EYでは、「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」をグローバル共通のパーパス(存在意義)として掲げています。パーパスを原動力とするビジネスは、優れた人材を引きつけ、定着させ、イノベーションを起こしディスラプションに対処することにたけていると考えています。
なかでも、業務領域を拡大し、人材を増強する戦略で2019年から2025年までの7年間で、売上は3倍以上に増加するなど、成長を続けてきたEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC)。一定の到達点を迎えた次に打ち出す採用方針は、「量から質」への移行であると採用責任者のパートナー 早瀬 慶様は語ります。そこには、「より良い社会」の実現を目指すEY独自のパーパス経営と切っても切り離せない関係があると言います。
インタビュアーはフォルトナ中島と小野が務めます。
早瀬 慶様 プロフィール
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EYパルテノン ストラテジー/パートナー。
スタートアップや複数の外資系コンサルティングファームを経て、EYSCに参画。自動車業界を中心に約20年以上にわたり、経営戦略策定、事業構想、マーケット分析、将来動向予測等のプロジェクトを多数支援。クロスセクターストラテジーリーダーとして産業の枠組みを超えたエコシステム構築支援に注力。海外現地での多数のコンサルティング経験を有し、近年は官公庁のモビリティ領域のアドバイザーを務める。『モビリティ革命2030』(日経BP、2016年、共著)等の著書や講演多数。2023年より一橋大学経営管理研究科(MBA)「サステナビリティ経営」非常勤講師。
新しい時代を切り開くコンサルファームが求める人材の「質」
[中島]
早瀬様は2回目のインタビューとなりますね。今回は採用責任者として、EYSC全体の人材戦略についてお伺いできればと思います。
まず、破竹の勢いで成長するコンサルティングファームとして、どのような人材戦略で組織を支えていますか?これからの方針と合わせてお聞かせください。
[早瀬様]
EYはグローバルで100年以上の歴史を持つプロフェッショナルファームですが、日本でのコンサルティング活動は日が浅く、コンサルティングとM&Aアドバイザリーを統合したEYSCが誕生したのも2020年と若い組織です。EYSCとしての最初の3年ほどはクライアントの要望や期待に応えられる陣容を整えることに力を尽くしました。
そのかいあって急速に成長し、われわれが万全のコンサルティングサービス提供するために最低限必要だと考える体制が実現できましたので、昨年あたりから「量より質」へと軸足を移しつつある状況です。
(2025年8月時点)
参照:https://www.eysc.jp/recruit/assets/pdf/career/ey_recruit_brochure.pdf
この場合の「質」は、より有能な人材を求めるという意味とは違います。
コンサルティングファームとして必要な領域をほぼ網羅したと思われる今、その土壌でより尖った価値を生み出せるよう適材適所の目線で組織を見直すこと、それと同時に、これまでにない新しい領域を切り開くというEY元来の課題意識をより強く打ち出し、そのチャレンジをしっかりとけん引できる人材を強化していくことです。
その過程で、すでにある陣容の最適化や、新しい人材の登用、また外部組織との積極的なアライアンス等を交え、さまざまな化学反応が起こることを期待しているところです。
[中島]
新しい領域とのことですが、具体的に想定されているテーマはありますか?
