X Capital × フォルトナ スペシャルインタビュー

公開日:22024.12.20 最終更新日:2024.12.21

行動原則は社会起点 -X Capitalのプロジェクト事例-

[水上]
続いて、X Capitalがどのような変遷を辿ってこられたか教えていただけますか?

[野原様]
創業した当初は、一年半ほど、売上ゼロの時期が続いたことがありました。試行錯誤して、さまざまな事に取り組みましたが、それでも上手くいかず、先輩に相談したところ、「まず売上を作ること」とアドバイスを受けました。それに従って動いてみた結果、「社会に求められていることをやらないとそれは無価値だ」ということだと理解しました。売上につながるということは、少なくとも誰かがお金を支払ってでもなんとかしてほしいことに取り組んでいるということであり、これはビジネスをしていくうえで絶対条件だと感じるようになりました。今振り返ると、創業当初は「こうしたビジネスをしてみたい、こうしたことができたらかっこいい」と自分のやりたいことを軸に事業を考えてしまっていました。この経験から、ビジネスを考える際は自分のやりたい事ではなく、クライアント、ひいては社会に求められていることを起点とするのが正しい行動原則であるという考えに至りました。
こうして始まったのが「コンサルティング」です。クライアントにとっての課題を理解し、プロジェクトの目的をしっかりと押さえ、目の前のクライアントに向き合ってご支援をやりきる。この繰り返しによって、追加のご依頼やご紹介がつながり、現在まで事業を成長させることができました。

[水上]
ビジネスの軸を、自分たちのやりたいことから、クライアントが求めていることに応えるコンサルティングに転換された時期は非常に大変だったかと思います。
「社会に求められること」をビジネスにするという視点で、現在どのようなプロジェクトに取り組んでいますか?

[野原様]
数あるプロジェクトのなかから3つ挙げさせていただきます。

1つ目は、商社様に対する、資産流動化による資本効率改善に関するご支援です。商社ビジネスでは、営業利益に加えROEやROICなどの指標での収益性評価が重要であり、多くの資産を抱えバランスシートが大きくなりがちなのが課題で、特に低利益率事業は、資本効率の観点では足を引っ張ってしまいます。私たちが担当したクライアントは、バイオマス発電・風力発電事業を保有しておりました。社会的な意義は大きいものの、収益性はそれほど高くなく、発電設備などの不動産を多く保有するため、バランスシートが大きくなる事業です。そこで、こうした資産を他の投資家やSPC(特別目的会社)に売却、バランスシートから外し、さらにその会社から運営や燃料調達などの業務を外注することで、商社はサービス業に専念し、ROICの大幅改善を見込めるスキームのご提案・ご支援をさせていただきました。

2つ目は、大手事業会社様のPMI(海外子会社売却時のM&A支援)プロジェクトです。業務領域のアドバイザーとして売却側のPMIを担当し、業務移管やシステム移管、契約書内容等だけでなく、統合後の管理までご支援させていただきました。

3つ目は、自動車メーカー様のアプリ実装支援です。現状として、非常に長いサプライチェーンのなか、さまざまなサプライヤーから部品が集まり、船で輸送され、工場で組み立てられ、ディーラーへと届けられるまで、多くの工程を経る必要がありますが、どの場所にどの部品がいくつあるのかを把握することが難しいという問題がありました。そこで、サプライチェーン全体の可視化を図るために、他社様がデータ基盤を構築したものの、現場では使い方が分からず、宝の持ち腐れになっている状況に陥っていました。私たちは、現場の担当者から「どのようなデータをみたいのか」「どのようなデータがあれば意思決定が早くなるのか」といった要望をヒアリングし、必要なツールを開発するご支援をさせていただきました。

3つのコンサルティング事例を挙げましたが、私たちがいつまでも課題解決を代行するのではなく、クライアント自身が解決できるようになることが理想であると考えています。クライアント自身の自走を促しつつ、中長期的な戦略策定や事業投資など、弊社ならではの価値をお届けできる領域についてはご支援を継続する形を目指していきたいと考えています。

