
デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)は、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるデロイトの一員として、日本におけるコンサルティングサービスを担っています。
戦略立案から実行支援まで一貫して手掛ける「総合コンサルティングファーム」であると同時に、有限責任監査法人トーマツ(国内最大級の会計事務所)、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社(DTRA)、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(DTFA)などと密接に連携し、幅広いサービスラインを横断的に提供しています。こうした体制により、国内企業の課題解決だけでなくクロスボーダー案件にも柔軟に対応し、クライアントの持続的な成長や社会課題の解決、新産業の創出にグローバル規模で貢献しています。
なかでも、Growth & Innovation(以下、G&I)は、金融業界の持続的な成長と業務変革を支援することを目的に設立されたユニットです。Digital/Technology/Financeの専門性を核に、戦略構想から実行・運用までをEnd-to-Endで一貫支援します。特に、業務全体の在り方を見直すような本質的な変革や、グローバル連携による先進的なソリューションの活用にも注力しており、金融業界の変化を受け止めるだけでなく仕掛けていく存在を目指しています。
今回は、執行役員の新堀 幸生様、マネジャーの水上 和子様、そしてシニアコンサルタントの入江 巴常様にインタビューをさせていただきました。
インタビュアーは、DTC出身のフォルトナ上野・水上が務めます。
新堀 幸生様 プロフィール
執行役員。
外資系コンサルティングファームを経て、現職。
金融機関を中心としたIT戦略立案、アーキテクチャ策定、先端技術洞察、ITマネジメント高度化、組織構造改革、システム導入、IT調達高度化などを含む顧客支援を経験。
近年では、IT近代化、デジタルトランスフォーメーションにも注力している。
水上 和子様 プロフィール
マネジャー。
金融系事業会社のSIerにて銀行システムの企画、開発、運用に従事。
その後、現職にてシステム高度化プロジェクトのPMO、ビジネス部門へのDX推進、ガイドライン策定等のシステム領域の支援実績あり。
入江 巴常様 プロフィール
シニアコンサルタント。
日系大手SIerにて銀行向けのアプリケーション開発に従事。
その後、現職にてシステム更改プロジェクトの計画策定・要件定義・PMO、リスク管理領域におけるSaaS導入などの支援実績あり。
なぜデロイト トーマツ グループに?多様なメンバーがG&Iで金融業界変革に挑む
[上野]
本日は宜しくお願いいたします。
初めに、皆さまのご経歴からお伺いしてもよろしいでしょうか?
[新堀様]
私は、外資系コンサルティングファームとITリサーチファームに勤めており、キャリアのほとんどが金融業のクライアントでのIT・テクノロジー分野です。いろいろなご縁があり、2019年にDTCにジョインし、現在はG&Iのユニットリードを務めています。

[水上様]
前職では、金融系事業会社のSIerにおいて、システム企画や開発・運用を担う部署に長く在籍していました。その後、2022年にDTCへ入社しました。
[上野]
なぜコンサルティングファームを受けようと思ったのですか?
[水上様]
当初はコンサルティングファームへの転職をまったく考えていませんでした。業界全体として当時はハードワークなイメージがあり、2人の子育てとの両立は難しいのでは、と感じていたためです。また、働き方の柔軟性にも少し懸念があり、エージェントにも、「コンサルティングファームは希望しない」と伝えていました。しかし、キャリアの方向性について対話を重ねるなかで、「一度だけでも試してみては」と提案されたことがきっかけで選考をうけました。実際にDTCの面接官と話をした際、考え方や雰囲気に共感でき、「この人と一緒に働いてみたい」と思えたことが、入社の決め手となりました。実は、それが新堀さんだったのですが(笑)

[上野]
新堀様との運命的な出会いだったのですね(笑)
続いて、入江様のご経歴もお伺いさせてください。
[入江様]
前職はSIerの金融機関向け部署に所属し、アプリケーションエンジニアとして業務に従事していました。開発業務が中心で担当システムを最適化することがミッションでしたが、周辺領域・システムを見渡すと全体最適化の観点でさらなる可能性があることに気づきました。クライアントへの真の価値提供には、少し視座を上げて全体最適を図る必要があると考え、2023年にDTCへの入社を決めました。

構想だけでは終わらせない。不確実性の時代に「まずやってみる」実行型コンサル
[上野]
G&Iはどのようなユニットなのでしょうか?
