量子コンピュータとは量子力学を用いて計算するコンピュータを指します。複雑な問題が解ける半面、コストが高く、現状では古典コンピュータのアシストとして用いられていることが一般的です。原理や種類、計算方法について分かりやすく解説します。
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そもそも量子コンピュータとは?
量子コンピュータとは、量子力学を活用して従来のコンピュータでは膨大な時間がかかってしまう計算を、短時間で解くことができるコンピュータです。具体的には、「量子重ね合わせ」や「量子もつれ」を利用した並列計算を可能にします。
多くの国や企業が関心を寄せている量子コンピュータですが、実用を開始するまでには20~30年という長い時間が必要だとされています。対応できる問題も限られているため、まだまだ多くの課題が残されているのが現状です。
量子コンピュータの仕組み
従来のコンピュータでは、すべてのものを0か1のいずれかで表現する2進数が使われています。
2進数とは0と1の組み合わせで数字を表現する方法で、「0、1、10」といったように「2」になることで桁が繰り上がる点が特徴です。
ただし、2進数では2つ以上の状態を表現できないという弱点がありました。
一方量子力学を用いた量子コンピュータを使えば「0か1のいずれか」などの重ね合わせを表現できます。
例えば、2つ以上の箱の中に0か1、2、3のいずれかが入っていることが分かっているという条件でも、量子コンピュータを用いれば計算が可能です。
量子コンピュータと通常のコンピューターの違い
古典コンピュータとも呼ばれる従来型との主な違いは、最小単位にあります。
量子コンピュータ | 従来のコンピュータ | |
最小単位 | 量子ビット(0と1の重ね合わせ状態) | ビット(0もしくは1) |
この違いが先に述べたような、計算方法の仕方に影響を与えています。
量子コンピュータの3つの種類
量子コンピュータにはいくつかの種類があります。主な種類としては次の3つが挙げられるでしょう。
1.万能量子コンピュータ
2.非万能量子コンピュータ
3.非古典コンピュータ
それぞれの仕組みや得意とする計算、また、どのような特徴を持つのか解説します。
1.万能量子コンピュータ
任意の数量の量子状態から任意の数量の量子状態への変換を行えるコンピュータを「万能量子コンピュータ」と呼びます。量子ビットの数を限定しないので、複雑な計算を実行することが可能です。しかし、量子ビットの数を制限しないためにノイズが生じやすく、エラー耐性が低くなる可能性があります。
なお、エラー耐性とは、計算途中で生じたエラーを自動的に訂正する仕組みのことです。万能量子型は複雑な計算を行うためにエラーが生じやすいので、エラー耐性を搭載することが不可欠とされています。しかし、量子ビットの数を無制限に増やすことは難しく、エラー耐性強化までは進んでいないのが現状です。
本当の意味での万能量子型、つまり、量子ビットの数を無制限に増やせるコンピュータも、まだ現実のものとはなっていません。今後の開発が期待される分野ともいえるでしょう。
2.非万能量子コンピュータ
量子ビットの数を無制限には増やせないものの、一定量までは増やして量子力学を活かした計算の実行が可能なものが「非万能量子コンピュータ」です。量子ビットを有限かつ少数に抑えることで、ノイズが生じにくく、エラー耐性が不十分でも計算の精度をある程度は維持できるという特徴があります。
なお、非万能量子型は量子ビットの数は多くはないものの、古典型よりは計算速度は速いといった優位性があるといえるでしょう。しかし、非万能量子型を活用するには、活用に適した場面とその問題を非万能量子コンピュータに解かせるアルゴリズムの発見が必要となり、実用化を阻む足かせになることがあります。
NISQ
NISQとはNoisy Intermediate Scale Quantumの頭文字を合わせた語で、エラー耐性がない、あるいは不十分な量子コンピュータを指します。NISQは量子コンピュータに特有のノイズによる計算阻害を受け入れているタイプで、量子ビットは50~100程度です。
ノイズの抑制は量子コンピュータの発展には不可欠なポイントではあるものの、ノイズ抑制にこだわると開発しづらくなるのも問題点ではありました。
NISQは最初からノイズを受け入れているので、改良しやすい点がアドバンテージです。今後はNISQを用いて、計算速度を向上させる方向性で開発が進むと予想されています。
3.非古典コンピュータ
「非古典コンピュータ」とは量子コンピュータではあるものの、従来型と比較した優位性が明確ではないものを指します。例えば、広義には量子型に分類されるものの、計算性能において優れた点が見つからないものであれば、非古典型と分類されるでしょう。
何か優位点があるのか、また、どの分野での活用に適しているのかについては今後の研究が待たれます。
量子コンピュータの計算方法
量子力学を活用した計算方法にはいくつか種類があります。量子コンピュータが計算に用いる主な方法として、次の2つが挙げられるでしょう。
1.量子ゲート方式
2.量子アニーリング方式
それぞれの計算方法の違いについて解説します。
1.量子ゲート方式
量子ゲート方式とは、量子状態の素子の動きや組み合わせから計算回路を作成し、問題解決にあたる方式です。すでに超電導やトポロジカルなどで計算回路が構築・提案されているため、実用化は近いと考えられるでしょう。
実際に、すでに大手のIT系企業や世界的スタートアップ企業などが量子ゲート方式を用いた量子コンピュータの開発を進めています。
2.量子アニーリング方式
量子アニーリング方式とは、組み合わせを最適化して問題解決にあたる方式です。例えば、格子状に配置された素子に予めどのような相互作用を行うか設定し、素子のエネルギーが低くなる状態を見つけていくときなどに用いられます。
