欧米と比較すると、日本のエグゼクティブ転職は規模が大きくありません。
そのため、「実態がよく分からない」という声も多く耳にします。
しかし、エグゼクティブ採用のニーズは急速に高まっている現状があるのです。
本コラムでは、エグゼクティブ転職の基礎知識として、最新の事例を交えたエグゼクティブ転職の特徴や実態に迫ります。
エグゼクティブ転職とは?
そもそもエグゼクティブ転職とは何を指すのでしょうか。
英語の「executive」は「企業の役員・管理職員・経営者」といった意味を持ちます。
そのため、エグゼクティブ転職はいわゆるCXOクラス(CEOやCOO、CTOなど)や執行役員、コンサルファームのパートナークラスのような経営幹部層の転職を指すことが多いです。
転職サイトやエージェントによってはエグゼクティブを「部長以上の役職」と定義していたり、いわゆるハイクラス転職と同義で扱っているケースも見られます。
ハイクラス転職は「年収800万円以上」や「年収1000万円以上」というように年収で定義されるケースが多く、エグゼクティブ転職は役職で定義されるケースが多いですが、あくまでも傾向に過ぎません。
エグゼクティブ転職の特徴
下記はエグゼクティブ転職の特徴を簡潔にまとめたものです。
マッチングが重要
エグゼクティブの採用は、「新規事業の立ち上げ」「将来的な後継者候補」などの明確な目的を持って行われているケースが多いため、それに合致した即戦力としてのスキルや経験を持つことがより一層求められます。
求人が非常に少ない
エグゼクティブとして該当するCXOクラスや執行役員などは、企業の中でもポジションに限りがあります。
外部からの招聘だけでなく、内部からの昇進という選択肢もあるため、常に人材を募集しているとも限りません。
ポジションに空きがなければ当然転職できないため、活動は中長期的なものになる傾向があります。
非公開求人がほとんど
エグゼクティブの採用は、企業の経営戦略に直結することがほとんどです。競合他社に知られるリスクもあるため、採用は秘密裏に進めることがほとんどです。
ハイクラス・エグゼクティブ転職を得意とするエージェントやサーチファームからは「コンフィデンシャル案件」として紹介を受けることが多いでしょう。
経営トップ層とのリレーションが重要
エグゼクティブ転職では、直属の上司が社長であったり、同僚が役員クラスであったりするケースも多くなってきます。
トップ層の人間性・経営方針、評価制度によっては、上手くバリューを出すことも難しいでしょう。
そのため、選考時にはトップ層との面接だけでなく会食がセッティングされるケースも多く、お互いの擦り合わせが入念に行われます。
エグゼクティブ転職が活況の理由
冒頭にも述べた通り、日本のエグゼクティブ転職はまだまだ規模感として小さいものの、徐々に注目度が高くなりつつあります。
次に、その理由について紐解いていきます。
もともと年功序列や終身雇用が当たり前だった自体には、エグゼクティブ転職は今以上に一般的ではありませんでした。
経営に関わるような大事な仕事は、自社をよく知らない外部人材には任せられない。
経営幹部には、自社に長年勤め、熟知している内部昇進者を優遇する。
したがって、エグゼクティブ人材のニーズは低く、エクゼクティブ転職をする人の数も少なかったわけです。
しかし、稲盛和夫氏や新浪剛史氏、三枝匡氏など、プロ経営者と呼ばれる存在も徐々に台頭してくるなど、日本のエグゼクティブ人材の転職事情は大きく変化し、企業ニーズも急速に高まっています。
それは何故なのでしょうか。
ビジネス環境の劇的な変化と、社内人材プールの限界
エグゼクティブ転職が普及してきたのは、ビジネス環境に大きな変化が起きたことが背景にあります。
AIやIoTなど、デジタルテクノロジーによる破壊的創造・破壊的イノベーション(=デジタルディスラプション)によって、新しいビジネス手法が続々と登場しています。
IT✕金融、メーカー✕IoT、医療✕AIなど、複数の業界やテクノロジーを横断・融合させたビジネスは今後も増えていくでしょう。
企業が継続的に成長していくには、常に新しい商品の開発や取り組みが必要になりますが、今はテクノロジーとビジネスを切り離すことが難しい時代。
テクノロジーを活用した新規事業展開や異業種参入を行いたくても、自社内の能力・人材だけで遂行できる企業は多くありません。
