コラム

LTVとは?マーケティングにおける重要性や計算方法を解説

LTVとは「顧客生涯価値」とも訳され、顧客が生涯あたりに企業に対して生み出す利益を指します。

なぜLTVに注目することが必要なのか、どのように計算できるのか解説します。

また、LTVを増やすためにできることを具体的かつ実践的にご紹介します。ぜひ参考にしてください。

LTVとは?LTVが高い企業、ブランドの特徴

LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)を略した言葉で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。

顧客が一生涯に企業に対してどの程度の利益を与えるのかを計算した数字のことで、顧客が企業に対して強い愛着を持っているほどLTVは高くなる傾向にあります。

LTVが高い企業とは、愛着を持っている顧客を多く確保している企業です。

顧客が企業に対して強い信頼を抱いているときは、自然と企業との関係が長期的に保たれLTVが高くなります。

また、ブランドと顧客との関係性においても、LTVで数値化が可能です。

顧客が特定のブランドに対して強く愛着を感じているときは、ブランドへの消費が増え、LTVが高くなります。

企業やブランドはファン、それも熱心なファンを獲得することで、LTVの向上が期待できるでしょう。

ファンを多く獲得している企業やブランドは事業を継続しやすく、長期にわたって安定した利益を上げることが可能です。

LTVが重要視される3つの理由

近年、LTVを重視する企業も増えてきました。その理由としては次の3つが挙げられます。

  1. ロイヤルカスタマーを獲得するため
  2. 長期的な収益拡大、安定化を図るため
  3. 3rdPartyCookie規制の影響を回避するため

LTVは顧客維持にも関わる重要な要素です。

効率性の高いマーケティングを実現するためにも、LTVが重視される理由について理解しておきましょう。

1.ロイヤルカスタマーを獲得するため

ロイヤルカスタマーとは、最上級の顧客のことです。

顧客は「新規顧客」や「既存顧客」、「優良顧客」などに分類できますが、その中でもロイヤルカスタマーは最上級で、企業にとって高い価値を持っています。

ロイヤルカスタマーと優良顧客は異なります。

優良顧客とは企業に対して高い利益を与える顧客です。

例えば、高額の買い物をした顧客やセールなどでまとめ買いをした顧客は、その年の売上に大きく貢献してくれたため「優良顧客」と考えられます。

しかし、単に気に入った商品があったから、あるいは安かったからなどの理由で購入した可能性もあり、翌年以降も同程度の利益を与えてくれるのかはわかりません。

一方、ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに対して愛着を持ち、継続的に購入あるいは利用する顧客のことです。

1回に購入する金額は少なくても、長年買い続けてくれることが予想されます。

また、商品を多少値上げしても、あるいは類似する商品が他の企業やブランドで販売されていても、変わらず買い続けてくれると期待できます。

LTVに注目したマーケティングを実施すると、長期的に利益をもたらしてくれるロイヤルカスタマーを獲得することが可能です。

優良顧客とは異なり、年によって消費額が大きく異なることもないため、売上を見積もりやすく事業計画を立てやすくなる点も、ロイヤルカスタマーを獲得するメリットです。

2.長期的な収益拡大、安定化を図るため

LTVは、顧客の1回ごとの消費額、あるいは年間の消費額ではなく顧客の生涯にわたる消費額を示す数値です。

長期的な視野に基づいて算出するため、中長期的な事業計画にも役立てられます。

また、LTVをベースとして事業計画を立てると、長期的な収益拡大を目指しやすくなり、安定した経営を実現しやすくなります。

企業活動を安定化するためにも、長期的な視野に基づいたLTVの概念を導入することは不可欠といえるでしょう。

3.3rd Party Cookie規制の影響を回避するため

3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)とは、第三者により発行されるCookieデータのことです。

異なるWebサイトで得た情報を基に最適化された広告を表示するリターゲティング広告などに使用されている技術ですが、近年はプライバシー保護の観点から3rd Party Cookieを規制しようとする動きが高まっています。

3rd Party Cookieが規制されると、オンラインで情報収集や購入を行う顧客データを取得しにくくなります。

3rd Party Cookie規制による影響を回避するためにも、既存顧客のデータを活用し、既存顧客からの収益拡大を目指すことが不可欠です。

LTVに注目すればロイヤルカスタマーを獲得できるため、既存顧客からの有益なデータも得やすくなります。

また、ロイヤルカスタマーとの関係強化により、既存顧客からの収益増も見込め、3rd Party Cookie規制による影響を受けにくい収益も出るを構築できるでしょう。

