IT技術の発展が目覚ましい現代において欠かせない存在ですが、具体的に何をする仕事なのかいまいちわからないという方は多いのではないでしょうか。
本記事では、SIerの基本情報をはじめ、具体的な仕事内容や代表的な種類、向いている人の特徴を解説します。転職する際に押さえておきたいポイントなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
SIerとは
SIerとは、情報システムの導入を一貫して請け負う企業のことを指します。顧客企業の業務内容や課題を理解し、最適な情報システムの企画・設計・開発・運用・保守までをトータルにサポートするのがSIerの役割です。
また、レガシーシステムの刷新やデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出など、企業のDX化の実現に向けたさまざまな取り組みもサポートしています。
SIerは企業の情報化・デジタル化を支える重要な役割を担っており、IT技術とビジネスの架け橋となって顧客の競争力強化に貢献している存在です。
SIerの読み方
SIerの読み方は「エスアイアー」で、システムインテグレーターの略称です。SIerは「System Integration(システムインテグレーション)」のSIと、「er(~する者)」が組み合わさった造語です。
近い名称として「SI」や「SE」などがありますが、意味や役割は異なるので注意してください。
SIerは日本国内だけで使用される和製英語なので、海外では意味が通じない可能性があります。英語圏で伝える場合は、「System Integrator」と言うようにしましょう。
SIerの歴史
SIerは、1987年に誕生したといわれています。当時はバブル後であり、ITに対するリソースが割けず、悩まされている企業は数多くありました。
その際、通商産業省(現・経済産業省)によって創設された「システムインテグレーション認定制度」で認知されました。それがきっかけとなり、1990年代以降はシステムの企画から開発、構築などの工程を外部のシステムインテグレーターに依頼する流れが起き、現在のような形につながったとされています。
SIerの仕事内容
SIerの主な仕事として、以下の4つが挙げられます。
- 課題解決へのコンサルティング
- システムの企画立案・要件定義
- システム設計・開発
- システムの運用・保守
それぞれの仕事内容を詳しくみていきましょう。
課題解決へのコンサルティング
顧客の抱える業務課題を解決するためのコンサルティングは、SIerが担う重要な業務の一つです。顧客の業務プロセスを分析しながら課題を明確化し、課題解決のためのITシステム導入を提案します。
また、費用対効果を考慮したうえで最適なシステム案を提示し、経営層への説明資料作成や合意形成もサポートします。
SIerは、ITの専門知識だけでなく業務知識やコンサルティングスキルを生かし、顧客の経営課題解決に貢献する存在です。
コンサルティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:コンサルタントとは何か?
システムの企画立案・要件定義
SIerは、お客様の抱える課題やニーズを分析し、課題解決に向けた最適なシステムの企画立案を行います。
また、発注者の要望やニーズを踏まえながらシステムの仕様を要件定義し、システムに必要な機能や品質を明確にしてお客様と合意形成を図ります。本工程は、プロジェクト成功のカギを握る重要なフェーズで欠かせない要素です。
SIerは、お客様のビジネスを深く理解し、IT技術を駆使して最適解を導き出す役割を担っています。
システム設計・開発
SIerの中核業務は、システム設計・開発です。顧客企業の要件定義をもとに、最適なシステムを設計し、開発していきます。
具体的には、基本設計からはじまり、詳細設計やプログラミング、総合テストといった流れで進みます。品質と納期のバランスを取りつつ、顧客の要求を満たすシステムを構築するのがSIerの腕の見せ所といえるでしょう。
システムの運用・保守
開発したシステムの安定的な運用と保守も、SIerの重要な仕事です。具体的には、システムの監視や障害対応、定期メンテナンス、ユーザーサポートなどが挙げられます。
システムの運用や保守では安定稼働を最優先しつつ、ユーザーの要望に柔軟に対応していくことが求められます。トラブルの未然防止とスムーズな業務運用をサポートし、お客様に信頼されるSIerになることが重要です。
SIerの種類と代表的な大手企業例
一言でSIerといっても、さまざまな種類が存在します。主な種類として、以下の5つが挙げられます。
