FPTコンサルティングジャパン(以下、FCJ)は、ベトナム最大手のデジタルコングロマリット企業であるFPTグループのコンサルティングファームです。
2019年の設立以来、約6年で従業員数約700名、直近3年間で売上300%増という著しい成長を遂げています。
国内においてはFPTソフトウェアジャパン、海外においてはベトナム本国の親会社(FPTソフトウェアを中心に海外拠点)と密接に連携しつつ、企画構想フェーズのビジネス業務改革戦略やビジネス課題解決(直近ではAIを活用した業務効率化)、共創ビジネス立ち上げ、さらには実装フェーズのシステム開発(要件定義、設計、製造)から運用・保守まで、“End To End”で一貫したサービスをグローバルで支援できる点を強みとしています。
今回は、ハンズオン型の業務支援コンサルティングを提供しているBPG(Business Producer Department)の執行役員 長谷川 洋司様、シニアマネージャーのY.K様、そしてマネージャーのF.K様とY.M様にお話を伺いました。
インタビュアーはフォルトナ水上が務めます。
長谷川 洋司様 プロフィール
執行役員 エグゼクティブディレクター。
日本航空株式会社の情報システム本部でグローバル通信システムの企画・構築を担当。その後、外資系総合コンサルティングファームに入社し、官公庁・民間企業向けにシステム評価・監査からSCM、チェンジマネジメントまで幅広いコンサルティングに従事。日系コンサルティングファームでの経験を経て、2022年にFCJへ入社。ハンズオン型コンサルティングを手掛けるビジネスプロデューサー部(Business Producer Department:通称BPG)を新設し、現在に至る。
Y.K様 プロフィール
シニアマネージャー。
大手SIerにてSEとしてキャリアをスタートし、大規模なシステム開発プロジェクトを多数経験。プロジェクトマネージャーを経て、組織マネジメントも担当。20年以上にわたるSIerでの実績を経て、2023年にFCJへ入社。
F.K様 プロフィール
マネージャー。
弁護士資格取得後、大手証券会社にて業務効率化や自動化を推進。グループ横断の業務改善部門を立ち上げ、リーダーとして複数プロジェクトを牽引。2023年よりFCJに参画。
Y.M様 プロフィール
マネージャー。
大手銀行で法人営業を経験後、システム部門にてプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーとして大規模システム案件を多数推進。2023年にFCJへ入社。
業界も経験も異なるメンバーがFCJにたどり着いたワケとは
[水上]
本日はよろしくお願いいたします。
まずは、長谷川様のご経歴からお伺いしてもよろしいでしょうか?
[長谷川様]
私は航空会社で情報システムの企画業務に従事した後、官公庁との人事交流の一環で旧郵政省へ出向し、国際的な通信政策に携わりました。多様な関係者と連携するなかで視野が広がり、新たな環境で挑戦したいという気持ちが芽生え、出向後はコンサルティング業界へ転職しました。
最初に所属したファームでは、官公庁やサプライチェーン領域のプロジェクトを担当しました。企業規模の拡大とともに意思決定が慎重になり、個人としての柔軟性が失われていく感覚を覚え、次の環境を求めて転職。経営に携わる機会にも恵まれましたが、そのファームも急成長を遂げるなかで、再び動きにくさを感じるようになりました。
2020年のコロナ禍を機に退職し、一定期間は株式投資などをしながら過ごしていましたが、次第に「このままで良いのか」と感じるように。そんな折にFCJと出会い、当時の経営課題について話すなかで、自身の提案に共感をいただき、まずは業務委託として営業体制の立ち上げに関わることになりました。必要な人材の採用が整ったことを機に、2022年1月に正式に入社。その翌月にBPGを立ち上げ、現在は売上・利益ともに社内で高い水準を維持する組織として、チームの成長と事業拡大を推進しています。
[水上]
複数のファームで素晴らしいご経験を積まれてきたことが、まさにこの立ち上げの場で集大成として発揮されているのですね。
次に、F.K様のご経歴を教えてください。
[F.K様]
もともと企業支援に関わりたいという思いがあり、法律の勉強が好きだったことから弁護士を目指しました。28歳で司法試験に合格しましたが、実務経験のない自分が企業の役に立てるのか不安になり、「まずは一般企業で2年間修行しよう」と考えました。どうせなら法律とは違う業界に挑戦しようと証券会社に入社し、コールセンターやバックオフィスなど現場を経験しました。そこでは、業務の非効率さに気づき、自動化や電子化の提案を始めました。その取り組みが評価され、親会社へ転籍となり、グループ内での横展開を任されました。グループ横断で業務改善を推進する部署を立ち上げ、2年の予定が気づけば8年に。やり切った感覚はあったものの、クライアントワークとして外で通用するにはまだ力が足りないと感じ、次のステップとしてコンサルティング業界に挑戦することを決め、2023年2月にFCJにマネージャーとして入社しました。
[水上]
コンサルティング業界に進むことを決意されたなかで、FCJに参画されたのはなぜですか?
