セールステックとは、テクノロジーによって営業活動を効率化し、生産性を向上できるサービスやツールのことです。DXの重要性が高まる現在、セールステックへの正しい理解は不可欠です。今回は、セールステックの概要やカテゴリー、営業担当者に求められるスキルなどを解説します。
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セールステック(SalesTech)とは
セールステック(Sales Tech)は、セールス(Sales)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。セールステックとは、テクノロジーの力で営業活動を効率化できるサービスやツールのことを指します。
DXの必要性が叫ばれる中、セールステックは営業の生産性を向上させる手段として世界中で注目されています。多くの企業がセールステック領域に参入しており、一口にセールステックと言っても、その種類や製品はさまざまです。
セールステックはX-Techの1つ
セールステックはX-Tech(クロステック・エックステック)の1つです。
X-Techとは、テクノロジーによって生み出された新たな製品やサービス、取り組みのことであり、Xには業界や領域の名前が入ります。
代表的なX-Techは、以下のとおりです。
- セールステック:営業
- フィンテック:金融
- リーガルテック:法律
- メディテック:医療
- アグリテック:農業
- アドテック:広告
- エドテック:教育
既存の製品やサービスと先進的な技術を組み合わせるX-Techは、その領域に革新をもたらす存在です。アイデア次第でさまざまな組み合わせが考えられ、今後ますます拡大していくことが予想されます。
セールステックの市場規模
XENO BRAINが公開している市場規模予測によると、2023年のセールステックの市場規模は4,845億円と推計されています。2028年には、6,314億円まで成長する見込みです。
このように、セールステックは急成長が期待されている領域であり、今後も多くの企業がセールステック領域に参入すると考えられます。
参考:XENO BRAIN「市場規模 5年間の推移予測 SalesTech」
セールステックが注目される4つの背景
日本でも、セールステックを導入したり、開発に参入したりする企業が増えています。セールステックが注目されている背景は、以下のとおりです。
- 人材不足により業務効率化の必要性が高まっている
- IT化により営業手法が変化している
- クラウド化により新規参入しやすくなった
- 営業活動のオンライン化が進んだ
ここでは、セールステックが注目される4つの背景について解説します。
1.人材不足により業務効率化の必要性が高まっている
人手不足により業務効率化が重要視されている現在、セールステックを使って営業活動の生産性を高めることが期待されます。
日本では、少子高齢化によって生産年齢人口は減少しているのが現状です。厚生労働省によると、2065年には総人口が9,000万人を下回り、高齢化率は38%台に到達すると予想されます。生産年齢人口(15〜64歳)の減少も顕著です。2020年の生産年齢人口の割合は59.5%でしたが、2065年には51.4%まで減少するといわれています。
生産年齢人口が減少すると、人材を確保するのは難しくなります。優秀な人材についてはなおさらです。
人手不足問題を解決するためには、業務効率化を進めなければなりません。さらに、昨今では働き方改革への対応も求められており、業務効率化の必要性はますます高まっています。
少ない労働力で大きな効果を得るための手段として、セールステックが注目されている、というわけです。
2.IT化により営業手法が変化している
IT化によって営業手法が変化していることも、セールステックへの注目が高まっている理由の1つです。
IT化により、営業活動におけるさまざまな情報のデータ化が進んでいます。日々の営業活動や顧客とのやり取りなどは、ビッグデータとして企業に蓄積できるようになりました。
顧客側も、インターネットを使って情報収集するようになったのもポイントです。
このような変化により、これまでの「足で稼ぐ」営業から、デジタルによる情報提供やマーケティングと組み合わせた営業へと、営業活動も変化しています。その結果、セールステックが注目されるようになりました。
3.クラウド化により新規参入しやすくなった
セールステックを開発・提供する側にとって、セールステック領域に参入しやすくなったのもポイントです。
クラウド化が進んだことで、ITサービスを低コストで開発できるようになりました。その結果、多くのスタートアップがセールステック領域に新規参入できるようになり、セールステック関連のツールが次々と登場しています。
4.営業活動のオンライン化が進んだ