- メーカー系
- ユーザー系
- 独立系
- 外資系
- コンサル系・シンクタンク系
ここでは、各種類の特徴や代表的な大手企業を具体的に解説します。
メーカー系
メーカー系は、PCメーカーの開発部門が独立したSIerです。親会社のシステム機器やソフトウェアを活用し、顧客企業のシステム導入を支援するのが特徴です。
大手IT企業の子会社として位置づけられるケースが多く、親会社から案件を受注することがほとんどなので経営が安定している傾向にあります。
メーカー系SIerの代表的な企業には、日立製作所や日立ソリューションズ、NECなどが挙げられます。
ユーザー系
ユーザー系は、大手企業の情報システム部門が独立してSIer事業を行っているSIerです。メーカー系SIerとは異なり、PCメーカー以外の企業が親会社であり、金融系や商社系、通信系など、さまざまな企業が挙げられます。
親会社によって取引内容が異なりますが、特定の業界に特化した業務知識とシステム開発の実績を強みとしている企業が多いのが特徴です。
代表的なユーザー系SIerとしては、伊藤忠テクノソリューションズやNTTデータ、トヨタシステムズなどがあります。
独立系
独立系は、メーカー系やユーザー系とは異なり親会社はなく、システムインテグレーション事業として最初から設立されたSIerです。
親会社を通して受注するといったような制約がなく、中立的な立場からシステム開発を行えるため、よりクライアントの要望に沿った自由度の高い開発ができます。
独立系SIerの代表的な企業としては、大塚商会やTIS、オービックなどが挙げられます。
外資系
外資系は、海外の情報システム会社や情報システム専門企業などが日本市場に進出し、日本企業の情報システムを手がけているSIerです。
グローバルな企業文化が特徴的で世界規模の技術やプロセスがあり、コンサルティングに大きな強みを持っています。
外資系SIerの代表企業として、日本オラクルや日本IBM、アクセンチュアなどがあります。
コンサル系・シンクタンク系
コンサル系は、システム開発に加えて経営や業務改善のコンサルティングも請け負うSIerであり、シンクタンク系はメーカー系やユーザー系などの親企業を持ち、高度な分析力が特徴的なSIerです。
双方ともにクライアントが抱える問題を分析し、必要なシステムの提案や導入の支援を行います。
近年ではDX化を積極的に推進している企業も増えており、コンサル系SIerやシンクタンク系SIerが活躍できる場は多くなっています。
コンサル系SIer・シンクタンク系SIerの代表的な企業としては、キーエンスやベイカレント・コンサルティング、野村総合研究所、三菱総合研究所などが挙げられます。
コンサルファームについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:【2024年最新版】コンサルティングファームリスト。最新ランキングもご紹介!入社難易度の真相も解説。
SIer業界に転職するときのポイント
SIer業界への転職を検討しているものの、どのような点を意識すればいいのかと疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。
さまざまなポイントがありますが、そのなかでも注目したいのは以下の3点です。
- 業界構造に注目して考える
- SIer業界の課題
- SIerの将来性や需要
ここでは、各ポイントについて詳しく紹介します。
業界構造に注目して考える
SIerへの転職を検討する際は、業界構造を理解することが重要です。現在のSIerは、ソフトウェア開発プロセスの開発手法であり、直線的に進行していくウォーターフォール制度で成立している企業が多いです。
具体的には、案件定義や設計などの開発フェーズが順番に進み、フェーズを一つずつ完了させていきます。フェーズには上流と下流の業務に分けられており、要件定義や設計などを行うのが上流SIer、設計や運用などを行うのが下流SIerとなっています。
SIerには上述したような違いがあるため、「上流工程に携わりたい」などを考えている場合は元請けの大手SIerへ、「基本的な技術を学びたい」なら下請けSIerを選ぶなど、自身が考えるキャリアプランに沿って選択するといいでしょう。
SIer業界の課題
SIer業界の課題について理解を深めておくことも、転職において押さえておくべきポイントです。現代のSIer業界には、業務の属人化やコミュニケーションロスの発生、技術者の高齢化・人材不足など、さまざまな課題を抱えています。