[F.K様]
お声がけをいただき何社か比較はしましたが、最終的には「自分が本気で挑戦できる環境かどうか」「そこに意義を見いだせるか」を重視しました。他社と細かく比較するよりも、「ここで挑戦したい」と直感的に思えたFCJを選びました。
他社では、私の資格や経験を生かしたデューデリジェンスやバリュエーションに特化した提案が多く、やりたいことの幅が狭まると感じることもありました。一方、FCJでは強みを生かしながらも、自分次第で可能性を広げていける柔軟さに最も惹かれ、参画することを決意しました。
[水上]
コンサルタント未経験でありながら、マネージャーというポジションからスタートされましたが、前職でのどのようなご経験が評価されたのでしょうか?
[F.K様]
前職では自部署を率いるマネージャーとして、外国人エンジニアを含むメンバーのマネジメントに加え、部署や会社を横断したプロジェクトも多数経験しました。上位レイヤーの関係者との調整や提案を担うことも多く、そうした視点や経験が評価されたのだと思います。
また、コンサルティングファームと事業会社では、同じ「マネージャー」という肩書きでも求められる役割が大きく異なると感じています。現在は、現場の一番近くにいる立場として信頼関係を築き、小さな案件から着実に広げていくことを意識しています。戦略から実行まで一貫して関わり、手を動かしながら考え、管理もする、そうした多面的な動きが求められる今の環境には、大きなやりがいを感じています。
[水上]
続いて、Y.M様のキャリアについて教えていただけますか?
[Y.M様]
私は大学卒業後、大手銀行に入行しました。最初は法人営業を担当し、その後システム部門へ異動後は、多くの銀行システムプロジェクトに携わり、プロジェクトマネージャーやPMOとして、大規模案件も経験しました。 若い頃は小さな保守案件を任されることが多く、制約があるなかでどう進めるべきかを自分なりに考え、上司の承認を得ながらも比較的自由にプロジェクトを回させてもらっていました。しかし、ある大規模プロジェクトの成功以降、社内では「プロジェクトの進め方はこうあるべき」といった硬直的な方針が強まり、プロジェクトの特性に応じた柔軟なやり方がしにくくなったと感じました。そこに面白みを感じられなくなり、転職を考えるようになりました。 転職先を検討する際には、他行やシステム系企業も見ていましたが、FCJと出会い、業界・業種をまたいで幅広く経験できる点に魅力を感じました。また、End To Endでプロジェクトに関われる点や、自社でソフトウェア開発も行う体制に多様性と面白さを感じ、2023年9月に入社しました。
[水上]
金融機関から転職された今、働くうえでのスタンスや、仕事との向き合い方にはどのような違いを感じますか?
[Y.M様]
金融機関から転職して最も変わったことは、仕事に対する責任の重さと向き合い方です。前職では、困ったことがあれば最後は上司に任せられる安心感がありましたが、現在はコンサルタントとして、マネージャーとして成果責任を直接担うようになり、その分プレッシャーも大きくなりました。ただ、自分の判断や行動がそのままクライアントの成果につながるという実感があり、大きなやりがいにもなっています。
[水上]
最後に、Y.K様のご経歴を教えてください。
[Y.K様]
私は1999年に大手SIerへ入社し、以降20年以上勤めていました。入社当初はSEとして大規模なシステムを担当し、プログラムの実装や設計書作成など、開発の現場での業務が中心でした。その後、プロジェクトマネジメントに携わるようになり、最終的には複数のプロジェクトを束ねる組織マネージャーの役割も担っていました。ただ、2022年末に業務がひと段落したタイミングで、異動と昇進の打診があり、「このまま昇進していくと、現場から上がってくる報告にOK・NGを出すだけの“口だけ出す仕事”になってしまうのでは」という疑問をもつようになりました。特にコロナ禍でのテレワークでは、モニター越しにやり取りする日々が続き、「この先もこれを続けていくのか」と将来に違和感を覚えました。もっと自分の力を発揮できるのは、クライアントに近い現場なのではないかと思い始め、SIerとクライアントの間に立って、より直接的に価値を提供できる立場として、コンサルタントというキャリアが自分に合っていると感じ、転職を決意しました。
[水上]
Y.K様もコンサルティング業界への転職を考えるなかで、他社との比較はされたのでしょうか?