[水上]
従来のコンサルティングビジネスを踏まえると、クライアントの自走を促すことは、かなりユニークですよね。

[野原様]
そうですね。今のコンサルティング業界は「人数×単価」のビジネスモデルが主流です。そのため、プロジェクトを必要以上に長期化させ、多くのコンサルタントを投入することで、売上を最大化しようとする傾向があります。しかし、それは社会全体として見た際に意味があることなのか?と疑問を抱いていますし、クライアントが自身で課題解決・実行できる状態がベストだと思っています。そのため、そこまでの過渡期のお手伝いをする、というのが根底にある考えです。弊社は、本質的にはコンサルティング会社ですが、「脱コンサル」のお手伝いができるようにしていきたいとも思っています。

「日本経済に、パラダイムシフトを。」コンサルから投資・経営まで拡大

[水上]
続いて、ビジョンである「日本経済に、パラダイムシフトを。」についてお聞かせください。こちらも非常にユニークだなと感じているのですが、どのような思いを込められているのでしょうか?

[野原様]
先ほどお話した内容にもつながりますが、これまでに日本社会から受け取った価値よりも多くの価値を創造し、きちんとリターンを返すことでより良い日本の将来に貢献がしたいという想いをもっています。歴史や文化、正直で真面目な性格である日本が好きですし、一方で日本企業が国際競争に負けている状況をなんとか打開したいと考えています。X Capitalという会社の経営を通じ、自分自身がこの時代に生まれてきた意味を見出したいという想いから、「日本経済に、パラダイムシフトを。」というビジョンを掲げるに至りました。

[水上]
あらためて、本当に素敵なビジョンだなと共感します。ビジョンに込められた野原さんの想いを皆が認識することで、組織として真のパワーを発揮できるのでしょうね。
企業としての目指す姿について、より具体的に聞かせていただけますでしょうか?

[野原様]
経営で世界と伍していくことのできる企業を目指していきたいです。より具体的には、日本の社会経済に対して、直接的・間接的に大きなインパクトを与えていくことのできる企業の仲間入りを果たしていくため、「投資会社」を志向しています。投資先候補の中小企業の方とお話をすると、人手不足などさまざまな要因から業務の改善活動に取り組めていないケースが散見されます。私たちがこれまでにコンサルティングで培ったDXや業務改善のノウハウを、中小企業に導入していくことで、経営改善をサポートできると考えています。そして、M&Aを通じて得られたスケールメリットをテコに、海外進出支援など非連続な事業成長へつなげていくことも可能です。

[水上]
クライアント企業の状況に応じて、様々なアプローチでご支援し、成長を促しているフェーズなのですね。

[野原様]
そうですね。まさに、来年には投資案件を1件実行予定で、2027年までに約3億円のEBITDA(グローバル企業の業績や多国間、同業他社間の業績を比較・分析する際に用いられる指標)を投資先企業が達成できるようにしたいというのが短期のマイルストーンです。

[水上]
投資先企業には、資金提供だけでなく、貴社から経営人材の派遣などによる支援も行うのでしょうか?

[野原様]
はい。将来は、コンサルティング事業だけでなく、複数の投資先企業を保有する形態を目指しています。コンサルティング事業で経験を積んだ優秀な人材が、自社の経営人材プールのような形で所属し、投資先企業の経営に携わっていくというイメージです。
具体的には、新たな投資先企業があれば、そこに赴任し、2〜3年かけて経営を改善していきます。そして、企業が自走できるようになったり、社内で適切な後継者がみつかったりしたら、後のことは任せ、コンサルタントはまた次の投資先へと移ります。コンサルタントとして働くだけでは、どうしても事業オーナーとしての視点や、意思決定の責任を負う経験が不足しがちです。コンサルティングと経営の両方を経験することで、ビジネスや経営への理解を深めることができ、真に実用的なビジネスパーソンとしての力をつけることができます。私自身も自社の経営を行いながら、クライアントの会社にもコンサルティングを行うことで、両方の視点から立体感をもってビジネスを捉えることができるようになりました。そのため、コンサルティングの基礎を身に付けたうえで投資先の経営に携わり、理論と実践を行ったり来たりできる環境を作ることが将来の構想であり、弊社のユニークな部分につながっていくと思います。

[水上]
何度も転職していろいろな会社を経験するのではなく、貴社の中でコンサルも経営も実践できるということが実現できれば、非常に魅力的ですね!

