すべては自分次第。Luvirで求められる主体性とは
[水上]
大手ファームとLuvirではどのような点に違いがありますか?
[奥地様]
「すべては自分次第」だと思える点です。組織が大きければ大きいほど、言い訳を作るのは簡単です。私の場合は、前職でも割と自由に挑戦させていただいており、大手ファームがターゲットとしにくい、規模が小さなクライアントでも中長期視点で組織に貢献できるのであれば、自分で好きなテーマを提案して、それに取り組むこともできました。
その一方で「もっとできることがあったよな」とも思っています。Luvirでは、やらなかったことについて言い訳をしても、「それはあなたがやらなかっただけだよ。誰もやるなとは言っていない。」となります。莫大なお金がかかることを除いて、やりたいことを自分でやらなかったのは自分の責任です。そうした点で、責任が明確になり、自分に言い訳をさせず、自分のミッションに向き合える環境だと思います。
また、そのような環境に身を置いていること自体が、自分が本当にやりたかったことを確認するための刺激にもなります。好きなことは、やるなと言われてもやります。だから、今の状況でやらなかったら、それは自分の意思によるものです。自分の責任がクリアになるという点で、やりたいことを実現するためには、環境や理由に関係なく、自分の意思が強く求められます。もちろん前職でも、Luvirと同じく手伝ってくれる仲間もいました。しかし、Luvirは特に自分の意思の強さが重要となり、純度が高いといったイメージがあります。
また、先ほどお伝えした「ロジカル×エモーショナル」というアプローチについても、根本的には「何を目指しているのか」が重要です。夢をもち、それを体現する企業文化があるかどうか。この点が、大手を含む他ファームとLuvirの違いだと思います。
[水上]
そのような企業文化のもとでは、仕事の進め方も異なってくるのではないかと考えますが、その点についてはいかがでしょうか?
[奥地様]ルールなど一定のブレーキ機能は企業として必要ですが、規模が大きくなるほど、その「ブレーキ」の数も増えてしまう傾向があります。例えば、小規模なチームでは比較的自由に動ける一方で、数千人、数万人規模の組織になると、より多くのルールや承認プロセスが必要になります。また、BIG4と呼ばれる監査系ファームでは独立性の問題があるため、例えばBtoCビジネスの展開には制約が多くなります。これは、仕組み上どうしても避けられないものだと思いますが、こうした点も違いがあると認識しています。
[水上]
プロジェクトのテーマやクライアントにも違いはみられますでしょうか?
[奥地様]
テーマやクライアントの規模自体は大きく変わらないと思います。最近では、大手ファームともお取引のあるクライアントの案件を受注する事例も増えてきました。一般的に、大手ファームからスピンアウトしたブティックファームが新規の顧客を獲得するのは難しいとされますが、既存のつながりだけでなく、新しい顧客との関係を築き、新規のお取引も増えているのは、Luvirの強みだと感じます。
また、Luvirでは、ご支援をスモールスタートできる仕組み「バリューラダー戦略」を検討中でして、これは大手ファームでは真似が難しい点ではないかと考えております。大手ファームではご支援が難しいとされる中小企業であっても、しっかりと価値を提供できれば、より大きなご支援につながる可能性もあります。ただし、最初のハードルを下げないと契約に至らないことも多いのが現状です。そこで、価格帯ごとのサービスを設計し、「まずはコンサルを使っていただくこと」に慣れていただくような取り組みも行っています。また、すべてのサービスを自社で提供する必要はなく、他社と協力しながら幅広い課題に対応できるような体制を整えるのも1つの方法だと考えています。
[水上]
日本には中小企業が多く、高額なコンサルフィーにハードルを感じる企業も少なくないですよね。経営課題を抱える幅広い企業にアプローチする姿勢が素晴らしいなと感じました。
[奥地様]
中小企業が成長すれば、人の流れも変わるはずです。今は「一流大学を出て有名企業に就職する」という流れが根強いですが、それだけが正解とは限らないと思います。実際、本当に優秀な人は海外に出ていくことも多いです。前職時代にある大手商社と仕事をした際、部長クラスの50代の方々が「エンゲージメントサーベイ(従業員の関与度、やる気を定量化して測定するための調査) の結果は悪くないけれど、昔に比べて勢いがない」と話していたことが印象的でした。それは当然で、かつては日本の優秀な人材が商社に集まっていましたが、今は商社を選ばず海外に行く人も多いです。そうした優秀な人材が、大手企業や海外ではなく、日本の地方の有力企業に目を向ける流れが生まれたら面白いですよね。
「感情も大切」。メンバーで理解しあうカルチャー
[水上]
続いてカルチャーについてお伺いさせてください。Luvirらしさはどのような部分に現れていますか?
