グローバルなビジネス環境の中で競争力を高めるためにSAPの導入を検討する企業も増加しており、今注目を集めているERP製品です。
本記事では、SAPの概要をはじめ、普及した背景や導入のメリットとデメリット、最新の動向などを解説します。
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SAPとは
SAPとは、ドイツに本社を構えているSAP社が開発・販売する企業向けソフトウェアです。多種多様なERP製品が存在する中で長い歴史を持っており、グローバル展開している企業をはじめ、さまざまな企業に導入されています。
また、SAPは業務のサポート範囲が広く、生産管理や販売管理などの基幹業務に加え、プロジェクト管理なども効率化を図ることが可能です。
SAPは、機能の充実さとグローバルな対応力があることからビジネスソフトウェア市場でトップシェアを誇っており、今もなお注目を集めています。
SAP社の概要
SAP社の概要は以下の通りです。
企業名 | SAP SE |
設立 | 1972年4月1日 |
代表者 | Christian Klein |
本社所在地 | ドイツ バーデン=ヴュルテンベルク州ヴァルドルフ |
日本所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目2番1号 三井物産ビル |
売上高 | 308.7億ユーロ |
従業員数 | 106,043名(2023年時点) |
SAP社は、ドイツに本社を置く世界最大のビジネスソフトウェアメーカーです。1972年に5人の元IBMのエンジニアによって創業されました。
1973年に「SAP R/1」をリリースして以降、確実な進化を続けており、創業から50年以上経った現在も企業のビジネスプロセス変革を支援し続けています。世界の190ヶ国に約440,000社の顧客を抱えており、ドイツ最大の企業であることが伺えます。
ERPの定義と特徴
ERPとは、「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略称であり、企業の基幹業務を統合的に管理するソフトウェアのことです。ERPには、リアルタイムでデータ連携ができ、企業の意思決定をサポートといった特徴があります。
ERPを導入することで、業務プロセスの標準化やデータの一元管理、情報共有の迅速化などを実現することが可能です。
SAPのERPが普及した背景
SAPのERPが世界中の企業に広く普及した理由としては、グローバル化の進展や業務プロセスの効率化の高まりなどが挙げられます。
日本においても、1990年代の欧米で起こった「BPR(Business Process Reengineering)」をきっかけに多くの企業でERP製品の導入が進みました。それだけでなく、「2000年問題」もERP製品の導入を後押しした理由ともいわれています。
ERPの普及が進む中で、PeopleSoftやBaanERPなどのERP製品を抑えて圧倒的な世界市場シェアを獲得したのがSAP社です。
SAP導入のメリット
SAP導入におけるメリットは、主に3つです。
- 業務プロセスの標準化・効率化
- リアルタイムな情報把握
- 経営の可視化
ここでは、各メリットを詳しく見ていきましょう。
業務プロセスの標準化・効率化
SAPの導入により、企業は業務プロセスの標準化と効率化を実現できます。SAPのERPシステムは、業界のベストプラクティスに基づいた標準的な業務プロセスを提供しています。
この標準化により、業務の一貫性と透明性の向上や人的ミスの削減といったメリットを得ることが可能です。
SAPの導入を通じて、業務プロセスの標準化と効率化を図れば企業全体の生産性向上につながるでしょう。
リアルタイムな情報把握
SAPのERPを導入することで、企業はリアルタイムな情報把握が可能になります。具体的には、在庫状況や生産進捗状況などの情報がリアルタイムで把握できたり、受発注やコストといった財務情報を常に最新の状態で確認できたりなどが可能です。
SAPを活用することで経営に必要な情報をリアルタイムに把握し、迅速な意思決定に役立てることができます。
経営の可視化
経営状況を可視化できるのも、SAPを導入するメリットの一つです。SAPを活用すれば、財務会計や管理会計、販売管理などの情報が一元管理でき、さまざまな角度からデータを分析して経営判断に役立てられます。