新型コロナウイルス感染症の影響で、営業活動をオンラインで行う企業が増えたのも背景の1つです。
テレワークを導入する企業が増えたことで、企業に直接訪問して商談したり、電話で新規アポを獲得したりするのが難しくなりました。代わりに進んだのが、オンラインで新規顧客を開拓したり、リードを育成したりする、営業活動のオンライン化です。
セールステックはオンラインでの営業活動と親和性が高いため、セールステックを導入する企業が増えました。
セールステックカオスマップに基づく7つのカテゴリー
セールステックには非常に多くの種類があり、ツールによって機能や特徴はさまざまです。
ここでは、CB Insights社がまとめたカオスマップに基づいてセールステックを7つのカテゴリーに分け、それぞれできることを紹介します。
- 営業活動を効率化する営業加速
- 顧客情報を管理する顧客関係管理
- 顧客満足度を向上させるカスタマーサポート
- 購買活動に付加価値を提供する顧客体験
- 顧客との関係性を強化するコンタクト・コミュニケーション
- 営業人材を育成する人材開発・コーチング
- 営業データを分析するインテリジェンス・解析
1.営業活動を効率化する営業加速
営業加速に関するセールステックでは、営業プロセスを改善し、加速させられます。
営業加速ツールの代表例は、SFAツールです。以下のように幅広い機能を備えており、営業活動におけるさまざまな業務を効率化できます。
- 顧客情報管理
- 案件管理
- 商談管理
- 営業担当者ごとの行動や業務進捗管理
- 売上予測
営業活動全体の効率化や生産性向上を目指す場合は、営業加速ツールを導入しましょう。
2.顧客情報を管理する顧客関係管理
顧客関係管理に関するセールステックでは、顧客情報を一元管理できます。
顧客情報をまとめたデータベースを構築したり、これまでの問い合わせや商談履歴などを蓄積し、顧客との関係性を可視化したりできるツールです。顧客とのコミュニケーション品質の向上や、顧客ロイヤルティ向上などが期待できます。
顧客関係管理ツールの代表例は、CRMツールです。以下のような機能があります。
- 顧客情報管理
- 問い合わせ管理
- 営業進捗管理
- メール配信
- 分析
- レポート
3.顧客満足度を向上させるカスタマーサポート
カスタマーサポートに関するセールステックは、顧客満足度の向上に特化しているのが特徴です。
カスタマーセンターへの問い合わせを一元管理できる問い合わせ管理システムや、顧客の質問に回答できるチャットボット、FAQシステムなどが該当します。
顧客とのやりとりを1つのプラットフォームで管理し、顧客とのスムーズなコミュニケーションを実現するツールです。
4.購買活動に付加価値を提供する顧客体験
顧客体験に関するセールステックを活用することで、購買活動に付加価値を与え、営業を強化できます。
売上を上げるためには、単に多くの商品やサービスを顧客に販売するだけでは不十分です。顧客が商品・サービスに興味を持ち、購買に至るまでの一連のプロセスにおいて、付加価値を与えることが大切です。顧客体験の向上に取り組むことで、顧客ロイヤルティの向上やリピーター獲得につながり、結果として売上アップが期待できます。
顧客体験ツールの例は、CRMツールやMAツールなどです。Webサイトに訪問したユーザーに対して欲しい情報をポップアップで表示させる、ニュースリリースをプッシュ配信で行う、などの機能があります。
5.顧客との関係性を強化するコンタクト・コミュニケーション
コンタクト・コミュニケーションに関するセールステックは、顧客とのコミュニケーションを強化できるのがポイントです。
チャットツールやオンライン会議システムなどが該当します。
顧客満足度を向上させるという目的は、顧客体験ツールと共通しています。コンタクト・コミュニケーションならではの特徴は、顧客との接点を直接持ち、コミュニケーションを促進できることです。
6.営業人材を育成する人材開発・コーチング
人材開発・コーチングに関するセールステックは、営業人材の能力向上や教育、モチベーションアップに活用できます。顧客に対してではなく、自社の営業担当者に対して使うのが特徴です。
人材開発・コーチングツールの具体例は、オンラインで学習できるツールや、ロールプレイングを行い、フィードバックを受けられるツールなどです。
人材開発・コーチングツールを導入することで、質の高い社員教育を実現でき、組織全体で営業品質を向上できます。
7.営業データを分析するインテリジェンス・解析
インテリジェンス・解析に関するセールステックでは、営業活動で得られたデータを分析し、その結果を活かして営業を強化できます。
営業活動で頻繁にデータを収集していても、データを活用できていない企業は少なくありません。インテリジェンス・解析ツールを活用することで、データをもとに適切なネクストアクションを決められたり、顧客の課題を抽出できたりします。
