ってコミュニケーションが取れるのが魅力です。

国際的な会議でスピーチを披露することや、アメリカの有名俳優と対談するなど、国を越えて活躍の場を広げています。

Ameca |人間のリアルな表情を実現した人型ロボット

人間のように多彩な表情をもった人型ロボットです。

口元や目元のバリエーションが豊富で、喜怒哀楽を表情で表現できます。

皮膚がゴムでできており見た目も非常に自然なため、事前にロボットだと知らない人は人間と見紛うかもしれません。

顔だけでなく手足のパーツも人間と近しく作られており、ジェスチャーもできます。

頭や手足などは独立し、単体でも動かせるのも特徴的です。

パソコンやスマートフォンのようにOSをアップデートして機能を追加することもできます。

Mesmer|人間そっくりの皮膚や顔つきを持つ人型ロボット

被写体をさまざまな角度から捉えて立体的に造形するフォトグラメトリー技術を活用し、リアルな表情を作れる人型ロボットです。

手作業で塗った皮膚の塗料も、人間と同等の豊かな表情を作る手助けをしています。

あくびをする仕草や視線をそらして恥ずかしそうに笑う表情は、人間と区別がつかないほど自然。

目やほほの筋肉の動きや皮膚のシワなどが非常に人間らしく、実際に見た人からは「目が合うとドキッとする」との言葉を受けています。

さらに、手のひらを見つめたり、他人の肩に腕を回したりするなど、人間特有の動きもトレースできます。

どの動きもなめらかで、表情もリアリティを感じられる完成度の高さです。

ロボットダンスのように不自然な動きしかできないモデルは過去のものになりつつあります。

Cassie|走る速さでギネス記録をとった人型ロボット

下半身だけの二足歩行ロボット「Cassie」は、100mを24秒73で走ってギネス記録をとりました。

上半身がないといっても高速での動作が可能です。

とくに、活躍が期待されるのは、災害時や戦場のような危険な環境での活動です。

たとえば、消防士に代わって火災現場に生存者がいるか確認に行ったり、トラックで搬送に来た荷物を玄関先まで運んだりといった用途があります。

外見上は細くて繊細に見えますが、歩く姿は非常にスムーズです。

コンクリートや芝生の上、雪面など歩く場所も選びません。

後方から蹴飛ばされても、うまくバランスを取って体勢を取り戻す耐久力も備えています。

開発や研究はさらに進められ、自ら立ち上がるための腕やセンサーの実装が検討中です。

Walker|一般的なAIoTデバイスとの互換性をもつ人型ロボット

人型ロボット分野で世界的にも著名なUBTECH社が開発した、一般家庭向けの人型ロボットです。

地面の状態にかかわらず歩行可能な脚力、外部からの衝撃に耐えうる自律型のバランス力、自動ナビゲーション機能などを備えています。

くわえて人間とモノの受け渡しが可能な状況認知機能、IoT技術でほかのデバイスとつなぐ制御・接続機能、感情表現豊かに対話する機能などもあります。

具体的な使用方法はメイドロボットです。面倒で煩雑な家事をロボットに任せれば、仕事や趣味に集中できます。

ほかにも、宅配便を玄関まで取りに行けることや、牛乳を注ぐことも可能なため、両手がふさがっているときには重宝するでしょう。

非常に多彩な機能を有するWalkerですが、いまだ実用化にはいたっていません。

今後の販売開始およびさらなる機能追加に期待しましょう。

Atlas|こなれたダンスやパルクールができる人型ロボット

ボストン・ダイナミクス社が開発した、こなれたダンスを披露したり大きな段差に跳び乗ったりする人型ロボットです。

人間のような柔軟でダイナミックな動きは、見る人を惹きつけます。

Atlasは技術の進歩によってさらなる進化を遂げ、足場から足場を渡ったり平均台の上を器用に歩いたりする姿を見せています。

特筆すべきは事前に組み込まれたプログラムをこなすのではなく、状況に即した動きが可能になった点です。

適応能力の高さを示したことで、エンジニア側もより少ないプログラムの構築で済みます。

動作の試みが失敗することはあるものの、技術革新によって今まで以上に人間的かつ高精度の動きができるようになるでしょう。

Optimus|市場への影響力と今後の発展がひときわ期待される人型ロボット

2022年9月に試作機の発表会が行われたテスラのOptimus(オプティマス)は、市場への影響力や今後の発展が期待されています。

現状では素早い動きや二足歩行の実用化にはいたっていませんが、今後のプロジェクトが成功すれば、主に製造分野で革命児的な存在になり得ます。

テスラの研究者たちはより優れたロボットの開発を目指し、鍵となる複数の分野で取り組みが進行中です。

アクチュエーターやナビゲーション、認知機能、シミュレーションなどの分野において、ロボットの制御技術が磨き上げられています。

発売時期については明言されておらず、現状「優れた初期設計」にとどまります。

ダッシュボードにケーブルを通す、やわらかいプラスチック製品を慎重に扱うなどの細かい操作が可能になれば、自動車の生産工程を代替して製造分野での重要な存在に躍り出るかもしれません。

映画のような人型ロボットが実現する日もそう遠くはない

パフォーマーのように華麗な動きをするモデルが登場するなか、SF映画の近未来都市で出てくるような人型ロボットが実現する未来もそう遠くはないでしょう。

人型ロボット分野における技術革新にはスタートアップの確かな技術力が不可欠です。

スタートアップ領域のハイクラス人材支援で実績があるフォルトナベンチャーズでは、革新的なビジネスに取り組む多くの企業を紹介できます。

CXOや役員などと独自のネットワークを持つメンバーが集結しており、ご自分だけで探す場合と比較し、良い企業に巡り合う確率を高められます。

人型ロボット事業に取り組むスタートアップにご興味がある方はぜひお気軽にご相談ください。

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