なお、3rd Party Cookie規制については、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

【最新版】サードパーティCookieとは?2023年の完全廃止による4つの影響と対応策

LTVの主な計算方法3種

安定性があり、なおかつ3rd Party Cookie規制に影響を受けにくい収益モデルを構築するためにも、LTVを重視することが欠かせません。

正確にLTVを計算し、マーケティングに活かしておくことが必要です。

なお、LTVの計算方法にはいくつかの種類があるため、どの方法を選ぶかによって数値が異なるだけでなく、反映できる要素も変わります。

代表的な3つの計算方法を紹介するので、ぜひ状況や反映したい要素に合わせて適切なものを選んでください。

1.平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度× 平均継続期間

シンプルかつ簡単にLTVを計算する方法としては、次の計算式が挙げられます。

  • 平均購入単価×粗利率×平均購入頻度×平均継続期間

粗利率が40%で単価20,000円の商品があり、年に4回、5年間継続して購入した顧客がいるとしましょう。

この場合、LTVは以下の計算式により160,000円となります。

  • 20,000円×40%×4回/年×5年=160,000円

2.平均購入単価 ÷ チャーンレート

サブスクリプションサービスを提供しているときは、次の計算式でLTVを求めることが一般的です。

  • 平均購入単価÷チャーンレート

チャーンレートとは解約率のことで、一定期間中に失った顧客数を当初の顧客数で割って求めます。

当初の顧客が100人で一定期間中に失った顧客が20人の場合、チャーンレートは20÷100=20%となります。

例えば、平均購入単価が50,000円でチャーンレートが20%のサブスクリプションサービスであれば、LTVは以下の式より250,000円と計算できます。

  • 50,000円÷20%=250,000円

平均購入単価に粗利率をかけてから計算すると、利益ベースのLTVも計算できます。

平均購入単価は50,000円で粗利率が40%、チャーンレートが20%のサブスクリプションサービスであれば、利益ベースのLTVは以下の式より100,000円となります。

  • 50,000円×40%÷20%=100,000円

3.コストを加味した計算方法

最初に紹介したLTVの計算式(平均購入単価×粗利率×平均購入頻度×平均継続期間)には、顧客の獲得や維持にかかるコストは考慮されていません。

顧客にかかるコストを反映したLTVを計算するときは、以下の計算式を用います。

  • 平均購入単価×粗利率×平均購入頻度×平均継続期間-新規顧客獲得コスト-既存顧客維持コスト

粗利率が40%で単価20,000円の商品があり、年に4回、5年間継続して購入した顧客がいるとします。

顧客を獲得するために10,000円、顧客との関係を維持するために30,000円かかっているならば、顧客にかかるコストを反映したLTVは次の式より120,000円です。

  • 20,000円×40%×4回/年×5年-10,000円-30,000円=120,000円

LTV活用に役立つ用語と指標

LTVをマーケティングに活用するために必要な用語と指標としては、次のものが挙げられます。

  • ARPA
  • CAC
  • MQL
  • チャーンレート
  • ユニットエコノミクス

それぞれの意味や使用するシーンを説明します。

ARPA

ARPAとは、Average Revenue Per Accountの略語で、アカウントあたりの平均売上金額を指します。次の計算式で求めます。

  • 売上÷アカウント数

毎月の売上が3,000万円でアカウント数が10,000人の場合、以下の計算式よりARPAは3,000円です。

ARPAは顧客数ではなくアカウント数で計算するため、1つのアカウントで複数のデバイスを利用しているケースや、複数のユーザーが利用しているケースに用いることができます。

  • 30,000,000円÷10,000人=3,000円

CAC

CACとは、Customer Acquisition Costの略語で、顧客を1人獲得するために必要なコストを示します。

計算式は以下の通りです。

  • 獲得にかかったコスト÷新規顧客獲得数

獲得にかかったコストには、営業費用やマーケティング費用、広告費用などが含まれます。

例えば、営業やマーケティングに100万円、広告費用として200万円をかけて50人の新規顧客を獲得した場合は、以下の式より顧客1人獲得に6万円かかっていると計算できます。

  • (1,000,000円+2,000,000円)÷50円=60,000円

MQL

MQLとは、Marketing Qualified Leadの略語で、マーケティングによって得られた見込み顧客を指します。

なお、MQLの中でも商品・サービスに対する関心が高いと思われる見込み顧客をSQL(Sales Qualified Lead)と呼び、専任の営業担当者をつけるなど、より積極的なアプローチを行います。

チャーンレート

チャーンレート(解約率)には、顧客数に注目した「カスタマーチャーンレート」と収益に注目した「レベニューチャーンレート」の2つの種類があります。

また、チャーンレートを計算するときには期間にも注目しましょう。1ヵ月あたりのチャーンレートと1年間のチャーンレートは大きく異なることがあります。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスとは、ビジネスの健全性を可視化するための指標です。

主にサブスクリプションサービスで使用される指標で、以下の式より求めます。

  • LTV÷CAC

ユニットエコノミクスは、収益モデルの採算性を調べるときにも用います。

事業形態などによっても目標とすべき数値は異なりますが、一般的に3~5を目安とします。

LTV向上のための7つのポイント

LTV向上のために有効な施策としては、次の7つが挙げられます。

  1. 購入単価アップを検討する
  2. コストを見直す
  3. 購入頻度、リピート回数を上げる
  4. 商品バリエーションを増やす
  5. 顧客ロイヤリティを高める
  6. リマインドメールを配信する
  7. メールマガジンを配信する