[野原様]
そうですね。弊社に入社する方だけでなく、投資先企業側にとってもメリットがあると思います。中小企業では、大手コンサルティングファーム出身者の入社事例はあまり多くないと伺っています。そのため、弊社から経営人材を派遣し、コンサルタントとしての立場だけではなく実際に経営に携わってもらうというのは、クライアント・弊社メンバー・弊社の三方良しにつながると考えています。

[水上]
「投資」フェーズは来年から始まりますが、こうした経営人材育成・活用の構想実現は何年後を目標にしていますか?

[野原様]
最初の数件は私も伴走させていただきながら、2025年にはスモールスタートで実績をあげ、2027年頃には組織としての実行基盤を整備できればと考えています。

[水上]
貴社に所属する経営人材が徐々に増えていくイメージをもちましたが、まずは貴社でコンサルティング経験を積んだうえで、投資先の企業の経営を行っていくという想定でしょうか?

[野原様]
はい。そのような機会に魅力を感じて入社してくれている社員もいますし、生え抜きの社員が、役員や経営者になる組織を目指していきたいと思っています。成果を挙げて実績を積み重ねている方に、新しい経験や環境を提供することは大事にしていきたい部分です。

[水上]
お話を伺っていると、非常に野原さんらしい会社だなと感じます。アグレッシブで野心的で視座高く、共通の目的に向かって「みんなで頑張っていこう」という熱さを兼ね備えながら、足場固めはしっかりと行っている。バランス感覚が素晴らしいと感じます。

[野原様]
ありがとうございます(笑)。おかげさまで、弊社も大きくなってきましたが、これからもベンチャーらしいチャレンジ精神やアグレッシブネスは大事にしていきたいですね。

X Capitalのカルチャー「3つのバリュー」とは

[水上]
集団で目標に向かっていくためには共通の価値観が必要だと思いますが、創業者としてどのようなカルチャーを大事にしているのでしょうか?

[野原様]
私たちは事業上の意思決定や制度の策定等の判断基準とするものとして3つの「バリュー(=行動原則)」を設けることで組織全体が自律的に動ける状態を目指しています。1つ目が「クライアントファーストを貫く」、2つ目が「獅子のごとく」、3つ目が「率先垂範し変革の主体であり続ける」です。
なかでも1番大事なものは「クライアントファーストを貫く」です。先ほどお話しした通り、自分たちのやりたいことをやって何も上手くいかなかった創業期を経て痛感した、ビジネスにおいて最も根本的かつ重要な要素であると考えています。企業が事業活動を営むうえでは、顧客や取引先・下請け先企業・従業員・銀行・株主・国など多くのステークホルダーが存在しています。それぞれとWin-Winな取引を行うことを通じ、社会に価値を生み出すのが企業にとっての使命ですが、その循環の出発点は、常に「クライアント」だと考えます。クライアントが対価を支払いたいものがあるから、企業は従業員を雇ったり外注したり、銀行からお金を借り、利益が出たら国に納税し株主に還元したり…とサイクルが回っていきます。このような観点から、事業を考える際には、まず顧客にとっての効用を第一に考え、「クライアントファーストを貫く」必要があると思います。

[水上]
起点は顧客だということは仰るとおりだなと思います。P/Lで考えてもトップラインは売上で、そもそもクライアントが価値を見出してくれなければ売上は出ませんし、その先の利益も残りませんよね。