[早瀬様]
これからの世の中で求められること、解決しなければならない社会の課題とほぼイコールだと思っています。というのも、EYには世界共通のパーパスである「Building a better working world 〜より良い社会の構築を目指して」があり、その理念に合致する活動を愚直なまでに追求する精神が染みついているからです。
このパーパスを起点にコンサルティングの在り方を考えると、新しい領域の前に、例えば、少子高齢化や、それに伴い逼迫する福祉・医療、社会インフラの老朽化、公助の担い手不足、サステナビリティや新しいまちづくりなど、まず目の前に山積する社会課題にどう向き合うかが重要であると考えています。たとえ1企業に対するコンサルティングであっても、その先に立ちはだかる業界や社会の課題を常に見通しながら解決を図る。それが、EYの世界的組織にはるか昔から受け継がれる仕事の仕方のDNAなんですね。その部分をさらに追求していきます。
[小野]
前回のインタビューでも、すべての起点になるパーパスを大切にされていたことが印象に残っています。
そうしたテーマに応じて、人材の登用の仕方も変わってくるのですね。
[早瀬様]
モビリティの未来が都市の在り方と無縁ではないように、業界や社会の課題はどれか1つの分野に収まるものではなくなってきています。今までのようにインダストリーとコンピテンシーの切り口だけでは語ることのできない領域が、現に課題として顕在化しています。
であれば、われわれもそれに応じて組織を変え、必要な人材を充てていかなくてはなりません。業界を横断するクロスセクターの体制や、産学官民の連携もあるでしょう。自動車業界で経験を積んできたから、自動車業界のコンサルタントになる。そうした単純な図式では考えられなくなっています。
(2025年8月現在)
参照:https://www.eysc.jp/recruit/assets/pdf/career/ey_recruit_brochure.pdf
「マイパーパス」を胸に抱く有志のコンサルタントが活躍する
[中島]
コンサルティング業界では人材獲得競争が過熱しています。採用市場におけるEYの強みはどこにあると思われますか?他ファームとの差別化要因は何でしょう。
[早瀬様]
いわゆるBig4の中で、EYは最も早くパーパス経営を打ち出しました。そのパーパスに表されるように、ESG、SDGs、カーボンニュートラル等の言葉が一種の流行のように叫ばれるずっと以前から「より良い社会」を標掲げ、「Long-term value(長期的価値)」の視点を持ち、グローバル全体で社会課題の解決に取り組んできたユニークなファームです。
他ファームには見られない独自性がそこにあり、ここ数年における当社の活動を見て、「コンサルティングファームにもそんなことができるんだ」と多くの企業や組織に知ってもらうことができました。採用市場にもそれが波及して、サステナビリティ、経済安全保障、気候変動等のテーマをプロフェッショナルとして追求したい方々からの応募が年々増え続けているというのが今の状況です。
[中島]
そうした特長を持つ貴社で活躍できる人物とは、どのような人材でしょう?イメージがあれば教えてください。
[早瀬様]
コンサルティング経験の有無や、職位ランクを問わずに言えるのは、自分の中に確固たる「マイパーパス」を持つ人は強い、ということです。何のためにコンサルタントを志望するのか、どういうことを成し遂げたいのか、そのために自分が提供できる付加価値は何か。それらについて語れることが、EYで活躍する人間の共通項だと思います。
新卒であれば、これまで学んできたことや個人的な活動と自分の問題意識がどうつながるのか。転職を検討されている若い方であれば、今の自分が持つケイパビリティとどれだけひもづけることができるか、もしくはどんな行動を起こせるか。すでに上位の職階にある方なら、自分が作るテーマをどのように展開し、協力パートナーを巻き込み、クライアントや社会に価値提供するのか。そういったことに関して、強い意志と確かな実行力を感じさせてくれる人に注目します。
[小野]
そのような資質やマインドは選考プロセスにおいて明確にわかるものですか?
[早瀬様]
例えば、何らかの業界課題や社会問題について関心を抱き、その解決のためにコンサルタントという職業を選ぶ。そういう筋書きは誰でも言えそうですし、実際、言葉にすれば同じように聞こえるでしょう。ですが、本気でそう考えている人なら、すでにもう行動に移している場合が多いものです。ささいなことでも具体的な行動で示せているかどうかが重要で、それは対面で会話をすれば熱量や仕事への姿勢など伝わってくるものがあります。
EYの若手社員によく見かけるのですが、例えば、新卒1年目の新人で、誰も指示はしていないのに自分で問題意識を持ってさまざまなソースを調べ、現場にも足を運びながら生のファクトを集め、こうしたらどうでしょうと提言してくれる社員がいました。実際にクライアントに提案して、高い評価を得て、今でも継続して支援している、まちづくり関連のプロジェクトがあります。
野望、熱意や行動力といったものに年齢差や職歴は関係ないんですね。そうしたポテンシャルを持つ人に活躍していただき、シナジー効果を生み出してほしいと願っています。
あらゆる壁を越え、総力で価値を生み出す企業の成長力
[中島]
貴社に入社を決めた方に理由を聞きますと、会社の雰囲気や面接官の人間味に引かれたからと答える方が多くいます。どのように受け止めていますか?
