コラム

フェムテックとは?意味や日本国内外の商品事例・将来性・スタートアップ企業を解説

フェムテックとは、女性特有の健康問題を解決するために開発された商品やサービス、テクノロジーのことです。

海外では早くから注目を集めている分野ですが、近年日本でも市場規模が拡大しています。

フェムテックの意味や課題、国内外の注目企業の情報をご紹介します。

フェムテック(Femtech)とは?

Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせてできた言葉が、フェムテックです。

一方で、テクノロジーを利用していないサービスに関しては「フェムケア」と呼ばれます。

日本でフェムテックが注目を集めるようになったのは、2020年代に入ってからです。

急速に市場規模が拡大し、ベンチャー企業から大企業まで、多くの事業者が参入を進めています。

女性の身体はライフステージの変化に敏感で、自分の力だけではコントロールが難しい場合もあるでしょう。

そのような女性たちの健康を、データを活用し効果的にサポートしようとする動きがフェムテックです。

「女性の身体の悩み」をテクノロジーで解決すること

個人によって大きな差が出る女性の健康をテーマに、テクノロジーを活用して課題を解決に導こうとする取り組みがフェムテックです。

技術の進歩によって、月経周期の予測や更年期障害の緩和など、さまざまな効果が期待できるようになりました。

これまで解決が難しかった女性の健康問題に対して、テクノロジーの力で少しでも快適な生活を過ごせるようなアイディアが次々と誕生しています。

すでにフェムテックが浸透している海外諸国では、当たり前のようにサービスを利用できるようになっています。

日本でも今後フェムテックが広がるにつれ、健康問題に一人で悩むことなく気軽にテクノロジーの助けを借りられる環境が整っていくと考えられます。

フェムテック誕生の背景

フェムテックが盛んになった背景には、社会的な問題や情勢が関係しています。

主な要因として挙げられるのは、次の2つです。

  • 女性の社会進出
  • テクノロジーの発展

かつての医療技術は、男性の身体への影響を基準に研究・開発されたものでした。

女性が経験する妊娠や出産というデリケートな時期を考慮し、リスクの高さからなかなか実験を行うのは難しかったのが事実です。

しかし、現代では女性の社会進出が進み、女性特有の健康問題に対する解決策が必須となっています。

社会的な地位を担って活躍する女性たちの後押しもあり、女性ならではの悩みを解決する取り組みが広がっています。

また、テクノロジーの進歩によって、より適切な治療法の提案が受けられるようになりました。

一人一人異なる女性の身体の悩みに対して、蓄積したデータを活用し快適な生活につなげる努力がされています。

フェムテックの市場規模と将来性

フェムテックの市場規模は、年々拡大を続けています。

ビジネスに参入する企業も増加しており、まだまだ勢いは継続する見込みです。

国内でもフェムテック市場を後押しする活動が、確実に増加しています。

今から注目しておきたいフェムテックの市場規模や課題、今後の展望などを解説します。

フェムテックの市場規模

2012年に60億ドルとされていたフェムテックの市場規模は、7年後には400億ドルまで成長を遂げました。

さらに、2025年の市場規模は500億ドルと予想されています。

SNSを通して個人の意見を発信しやすくなったことも、フェムテックの市場規模が大きく成長した要因です。

女性たちが声を上げやすい社会が整うにつれて、今後も新しい関連ビジネスやサービスが誕生するでしょう。

国内のフェムテックの市場は、2025年までに1.4兆円まで成長する見込みです。

ビジネスを率いる大手企業も続々と参入しており、フェムテックの勢いに今後も注目する価値があるでしょう。

フェムテック市場が盛り上がりを見せている理由

海外と比べるとまだ成長の余地があるとされる、日本のフェムテック市場の成長を後押しする活動が盛んになっています。