新規事業、海外進出、M&A、自社経営上の説明責任の高度化、次世代リーダー人材育成などのニーズが高まる中、育成する時間的余裕もないのが現代企業の実情と言えます。
現に米国ではスタートアップのEXITの90%超が、IPOではなくM&Aとなっています。つまり、多くの大企業がスタートアップを買収し、自社のビジネスモデル変革に日々取り組んでいるということです。
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)によるスタートアップのM&Aはたびたびニュースにもなりますが、そのような世界的な大企業でさえ、ゼロからビジネスを立ち上げるのは時間がかかるし、難しいということです。
当然日本企業においても、外部で知見を持つコンサルティングファームを活用しているわけですが、社内にも改革を牽引し、自社の成長を導けるリーダーが必要とされます。
これらのことから、自社にない知見や経験を豊富に持つエグゼクティブ人材を、「採用」という手段で取り込もうとする動きが高まっているのです。
エグゼクティブ転職は”小さなM&A”
言い換えれば、エグゼクティブ転職はM&Aのようなものであると言えるかもしれません。
M&Aにかかる時間とコストに比べれば、エグゼクティブ採用にかかる時間とコストは低く、より手軽な手段と言えます。
実際に、エグゼクティブの採用によって、新しい組織やビジネスが立ち上がる事例には枚挙にいとまがありません。
例えばEY Japanは、サービスラインを横断し、Data & Technologyケイパビリティの向上を目指したイノベーション・センター・オブ・エクセレンスを設立しましたが、そのリーダーには日本IBMにて常務を務めた松永達也氏を招聘し、一気にテクノロジー分野の強化を進めました。
参考:EY Japan、テクノロジー分野の強化に向け数々の施策を発表
また、PwCコンサルティングはテクノロジーを活用した社会課題解決推進に向け産官学の連携を支援する「Technology Laboratory(テクノロジーラボラトリー)」を開設しましたが、同組織の所長に就任したパートナーの三治信一朗氏は、NTTデータ経営研究所や三菱総合研究所出身で、ロボットや先端医療など最先端の産業に関わるコンサルティングの第一人者として、チームをリードしていました。
参考:PwCコンサルがTechnology Laboratoryを開設
このように、エグゼクティブ転職はもはや小さなM&Aと言えるほど、その企業に新たなケイパビリティをもたらすインパクトがあるのです。
エグゼクティブ人材の増加
コンサルティングファームや投資銀行、PEフアンドなどのプロフェッショナルファームは人材輩出企業として、多くの優秀な人材を市場に供給してきました。
これらの業界で戦略立案やM&A、新規事業などに携わり経験を積んだ人材が、さまざまな業界への転身を遂げ、エクゼクティブ人材として活躍しています。
このキャリアパスの誕生が、外部のエグゼクティブ人材でも一定の成果が出せるという認識を転職市場に浸透させました。
「将来的にプロ経営者を目指したいので、コンサルファームに入りました」と語るポストコンサルも非常に増えてきています。
転職市場は、「市場」である以上、需要と供給のバランスで決まってきます。
エグゼクティブ転職市場が伸びてきたということは、「企業側のエグゼクティブ層の需要」と「エグゼクティブ転職を行う人の供給」が増えたということです。
また、ビジネス環境の変化が、自社の経営層には外部人材こそが必要という認識をも生み出し、さらにニーズを高めたともいえるでしょう。
まとめ
謎の多いエグゼクティブ転職の基礎知識について解説してきました。デジタルテクノロジーによるビジネス環境の劇的な変化や、エグゼクティブ人材の増加などが、エグゼクティブ転職市場の発達を促してきたと言えます。
エグゼクティブ採用は企業の経営戦略に直結することから、コンフィデンシャルな案件として扱われることがほとんどで、その実態が掴みにくいという点があります。
弊社では企業のCXO、執行役員、パートナークラスへのトップアプローチによるエグゼクティブ転職を得意としております。エグゼクティブ転職にご関心をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談頂ければ幸いです。
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