インテリジェンス・解析ツールの代表例は、BIツールです。営業トークのデータ化や、受注確率が高い営業トークを分析できるものもあります。
【カテゴリー別】代表的なセールステック企業
国内外問わず、多くの企業がセールステック領域に参入しています。以下では、代表的なセールステック企業と提供しているツールを、上記のカテゴリごとに一覧でまとめました。
<営業加速>
- Salesforce社:Sales Cloud
- 株式会社マツリカ:Senses
- UPWARD株式会社:UPWARD
<顧客関係管理>
- Salesforce社:Sales Cloud
- Copper社:Copper
<カスタマーサポート>
- Zendesk社:Zendesk
- Freshworks社:Freshdesk
- 株式会社ラクス:メールディーラー
<顧客体験>
- Adobe社:Adobe Marketo Engage
- SATORI株式会社:SATORI
- WalkMe社:WalkMe
- 株式会社プレイド:KARTE
<コンタクト・コミュニケーション>
- Zoom Video Communications社:Zoom
- ベルフェイス株式会社:bellFace
- Intercom社:Intercom
- Conversica社:Conversica
<インテリジェンス・解析>
- Lattice Engines:Lattice
- AffectLayer:Chorus.ai
- Tableau Software:Tableau
セールステックの導入で期待される3つの効果
セールステックは、上手に活用できれば、営業活動の効率化や営業品質の向上につながります。
セールステックを導入するメリットは、具体的に以下のとおりです。
- 営業活動が効率化し生産性が向上する
- 人手不足問題や働き方改革に対応できる
- 営業品質が向上する
ここでは、セールステックの導入で期待される3つの効果について解説します。セールステックを導入すべきか迷っている方は、参考にしてください。
1.営業活動が効率化し生産性が向上する
セールステックを活用する大きなメリットが、業務効率化と生産性向上が期待できる点です。
セールステックによって、これまで時間がかかっていた案件管理や顧客情報管理といった業務を簡単に行えるようになります。
ツールによっては、受注確度ごとに顧客をグルーピングできるものもあり、確度が高い顧客に対して優先的にアプローチ可能です。より受注につなげやすくなります。
また、各営業担当者の実績や活動記録なども可視化できるため、営業マネジメント業務が効率化するのも魅力です。
2.人手不足問題や働き方改革に対応できる
人材確保に悩んでいる企業には、営業活動を効率化できるセールステックの活用が効果的です。同じ業務量を少ない人数でこなせるようになるため、人手不足問題に対応できます。
働き方改革に対応できるのもメリットです。
2019年4月1日に働き方改革関連法が施行されて以降、企業には従業員の労働環境を整備・改善することが求められています。具体的にやるべきことの1つが、長時間労働の是正です。人手不足によって従業員の業務負担が増えていた場合、セールステックで業務を効率化できれば、一人ひとりの業務負担も軽減できます。結果、長時間労働の是正につながるでしょう。
働き方改革に対応し、従業員のワークライフバランスを実現できる職場づくりを進めたい企業にも、セールステックの活用が効果的です。
3.営業品質が向上する
セールステックによって、営業品質の向上が期待できるのも魅力です。
これまで時間や手間がかかっていた業務を効率化できれば、提案準備や交渉といったコア業務に注力できるようになります。その結果、顧客への理解がより深まったり、顧客のニーズに対応した提案ができたりと、営業品質の向上が期待できます。
ツールによって案件や顧客の管理がしやすくなれば、顧客ごとに適切なタイミングでアプローチでき、受注につなげられる可能性も高いです。
セールステックを活用するための3つのポイント
セールステックをただ導入するだけでは、期待される効果を発揮できません。セールステックを上手に活用するためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- 導入前に現状の営業課題を明らかにする
- 導入の目的や期待される効果を共有する
- 定期的に効果を検証して使い方を見直す
ここでは、セールステックを活用するためのポイントについて解説します。
1.導入前に現状の営業課題を明らかにする
セールステックを導入する前に、現状の営業課題を明らかにしましょう。
自社に合ったツール・サービスを選ぶためには、現状の組織が抱える課題を解決できるものを選ぶことがポイントです。導入前に課題を明確化することで、どのカテゴリーのツールを選ぶべきかが明らかになります。
