株式会社シグマクシス(以下、シグマクシス)は、企業のトランスフォーメーションを支援するコンサルティングファームです。「Create a Beautiful Tomorrow Together – 美しい明日を共に創る」をパーパスとして掲げ、企業の課題解決に加え、企業間の連携による新たな事業・産業の共創にも取り組んでいます。
同社では、デジタル経済下で企業が取り組むべき主要なトランスフォーメーションとして、①コアビジネスの生産性革命で業績を大幅に向上させる「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」、②新たな成長エンジンとなる新サービスを開発する「サービス・トランスフォーメーション(SX)」、③組織、制度、文化、ワークスタイルなどの経営プラットフォームをデジタル型へと変えていく「マネジメント・トランスフォーメーション(MX)」の3つを挙げています。この3つの実現に向けて、事業構想提案、事業開発、デジタル先端技術、SaaS/クラウド、プロジェクト・マネジメント等、多様な能力を擁したプロフェッショナルが、企業各社にとって必要な取り組みの提案から成果実現まで伴走することを強みとしています。
今回は、シグマクシスのSaaS活用を推進するプロフェッショナルチームである、SaaS Sherpa SaaS 1(以下、SaaS 1)のディレクターである安東太輔様とマネージャーの加藤美野様にお話を伺いました。安東様のチームの取り組みは、企業の基幹業務やシステムの次世代化におけるフロントランナーとして認知されています。
インタビュアーはフォルトナ春日が務めます。
安東 太輔様 プロフィール
SaaS Sherpa ディレクター。
外資系総合コンサルティングファームを経てシグマクシス入社。製造・流通・運輸等の幅広い業界に対し、BPR、IT導入のコンサルティングを実施。SAPプロジェクトにおける構想策定から運用・定着化まで、業務変革とシステム導入のライフサイクル全般でのプロジェクト・マネジメントを得意とする。
加藤 美野様 プロフィール
SaaS Sherpa マネージャー。
新卒で外資系IT企業に入社。さまざまなSAP導入プロジェクトに会計領域のプロフェッショナルとして参画。2020年1月にシグマクシスに入社し、基幹システムのSaaS化のプロジェクトに携わる。また、SAPの最新情報を発信する社外のコミュニティ活動も推進している。
基幹システム変革のフロントランナー SaaS Sherpa
[春日]
まずはこれまでのお2人のご経歴を教えていただけますか?
[安東様]
私は新卒で外資系総合コンサルティングファームに入社し、シグマクシスには2016年に参画しています。これまで基幹システムに関わるプロジェクトを担当し、SAPコンサルタントとして、構想策定・IT導入・保守・立ち上げまでを行ってきました。
現在はSaaSを活用して基幹業務・システムの標準化を推進することで、企業の変革に欠かせないデジタル基盤の整備を支援するというミッションを担っています。具体的にはSAP社の製品であるSAP S/4HANA Cloud Public Editionというクラウド型のERP(Enterprise Resource Planningの略。ヒト・モノ・カネなど企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法・システム)を導入するという取り組みになります。2000年代に多くの企業が導入したERPであるSAP社の製品が2027年に保守サポートの終了を迎えることもあり、弊社のお客様だけでなく非常に多くの企業が関心を持たれている分野です。
SAP S/4HANA Cloud Public Edition のようなパブリッククラウド型のERP(以下、パブリッククラウド)導入において私たちが重視することのひとつが「Fit to Standard」の徹底です。Fit to Standardとは、ERPの導入においてお客様ごとの個別カスタマイズを行うのではなく、お客様の業務のやり方をERPの標準機能に合わせる手法です。世界に比較して個別カスタマイズされて複雑化している現在の日本企業の業務とシステムが、Fit to StandardでのSaaS活用により世界標準へ刷新する機会を迎えているというわけです。
[加藤様]
私は外資系IT企業に新卒入社しました。会計領域のコンサルタントとして多くのSAP導入プロジェクトを経験し、2020年にシグマクシスに参画しました。
シグマクシスを選んだきっかけは、前職から協力会社のメンバーとしてシグマクシスのパブリッククラウド導入プロジェクトに参画したことです。Gapを作りこむのではなく、いかに標準を上手く使いこなすのかというパブリッククラウドのおもしろさに気付き、その領域の先駆者であるシグマクシスを次の活動の場として選択しました。現在はお客様プロジェクトの支援と並行して、社外向けに情報発信しているSAPコミュニティの運営も担当しています。SAPはグローバルも含めて幅広い領域に関わっているため、調べた情報が古くなっているケースや日本語がないケースがあります。私が関わるSAPコミュニティは、新しいソリューションに興味のある人が集まり、自分たちが噛み砕いた情報をシェアしていこうという主旨でイベントを企画しています。
[春日]
SaaS SherpaやSaaS 1についてもご紹介いただけますか?
[安東様]
シグマクシスの組織を大きく分けると、主にお客様と接点をもち変革の提案を行う「クライアント・インターフェース」の役割を担うチームと、提案を実現する「オファリング開発」の役割を担うチームの2領域に分けられます。SaaS Sherpaはオファリング開発に属し、SaaS(Software as a Serviceの略。サービス提供者側で稼働しているソフトウェアを、ネットワークを介してユーザーが利用できるサービス)を使って企業の変革とその土台作りを担っています。そのなかでも、私がリードするSaaS 1は企業の経営基盤とも言える基幹業務・システムにおけるSaaS活用をテーマとしています。
[春日]
最も印象に残っているプロジェクトについてお聞かせください。
[安東様]
SaaSの活用により、会計だけではなく受発注管理やプロジェクト管理までを含めた基幹システムの刷新を、半年で実行したお客様のプロジェクトをご紹介します。社員2000名規模の通信業界のお客様へのパブリッククラウドの導入です。
当時、お客様は自社固有にカスタマイズされた旧SAPシステムを使っておられ、そこには800ほどの独自機能がありました。パブリッククラウド導入にあたりそれら全てを廃止し、Fit to Standardを徹底して全業務をSaaSの標準機能に合わせたのです。プロジェクト開始時は、新ソリューションであるパブリッククラウドについて詳しい人は日本にほとんどいませんでした。でもプロジェクトメンバー全員で「半年でやりきる」という大目標を掲げていましたから、何度もディスカッションを重ねることで、まさにチーム一丸で期間内に目標を達成させました。2018年のプロジェクトですが、いまだにこの規模のプロジェクトを半年でやりきるのは、スタンダードではないと思います。それだけに、私自身も多くの変化と学びがありました。
[春日]
安東様の中でどのような変化や学びがあったのでしょうか?
