インパクト投資とは、社会的な問題の解決を目指しつつ、利益も追及する投資のことです。
社会にポジティブなインパクトを与えることを目的の1つとしています。
同じく社会貢献を目指すESG投資との違いや、インパクト投資ならではのメリット、注意点について解説します。
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インパクト投資とは?
インパクト投資とは、世界が抱えるさまざまな問題の解決を目指しつつ、同時に利益も追及する投資のことです。
実際のところ、善意を当てにしているだけでは、世界規模の課題を解決する資金を集めることは困難です。
インパクト投資では、寄付に投資というビジネスを組み込むことで、より多くの資金確保を目指します。
なお、インパクト投資という名前は、社会にポジティブなインパクトを与えることを目的の1つとしていることに由来します。
貧困や差別などの社会的課題、土壌汚染や温暖化などの環境課題に取り組むための手段として、世界的に注目が高まっている投資手法といえるでしょう。
インパクト投資の主な分野
インパクト投資は、社会問題に関わるさまざまな分野に関わります。主な分野としては、次のものが挙げられます。
- エネルギー
- 金融
- 森林
- 食料、農業
- 住宅
- ヘルスケア
- 水、公衆衛生
- インフラ
- 教育
なかでも、エネルギーと金融、森林は投資規模が大きく、運用されている資産額も多い傾向にあります。
インパクト投資の市場規模の推移
社会的な課題に対する関心が増すなか、インパクト投資に取り組む方も増えています。
実際に、グローバル規模のインパクト投資家ネットワーク・GIINのデータでは、世界全体では2020年時点で4,040億ドルほどの規模までに発展していると推計しました。
また、日本国内でもインパクト投資の規模は増加傾向にあります。
2016年には337億円ほどの規模でしたが、2021年には13,204億円と、わずか5年で約40倍にも増えています。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
投資残高累計 | 337億円 | 718億円 | 3,440億円 | 3,179億円 | 5,126億円 | 13,204億円 |
参考:一般財団法人社会変革推進財団|プレスリリース 2022年4月26日発行
インパクト投資と他の投資・出資との違い
インパクト投資とは、世界のさまざまな問題の解決を目指しつつ、経済的な利益を得るための投資のことです。
社会問題に取り組むという趣旨のため、ESG投資や寄付と混同されることがあります。
それぞれの投資・出資とインパクト投資の違いについて説明します。
インパクト投資とESG投資との違い
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に注目した投資のことです。通常、投資をするときは投資先の財務情報を参考にします。
しかしESG投資では、財務情報に加えて環境や社会問題にどのように取り組むか、またどのようなガバナンスを掲げているかに注目し、投資する価値があるかどうかを判断します。
インパクト投資も、環境や社会問題への取り組み方、ガバナンスに注目して投資先を決定するのはESG投資と同様です。そのため、インパクト投資はESG投資の1つと見ることもできます。
しかし、インパクト投資では、投資がどのように環境や社会問題に影響を及ぼすかにも注目します。
インパクトが大きいと判断されるときは、投資についても前向きに判断しますが、ESG投資では、投資行為が与える環境的・社会的影響までは考慮しないことが一般的です。
ESG投資については、次の記事もご覧ください。
ESG投資の記事へ内部リンクを設置
インパクト投資と寄付との違い
寄付とは、リターンを期待しない行為のことです。
寄付をした時点で行為は完結するため、その後、寄付をした団体から利益を得ることはありません。
ただし、寄付は利益を目的とはしませんが、利益につながる可能性はあります。
例えば、寄付をしたことで社会的にクリーンなイメージがつくことや、寄付先から何らかの返戻を受け取ることもあるかもしれません。
インパクト投資の構成要素
インパクト投資は、次の4つの要素から成り立ちます。
- 意図があること
- 利益を目指すこと
- アセットクラスが多様であること
- インパクト評価を行うこと
これら4つのすべての要素を満たす投資については、インパクト投資と判断することが可能です。それぞれの要素について説明します。
意図があること
インパクト投資は、社会問題・環境問題を解決するという意図があることが大切です。
単に社会問題や環境問題に関係のある企業に投資をするのではなく、社会問題や環境問題の解決に対して能動的に取り組む企業かという点に注目することが必要です。