2021年には、フェムテックの知識拡大を目標に掲げる、一般社団法人フェムテック協会が発足しました。

無料で挑戦できる「フェムテックアンバサダー認定」や、より深い知識の獲得と実践をサポートする「認定フェムテックシニアエキスパート講座」が実施されています。

また、フェムテックの活動や考えを広める目的で「フェムテックジャパン2021/フェムケアジャパン2021」などのイベントも開催されました。

日々の生活の身近なところからも、少しずつフェムテックを支援する動きが強まっています。

フェムテック市場の課題

市場の拡大が続き、注目度が高まっているフェムテックですが、次のような課題が残されているのも事実です。

  • フェムテックの業界ルールが定まっていない
  • 女性が本当に求める商品は誕生しにくい

フェムテックは急速に認知度が高まっている分野であるからこそ、明確なルールは定まっていないことが1つ目の課題です。

ブームにあやかろうと、実質あまり関連のないアパレルや美容業界の製品にフェムテックの名前が利用されるケースもあります。

フェムテック自体の定義があいまいになってしまうのを避けるためにも、業界のルールを定める動きが必要となるでしょう。

また、フェムテック関連ビジネスを進めている企業で、実際に女性がメインにプロジェクトを主導しているケースは少ないと予想されます。

そのため、本当に女性のニーズを満たす商品を生み出すのは容易ではありません。

女性のためのサービス・商品づくりにおいて、当事者である女性の声を反映したビジネス展開を意識することが大事です。

経産省が重視するフェムテック分野と主な商品・サービス

フェムテックの代表的な三大分野は、次のとおりです。

  1. 月経分野
  2. 妊娠・不妊分野
  3. 更年期分野

どの分野も、女性がライフステージの変化に応じて悩みを抱きやすい部分です。

フェムテックの主分野と、それぞれを代表する商品・サービスをご紹介します。

1.月経分野

女性が閉経を迎えるまで、長い付き合いとなるのが月経です。

出産をするために必要不可欠な身体の仕組みですが、PMS(月経前症候群)の程度には個人差が大きく、悩みを抱えている女性も多いでしょう。

フェムテックのなかでも、幅広い年齢の女性が経験する月経分野には、大きな注目が集まっています。

2025年時点での月経分野の経済効果は、年間約2,400億円にのぼると予想されています。

フェムテックのテクノロジー技術を月経にまつわる問題に活用することで、適切な治療の提案や身体の状態の正確な把握が可能です。

月経による不調やパフォーマンスの低下を防止し、快適な生活をサポートする商品が誕生しています。

吸水型サニタリーショーツ

月経中の女性は、経血の付着したナプキンが肌に触れている不快感と付き合わなくてはなりません。

フェムテック商品として誕生した吸水型サニタリーショーツは、そのような女性の不快感を軽減してくれます。

高い吸収量と機能性を備えたサニタリーショーツは、120〜150mlもの吸水力を誇り、経血が多い日でも安心です。

洗濯をしても効果は持続するため、繰り返し利用することで使い捨てのナプキンよりも高いコストパフォーマンスが期待できます。

月経中の気になる匂い対策にも効果があるため、今後ナプキンのように生理用品として当たり前に利用される商品となる可能性があるでしょう。

生理周期の管理アプリ

スマホの普及にともない、着実にユーザー数を伸ばしているのが、生理周期管理アプリです。

過去の月経データを入力することで、その時の個人に合ったアドバイスを受けられます。

健康にまつわるトピックだけではなく、ホルモンバランスの変化による心の状態もチェックできるのが特徴的です。

生理周期は妊娠を望む女性の指標ともされるため、生理周期管理アプリはさまざまな目的で利用されています。

月経時の健康管理はもちろん、女性が気になる情報を得られるツールとして、生理周期管理アプリの利用が拡大しています。

2.妊娠・不妊分野

女性のライフステージを大きく左右する妊娠・不妊治療分野でも、フェムテック商品が登場しています。