これは高温にした金属を、時間をかけて冷やすことで配置構造を安定させる手法を応用したもので、量子ゲート方式と同様、実用化を進めている企業も少なくありません。
量子コンピュータを活用するメリット
量子コンピュータを活用するメリットは、主に次の3つです。
・今まで解けなかった複雑な問題が解けるようになる
・処理速度の高速化により計算を瞬時に行うことができる
・電力消費が極めて小さい
多くの企業が開発に取り組んでいる量子コンピュータの魅力を知っておきましょう。
それぞれについて詳しく解説します。
今まで解けなかった複雑な問題が解けるようになる
量子コンピュータは、重ね合わせの状態で計算ができます。従来型では解けない複雑な問題も、量子力学を用いたアプローチで解くことが可能です。
まだ現在は量子ビットが有限数の状態ですが、任意の数まで量子ビットを増やせる万能量子コンピュータ、あるいは自動的に間違いを修正するエラー耐性を搭載したタイプが誕生すれば、さらに複雑な問題が解けるようになると期待されています。
処理速度の高速化により計算を瞬時に行うことができる
量子コンピュータは処理速度の高速化を実現し、複雑な計算を瞬時におこなえます。
従来型のコンピュータでは、いつしか処理速度の限界を迎えるとされていました。
量子コンピュータの登場で従来の約1億倍の処理速度で計算ができるようになり、さまざまな可能性が広がっています。
難解な計算を任せるだけではなく、膨大な数の処理を量子コンピュータでおこなえば時間短縮の効果が期待できるでしょう。
電力消費が極めて小さい
電力消費が少なくて済むのも、量子コンピュータならではのメリットです。
電子コンピュータのなかには、冷却装置を使用して低温で動作するものが登場しています。
消費電力が25kW以下と極めて小さいため、複雑な計算を実施する場合でも電力確保の心配はいらないでしょう。
量子コンピュータのデメリット
メリットが大きい電子コンピュータですが、次の3つのデメリットは把握しておく必要があります。
・データが盗難される恐れがある
・計算式に置き換える過程が複雑
・従来のコンピューターと比べて非常にコストが高い
データが盗難される恐れがある
量子コンピュータの機能が高度化されるほど、従来のコンピュータに対するセキュリティ対策問題が深刻化します。現在一般的に利用されている暗号化システムが、量子コンピュータを使えば簡単に突破されてしまう危険性があるからです。
セキュリティ対策が適切に施されないままであると、企業活動の重要な財産であるデータが盗難されてしまう事態にもなりかねません。
技術の発達とともに、セキュリティ対策の在り方を見直す姿勢が求められています。
計算式に置き換える過程が複雑
量子コンピュータを用いて計算するときには、量子型の計算式、つまり量子ゲート方式や量子アニーリング方式で解けるような形へ計算式を置き換える必要があります。
しかし、計算式を量子対応型に置き換える過程が複雑なため、気軽に量子型に計算させることができません。
量子型に対応する計算式への置き換えがスムーズになるためにも、量子コンピュータに対するより一層の研究が必要になるでしょう。
従来のコンピューターと比べて非常にコストが高い
従来型と比べると量子型はコストが高く、まだ特殊な機関や一部企業でしか導入されていません。
また、実際問題として従来型で対応できないほどの計算を必要とする機関が少ないという点も挙げられます。
ただし、実用化にはまだまだ時間がかかると考えられるでしょう。
当面は古典コンピュータのアシストとして用いる
量子コンピュータが開発されても、当面の間は従来型のアシストの位置付けとなると予想されています。
量子コンピュータが解決すべき問題があまりないという点だけでなく、量子型のコストが高く、全面的に導入することが難しいという点が実用化を阻んでいるともいえるでしょう。
量子コンピュータがスマートフォンのように1人1台になる時代は、まだまだ遠い未来のことと考えられます。
量子コンピュータの動向
多くの可能性を秘めた量子コンピュータの開発・研究には、大手企業も積極的に協力しています。
国内ではデンソー株式会社やキユーピー株式会社などの名高い企業が、電子コンピュータを利用した研究に参加しています。
私たちの生活のなかにも、量子コンピュータの技術を使って最適化できる問題や課題が残されているのが事実です。
これまで仕方がないと諦めていた問題に関しても、量子コンピュータを活用して解決の糸口を見つけられるかもしれません。
今後も量子コンピュータへの関心は高まると予想され、実用化への研究開発が続けられていくでしょう。
量子コンピュータの課題と実現可能性
大きな期待が寄せられている量子コンピュータを、ビジネス活用するための努力が日々おこなわれています。
量子コンピュータの計算確度を高めるほかにも、量子エラー訂正技術の確率が必要とされていますが、現在の技術では達成ができていません。
また、超伝導量子コンピュータを動作させるための極低温環境を実現するための設備も、実用化に向けた課題です。
このように、量子コンピュータには多くの乗り越えるべき難題があります。
少しでも早い実用化に向けて、量子コンピュータの基礎研究と適用研究が並行して進められています。
量子コンピュータについての理解を深めよう
量子コンピュータは、まさにこれから開発が進む技術です。コンピュータ関連の分野で活躍する人もそうでない人も、量子コンピュータの仕組みや特徴、将来性について知っておくことは必要でしょう。
なお、フォルトナベンチャーズでは量子コンピュータのような最新のテクノロジーを活用した将来性の高い数多くのベンチャー企業やスタートアップ企業をご紹介しています。ご自身に合う企業を見つけたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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