投資先だけでなく投資家自身も、社会問題や環境問題を解決するという意図を持つことが必要になります。
また、投資後に生まれる社会・環境のインパクトも考慮して、投資先を選びます。
利益を目指すこと
インパクト投資は寄付ではありません。そのため、社会貢献だけでなく利益も目指すことが条件です。
投資信託であれば目論見書に記載されている内容、特定の企業・団体なら事業内容や経営実績なども丁寧に確認し、利益が得られるか調べてから投資を行います。
本来、社会貢献と利益活動は相反する位置にありました。企業活動で利益を得るには、環境汚染などのデメリットはある程度仕方のないものと考えられていた時代もあります。
しかし、インパクト投資では、社会貢献と利益活動が両立しているかどうかを確認し、社会や環境をより良くする活動を行っている企業・団体を投資先に選ぶことが大切です。
アセットクラスが多様であること
特定のアセットクラスに限られていないことも、インパクト投資の特徴です。
例えば、上場株式や未上場株式、債券など、多様なアセットクラスで投資を行えます。
なお、かつてはインパクト投資は未上場株式などが主流でした。
そのため、個人投資家は手を出しにくい傾向にありましたが、現在では上場株式のファンドも増え、証券会社を通して誰もが気軽に購入できるようになっています。
インパクト評価を行うこと
インパクト評価とは、社会面や環境面から定量的・定性的な評価を行うことです。
インパクト投資には、インパクト評価を定期的に行うことが定められています。
ただし、インパクト投資自体の歴史が浅いため、インパクト評価の方法もまだ手探りの状態です。
インパクト投資に取り組む企業や投資家が増えることで、将来的には洗練されていくと考えられます。
インパクト投資のメリット
インパクト投資には、次のメリットがあります。
- 投資を通して社会貢献できる
- 長期的な投資を実現しやすい
- 長期的なリターンを期待できる
それぞれのメリットについて説明します。
投資を通して社会貢献できる
インパクト投資は、社会貢献しつつ、資産運用が可能な手法です。
投資に対して資産を増やす以上の価値を求める方に、特に適した手法といえます。
また、社会貢献に付加価値を求める方にもインパクト投資は適した方法です。
寄付とは異なり、インパクト投資は出資後も投資先と関係が続きます。企業の社会貢献度にも注目するため、より社会問題や環境問題を身近に感じられます。
長期的な投資を実現しやすい
環境問題・社会問題は一朝一夕に解決するものではありません。そのため、インパクト投資も、長期的なスパンで運営されていることが一般的です。
なお、投資期間を長く設定することは、投資のリスクを抑える基本の方法です。
リスクを抑えつつ、社会貢献できる投資を目指すときにも、適した手法といえます。
長期的なリターンを期待できる
インパクト投資は、元々長期的なスパンで運営されているため、短期間で多大なリターンはあまり期待できません。
しかし、長い目で見ればリターンを期待できるため、使途が決まっていない資金の投資先や老後資金の運用などに適しています。
インパクト投資のデメリット
インパクト投資には、いくつかデメリットもあります。主なデメリットとしては次の2点が挙げられます。
- 短期的なリターンは難しい
- 投資先が限られている
それぞれのデメリットについて説明します。
短期的なリターンは難しい
インパクト投資は、社会問題・環境問題の解決を目指すための活動に対する投資です。
そのため、利益一辺倒のビジネスモデルが構築されているわけではなく、利益効率が高いとはいえません。
また、すぐにリターンが得られるビジネスモデルでもありません。
短期的にリターンを目指すときには、インパクト投資以外の投資商品が向いていると考えられます。
投資先が限られている
投資全体から見ると、インパクト投資の投資先はまだまだ少ないのが現実です。
とはいえ、日本だけでも2016年から2021年の5年間に約40倍も飛躍していることから、将来的には投資先が増え、多様な選択肢のなかから投資商品や団体を選べると予想されます。
投資先が増えると、社会貢献と利益活動を高度なレベルで両立する投資商品も現れると期待できます。
インパクト投資に今後も注目していきましょう。
企業の社会貢献性に注目してみよう
企業について調べるときに、財務情報を確認するのは大切なことです。
しかし、社会貢献性にも注目し、社会貢献と利益活動を高いレベルで両立した企業かどうかチェックしてみましょう。
また、社会貢献性の高い企業は、将来的にも評価され、長いスパンで企業価値を維持・拡大すると期待できます。
ベンチャー企業への転職をお考えの方は、社会貢献性のある企業かどうかも確認すると、企業としての安定性を理解しやすくなるでしょう。
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