
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC)は、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるデロイトの一員として、日本のコンサルティングサービスを担う企業です。戦略立案から実行まで一貫して支援する「総合コンサルティングファーム」として、クライアントの持続的で確かな成長を支援しながら、社会課題の解決と新産業創造にも貢献しています。
なかでもRegion Unitは、西日本のクライアントに対して価値提供を追求しています。他の総合ファームでは類を見ない、インダストリー(業界)とオファリング(専門領域)の垣根を超えた「オーケストレーター」として、案件ごとに最適化されたサービスの提供を目指しています。
クライアントは、西日本各地を拠点とした、業界を代表するグローバル企業や、官公庁・地方自治体などさまざまです。経営戦略から新規事業開発、オペレーション・組織改革、デジタルトランスフォーメーションまで含めたEnd to Endの全社改革を行っています。
今回は、執行役員・大阪オフィス/京都オフィス 統括責任者の山口 将志様、ディレクターの島 悠貴様、そしてシニアマネジャーの福壽 道仁様の3名にインタビューを実施。西日本を舞台にコンサルティングサービスを提供することの意義や魅力、その実態などを語っていただきました。
インタビュアーはDTC出身のフォルトナ上野・水上が務めます。
山口 将志様 プロフィール
執行役員・大阪オフィス/京都オフィス 統括責任者。
日系総合コンサルティングファームを経て、2017年にDTC入社。西日本エリアにおける消費財や小売・流通、運輸等のコンシューマー業界を担当し、戦略立案から業務・IT変革、さらに実行支援に至るまで、豊富なコンサルティング経験を有する。近年ではDX・全社変革推進支援として、構想策定から伴走型による実行支援までEnd-to-Endでのプロジェクトにも注力。
島 悠貴様 プロフィール
ディレクター。
日系シンクタンクを経て現職。主にエネルギー・防災分野で、中央省庁・地方自治体・民間企業へのコンサルティング業務に従事。近年は、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、水素利活用等に関する実証事業や新規事業立案業務などを担当。
福壽 道仁様 プロフィール
シニアマネジャー。
関西出身。新卒で日系コンサルティングファームに入社。国内外を問わず多種多様な製造業や商社に対する業務改革やSCM改革を経験してきた。現在は、地元である関西での中長期的なキャリア構築を見据えて、2019年にDTCに参画し、製造業はじめ自治体やインフラ企業など地域DX等、多様なクライアントに対し、戦略立案から実行支援まで一貫したコンサルティングを担当。
コンサルタントとしての経験を携え、選んだ舞台は西日本
[上野]
本日はよろしくお願いいたします。
今回は、コンサルタントとしての経験を生かしながら、西日本でキャリアを切り拓く魅力をお伝えできたらと思います。
まず初めに、皆さまのご経歴を教えてください。
[山口様]
私は2017年からDTCに入社し、今年で8年目となります。それ以前は、別のコンサルティングファームで大阪を拠点にビジネスに取り組んでいました。
キャリアとしては一貫してコンサルティングに携わってきています。専門領域はコンシューマー業界で、消費財、飲料・食品メーカー、流通、鉄道などの業界を中心に、西日本エリア全体の企業を支援対象としています。また、現在は、当社の大阪オフィスや京都オフィスの統括も担当しています。

[島様]
私は関西出身ですが、大学進学を機に上京し、そのまま東京でシンクタンクに就職。主にエネルギーや防災を専門にしながら、自治体や地方に関わる仕事を通じて各地域ならではの魅力を感じていました。
その後、結婚など生活環境の変化をきっかけにUターン・Jターンを考えるようになっていたんです。DTCがエネルギー分野に強みをもち、かつエネルギー分野の先進的な取組がある九州にも拠点を構えていることを知り、転職を決意。2019年に入社し、現在に至ります。

[福壽様]
私は、日系コンサルティングファームに新卒入社し、主に製造業や商社向けの業務改革に取り組んでいました。製造業といっても幅広く、モビリティ関連、食品関連など、さまざまな業界業務改革を経験してきました。
国内各地でのプロジェクトはもちろんグローバル案件にも携わってきましたが、ふと将来を考えた際、「ゆくゆくは地元の大阪で結婚し、関西を中心にコンサルティングを続けたい」という思いに気がつきました。地元でキャリアを続けられる環境としてDTCを選び、島と同じく2019年に入社しました。