プライベートな事情が関係するだけに、なかなか周りに相談できずに悩みを抱えてしまう女性たちも多い問題です。

2025年には、約3,000~5,000億円規模の経済効果が期待されています。

避妊から妊娠、不妊治療、産後ケアまで一連の過程をカバーする当分野には、解決すべき課題が多く残されています。

妊娠を望む女性のサポートや治療の負担軽減、身体の状態に合わせたピルを入手できるサービスなどは、フェムテックの一例です。

低容量ピルのサブスク

海外では比較的入手しやすいとされている低用量ピルですが、国内では医師による診察と処方が必須です。

必要なタイミングで体調に合わせたピルを求めている女性たちにとって、仕事やプライベートの合間に病院を訪問しなければならない不便さがありました。

フェムテックの活用によって、オンライン診察と無料の医療相談、低用量ピルの購入・配達サービスが実現しています。

低用量ピルのサブスクは、忙しい働く女性のニーズを満たす、今の時代に合ったサービスです。

妊活を進めるサポート

晩婚化の影響もあり、妊娠を望む夫婦が不妊治療に取り組む割合も高くなっています。

自身の身体の状態を把握し、妊娠の確率を高める各種妊活アプリの利用が一般的になりつつあります。

手軽にダウンロードできるスマホアプリで、無料でも基本的な機能を利用できるものが多いのも特徴です。

妊活・不妊治療の状況を記録・管理でき、データとして可視化してくれます。

他のユーザーの情報や妊活・不妊治療に関するコンテンツも豊富で、利用しながら有益な情報を得られる仕組みです。

境遇が似たユーザーのデータは、妊活をする女性たちの道しるべとなるでしょう。

3.更年期分野

フェムテックは、更年期を迎えた女性が健やかに過ごすためのサポートにも役立っています。

閉経が近づいた年齢からは、更年期障害による身体の不調に敏感になります。

年齢的に仕方がないものと片付けてしまうのではなく、女性特有の症状にうまく対応できるよう支援するのが、更年期分野のフェムテック技術です。

更年期の女性は、社会的に責任のあるポジションに就いている場合も多く、体調のコントロールが欠かせません。

更年期分野の経済効果は、2025年時点で年間1.3兆円とされており、働く女性の健康問題として注目が高まっています。

膣トレアイテム

年齢とともに骨盤底筋が緩んでしまうことで、尿漏れなどのマイナートラブルが発生します。

更年期女性の健康を守るアイテムとして、膣のトレーニングによる骨盤底筋を強化できるアイテムが誕生しています。

女性のデリケートな部分であるからこそ、正しい情報を入手して無理のないトレーニングを行う必要があります。

アプリと連携できるタイプの膣トレアイテムは、わかりやすい説明に沿ってトレーニングができるため、特別な知識がなくても心配ありません。

自分のペースで継続的にトレーニングをすることで、更年期の不調に負けない身体を手に入れられます。

更年期向けのアプリ

フェムテックでは妊娠・妊活期の女性だけではなく、更年期の女性のためのアプリも実用化しています。

ホルモンバランスの変化により、さまざまな不調が出やすい年齢の女性たちのために、健康をサポートするコンテンツが提供されています。

人によって症状が異なる更年期の不調には、自分に合った対処法を探すことが大切です。

医師や専門家に健康状態を直接相談できるオンラインサービスも人気で、一人で悩みを抱えがちな更年期女性を支援しています。

【日本】フェムテックの代表的なスタートアップ企業

国内のフェムテック市場は、トレンドに敏感なスタートアップ企業の力で成長をして来た背景があります。

今回は、なかでも代表的な立場にあるフェムテック企業3社の情報をご紹介します。

  • 株式会社エムティーアイ(健康管理アプリ「ルナルナ」)
  • fermata株式会社(フェムテック商品専門EC「fermatastore」)
  • 株式会社ウツワ(LINE連動型サービス「illuminate」)

今後のフェムテック業界を牽引する企業の特徴や、サービス概要を把握しておきましょう。

株式会社エムティーアイ(健康管理アプリ「ルナルナ」)