[新堀様]
G&IはDT&I(Digital Transformation & Innovation)を前身とし、機能強化と再編を経て、2022年に正式に立ち上がりました。私たちの主要なクライアントである金融機関が次のステージに進むには、アドバイザリーだけでは不十分という認識が以前からありました。例えば、従来の戦略コンサルティングでは、3年後の成果を見据えたプランを提示し、そのうえで実行に移されるようなイメージでしたが、今は先々の見通しが立てにくい状況です。不確実性が高まるなかで、「まずはやってみて、軌道修正しながら進める」という実行重視のアプローチが求められています。
そうなると、開発や変革推進といった実行局面も支える体制づくりが不可欠です。私たちは特にテクノロジーやファイナンスの観点から、金融業界に特化したEnd to Endの支援を重視し、われわれのクライアントの変革を支援する役割を果たすことを目指しています。
また、私たちは比較的後発のチームであるからこそ、新しい価値を自ら生み出していくことが求められているという強い意識をもっています。
その1つが、新たなソリューションやサービスの創出に力を入れている点です。デロイトのグローバルネットワークから先進的な取組を取り入れたり、現場のプロジェクトを通じた課題認識から独自にアイデアやサービスを生み出したり、いわばR&Dのような活動もわれわれのミッションの1つになっています。こうした点は、従来のコンサルティング部門とは異なる、G&Iならではの特徴です。
[上野]
同じデロイト トーマツ グループ内には、DX戦略の実行支援を掲げるデロイト トーマツ アクト株式会社(以下、DTakt)もありますが、G&Iとはどのような違いや役割のすみ分けがあるのでしょうか?
[新堀様]
基本的にはG&IとDTaktは、工程毎に役割を分担しており、G&Iが要件定義や構想段階までを担い、実行フェーズに入ったタイミングでDTaktのメンバーへ引き継ぐという形で連携することが多いです。このように両者が強みを生かせる自然な分担を行っています。他方で、「どちらの領域か」という明確な線引きは設けず、人的な交流や柔軟な役割の行き来を促進していきたいと考えています。実際、G&Iのなかには開発志向のメンバーもおり、DTaktでの活動がフィットするケースや、逆にDTakt側からG&Iのコンサルティング業務に関心をもつメンバーもいます。相互にキャリアを行き来する事例もあり、今後はこうした柔軟な連携をさらに加速させていきたいと考えています。
[上野]
実際にキャリアの行き来をされる事例があるのは印象的です。
G&Iに参画されてからは、どのようなプロジェクトに携わってこられましたか?

[入江様]
現在は、SaaS導入の案件に携わっています。これは、DTRA・DTaktと共同で進めており、金融機関クライアントのリスク管理のプロセスを見直すことにより、管理の高度化を図っております。
プロジェクトの入り口はアドバイザリー業務からでしたが、SaaSの導入段階では、業界・クライアントのニーズをもとにデロイトとしてSaaSのR&Dを行い、開発したアセットを活用することで、コスト面や専門知識の面でも他社より優位に立つことができました。その結果、案件を獲得できたという実績があります。
[水上様]
私は、入社直後から一貫して、IT関連のプロジェクトに関与しています。初めての転職ということもあり、自分の強みを少しでも生かせる環境を希望していたためです。最初に担当したのは、システム開発におけるPMO業務でした。続いてDX推進案件、現在はAIガバナンスに関するガイドラインの構築に取り組んでいます。
また、プロジェクト業務に加えて、組織貢献活動にも力を入れています。例えば、新卒・中途入社メンバーに対するオンボーディングやフォローアップ、アサイン管理などの運営に関わっています。実はG&Iには外国籍の方も多く、私自身Diversity, Equity & Inclusion(DEI)への関心も高かったため、社内のDEI推進活動などにも参加しています。
[上野]
さまざまなテーマの案件に関与されているかと思いますが、他のユニットとの連携やコラボレーションの機会も多いのでしょうか?