それぞれの施策や実施のポイントを説明します。

1.購入単価アップを検討する

LTVを高めるためには、顧客単価を上げなくてはいけません。

購入単価を上げる、つまり商品・サービスの値上げをすれば、LTVを上げることが可能です。

ただし、値上げをすることで顧客が離脱すると、LTVが上がっても売上は下がってしまいます。

顧客に値上げの理由を説明し、納得してもらってから値上げを実施しましょう。

また、値上げの金額にも注意が必要です。大幅な値上げはインパクトがあり、顧客の離脱を誘発するリスクがあります。

2.コストを見直す

顧客単価の向上は、商品・サービスの価格そのものを上げなくても、コストを削減することで実現できます。

現在のコストを減らせないのか、一度検討してみましょう。

例えば、CACにより顧客1人を獲得するのにかかるコストを求め、高すぎるときは広告費用などを見直します。

ただし、コストをやみくもに抑えればよいというものではありません。コストを下げて商品・サービスのクオリティが下がると、顧客離れが起こったり、顧客の継続期間が短縮したりする可能性があります。

商品・サービスの購入による顧客体験の品質を保ち、なおかつコストを削減できないか検討することが必要です。

3.購入頻度、リピート回数を上げる

顧客の購入頻度を高めることでも、LTVは向上します。

顧客が何度も購入したいと思えるように、メールマガジンやSNSなどを使ってコンタクトを取り続けることも1つの方法です。

また、すでに使用している商品・サービスだけでなく、他の商品・サービスを紹介することで顧客の購入機会を増やすこともできます。他にも、新商品の発売やリニューアルなども有効な施策です。

ただし、購入頻度を増やすために、あえて長持ちしない商品・サービスを提供するのはおすすめできません。

長期的に見れば顧客離れが起こり、売上減につながるだけでなく、現在のグローバルな流れである「サステナビリティ(持続可能性)」にも反するため、企業イメージの失墜をもたらすこともあります。

4.商品バリエーションを増やす

商品のバリエーションを増やすことも検討できます。

例えば現在、ホワイトニング美容液を1種類のみ展開しているとしましょう。有効成分の含有量を増やした高級バージョンや、異なるアプローチで美白を実現する美容液を作れば、顧客ニーズや顧客単価の増加を実現できるかもしれません。

また、セット販売も有効な方法です。ホワイトニング美容液だけでなくホワイトニングクリーム、ホワイトニングローションなども開発すれば、ライン使いしてもらえる可能性が生まれます。

5.顧客ロイヤリティを高める

顧客ロイヤリティとは、商品やブランドに対して愛着・信頼を持って利用すること、あるいは愛着・信頼を抱いている顧客を指します。

顧客ロイヤリティを高めることにより、顧客の利用期間が長くなり、LTVの向上が可能です。

また、顧客ロイヤリティを高めると、新商品を販売したときなども、特に積極的なマーケティングや広告活動を行わなくても購入してくれやすくなります。

広告宣伝費などのコストを下げることにつながり、コストを考慮した実質的なLTVをさらに高めることも可能です。

例えば、長期顧客を優遇するポイントプログラムやプレゼント制度、こまめなコミュニケーションなどは、顧客ロイヤリティを高める施策となります。顧客がより愛着・信頼を持てるような施策を実施していきましょう。

6.リマインドメールを配信する

すべての顧客が、企業やブランドに対して強い愛着を持っているわけではありません。

商品購入が必要なタイミングで別企業の類似商品からのアプローチを受け、乗り換えてしまう顧客もいるでしょう。

また、より価格の安い商品が見つかったときなども、乗り換えが起こりやすくなります。

顧客の離脱を回避するためにも、買い替え時期を見計らってリマインドメールを配信することがおすすめです。

おトクなクーポンなどもつければ、「次は別の商品にしようかな」と気持ちが揺れている顧客を引き留める効果も期待できます。

7.メールマガジンを配信する

メールマガジンを配信し、顧客と継続的に関わり続けることも大切なポイントです。

新商品の紹介や現在使用している商品の魅力を分析した記事なども、顧客に有益な情報となります。

また、商品の売り込みばかりに内容が偏らないように、面白い話題やお役立ち情報を記載することもおすすめです。

例えば、商品のちょっと変わった使い方や世界的なトレンドなどを紹介し、顧客が読みたくなるメールマガジンにブラッシュアップしましょう。

顧客ロイヤリティを高めてLTV向上を目指そう

LTVに注目することで、顧客との関係をより良いものにするだけでなく、より良い商品・サービスづくりも実現できます。

顧客との距離感が近いビジネスを体験したい方は、ベンチャー企業への転職を目指してみてはいかがでしょうか。

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