イーソリューションズは、「可能性を掛け合わせ、未来をデザインする」というミッションのもと、社会課題の解決とクライアント企業の利益最大化を両立させるCSV(Creating Shared Value)の考え方で、「事業プロデュース」を行っています。
各業界のリーディング企業をはじめ、地方自治体、研究機関、省庁、大学など、業界や組織の枠を越えて多様なステークホルダーと連携し、企業の新規事業開発支援や、産官学連携による新規事業開発や、企業や大学とのJV設立など様々な事業を手掛けていることが特徴です。2025年現在は、「ヘルスケア」「創薬」「脱炭素」「地方創生」など4つのメインテーマで活動しています。
インタビュー第2弾では、イーソリューションズの執行役員副社長で、地方創生をテーマにした新規事業創出支援を手掛けるソーシャルイノベーション事業部 事業部長の稲葉 想様にお話を伺いました。
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インタビュアーはフォルトナ小泉が務めます。
稲葉 想様 プロフィール
執行役員副社長 Co-COO ソーシャルイノベーション事業部 事業部長。
中央大学総合政策学部卒業後、2009年新卒入社。生活支援、コミュニティ、復興支援、ヘルスケア、感染対策、防災、観光、地方創生に関わる数多くの事業プロデュースに従事。2021年4月より執行役員副社長に就任。
リーマンショックを契機に描いた「社会に残る仕事」への道
[小泉]
今回は、インタビュー第2弾として、ソーシャルイノベーション事業部の稲葉様にお話を伺わせていただきます。
稲葉様は、大学卒業後すぐ、新卒でイーソリューションズにご入社されていますが、その経緯を教えていただけますか?
[稲葉様]
私がイーソリューションズと出会ったのは、2008年のリーマンショックによる内定取り消しがきっかけでした。当時、その後の進路や就職先について、焦ってはいたものの何でも良いとは思っておらず、「社会に残る仕事」にはこだわり続けていました。
この観点を軸に改めて企業を探し直し、約30社に履歴書を送りました。そのなかで、唯一私の想いを汲みとってくださったのがイーソリューションズでした。当時も現在と同様に新卒採用を行っていなかったのですが、大学4年生の夏からインターンの機会をいただくことができ、入社に至りました。
[小泉]
「社会に残る仕事」にこだわられたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?
[稲葉様]
父が出版社を経営していた影響が大きいです。「本」自体というよりも、「社会の仕組み」として社会に受け入れられて「残っていく」ものに憧れを抱いていました。
大学4年の夏休みに、「新規事業」や「インキュベーション」といったキーワード(今思えば言葉の意味もあまり理解していませんでしたが)で、「社会の仕組み」として残るようなビジネスに取り組んでいる企業を探し、いろいろな企業に飛び込んで面接していただいたことを覚えています。
「事業プロデューサー」としての成長、地域課題解決のブレークスルー
[小泉]
ご入社後に経験したプロジェクトで、成長を感じた経験について教えていただけますか?
[稲葉様]
当社が掲げる「事業プロデューサー」としての成長という意味で、私にとってブレークスルーとなった経験は、入社後最初の4年間に携わった大手コンビニチェーンとのプロジェクトです。このプロジェクトは、地域の課題解決を目的に、店舗を拠点とした新しいサービスを開発するというものでした。例えば、大手コンビニと訪問看護事業者との連携を企画し、コンビニ店頭で医療物資を供給する仕組みを検討しました。
取り組みを進めるうえで特に重要だった事が、地域の看護事業所や行政など複数のステークホルダーの信頼関係を築くことです。彼らのニーズを深く理解し、現場の状況を肌で感じることで、信頼を構築することができました。その結果、当時は画期的だった宅配サービスの基盤を創ることができ、大きな成果につながりました。
[小泉]
プロジェクトを進めるなかで、どのように複数のステークホルダーの信頼を築いていかれたのか、是非詳しく教えてください。
[稲葉様]
このプロジェクトにおいて、クライアントである大手コンビニチェーンは明確な目的をもち、主体性がありました。一方で、その舞台となる地域の住民や、連携先となる看護事業者、行政は「声をかけられた」から協力している状況で、主体的ではありませんでした。そこでまず、彼らが何を求めているのか、何に困っているのか、現場に足を運び、話を聞いて回りました。
彼らのニーズを理解したうえで、クライアント企業が目的とする「地域社会の課題解決」と「新サービスのビジネスとしての成功」の両方を実現する為に、皆が同じベクトルに向かうためのシナリオを入念に練り上げ、各々にぶつけながら事業推進していきました。
[小泉]
いわゆる経営コンサルティングではなく「事業プロデュース」として、複数のプレイヤーを巻き込む新規事業を通じて社会のあり様が変わったのですね。イーソリューションズならではのご経験ですね。大変興味深いです。
ソーシャルイノベーション事業部の使命
[小泉]
続いてソーシャルイノベーション事業部について詳しく教えていただけますか。
[稲葉様]
ソーシャルイノベーション事業部は、2012年設立以来、医療、介護/福祉、復興支援、防災、観光など多くの社会的重要テーマにおいて、日本の地方の地域社会をフィールドに新規事業をプロデュースしてきました。
そのなかでも、「富山モデル」は、富山の産官学連携の推進を通じて「地方創生」を実現する、という新しいアプローチの成功事例となりました。
これをきっかけに、「地域社会の課題解決や産業振興を目指す」ことをわれわれのミッションとして掲げ、日本各地域の自治体や企業、大学、メディア、金融機関などと連携し、地域社会の課題解決や産業振興に向けたイノベーション創出を仕掛けています。
[小泉]
「富山モデル」とは、具体的にどのような取り組みだったのでしょうか?