[奥地様]
Luvirの組織開発ラボチームで進めている話がいくつかありますが、まず、「オープンであること」がキーワードです。例えば、社名も実は別の名前になる予定でしたが、「その名前はセンスがないですね(笑)。」といったように、上の立場の人にも率直に意見を言える雰囲気があります。
また、冒頭でもロジカルとエモーショナルの話をしましたが、これは「感情論」を大事にしているということでもあります。感情的に嫌だと感じたことはきちんと言える文化を作ることを大切にしています。そして、その理由をみんなで共有し、理解し合うことが重要だとされています。
コンサル業界は個人商店的な雰囲気もありますが、チームとして1つの目標に向かって協力していく文化を目指していきたいです。「アイディアをWin」とし、個人の立場や役職に関係なく、最も良いアイディアが採用される文化、そしてみんなでそのアイディアを育て、共有していく環境があると感じています。
[水上]
一般的な組織では、同調圧力のようなものも発生しやすいかと思いますが、意見を皆で言語化していくという発想は、非常に面白いです。
[奥地様]
コンサルティングファームでは、「代替案を出さないと、ただの批判になってしまう」という雰囲気がありますよね。そのせいで発言しにくいこともあると思います。でも、必ずしも完璧な代替案を持っている必要はなく、「なんか違うな」と感じること自体に価値があります。その違和感の中に、新しいチャンスやヒントが隠れていることも多いので、まずは率直に意見を言うことが大切だと思います。「何か」違うと感じる、その「何か」が何なのかは皆で言語化すれば良い、そのような考えです。そういう意味では、他のコンサルティングファームと比べると、明確な意見が無くても発言しやすい環境があるかもしれません。
[水上]
こうした環境を作ることができているのは、皆様のバックグラウンドなど何か特徴的なことがあるのでしょうか?
[奥地様]
違いに関しては微々たるものだと思います。私自身の場合でみると、ファーストキャリアで同世代と比べると早く昇進しました。ただ、その際に「君たちの視点では互いに何センチかの差があるように見えるかもしれないが、経営目線でいえばメートル、キロメートルといった尺度で見ていて、上から見れば誤差の範囲だ」と言われたセリフが印象に残っています。能力の差は確かにありますが、極端な違いではなく、結局は同じ基準の中に収まることが多いです。そして、最終的には「どれだけ集中し、没頭できるか」が成果を大きく左右します。3ヶ月間ダラダラ仕事をするのと、3ヶ月間没頭するのでは、成長スピードが全く違います。没頭した時間の積み重ねが、最初は劣っていたとしても、数センチ、数十センチと差を埋めていくと思います。本当にトップレベルの人を除き、頭の良さだけでパフォーマンスが決まるわけではなく、努力次第で逆転も十分可能だと感じます。
また、できなかったことができるようになるのは本当に楽しいことです。スポーツや音楽でも新しい技や曲を覚えたり、自分が進化したと感じたりする瞬間は嬉しいですよね。これは人間の本能的な喜びだと思います。職場でも日々の成長を実感できるような環境や機会を提供することが大切だと思います。
[水上]
没頭や熱中は最終的に自律的にコントロールできるのが理想ですが、他者からの承認や称賛など外部からの刺激も重要だと考えています。組織のマネジメントや人事コンサルティングにおいて、そうした刺激をどのように与えていくかが鍵になると思うのですが、意識されているポイントはありますか?
[奥地様]
褒めすぎると、褒められること自体が目的になり、自分の意志ではなくなってしまうという話がありますよね。だから、褒めることはあくまで通過点なのだと思います。 他者からの承認欲求がある程度まで満たされたら、最終的に大切になってくることは「自分の評価軸をもつこと」だと思います。
例えば、自分のアウトプットを「何点」と評価する習慣をつけることや、「これは自分にとって100%の出来か?」と考えること。誰かが一方的に評価するのではなく、メンバー自身が自分の成果をどう評価するか、をサポートすることが重要です。本人が「80点」と評価したときに、「あと20点を埋めるにはどうしたらいい?」と問いかけてみます。そのプロセスのなかで、仮に私が「30点」と感じていたとしても、実は見ているポイントは同じだったということもあります。その際に、「時間が足りなかったのか?」「知識やスキルの問題だったのか?」と振り返ることが大事です。いわゆる「リフレクション(内省)」をどれだけ促せるかが、成長につながるポイントだと思います。
マネジメントにおいても、いかにメンバーが内省できるようにサポートするかが鍵です。私自身、これまで何百回もマネジメント研修を実施してきましたが、やはり自分自身がリフレクションできることはもちろん、メンバーに内省を促すことが最も重要だと感じています。
夢を語ることが競争力に。「パーパスアウト型人材」が求められる時代
[水上]
組織を運営していくうえで、どのようなことを重視していますか?