また、部門間の情報共有がスムーズになり、全社最適な意思決定が可能になります。
SAPによる情報の一元管理と見える化は、経営の意思決定スピードと精度を高めるのに必要不可欠です。
SAP導入のデメリット
一方、SAP導入によるデメリットとして以下の3つが挙げられます。
- 高額な導入コスト
- 複雑な操作性
- カスタマイズの難しさ
ここでは、デメリットについて具体的に解説します。
高額な導入コスト
SAPの導入にはライセンス費用やシステム構築料、サーバ費用など、膨大なコストがかかります。SAPにさらに機能をつける場合は、さらに開発コストがかかってしまいます。
また、SAPのライセンス費用は従量課金制なので、ユーザー数が多くなるとそれだけ費用がかかる点には注意しなければなりません。
SAPの導入には高額な費用がかかるため、中小企業にとって大きな負担となる場合があり、導入の障害となるケースも多くあります。
複雑な操作性
SAPは高機能かつ大規模なため、操作性が複雑であるというデメリットがあります。多岐にわたる設定項目や業務プロセスに沿った入力などがあり、使いこなせるようになるには時間がかかってしまいます。
また、システム特有の用語などを知っておく必要があり、企業によってはSAPの導入がなかなか受け入れてもらえないかもしれません。
SAPの複雑な操作性は、SAP導入における大きな障壁の一つといえます。
カスタマイズの難しさ
SAPは上述した複雑な操作性により、カスタマイズが難しいこともデメリットとして挙げられます。業務の効率化を図るためには、SAPと業務プロセスを調整して自社に合ったカスタマイズを行う必要があります。
たとえば、業務フローに合わせて画面のレイアウトを変更してより見やすくしたり、画面の操作を簡単になるように配置を変更したりなどを行えば、業務の効率化を推進することが可能です。
しかし、SAPのカスタマイズを行うためには標準機能を理解していることに加え、専門知識やスキルがなければなりません。誰でも簡単にカスタマイズができるわけではなく、限られた方しかカスタマイズできないのは大きなデメリットといえます。
企業におけるSAP活用事例
企業におけるSAP活用事例として、どのような内容が挙げられるのでしょうか。
ここでは、製造業と小売業のSAP活用事例を紹介するので参考にしてください。
製造業での活用例
国内トップのシェアを誇る小木曽工業株式会社は、統合業務パッケージ「SAP ERP」を導入し、属人的な業務プロセスの標準化と正確なデータに基づく経営判断を実現しました。同社は「パッケージに合わせて業務を徹底的に変える」という方針で臨み、わずか10ヶ月という短期間でSAPの導入に成功しています。
生産管理を中心に業務の改善が進み、需要予測や受給計画の高度化など、今後もSAPを軸にしたデジタル化を推進していく方針です。
小売業での活用例
卸売業A社では、会社統合によって複雑化した要件の設計やテスト品質の確保などに課題を抱えていました。そこで、「SAP R/3 4.7」を導入し、会社統合に伴う基幹システムを再構築、品質管理の第三者機関によるレビューや業務運用レベルの充実したテストで、複雑化した要件への対応も実現しています。
また、大量データへの性能対策として、プログラム設計やジョブ設計の工夫、エラー検知とリカバリー対策の考慮により、安定稼働を確保しました。
NHSの技術力とプロジェクトマネジメント力が、統合後の業務効率化と経営基盤強化に貢献した好事例といえます。
参考:卸売・小売業 | 導入事例 | SAP ERP Solution NHS
SAP 2027年問題への対応
SAPの2027年問題とは、SAP社が提供している「SAP ERP 6.0」の保守サポートが2027年末に修了し、新しい機能や修正プログラムの提供を受けられなくなる問題をいいます。
新しい機能や修正プログラムの提供を受けられなくなると、ビジネス環境や時代の変化に適応できなくなり、企業経営に支障をきたす由々しき事態です。
「SAP ERP6.0」を利用している企業は日本国内外問わず多くあり、それぞれの企業で迅速な対応を迫られています。
対応方法の選択肢
SAPの2027年問題の対応方法の選択しとしては、主に3つの方法が挙げられます。
- SAP S/4HANAへの移行