また、多重下請けの構造になっているため、下流工程を担当するSIerは上流工程を担当することはほとんどありません。
上述した課題は市場全体の競争力の低下につながってしまうため、課題解決を図れる人材が求められています。
SIerの将来性や需要
SIerの需要は高く、現代において将来性があるといえます。具体的な理由としては、DXの加速による企業のIT投資の活発化やレガシーシステムの刷新ニーズの高まりなどが挙げられます。
その他にも、AI・IoTなど、新技術活用に向けたシステム開発の増加しており、大企業を中心にDX推進の動きが本格化しているのも需要を高めている理由の一つです。
DX需要の高まりを背景にSIer市場は今後も拡大が見込まれているため、安定した将来性があるといえます。
コンサル業界へのキャリアアップ転職も可能
SIerでキャリアを積んだあとは事業会社の情シ部門やCIOなど、コンサル業界への転職も視野に入ります。SIerで培った課題の特定と解決策を立案する課題解決力や、複雑な問題の構造化と分析を行う論理的思考力などの能力は、コンサル業界でも重視されるスキルです。
その他にも、クライアントと円滑な意思疎通ができるコミュニケーション力やプロジェクトをスムーズに進めるマネジメント力も重宝されるでしょう。
上述した能力を武器にできれば活躍の場を広げることができ、コンサル業界でさらなるキャリアアップを目指すことが可能です。
SIerに向いている人の特徴
SIerに向いている人の特徴として、以下の4つが挙げられます。
- コミュニケーション能力がある
- プロジェクトマネジメントスキルがある
- 論理的思考力がある
- ITスキルがある
ここでは、それぞれの特徴を解説するので自身が当てはまっているかをチェックしてみてください。
コミュニケーション能力がある
SIerとして活躍するためには、優れたコミュニケーション能力が必要不可欠です。
SIerは、ITに詳しくない顧客の課題をヒアリングし、最適解を提案する必要があります。顧客の真のニーズを引き出すためには、相手の立場に立って考え、難しい技術用語を平易に説明する力が求められます。
また、プロジェクトを成功に導くには、チームメンバーとの密なコミュニケーションが欠かせません。メンバー一人ひとりの特性を理解し、強みを生かしながらチーム一丸となって目標達成に向けて取り組む姿勢が重要です。
その他にも、上司や関係部署に対して、プロジェクトの進捗や課題を適切にエスカレーションする能力も必要であり、幅広いコミュニケーション能力が求められます。
プロジェクトマネジメントスキルがある
SIerは、システム開発プロジェクトの円滑な遂行のためにプロジェクトマネジメントスキルも必要です。具体的には、スケジュールやコストなどのマネジメント能力、ステークホルダーとの調整力、チームマネジメントとリーダーシップなどが求められます。
また、プロジェクトマネージャーとしての経験などがあれば、SIerとしての適性の高さを示す一つの指標になります。
プロジェクトマネジメントスキルはSIerにとって欠かせない能力なので、プロジェクトの成功に導くためにも日々スキルを磨いていくことが重要です。
論理的思考力がある
SIerの仕事を進めるうえでは、論理的に物事を捉えられる論理的思考力も求められます。システム開発においても論理的に設計し、効率的なコーディングを行うために論理的思考力は欠かせません。
SIerでは論理的に考えて行動する場面が非常に多いため、円滑に業務を進めるためにも身につけておく必要があります。
ITスキルがある
SIerの仕事においては、ITスキルが必須です。クライアントの業務内容を理解し、最適なシステム開発を行うためには、プログラミング言語の知識と実務経験、データベースやネットワークの設計や構築などのスキルが求められます。
その他にも、セキュリティやクラウドの知識や活用スキルなども必要です。さまざまなITスキルを持っていることは、SIerとして活躍するために重要な要素といえるでしょう。
SIerとして転職する方法
SIerに転職する方法として、主に3種類挙げられます。
- 転職エージェントを活用する
- 転職サイトを活用する
- リファラル採用を活用する
ここでは、転職方法について解説するので参考にしてください。
転職エージェントを活用する
SIerへの転職を考えている方におすすめなのが、転職エージェントの活用です。転職エージェントは、求職者と企業の間に立ち、マッチングを行うプロフェッショナルです。
転職エージェントを活用すれば非公開求人も含めた幅広い求人情報を得ることができ、書類選考や面接対策など手厚いサポートを受けられます。