現在の業務を営業プロセスごとに整理し、現場の感想や要望なども踏まえて課題を洗い出していきましょう。
2.導入の目的や期待される効果を共有する
セールステックを導入する際は、営業現場に定着するよう努めなければなりません。そのためには、導入の目的や背景、期待される効果を全体に共有することが大切です。
たとえば「案件や商談管理を効率化するために、SFAツールを導入する」と共有すれば、営業担当者もツールを利用する目的や必要性を理解でき、積極的に活用するようになるでしょう。
新しいツールを導入する際は、スムーズな定着のために、ツールの必要性を現場に理解してもらうことが欠かせません。
3.定期的に効果を検証して使い方を見直す
セールステックを導入した後は、定期的に効果を検証し、適宜使い方を見直す必要があります。
使用感や現状の利用頻度、使いこなすうえでの課題などを洗い出し、さらなる業務効率化を目指しましょう。
うまく使いこなせていない部分があれば、ベンダーに問い合わせたり、ベンダー主催の勉強会に参加したりして、ツールをより活用できるよう努めることが大切です。
セールステック時代に求められる4つのスキル
最後に、セールステック時代だからこそ身につけたいスキルについて見ていきましょう。
セールステックが進化しているからといって、営業担当者が不要になるわけではありません。人間にしかできない仕事も複数存在します。セールステックを上手に活用しながら、人間にしかできない仕事で価値を発揮する、という姿勢が必要です。
セールステック時代に活躍できる営業担当者になるためには、以下のようなスキルを身につけましょう。
- セールステックを受け入れる柔軟性
- デジタルツールを使いこなす知識・スキル
- コミュニケーション能力
- データ分析・判断能力
ここでは、4つのスキルについて解説します。
1.セールステックを受け入れる柔軟性
セールステックによる営業活動の変化に対応するためには、セールステックを受け入れる柔軟性が必要です。
セールステックを導入することで、営業のやり方が変わったり、新たに覚えないといけないことが増えたりと、これまでの営業活動の形が大きく変化するでしょう。既存のやり方に固執していると、セールステックを活用できません。DXに向けた取り組みも形骸化してしまいます。
セールステックを受け入れ、使いこなそうとする柔軟性が重要です。
2.デジタルツールを使いこなす知識・スキル
営業活動でセールステックを活用するためには、デジタルツールを使いこなすための知識やスキルが不可欠です。
セールステックにはさまざまなツールや機能があります。せっかく営業活動に導入しても、ツールの特性や機能を十分に理解できなければ、セールステックの効果を発揮できません。ツールを使いこなせないまま放置され、結局定着せずに終わってしまうこともあります。
デジタルツールの扱いが得意な営業担当者を中心に、営業現場で積極的に使用し、組織全体がツールに慣れることが大切です。
3.コミュニケーション能力
セールステック時代だからこそ、営業担当者にはますますコミュニケーション能力が求められます。
セールステックは、営業担当者の仕事すべてを担えるわけではありません。顧客の潜在ニーズを引き出したり、対話によって関係性を構築したりすることは、人間にしかできない仕事です。
営業として価値を発揮するためには、これまで以上に高いコミュニケーション能力が必要です。
4.データ分析・判断能力
データ分析能力や、分析結果から判断するの能力に長けた営業担当者は、セールステック時代に重宝されます。
セールステックの登場により、営業活動のデータ化がさらに進んでいます。データをどのように解釈して落とし込んでいくのか、どの情報が自社にとって特に重要なのかなど、データを分析して判断するのは、人間の役割です。
さらに、次々と登場するセールステックツールの中で、どれを自社に導入し、どの領域を効率化していくのか、といった判断も求められます。
このように、営業担当者には高いデータ分析能力や判断能力も必要です。
セールステックが営業活動に変革をもたらす
セールステックは、営業活動をテクノロジーの力で効率化し、生産性を向上できるサービスやツールのことです。人手不足により業務効率化の重要性が高まっている現在、セールステックを活用する企業が増えています。スタートアップをはじめ、多くの企業がセールステック領域に参入しており、カテゴリーごとにさまざまなツールが登場しているのもポイントです。
このような変化に対応するためには、実際にセールステックを導入し、営業現場に定着させる必要があります。セールステックで効率化できる部分はツールに任せ、人間だからこそできる業務に注力することで、営業品質の向上にもつながるでしょう。
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