- サードパーティ保守サービスの活用
- 他のERPへの切り替え
ここでは、それぞれの対応策について詳しく解説します。
SAP S/4HANAへの移行
SAP S/4HANAへの移行は、2027年問題への対応の一つの選択肢です。SAP S/4HANAは、SAPの次世代ERPシステムであり、最新版ならではの機能を活用でき、業務効率化に貢献します。
また、SAP ERP6.0で培ったノウハウや知識を生かしやすいのも特徴です。
ただし、システムの移行には高度なプロセスが存在し、さまざまなコストを踏まえたデジタル戦略が必要不可欠です。
SAP S/4HANAへの移行は、2027年問題への対応として最も推奨される選択肢ですが、上記の留意点を踏まえた上で自社の状況に合わせて慎重に検討することが重要です。
以下のページでは、SAP S/4HANAに関するインタビューを紹介しています。
関連記事:シグマクシス(SaaS Sherpa) ×フォルトナ スペシャルインタビュー
サードパーティ保守サービスの活用
SAP 2027年問題への対応策の一つとして、サードパーティ保守サービスの活用が挙げられます。サードパーティ保守サービスとは、SAP社以外のベンダーが提供するメンテナンスサービスのことです。
このサービスを利用すれば、SAP社のサポート終了後も引き続きシステムの保守が可能になり、低コストでサービスを受けられるのが魅力です。
しかし、その一方でSAP社の知的財産権侵害やライセンス契約違反に該当する場合があり、企業によってサポートの品質にばらつきが生じる可能性があります。
魅力や注意点を総合的に判断し、自社に適した対応方法を選択することが大切です。
他のERPへの切り替え
他のERPへの切り替えも、SAPの2027年問題の解決策として挙げられます。SAPからの移行先としては、Microsoft Dynamics 365やGRANDIT、Reforma PSAなどがあります。
ただし、ERPの切り替えには多大なコストと時間がかかるため、自社のビジネスに最適なERPを選定し、計画的に移行を進めていくことが重要です。
SAPコンサルタントの需要の高まり
SAP導入の需要が高まっている中、SAPコンサルタントの重要性が増しています。SAPコンサルタントは、SAP社のERP製品を専門的に扱うITコンサルタントであり、SAPに関するプロフェッショナルなITアドバイザーのことをいいます。
上述したSAPの2027年問題への対応やDX化の推進により、今後もSAPコンサルタントの需要は高まることが予想されます。SAPスキルを身につければ、市場価値の高いキャリアを築く上で有効な手段となるでしょう。
以下のページでは、SAPコンサルタントに関するインタビューを紹介しています。
関連記事:シグマクシス(SaaS Sherpa) ×フォルトナ スペシャルインタビュー
SAPコンサルタントの役割
SAPコンサルタントの主な役割は、企業のSAPシステム導入を支援することです。
企業の規模によってはすでに他のERP製品を利用している場合があり、SAPへスムーズに移行できるようにサポートします。一方、はじめてSAPを導入する企業に対しては導入前にヒアリングを行い、業務分析や提案を行います。
また、SAPをより快適に使用できるようにするためのカスタマイズを施すのも重要な役割です。
SAPコンサルタントは、業務知識とITスキルを兼ね備え、プロジェクトマネジメント能力が求められます。
SAPコンサルタントの年収
SAPコンサルタントの年収は経験年数や専門分野によって大きく異なりますが、一般的な平均年収としては738万円といわれています。SAPコンサルタントは高度な専門知識が問われるため、他のコンサルタントと比べると年収が高い傾向にあります。
また、フリーランスで働いている場合は年収が1,200万円を超える場合があり、プリンシパル・アソシエイトディレクターなどの役職に就いていれば2,000万円以上の年収も珍しくありません。
SAPコンサルタントの需要は今後も高まると予想されており、それに伴って年収水準も上昇傾向にあります。将来性とやりがいを求める方にとって、SAPコンサルタントは魅力的なキャリアパスの一つといえるでしょう。
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