[野原様]
本当にそのとおりですよね。
そしてバリューの2つ目が「獅子のごとく」です。これも先ほどお話しした内容につながってきますが、進歩は「世の中こうだったらいいのに」という欲求から始まっていると思います。「環境を良くしたい、良い生活をしたい」こうした欲求は肯定的なもので、どんどん押し出していくべきであり、チャンスがあれば常に掴みにいくべきです。
バリューの3つ目「率先垂範し変革の主体であり続ける」は特に経営者に求められるものです。7つの習慣でも取り上げられているインサイド・アウト(自らのコントロールできる範囲(インサイド)を変化させることで、コントロールの及ばない範囲(アウトサイド)を望ましい状況に変化させていく)のような考え方になります。例えば、同僚と一緒に仕事をしていく際にうまくいかないことがあるとします。それを他者のせいにするのではなく、「うまくいかない状況を改善するために自分は何ができるのか?」と考えることが正しいやり方である、という考え方です。会社の経営がうまくいっていないのならば、「彼が悪い」ではなく、「彼をそうさせてしまっていることを事実としてとらえたうえで、それに対して自分の改善できるものは何なのか?」と考えるのが経営者であり、世の中や周囲を変えていく変革の主体となるべきだと感じています。
弊社の社員はこの3つのバリューを基に行動しており、結果的にこうしたカルチャーを生み出していると思います。

[水上]
「日本経済に、パラダイムシフトを。」というビジョンもそうですが、バリューも野原さんらしさが出ていて、とてもキャッチーな言葉ですね。どのようにして考え出されたのでしょうか?

[野原様]
こうした言葉は引っ掛かりを生むために、あえて変わった言葉遣いにしています。執行役員以上のメンバー数名で練り上げ、現在は全社に浸透させている過程です。

[水上]
言葉にしていく度に、新入社員だけでなく既存社員の方も落とし込んでいけますよね。
そのような想いが込められた貴社では、どのような方がご活躍できると思われますか?明確な採用基準は設定されているのでしょうか?

[野原様]
現状、定量的な採用基準は設けていません。また、入社前のバックグラウンドについては、長期的にみると誤差の範囲だと思っているので、入社してからしっかりと成長できる人材かどうかが重要だと考えており、そのために最も重要な素養は「素直さ」であると考えています。誰かからフィードバックを受けた際、真摯に受け止め、自己変革を厭わない人が、結局は成長しているように感じます。

[水上]
コンサルティングは企業変革をご支援するお仕事ですが、コンサルタント自身も変革し続ける努力が必要とされますよね!その前提として「素直さ」や、自己変革が当たり前であるというマインドセットは非常に重要だと考えます。
最後に、このインタビューを読んでくださっている皆様に、一言メッセージをください!

[野原様]
当社のミッションは、日本企業の経営を変革すること、また日本企業における経営の新しいスタンダードを創造することで経済全体をより競争力のあるものに変えていくことです。私自身、スケールが大きく、意義のあるテーマに自分のキャリアをかけられることをとても嬉しく思っていますし、日々情熱をもって仕事をしています。
このようなミッションにご共感いただける方、また大きな責任の伴う経営者としてのキャリアを真剣に目指されている方と働けることを心待ちにしております。是非、ご応募宜しくお願いします。

[水上]
野原さんの熱い想いを改めて伺うことができ、非常に有意義な時間を過ごせました。貴社の一員として価値を生み出すことのできる方とのご縁をひとつでも多くおつなぎし、今後も野原さんのビジョン実現に向けた応援をさせていただきますね!

編集後記

[水上]
社員の皆様とは、普段どのように交流されているんですか?

[野原様]
つい先日もゴルフコンペがあって、16名ほどが参加しました。練習のため、数名とインドアの打ちっぱなしに行き、ビールを飲みながらワイワイとやっていました。でも、私に誘われたら拒否権が無いように感じちゃうかなと思いますので、基本的にはお誘いを待っています(笑)。

[水上]
野原さんもついに気を遣われる立場になられてきたのですね(笑)。
優秀な方々が野原さんの想いに共感して集まってくれていて、素晴らしいですね!
改めまして、本日はありがとうございました!

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