[Y.K様]
私の場合は、他社との比較検討はあまり行いませんでした。実は最初にお会いしたのが長谷川さんだったのですが、お話のなかで、大企業特有の硬直的な組織文化や、ある種の「面白みのなさ」に言及されていた点が印象的で、私自身がこれまで感じていた違和感と重なる部分が多く、強く共感を覚え、「ここだ」と直感が働きました。
特にFCJ、そしてBPGという組織は、これから自分たちで形を作っていく段階にあると伺い、それが非常に魅力的に映りました。すでに整備されたルールに順応していくというよりも、「あなたに活躍してもらうために、私たちはこういう形で進めていきたい」というような、柔軟で前向きな姿勢が感じられた点も、非常に好印象でした。
また、「こういう組織をつくっていきたい」「提案書をつくること自体が目的ではない」といったお話を伺い、まさに私がSIerとしてのキャリアで感じていた課題意識と重なりました。この方向性に強く賛同したことも、決断の大きな要因です。結果として、時間をかけて多くの選択肢を比較するというよりも、最初に感じたインスピレーションを大切にし、この機会を逃してはいけないという思いで、入社を決めました。
[水上]
20年以上にわたり前職に勤めていらしたとのことですが、1社目でのご経験が長い方ほど、転職活動に対しての不安や、「さまざまな会社を比較検討した方が良いのでは」と迷われるケースも少なくありません。そうしたなかで、思い切ったご判断ができたのはどういった理由からでしょうか?
[Y.K様]
自分のキャリアには常に向き合ってきたからこそ、軸が明確で、能動的に選んできた部分が大きいと思います。例えば、自ら手を上げて異動の機会をつかんだこともあり、その経験を経て30歳前後に転機を迎えました。マネージャーになってからは、業務の多くが上から割り振られるようになりましたが、そのなかでも自分のやりたいことを見つけて提案に生かす意識をもって取り組んできました。同じ会社にいながらも、自分でキャリアパスを選び取ってきたという実感があります。今回のFCJやBPGでの挑戦も、その延長線上にある選択肢として、自分なりに納得して決断したつもりです。
“Think Big, Start Small”を実現、アジア発のコンサルティングファーム
[水上]
皆さまそれぞれ異なるバックグラウンドをおもちのなかで、転職先としてFCJを選ばれていますが、FCJにはどのような特徴があると感じていらっしゃいますか?
[長谷川様]
私たちFCJは「ベトナム発」、さらに言えば「アジア発」の総合コンサルティングファームとして、初めての存在だと捉えています。また、兄弟会社であるFPTソフトウェアジャパンや、ベトナム本国のFPTソフトウェアとも連携し、“End To End”でサービスを提供できることが、最大の特徴です。
そのなかで、私たちBPGは、FCJ内で戦略・業務・ITの全領域にわたる、ハンズオン型のコンサルティングサービスを提供するチームです。私たちは自らを「ゲリラ軍」と表現することもありますが、それは「提案に時間をかけるのではなく、すぐに現場に入り込んで価値を出す」というスタンスを象徴しています。スピード感を重視しながら、サービスを拡大しているのが特徴です。また、特定の業界やソリューションにセグメントを設けていないため、銀行、証券、自動車、印刷、情報通信など、幅広い業界でサービスを提供しています。
[水上]
End To Endの支援が増えているなか、FCJは他社とどのような点で異なるのでしょうか?
[長谷川様]
国内には「総合コンサルティングファーム」と謳っている企業もありますが、実際には「SIは行っていない」「PMのみを担う」「上流工程だけを対応する」といったケースが多いと感じています。私たちが考える“End To End”とは、最上流の戦略策定から、実行・運用といった最下流まで、一貫したサービスを提供することです。
その実現においては、私たちFCJ単体ではなく、FPTソフトウェアジャパンやベトナム本社であるFPTソフトウェアなど、グループ全体の力を結集し、幅広いテーマに対応できる体制が整っていることが大きな特徴です。
こうした体制をもち、戦略から実装・運用まで本当にやりきることができる企業は、実はそれほど多くないのではないかと思っています。私たちは、いわゆる欧米発の大手総合コンサルティングファームと同じレベルの機能を備えながらも、ベトナム発、アジア発という独自の背景をもつ点にユニークさがあると考えています。
[水上]
グループ全体がワンチームとして機能し、法人の枠を超えて一体的な支援ができている体制を実現されている工夫について教えていただけますか?