[水上様]
はい。現在、私が担当しているプロジェクトでは、Regionユニット(西日本地域のクライアントに特化し、地域に密着したコンサルティングサービスを提供するユニット)と継続的に連携しており、協働する機会が多いです。他には、DTC内のユニット間連携(マルチオファリング)だけでなく、クロスファンクション、クロスボーダー案件に携わるメンバーも多くいると認識しています。
[水上]
なるほど、多様な連携の機会があるのは素晴らしいですね。
DTCについて、クライアントからはどのようなイメージをもたれているとお感じですか?
[水上様]
クライアントのなかには、「DTCは構想策定といった上流業務だけで終わる」といった印象をもたれていた方もいたようです。しかしながら、プロジェクトを通じて、いわゆる上流にとどまらず、設計・開発・運用といった実際の現場にも積極的に関与し、メンバーそれぞれの専門知識を生かしながら、課題解決や意思決定を伴走支援してきました。ときには「この方向性は少し違うのでは」と率直に意見を述べることも含め、プロジェクト全体に価値を発揮できたことが、クライアントから「水上さんのような方がいるとは思わなかった。DTCの印象が変わった」「“DTCの水上さん”ではなく、同じ組織の仲間のように感じる」と言っていただけた理由だと思っています。また、他コンサルティングファームの経験はありませんが、DTCに対する新たな印象をもてたこと、そしてそのイメージを良い方向に変えられたことは、自分にとっても大きな意味がありました。

[上野]
戦略策定(Advisory)からシステム導入(Implement)、運用(Operate)までを一貫して担う「A・I・O」という枠組みに基づきEnd to End サービスを提供されていますよね。そのなかで、以前は「I」や「O」の領域に比較的注力されていた印象もありましたが、最近はもともと強みのある「A」に重心が戻ってきているように感じています。G&Iの視点からはどのように捉えていらっしゃいますか?
[新堀様]
実は、大きくは変わっていないと思います。もちろん「A」は大切ですが、それが成り立つのは「I」・「O」ができるからこそです。「A」を深めたりストレッチさせたりするにも、やはり「I」・「O」の経験や実行力が不可欠です。特に金融のクライアントの場合、「その計画には本当に実現可能性があるのか?」と問われる場面も多く、そこで即座に答えられなければ価値がありません。
プロジェクトやタイミングによっては、何年か「I」・「O」中心のフェーズもあるかもしれませんが、やはり全体を通じて「A・I・O」を統合的に担えるようになることが重要です。そうして初めて、「パートナー」などリーダーのポジションが見えてくると思います。
「人が人を育てる」。役職を超えたオープンなコミュニケーション
[上野]
続いて、組織風土についてお伺いできればと思います。
DTC、そしてG&Iには、どのようなカルチャーが根付いているとお感じですか?
[水上様]
DTCには、「人が人を育てる文化」が根付いていると感じます。制度としての研修や教育プログラムも整っていますが、それ以上に、現場でのサポートや日々の関わりのなかで成長の機会が多く用意されています。
例えば、評価と独立した、社職員のキャリアと成長に寄り添い自由に相談できるコーチング制度や、プロジェクト内での丁寧なフォローに加え、Check inと呼ばれる、業務レビューとは異なる形で個人のパフォーマンスや成長をサポートする制度がその一例です。私自身、コンサル未経験で入社しましたが、入社直後はほぼ毎日のようにプロジェクトの経験豊富なメンバーにお時間をいただき、資料の作り方や思考の組み立て方を一つひとつ教えていただきました。以前はパワーポイントで作成した資料を「もらう側」だった自分が、「つくる側」として成長できたのは、こうした支援があったからだと思っています。
また、G&Iは非常に風通しの良い組織だと感じます。さまざまなバックグラウンドをもつメンバーが集まっていることもあり、オープンなコミュニケーションが当たり前のように行われています。そのなかでも特に印象的だったのは、パートナーとの距離の近さです。役職に関係なく意見交換をする文化があり、私も入社直後から定期的に1on1の機会をいただきました。当初は「こんなに時間をいただいちゃってもいいのかな」と思うときもありましたが、「それだけの価値がある」と言っていただき、回を重ねるなかでその意味を実感するようになりました。
こうした支援体制やカルチャーについて社外の方に話すと、「そんな環境があるのか」と驚かれることも少なくありません。それが、私がDTC、そしてG&Iの魅力として自信をもって語れるポイントの1つです。
[入江様]
私も同じく風通しの良さを感じています。正直、最初はとても緊張していました。しかし、G&Iには非常に多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まっており、中途入社の方も多く、前職もさまざまです。例えば、銀行・保険業界出身者や SIer出身者、コンサル経験者もいますし、近年では新卒のメンバーも増えています。また、海外出身のメンバーも多く、文化的な多様性も感じられます。こうした多様なバックグラウンドをもつメンバーが互いに尊重し合い、自然と共有し合える空気がつくられていることが、非常に印象的でした。
また、チームとして価値提供を最大化するために品質に対する厳しさはあるものの、上からのプレッシャーをかけることが逆効果になることを理解し、心理的安全性を意識した言動を取っている方が多く、役職にかかわらず声をかけやすい雰囲気があります。オフィスでも上位者から自然に声をかけてもらえることが多く、日々とても助けられています。
[水上]
当初ご不安もあられた育児との両立についてはいかがですか?