大切なのは、地に根を張り、その地域と共に成長し続けること
[水上]
転職された当時、西日本でコンサルタントとしてのキャリアを考えるなら、DTCは非常に有力な候補だったかと思います。貴社がいち早く西日本のマーケットに着目し、投資も含めて積極的に展開されてきたのはなぜでしょうか?
[山口様]
まず、歴史的な背景が大きいかと思います。DTCはデロイト トーマツ グループ、そして監査法人トーマツの流れを汲んでおりますが、同社は、日本各地に分散していた会計事務所を統合する形で誕生したという経緯があります。東京、大阪、福岡といった各地の拠点を統合しながらも、それぞれの地域のビジネスを大切にしてきました。その流れを受けて、コンサルティングビジネスにおいても、地方に事務所を設け、その地域に根ざした活動を続けてきました。
業界全体としては東京一極集中の傾向もありますが、DTCは大阪や福岡などの地方事務所を残し、地域密着型で事業を展開してきております。これは、地方のコンサルタントが「自分たちの地域でビジネスをつくること」に強い誇りと情熱をもっていたのも理由です。その想いに共感する人たちが集い、組織を育ててきました。
そんな歴史があるからこそ、西日本の各拠点は、「自分たちの足で立ち、その地域で稼ぎながら地域貢献もできる」組織へと成長してきたのだと考えています。
[上野]
一方で、近年では西日本に進出するファームも増えていると感じます。他ファームとの差別化ポイントとなる、DTC Region Unitの特長や強みを教えていただけますでしょうか?

[山口様]
地域に根ざした事業展開によって構築されたクライアントとの信頼関係、そしてその前提となるスピード感をもった対応やビジネスの継続性などがあります。
近年、コンサルティング業界全体が右肩上がりの成長を続けてきました。それに合わせて、多くのファームが関西や九州を含めた地方での事業展開を進めているのは事実です。
しかし、現地に人員を配置しているものの、ビジネスを推進する組織にしていくことは決して容易ではありません。ビジネスとしてはあくまで東京中心に動いており、結果として地方オフィスのメンバーは出張ベースで東京の仕事をするといったケースも多いようです。
一方で、DTCは、関西では大阪・京都、九州では福岡にオフィスを構え、地域密着型の体制で、長年にわたり本格的に事業を展開してきました。長期的に各地域と向き合ってきた実績と、その積み重ねで築かれた信頼こそが、私たちの強みだと考えています。
信頼感や安心感は、オフィスを開設したからといって一朝一夕に作られるものではありません。その地で共にビジネスを行っていく覚悟の下で、普段からクライアントの悩みに寄り添い、日常的に顔を合わせて会話をすることで、自然と育まれていくもの。だからこそ、地域に根を張り、継続的にビジネスを展開していくことが非常に重要なのです。
[水上]
一朝一夕には築くことができないクライアントとの信頼関係が成長の原動力であると理解いたしました。DTCにはインダストリーやオファリングといった切り口もあるかと思いますが、Region Unitではどのような体制になっているか教えていただけますでしょうか?
[山口様]
Region Unitでもインダストリーごとの切り口は存在しており、私自身も CB&T(Consumer Business & Transportation)に所属しています。ただし、Region Unitで大前提としていることは「西日本エリアのクライアントに向き合うこと」です。
東京の組織であれば、ファーストプライオリティは特定のインダストリーやオファリングを追求することにあります。しかしRegion Unitでは、特定のインダストリーやオファリングに属していても、ビジネスにおけるファーストプライオリティはあくまでその地域のお客様になります。私たちの専門性は、そのうえで発揮するという考え方ですね。
私も「地元である西日本のお客様に貢献したい」という思いから、今の環境を選択し、自分の専門性を生かした支援をしています。 私たちのように「地域に根ざしながら専門性を発揮したい」という人にこそ、関西や九州は非常に魅力的な環境だと思います。
再エネ・防災・社会インフラ・グローバル ― 西日本ならではのビジネスの可能性
[上野]
地方は東京と比べると市場規模に差があるとも言われます。その点はどのように感じていらっしゃいますか?
[山口様]
確かに東京の方が企業数や潜在的なクライアント数は多いでしょう。しかし、関西や九州にも数多くの素晴らしい企業が存在しており、まだまだ関係をもてていない会社がたくさんあります。
私の専門であるCB&T領域だけでもまだアプローチしきれていないと感じており、これは他のインダストリーにおいても同様で、私たちのビジネスチャンスは非常に大きいと思います。
また、関西や九州の企業は単に東京の後追いでビジネスをしているのではなく、世界を股にかけた事業を積極的に展開しています。そのため、私たちも地域のお客様にしっかりと向き合い、パートナーとして新しいビジネスを共創していくという姿勢を大切に、地域に根ざしながらもグローバルに通用する価値を一緒に生み出すことを目指しています。