[安東様]
以前はお客様に対して「システムをどう作りますか」というシステム要件を詰めていく関わり方でした。しかし、このプロジェクトではFit to Standardを徹底するというピン止めができたこともあり、「どんな業務を行っていますか?」「だったらこういうやり方もあります」とより深いところまで突き詰めることになり、そうなるとお客様との関わりも自然と深くなりました。
また、「できない」というご意見に対して「こうしたらできます」と提案することで、Fit to Standardの意義を理解していただく努力も重ねました。業務を大きく変えるうえでお客様の決断を後押しすることも大事で、お客様と何度もディスカッションしました。何度も膝詰めで意見を交わしているなかで腹を決める瞬間が生まれることがあります。この瞬間を掴めるようになったことは、その後のプロジェクトにも生きていると実感しています。
ちなみに、加藤が初めて参画したのが、このプロジェクトです。
[春日]
加藤様は、それまでご自身が携わってきたプロジェクトとどのような違いがあると感じましたか?
[加藤様]
とにかくスピード感が違いました。私が経験してきたSAP導入プロジェクトは1年以上かかることが多かったのですが、それをSAP S/4HANA Cloud Public Editionという新たなソリューションでありながら半年で導入を実現したという経験から、こうしたスピード感で仕事をしていきたいと思いました。
また、パブリッククラウドの場合、機能のアップグレードがしばしば発生します。最新のテクノロジーを都度キャッチアップできることも、この領域のプロフェッショナルとしての成長を目指す身として惹かれるポイントでした。
[春日]
担当されているプロジェクトは、パブリッククラウドに特化しているのでしょうか?
[安東様]
Fit to Standardアプローチに特化しているという表現が正しいと思います。Fit to Standardアプローチは、 実はプライベートクラウド(ユーザーが個別のクラウド環境を用意し、使用するモデル)のソリューションにおいても適用可能です。ただし、各社固有に作りづらいソリューションであり、よりFit to Standardアプローチに適しているのはパブリッククラウドであるため、当社ではパブリッククラウドに軸足を置いています。
[春日]
プロジェクトにおける、IT部分とNon-IT部分の作業の割合はどれくらいですか?
[安東様]
メインは、やはり業務をどう変えていくかのNon-ITです。最終的な局面では、Side-by-Sideと呼ばれる周辺システムとのインターフェイスを作る必要があるため、IT色が濃くなりますが、標準機能を使ってどう業務を変えていくかがメインのテーマとなります。
[春日]
競合他社と比較して、貴社の優位性はどのようなところでしょうか?
[安東様]
そもそも競合他社はそれほど多くなく、当社が圧倒的なフロントランナーと自負しています。事実、現時点ではコンペもほとんどありません。Fit to Standardを徹底する難しさが参入障壁になっているのだと思いますが、私たちとしてはより多くの企業にお勧めしたいことから、ノウハウを公開しています。例えばビジネスパートナーの集まりやSAP社のコンソーシアムなどで、Fit to Standardを徹底するために何が大事なのかなどを説明しています。そこには、私たちのお客様がご協力くださることもあります。
優位性という意味では、SAP社が公開しているSAP S/4HANA Cloud認定資格取得総数でもみていただけますとおり、SAP S/4HANA Cloud Public Editionの認定資格保有者数は他コンサルティング会社等に比べて圧倒的な人数です。
[加藤様]
SAP S/4HANA Cloud Public Editionは半年に1度機能がアップグレードされるため、その認定資格保持者はその知見・スキル維持のためアップグレードのたび試験を受けなければなりません。裏を返せば、常に最新のノウハウをアップデートしているコンサルタントが多く在籍しているということです。
[春日]
今後のビジョンとしては、どんなことを考えていらっしゃいますか?
[安東様]
Fit to Standardアプローチでお客様の業務を変えていくことは、お客様が取り組むトランスフォーメーションの実現手段だと考えています。Fit to Standardによって標準化された業務や、得られるようになったデータを、どのようにお客様の事業成長に生かしていくかが重要だと考えています。
シグマクシスが推進する3つのトランスフォーメーションのひとつであるDXのベースを作り、いかにSXとMXにつなげていくかが、私のチームが掲げるビジョンです。直近のチャレンジを挙げるのであれば、2024年2月より搭載されるという、Joule(ジュール)というSAPの生成AIの活用です。新たなテクノロジーを検証し、お客様の変革支援に積極的に取り入れていきたいと考えています。
また、アップグレードされるSAP S/4HANA Cloud Public Editionの機能をうまく使いこなせていないというお悩みを、お客様から伺うことがよくあります。そのため、お客様ご自身が最新機能を使いこなし、事業や業務に役立てられるようにサポートすることも、私たちが今後取り組むべきテーマだと思います。
次ページ:シグマクシスで叶える新時代のSAPコンサルタントキャリア
1
2