[早瀬様]
優しい人が多いですね、というのは確かによく言われます。ただ、それはおそらく性格的なことではなく、EYのカルチャーとして、相手の発言やその言葉の背景を捉え、対等な距離感・立場で会話をしている社員が多い、ということを意味するのだろうと思います。
一般論ですが、コンサルタントというのはとかく、自分の考えや意見を強く打ち出して話を通すことが正義だと思われる節があります。しかし、EYにはそれを全面的に良しとする文化はありません。例えば、多数決やトップダウンではなく合議により意思決定するという仕組みや風土も理由の1つでしょう。
もう1つの大きな理由は、やはりパーパスに起因します。われわれが対峙するコンサルティングテーマである業界課題や社会課題のような難問に対するには1人の力では到底太刀打ちできず、チームの力や、部門や組織の壁を越えた連携が欠かせないからです。本当の意味でのグローバルファームとして、国や文化の壁もやすやすと乗り越える。そういう仕事の仕方が常態化している組織にあって、相手の考えや価値観を尊重し、互いの話を聞いて理解し合い、同じゴールに向かって切磋琢磨することは当然の流儀と言えます。
[中島]
EYが多様性を重視し、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)の方針を掲げているのも同じ理由からですね。
[早瀬様]
はい。多様な社員たちが活躍しない限り、この会社の存続はありません。なぜなら、世の中はいろいろな価値観や文化的背景を持つ、さまざまな年代の多種多様な人々によって動かされているからです。画一的な考えを持つ人たちの集まりに、「より良い社会」を作ることはできません。
ですから、EYの組織が多様であり平等であるのは当然のことで、大げさに標語を掲げるようなこともなく、ごく自然にそのような環境になっていることも特徴の1つだと思います。もちろん、その環境や取り組みを、外部の専門機関から評価されたり、さまざまな賞をいただけたりするのはありがたいことです。
[小野]
さまざまなバックグラウンドを持つ方々が持てる力を発揮する。EYのその原動力をより高めるための仕掛けなどはありますか?
[早瀬様]
仕掛けというより、カルチャーに近いかもしれませんが、1つは研修プログラムによって自己成長を促す土壌が整っていることが挙げられます。研修メニュー自体はおそらく他のグローバルネットワークと大差ないと思いますが、机上の空論ではなく現実にその制度を使える環境にあるかどうかが大きなポイントです。
つまり、いざ使いたくても暗黙の圧力、例えば、当然プロジェクト優先でしょう、というような雰囲気で遠慮することはありません。EYではむしろ、プロジェクト業務だけでは評価されず、プロジェクト以外の成長機会も生かし、コンサルタントとしてレベルアップすることが求められます。
個々の成長がプロジェクトやチームに価値として還元され、社会へ提供価値につながると考えるからです。プロフェッショナルとして勤務しながら社内プログラムでMBAを取得する人もいることが、それらを表す好例の1つではないでしょうか。
(2025年8月現在)
参照:https://www.eysc.jp/recruit/assets/pdf/career/ey_recruit_brochure.pdf
[早瀬様]
また、こうした学習面だけでなく、社外での社会貢献的な活動への参画も奨励しています。EY Ripplesと呼ばれるプログラムもその1つで、中高生向けの会計講座やキャリア教育、社会起業家との協働プロジェクト、環境関連のワークショップなど、社員が自主的に参加する活動が盛んに動いています。
自分のためだけでなく、社会を巻き込む視点が常にある。だからこそ、未経験者でも比較的短い時間で成長できるのだと思います。
[小野]
では最後に、候補者の方へメッセージをお願いします。
[早瀬様]
Building a better working worldに基づき、新しい領域を切り開くことを使命とするEYとして、コンサルティングファームの在り方にも新境地を見いだしたいとわれわれは考えています。時代の流れに乗るのではなく、世の中に先んじて次の社会を拓いていく。このような志向を持つEYのパーパスに共鳴し、共に未来を作る気概に満ちた方をお待ちしています。私たちとしましても、マイパーパスを深く胸に刻んでいる方に選ばれるファームで在り続けたいと思っています。