[水上]
首都圏では、コンサルティングファームを起用する企業が増えていますが、西日本のマーケットにおいてもコンサルティング活用が当たり前となってきているのでしょうか?
[山口様]
関西や福岡のみならずどのようなマーケットにおいてもコンサルティングの活用によるメリット、価値を正しく伝えていくことが大切なのは同じです。
一方で、西日本ではこれまでコンサルティングファームを起用したことがないという企業も一定おられ、そのような企業にとって、そのメリットをすぐに理解してもらうのは難しい。しかし、その分、実際にお客様に価値を感じていただけた時は非常に大きな達成感があります。
最初は懐疑的だったお客様から「もっと早くお願いすれば良かった」と言っていただけることもあります。これは、これまでコンサルティングにあまりなじみがなかったお客様だったからこそ得られる喜びですよね。そうした経験も含め、私は市場の違いを決してネガティブには捉えていません。
[上野]
実際に地方に拠点を構えるからこそ見えるビジネスチャンスや可能性には、どのようなものがありますか?
[島様]
地方はそれぞれに多くの課題を抱えていますが、その反面で大きなビジネスの機会も生まれています。
例えば、半導体や製造業に関わる工場などの拠点は地方に集中しています。私が担当しているエネルギーの分野でも、再生可能エネルギーなどといったビジネスのポテンシャルは基本的に地方にあるのが現状です。これらは「何とかしなければならないテーマ」でもありますが、一方で大きなビジネスチャンスでもあります。
さらに、Region Unit内のチームの一つであるAVC(Area Value Creation:地域価値創造)の観点においても同じことが言えます。地方には、交通やマイナンバー・デジタルIDなどの社会インフラの整備、高齢化社会を見据えたさまざまな施策や対応といった課題も色濃く表れています。つまり、今後解決すべき先進的な課題の数々は、むしろ地方に集まっていると言えるのです。
だからこそ、地方に拠点を置き、現場を理解したうえで、中央と連携しながら、国の政策や大手企業のリソースを活用して課題の解決につなげる。その「地方と中央をつなぐ架け橋となること」こそが私たちの存在意義だと思っています。地方のお客様からも、「国や大手企業の人たちと直接話してくれる存在が近くにいる」という点を評価いただいています。その橋渡しを担うことで、結果的に私たちのビジネスも拡大している実感があります。
[上野]
AVCが地方の課題解決に深く関わっている一方で、単なる社会貢献ではなく「ビジネスとして成り立たせる仕組みづくり」も重要だと感じます。その点で、貴社はどのような工夫をされていますか?
[島様]
産官学で連携することの意義を示し、思いをもったメンバーで協働することが重要です。実際に、九州では九州DX推進コンソーシアムの発起人として産官学でのビジネス創出の場をつくり、さまざまなテーマを模索しています。
単なるプロボノ活動ではなく確かなビジネスの基盤をつくり、そのうえで持続可能な運営を目指して次のトピックを見出していく。これは他社ではあまり見られない取り組みであり、デロイトグループだからこそ実現できている強みの一つです。理想論で終わることなく、ここまで順調に進めることができています。
[水上]
プロジェクトの進め方やスピード感に違いを感じることはございますでしょうか?
[福壽様]
地域密着型の体制を取ることで、よりスムーズなプロジェクト推進が可能になっていると思っています。
私がDTCに参画してからは、山口と同じようにCB&TとAVCの両面に関わってきました。現在は大手インフラ企業を支援していますが、関西に住み、その地域の企業と直接関わるからこそ、スピード感をもって課題解決に入り込めています。
東京では、一極集中の環境下で一般化されたグローバル課題を扱うファームが多い傾向にあります。一方で、人口動態や地域に特有の事情を踏まえると、その地域でしか解決できない課題がたくさん見えてきます。それらに対しては、やはり地元への理解が深い私たちが現場に入り、クライアントと二人三脚で解決に取り組むことが不可欠です。
実際に、部長職・課長職・リーダー層等のさまざまな方々と日常的にコミュニケーションを取りながら課題解決を進められるのは大きな魅力です。今後はローカライズされた複雑な課題がますます顕在化していくでしょう。それに伴い、地域密着型のコンサルティングへのニーズも確実に増えていくと考えています。
[上野]
各地域を舞台にした事業展開は、単にビジネス課題の解決にとどまらず、社会のあり方そのものにも影響しているように思います。その点に関する貴社の考えをお聞かせください。
[島様]
これからの社会を成長させるには、東京一極集中ではなく、各地域の個性が光るネットワーク型の発展が必要だと考えています。エネルギーや都市機能も分散が鍵となっており、地方に多くの魅力的な街をつくることには大きな意義があると感じます。
それぞれの地域が個性を生かした街づくりを進めていけば、今よりもっとサステナブルで面白い社会になるはずです。そしてそれは「多様性が高いモデルケース」として、アジアをはじめ世界に向けて日本が示せる理想の姿になると思います。
[水上]
地方の街づくりや社会づくりには、大企業だけでなく中小企業の存在も欠かせないと思います。中小企業には、どのようにアプローチされていますか?
[島様]
やはり、中小企業を支援したいという思いは非常に強いです。しかし、コンサルタントとして直接的に関わるのはさまざまな事情から難しいこともあります。そのような時は、個別に散らばる課題をまとめ、大きな社会課題として設定し直すことで仲間や資金を募る、といったプロセスを経て取り組めないか考えます。
仕組み化を通じて、中小企業に支援をより持続可能な形で実現していこう、という考えですね。