[長谷川様]
法人ごとにフロアや座席の配置を分けるといったようなことはしておらず、あえて混在させた形をとっています。そのため、「この方はどの法人に所属しているのか」がぱっと見では分からないこともあるほど、組織間の垣根が非常に低いのが特徴です。その意味でも、日常的に自然な形でグループ内連携が進んでいると思います。
[水上]
もう1つの特徴である「ハンズオン型支援」ではどのように差別化しているのでしょうか?
[長谷川様]
従来型のコンサルティングでは、調査や分析を行い、報告書を納品して終わりというケースが多く、どうしても「受託者」としての立場にとどまってしまいます。これは、SIerが成果物を納品する構図と大きく変わらず、「課題をクライアントから預かって処理する」というスタンスです。
一方、私たちの提供するハンズオン型、伴走型のコンサルティングでは、そうした「ベンダー側」の立場ではなく、クライアント側に深く入り込み、同じ目線で課題に向き合い、一緒に汗をかきながら解決していくことを重視しています。
クライアントの課題は、経営レベルの大きなテーマから、部門単位、さらには係単位の小さなものまでさまざまです。私たちは、たとえ小さな課題であっても現場に入り込み、そこで信頼を得ながら、徐々に横展開していくことで、支援の幅を広げていきます。
そのため、時には「この人、本当に外部のコンサルタントなの?」と思われる程、組織の一員として自然に溶け込み、共に価値を出していくことが、私たちのスタイルであり、ハンズオンの大きな特徴です。また、単に外部のコンサルタントが「常駐している」だけではなく、クライアントと一体となって変革を推進していくという姿勢が、私たちの提供価値だと考えています。
[水上]
より深く入り込むことでクライアントと一緒に変革を進めていくというのが、まさにハンズオンの本質だと感じました。
FCJが案件を獲得し、「ゲリラ的」に現場へ入り込むために工夫されていることはありますか?
[長谷川様]
当社では「Start Small, Scale Fast」という考え方を重視しています。
「Start Small」は、まずは小さく始めながらも、将来的な拡張性を見据えて段階的に展開していくというアプローチです。BPGでは、最初からクライアントの課題をすべて解決するといった大規模な提案を行うのではなく、まずは少人数のチームによる支援を「一度お試しいただく」形でご提案しています。これは、大人数の体制で提案を持ち込んでも、予算面での制約や、当社への信頼度が十分でない段階では受け入れていただきにくい、という背景があるためです。
そのため、「特定の検討事項はあるが人手が足りない」「社内に必要なスキルが不足している」といった比較的小さなニーズに対しては、2〜3名程度の小規模な体制で対応します。まずは実際に支援を提供し、その成果をご評価いただいたうえで、他部門や別領域へと支援の範囲を広げていくステップを重ねながら展開しています。
「Scale Fast」の考え方において、当社は提案プロセスの迅速化を重視しています。一般的には、提案書やディスカッションペーパーの準備に数ヶ月を要することもありますが、当社ではそうした長期化しがちなプロセスをできる限り避けるようにしています。理想としては、「本日ご提案し、翌日からでも支援を開始できる」といったスピード感で対応することを目指しており、可能な限り早期に着手し、クイックに効果をご実感いただけることを重視しています。
また、こうした考えの根底にあるのは「Think Big」の発想であり、最初の一歩をスモールスケールで踏み出しつつ、クライアントと対話を重ねながら大きな構想に共感いただくことを大切にしています。
[水上]
こうしたハンズオン型の支援やスピード感ある提案を可能にしている背景には、組織内の体制や人材育成の仕組みも関係しているのではないかと思います。現場での実行力を支える仕組みについても、教えていただけますか?
[長谷川様]
本社には、営業や採用、管理など幅広い業務を担う「ビジネスプロデューサー」のような役割の人材や、コンサルティング経験をもつマネージングディレクターなどが在籍しています。これらのメンバーが、現場のコンサルタント一人ひとりに対してメンターのような立場で伴走しており、日常的にサポートや相談ができる体制を整えています。
この仕組みは、BPGの立ち上げ当初から続けているもので、直属の上司とは別の視点からキャリアや働き方について相談できる「もう1つの窓口」として機能しています。ただし、サポートの受け方は人それぞれです。本音を出しにくい人もいれば、自分で進めたいという人もいるため、それぞれの個性に合わせて柔軟に関わることを大切にしています。