また、年収交渉の代行や入社後のアフターフォローなども充実しており、確実な転職を目指したい方におすすめです。
SIerへの転職活動を行う際は、SIer業界に特化した転職エージェントを選ぶのがポイントです。
転職サイトを活用する
SIerへの転職を目指す際、転職サイトを活用するのも効果的です。転職サイトでは、多数のSIer企業の求人情報を一括で検索・比較できます。
職種や勤務地、年収などの条件を指定して求人を絞り込むこともでき、各求人の詳細情報や企業情報を確認できるため、自分に合ったSIer企業を見つけやすくなります。
転職サイトは情報収集にはおすすめな反面、転職エージェントのようにサポートを受けることはできないため、あらかじめ理解しておくことが肝心です。
リファラル採用を活用する
SIerへの転職において、リファラル採用を活用するのも有効な手段です。リファラル採用とは、自社の社員や取引先の信頼できる方からの紹介で採用するしくみのことを指します。
リファラル採用は、書類選考などの手間が省けて入社しやすく、自身のスキルに合っている企業で働けるといったメリットがあります。
一方で、自分で人脈を洗い出す必要があり、交渉やスキルアップがしにくいなどの点には注意点が必要です。
SIerとして転職する際のよくある質問
ここまでSIerに関するさまざまな情報を解説してきましたが、素朴な疑問や不明点がある方はいるのではないでしょうか。
最後に、SIerとして転職する際のよくある質問を4つ紹介するので、転職活動の際に役立ててください。
文系だと転職できない?
SIerへの転職には理系の知識が必要不可欠だと思われがちですが、文系出身者でもSIerへの転職は十分可能です。SIerの業務には、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメントスキル、論理的思考力など、文系ならではの強みを生かせる場面は数多くあります。
また、スキルは入社後に習得すればいいと考える企業が多く、学部問わず求人募集されることは珍しくありません。
そのような理由から、文系出身者でもSIerとして働くことを諦める必要はないため、積極的にチャレンジしていくといいでしょう。
必要な資格・スキルは?
SIerが携わる業務は専門的な技術や知識が必要にありますが、働くうえで必要不可欠な資格はありません。ただし、ITパスポート試験や中小企業診断士試験などに合格していれば、専門性を保有していることをアピールできます。
また、実務経験が重視される傾向にあるため、開発言語スキルやマネジメントスキルなどがあると面接が有利になる可能性があります。
SIerへの転職を目指す際は、自分の強みを最大限に生かせる企業を選ぶのが肝心です。
SIerはつらい・きついといわれているけど……?
SIerの仕事はつらい・きついといわれますが、その理由としては「納期に追われることが多く、長時間労働・残業が常態化しやすい」「プロジェクトの責任者となることも多く、精神的なプレッシャーが大きい」などが挙げられます。
また、下請けなどの下流工程の場合は会社によっては過酷になりがちな点も、つらい・きついといわれる要因の一つです。
その一方で、情報システムを通じて社会に貢献できる点やチームで協力して問題解決する点にやりがいを感じている方は多くいます。
つらい・きついと感じるか、やりがいを感じるかは個人差がありますが、ホワイトで働きたい場合は外資系や大手企業で働くのがおすすめです。
スキルアップがしたい場合はどうしたらいい?
SIerとしてスキルアップを目指したい場合は、社内研修や外部セミナーへ積極的に参加するのがおすすめです。研修プログラムを通じて技術や知識を学ぶことができ、最新プロジェクト管理手法なども学習できます。
また、元請けの大手SIerに転職すればさまざまな技術に触れることができ、働きながら理解を深めていくことが可能です。
その他にも、転職エージェントを活用すればどのようなスキルを身につければいいのかなどのアドバイスを受けられるため、効率的な自己成長を実現できます。
SIerへの転職ならフォルトナにお任せください
SIerへの転職を考えているなら、フォルトナにお任せください。
フォルトナはハイクラス転職やコンサル転職に特化しており、豊富な転職実績を誇っています。その結果、マイナビやエン・ジャパン、ビズリーチなどの大手人材紹介会社が選ぶトップ転職エージェントに選出されました。
また、BCGやアクセンチュアなどのコンサル出身者が多く在籍しており、応募書類の添削や面接対策などの手厚いサポートを用意しています。
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