[奥地様]
マネジメントの観点から考えると、ゴール(ビジョン)設定は非常に重要だと思います。実はコンサルタントの多くはコンサルタントとしてのバリュー(行動規範)をもっていても、ビジョンを明確に言語化できている人は少ないように感じています。「こうあるべきだ」と論理的に考えることはできても、「どんな世の中を実現したいか?」と問われると、答えられる人はほとんどいません。最近、私は「パーパスアウト型人材」という概念を提唱しています。これは、クライアントの悩みを聞いて、それに適した答えを提供する「マーケットイン」のアプローチだけでなく、自分自身が「こういう世の中を作りたい」という明確な意志をもち、それをクライアントと共に実現していこうとする姿勢を指します。自分や組織の存在意義を発信できる人材ですね。
ある程度の論理的な分析や戦略提案は、すでにAIが一定のレベルでアウトプットできるようになりつつあり、AIに任せても遜色ない時代が来ています。そんななかで、「自分が目指す未来を語り、それに向かって周囲を巻き込める人材」こそが、これからのコンサルタントに求められるのではないでしょうか。
特に若手の皆さんにとっては、「ただ仕事をこなす」のではなく、「どんな未来を描き、そのなかで自分がどう関わるのか」という視点がモチベーションにつながります。コンサル業界には「モチベーションに頼るべきではない」という価値観もありますが、実際には、目指すビジョンをもち、それに共感することでパフォーマンスが大きく向上することは間違いありません。
「こんな世の中を作りたい」「この社会課題を解決したい」と、大きなビジョンを描き、恥ずかしがらずに夢を語れること。これは個人にとっての「らしさ」であり、企業にとっては「ビジョンを語ること」にあたります。そして、「らしさ」は企業にとっての差別化要因であり、競争力の源泉になります。だからこそ、夢をもち、夢を語れる人材が求められている。これからの時代、パーパスアウト型人材であることが、マネジメントをするうえでますます重要になってくると考えています。
[水上]
目から鱗の概念です!最後に、奥地様ご自身の展望をお聞かせください。
[奥地様]
Luvirでは「組織の楽しさ」や「熱中・没頭できる環境」を大切にしており、「会社は真剣な遊び場」という考え方を掲げています。例えば、日本には現在約400万社の企業がありますが、2030年、2050年、さらには2100年と未来を見据えたときに、そのうちの10%の40万社が「明日も会社に行きたい」と思えるような環境になれば素晴らしいことだと思います。また、現在の日本の労働人口は約7,000万人ですが、私の子供が社会に出る頃には約6,000万人に減ると予想されます。そのうち半分の3,000万人が「明日も働きたい」と感じられる社会が実現すれば、それは理想的な未来と言えるのではないでしょうか。自分の子どもなどの将来世代が大きくなったときに、「こんな世の中に誰がした」と言われないような、そんな世の中を作りあげていきたいです。
こうした未来を考えると、日本の教育にも目を向けるべきだと感じます。日本は教育の水準が平準化されており、アメリカのように極端に格差があるわけではありません。しかし、さらに高いレベルでの標準化を進めることが必要ではと考えております。
私は現在、子供をインターナショナルスクールに通わせています。授業料や施設利用料を含めると年間400万円ほどかかります。これは非常に高額ですが、教育内容を聞いたとき、費用対効果はひとまずおいておき、内容自体は他のどの学校よりも魅力的に感じました。こうした良いと思った教育を、できるだけ多くの人が経験できるようになれば良いと考えています。また、私は「日本円しか稼げない」ということに大きなリスクを感じています。将来的には、子供にも外貨を稼ぐ力をつけてほしいと思っています。今の日本は円安が進み、海外旅行に行くのも難しくなっています。単純に収入の問題だけでなく、円の価値が下がることで、経験の幅が狭まっているのを実感します。だからこそ、もっと多くの人がいろんなチャンスをつかめる環境を作りたいと考えています。
例えば「30歳で年収1,500万円」という水準を実現することも、1つの目標として考えられます。現在、金融業界で「世帯年収1,500万円以上」をインカムリッチ層と名付け、1つの基準として設定しているようですが、努力した人がこの水準にたどり着けるような会社をつくるということです。これを実現するには、企業側の稼ぐ力の向上が不可欠です。中小企業でも、経営幹部として頑張る30歳の人材に1,500万円を支払える環境を作ることができれば、社会全体が活性化するはずです。こうした未来を実現するために、Luvirとしてもどのように貢献できるかを考えていきたいと思います。
[水上]
中川様からも最後に一言ございますか?
[中川様]
Luvirの成長の源は社員一人ひとりの想いです。「会社は真剣な遊び場」という思想を掲げて、この思想に沿う事業やサービスはどんどん構想して作りあげていってほしいと思っています。
そのために会社として、社員一人ひとりの「やりたい」を、現実に変える“土壌”と“仕組み”を作ることが重要です。その営みそのものが、組織としての創造性と成長力の源になると信じています。ですので、強いWILLをもっている、もしくは新しいコンサルティングの価値を模索したい方はどんどん当社の扉をたたいてほしいと思っております。
[水上]
大変刺激になるお話ばかりでした。本日はありがとうございました!