[稲葉様]
「富山モデル」は、2019年 から始まった、富山市での新しいまちづくりプロジェクトでした。「地域活性化」や「地方創生」という言葉はよく聞きますが、実際に地方都市に産業や雇用が生まれ、税収が上がる例は少なく、重要な社会課題として取り組むべきと考えました。
当社から何度も提案し、先進技術を持つ企業を紹介したことで、富山市は2019年度に、人の流れや車の交通量、川の水位など、まちのあらゆるデータを取得し、それを可視化するスマートインフラを構築しました。同時期に、多くの地元企業にも提案を進め、例えば橋梁メンテナンスの効率化やスマート農業の新規開発などを促しました。また、富山大学と協議しながら、データサイエンティスト育成のプログラムも開発。富山市が構築したスマートインフラで、富山地元企業がスマートサービスを開発し、さらに富山大学がデータ利活用を支える、という産官学連携の基盤が整えられました。
※ForbesJapan BRANDVOICE「産学官が連携して進めるスマートシティ「富山モデル」を全国へ」より抜粋。
なお、この構想を実現するために、ヨーロッパでの成功例を半年間かけて研究しました。その後、富山の産官学のキーパーソンを巻き込みながらプロジェクトを推進。かなりの準備期間が必要でしたが、その分、大きな展開になったと思います。
この取り組みは他の市町村にも応用され、地方創生の新たなモデルケースとしても注目を集めています。
[小泉]
とても意義のある取り組みですね。
現在の事業部の課題や目標についても教えていただけますか。
[稲葉様]
現在も、富山市以外も含め、地方都市が抱える課題にアプローチしています。
資源循環の構築、ものづくりに関わる地場産業の活性化、子育て世代の流入促進、医療費・介護費の抑制、防災・感染症対策…など多くのテーマで、複数の自治体をフィールドに取り組んでいます。
あるテーマでは、地域での産官学連携を促しても、事業開発に至らず、投資回収につながらない場合もあり、非常に苦しい状況になることもあります。しかし、そのなかでも地域からの感謝の声をいただくことが多く、それが私たちのモチベーションの源になっています。あるテーマで芽が出ずとも、地域との関わりを保ち、産官学のつながりを強固にしていけば、どこかで別テーマで事業開発が実ることもあります。このようなアプローチが、サステナブルな社会課題解決になると考えています。
“掛け合わせ”で社会を動かす、イーソリューションズの「事業プロデュース」とは
[小泉]
これまでの事業のお話を通して、あくまで「民間のビジネスを通じて社会課題解決を目指す」というイーソリューションズのユニークな事業モデルをより理解することができました。副社長としての視点では、その魅力をどのように感じていらっしゃいますか?
[稲葉様]
当社の「事業プロデュース」は、単なるコンサルティングではありません。解決すべき課題を自ら見つけ出し、技術やノウハウを組み合わせて社会実装までを一貫して行います。私はその過程にやりがいを感じています。
業界トッププレーヤーの経営層に働きかけ、社会課題解決に向けた本気の提案を引き出せる。この経験を20~30代のうちから多く積み上げ、あらゆるリソースを組み合わせてインパクトのある事業を生み出すことができる環境は、他にはない魅力だと思います。
[小泉]
非常にユニークな立ち位置でいらっしゃいますが、競合や近しいことを行っている企業などあるのでしょうか。
[稲葉様]
ビジネス上の競合はいないですし、営業においてコンペティションになることもありません。基本的には、当社が構想した社会課題解決のアイデアに対して、クライアント企業様が事業戦略上の親和性を感じていただけるか否か、というところがあります。
「社会課題解決」や「地方創生」というテーマに取り組むコンサルティングファームは増えていると思いますが、前述のように、事前の投資としての取り組みも含めて産官学のステークホルダーにしっかり入り込んでいくスタイルを実践しているのは当社だけではないでしょうか。
当社は、大手企業の新規事業開発部門のような側面もありますが、自社プロダクトを持っているわけではありません。また、商社のようにアライアンス推進に取り組んではいますが、特定の資源やテーマに限っているわけでもありません。
一言で表すのはなかなか難しいのですが、当社の「事業プロデュース」は、戦略コンサルティングファーム、事業会社の新規事業開発、商社によるバリューチェーン構築など、複数の業態を掛け合わせた仕事の仕方であると思っていただけるといいかもしれません。
ワクワクと発想力で、新規事業を創出する仲間を求む!
[小泉]
ソーシャルイノベーション事業部の仕事を楽しめる方は、どのような方でしょうか。
また、稲葉様はどのような方と一緒に事業に取り組みたいと思われますか?
[稲葉様]
新しいことにワクワク感をもち、柔軟な発想で取り組める方と働きたいです。社会課題解決や地方創生は理想論ではなく、実現可能な未来です。
未来を実現するためのアイデアを積極的に提案し、多くのステークホルダーのニーズや強みを引き出し、可能性を掛け合わせ、形にしていくことを楽しめる方にとっては、とてもやりがいのある環境であると思います。
[小泉]
応募時点で具体的な社会課題のテーマや解決構想をもっている必要はありますか?
[稲葉様]
いいえ、ご応募いただく時点では気にしておりません。私も具体的に解決したい社会課題を抱いていたわけではありませんでした。
キャリア採用においては、基本的にはご経験を重視しているので、新規事業創出への関心や、ビジョン/ミッションへの共感を示してくださるようであれば大歓迎です。社会課題への視点は、選考を通して、具体的に深めていただければ充分です。