株式会社エムティーアイが提供する「ルナルナ」は、生理日の予測や排卵日の把握に利用できる女性のための健康管理アプリです。

すでに圧倒的な知名度を誇っているサービスの1つで、基本的な機能は無料で利用できます。

フェムテック業界のパイオニアとしてビジネスに参入した同社は、2000年代から継続して女性の健康にまつわる情報サービスを提供してきました。

ルナルナの他にも、妊活用アプリや産婦人科オンライン診療システムなど、長年の知識やノウハウを活用したサービスが人気を集めています。

今後も、それぞれのステージにある女性を、トータル的にサポートするアイディア商品・サービスの誕生に期待がかかります。

参考:株式会社エムティーアイ/ヘルスケア事業

fermata株式会社(フェムテック商品専門EC「fermatastore」)

fermata株式会社は、フェムテック製品の輸入販売や関連コンサルティング事業を実施している企業です。

同社の代表的なサービスとしては、フェムテック商品を専門に取り扱うECサイト「fermatastore」が挙げられます。

fermatastoreは、世界的にも初めてフェムテックを軸にした商品ラインナップを揃えてスタートしたオンラインストアです。

月経・産後ケア・更年期・セクシャルウェルネスなど、それぞれの悩みに応じた商品を取り扱っています。

吸水ショーツや月経カップなど、女性の快適な日常をサポートするアイテムを、自宅に居ながら気楽に購入できます。

参考:fermata/fermata store

株式会社ウツワ(LINE連動型サービス「illuminate」)

株式会社ウツワは、日本で圧倒的なユーザー数を誇っているLINEを活用したフェムテック情報サービス「illuminate」を提供しています。

illuminateは2019年にスタートした比較的新しいサービスで、フェムテック業界に新たに参入してきた注目のサービスです。

LINEに登録されている情報を活用して、個人の生理日を予測するだけではなく、必要な生理用品の購入をサポートしてくれます。

ドラッグストアなどで対面で生理用品を購入しなければならない女性の負担を軽減し、オンライン上で人目を気にすることなく自分に合った商品を吟味できるのが強みです。

多くの人々が普段から慣れ親しんでいるコミュニケーションツールLINEを活用することで、利用者がサービスの利用に際して心理的なハードルを感じてしまうのを避けられます。

参考:UTSUWA

【海外】フェムテックの代表的なスタートアップ企業

フェムテックの概念が早くから浸透していた海外諸国では、すでにさまざまな商品やサービスが人々に受け入れられています。

今回は、独自のアイディアを活かしてビジネスを展開している2つの企業をご紹介します。

  • Cora INC.(サブスクリプションサービス「Cora」)
  • Future Family, Inc.(不妊治療サポートサービス「Future Family」)

日本のフェムテック市場にも、海外サービスのトレンドが影響しています。

Cora INC.(サブスクリプションサービス「Cora」)

Cora INC.は、個人の月経周期や月経量といった条件に応じてカスタマイズされた生理用品の定期購入サービス「Cora」を運営しています。

2015年に始まったサブスクリプションサービスは、月額8〜16ドル程度で利用可能です。

ひとえに月経といっても、症状や必要になる生理用品の特徴は個人によって異なります。

Coraでは、生理の期間や出血量の程度に合ったアイテムが手間をかけずに入手できるため、ストックの有無を気にする必要もありません。

参考:Cora

Future Family, Inc.(不妊治療サポートサービス「Future Family」)

Future Family, Inc.では、IVF(体外受精)と卵子凍結のサポートをサブスクリプション制で提供するサービス「Future Family」を運営しています。

子どもを望む夫婦やカップルにとって、不妊治療の費用負担は大きくなりがちです。

月額制度の不妊治療サポートサービスを利用すれば、コストを抑えて自分たちに合った治療方法を選択できます。

具体的には、不妊治療のプラン提案や医療機関の紹介、専門医への相談サービスなどが利用可能です。

参考:Future Family

注目度が高まりつつあるフェムテック!今後の動向に期待

日本でも注目が高まりつつあるフェムテックは、テクノロジーを利用して女性ならではの健康問題を解決する商品やサービスのことです。

今後も市場規模の拡大が期待されている分野で、スタートアップ企業から大手企業まで多くの事業者が関心を寄せています。

フェムテックのような新しい概念を広める過程では、ベンチャー企業やスタートアップ企業の活躍が欠かせません。

フォルトナベンチャーズでは、可能性を秘めたベンチャー企業やスタートアップ企業を多くご紹介しています。

転職のご相談は無料の相談フォームから受け付けております。

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