[水上様]
DTCでの働き方にはとても満足していますし、自分に合っていると感じています。実はこの働き方を選ぶことになったきっかけは、息子との何気ない会話でした。彼から「ママ、楽しい?」「知りたいから教えて」というやり取りから、自分を見つめ直すことになります。
自分がやりがいを感じるのは、人と一緒に何かをつくること、チームで取り組むことだと改めて気づきました。長く前職に在籍していたことで、居心地の良さに甘えていた部分もありました。だからこそ、環境を変えて新しい刺激を得たいと思い、転職を決意しました。
実際に入社して2年が経ちますが、毎日が学びと発見の連続です。クライアントやチームのために働けている実感もあり、やりがいと成長の両方を感じています。
ちなみに、そのきっかけをくれた息子に、今も定期的に「ママ、どう見える?」と聞いています。「楽しそうで良いと思うよ」と言ってくれていて、それが私にとっての励みになっています。家庭内アンケートのような形ですが、今の働き方を肯定してくれる声として、大切に受け取っています。
[水上]
非常に素敵なエピソードですね。ご自身が楽しく、やりがいをもって働かれていることが、お子さまにも伝わっていて、まさに好循環が生まれているのだと感じました。
そうした前向きな働き方を支えるうえで、ユニットのマネジメントや運営の面で、特に意識されていることや、こだわっているポイントがあれば教えていただけますか?
[新堀様]
メンバーと定期的に対話の機会を設けることです。
大きなきっかけとなったのはコロナ禍でのリモートワークです。それ以前は、多くのメンバーがオフィスやプロジェクト先に常駐しており、自然と日常的に対面でのやり取りがありました。何かあれば自然と会話が発生する環境でしたが、リモート勤務が始まって以降、メンバーとのコミュニケーションにばらつきが出るようになりました。あるメンバーとはよく話している一方で、半年以上まったく会話がないメンバーがいることにも気づき、問題意識をもちました。また、リモート環境では各自が課題を抱えていてもそれが周囲から見えにくく、孤立を生む可能性があります。こうした状況を踏まえ、当時のパートナー陣と話し合い、定期的に対話の機会を設けることを意図的に始めました。
[上野]
水上様は、マネジャーとしてどのようにチームメンバーとコミュニケーションを取っていますか?
[水上様]
新卒1年目のメンバーであってもできるだけ同じ目線で接し、早期の信頼関係構築を意識しています。プロジェクトワークでは、どんな状況でもお互いにリスペクトしあえる関係性があってこそチームとしてよい品質の成果がだせると考えています。また、「甘やかすこと」と「寄り添うこと」は別物であり、私は寄り添いながら丁寧に関わることを大切にしています。特にコーチングでは、教える(ティーチング)ではなく、あくまで一緒に考えるスタンスを重視しています。最初に「答えは教えません。一緒にあなた流をつくっていきましょう」と伝えるようにしています。新卒・中途を問わず、自分なりの気づきを得てもらえるよう、必ず目線を合わせ、事前に工夫や仕掛けを用意して臨んでいます。