
株式会社enableX(イネーブレクス)は、事業開発における専門性と高度なAIテクノロジーを核に、事業創造モデルの新たなスタンダードを構築しているAIネイティブの次世代型ファームです。テクノロジーの力で効率化と専門性を両立させることで、既存の事業開発パートナーの枠を超えてクライアントと共に価値ある事業を生み出し、実現までの伴走および事業や企業の成長を促すことをミッションとしています。
そんな事業開発のプロフェッショナルたちがそろう同社において、今回は代表取締役CEO 釼持 駿様、事業開発における戦略部分を担う取締役 中村 陽二様、そしてAI領域を含むテクノロジーチームを統括するエグゼクティブディレクター 小村 淳己様の計3名にインタビューさせていただきました。
インタビュアーはフォルトナ石動(いしるぎ)が務めます。

釼持 駿様 プロフィール
代表取締役CEO。
大学卒業後、外資系大手日用品メーカー、コンサルティングファームを経験。トップクラスのマーケティング知見を有し、経営戦略・事業開発・マーケティングにおけるコンサルティング実績多数 。事業家としても、上場企業への事業売却を含む3社を起業・売却した実績を有する。さらに投資家としても出資・ハンズオン経営を行い、企業価値を向上させ、エグジットをさせるなどの実績を持つ。現在は代表取締役CEOとして、自身と同様に事業開発のプロフェッショナルを集めたenableXを牽引。

中村陽二様 プロフィール
取締役。
外資系戦略コンサルティングファームに新卒入社し、主に製造業の成長戦略やM&Aに携わる。退職後、スタートアップを立ち上げAI関連事業を開始し、約5年間でゼロから売上20億円、営業利益11億円まで成長させる。スタートアップを売却後、取締役として2021年には東証マザーズ上場を経験。日系ITコンサルティングファームの取締役として参画、こちらも2021年には東証マザーズ上場。著書『インサイト中心の成長戦略』はベストセラー。

小村淳己様 プロフィール
取締役・パートナー。
エグゼクティブディレクター・テクノロジーチーム統括。
外資系ITコンサルティングファーム、外資系総合コンサルティングファーム、日系大手シンクタンク出身。外資系総合コンサルティングファームではAI研究組織の立ち上げ、日系大手シンクタンクでは、AIer/SIerとシンクタンクの協働を促進する役割のほか、新設されたAI部門で事業創出やサービスデリバリーを行う。AI企業では、AXによる事業開発×コンサルティング事業を立ち上げ、顧客向けのAI案件を創出・担いながら、アカデミア、研究団体との活動も含むBiz・Tech活動を主導。電気工学修士・経営学修士(米MBA)、JDLA Engineer、応用脳科学プラクティショナーなど各種資格も保持。
事業開発におけるプロたちが集まった、新進気鋭の次世代型ファーム
[石動]
早速ですが、お三方の簡単な経歴を含めた自己紹介をお願いします。

[釼持様]
学生起業で事業売却を経験後、大学卒業後は外資系大手日用品メーカーに新卒入社し、長らくマーケティング領域に携わりました。帰国後はその知見を武器に、コンサルティングファームやEC関連事業の立ち上げと売却を3社ほど経験しています。現在は株式会社enableXの代表取締役CEOとして事業開発ファームづくりを行っています。
[中村様]
私は大学で電気情報工学を学び、外資系戦略コンサルティングファームに新卒入社しました。一方で事業再生に挑戦したいとの思いから、個人的に赤字企業を買収し、事業再生した後に売却するなどの経験も積んでいました。退職後は、ITサービスやAI関連の事業を開始して事業を成長させた後に売却したり、上場会社の取締役としてスタートアップの経営に携わったりとさまざまな実績を積み上げてきました。今はenableXで事業開発における戦略領域を担っています。
[小村様]
新卒入社で外資系ITコンサルティングファーム、その後は外資系総合コンサルティングファームや日系大手シンクタンクを経験しながら、案件・事業の創出やデリバリーに携わってきました。AI事業の立ち上げも含めて、AI関連の研究・事業に深く関わるようになったのは、今から約7年前です。大学院では電気工学専攻で、人に電気を流すような研究をしておりましたが、電気信号×化学変化の仕組みで動く脳のニューロンを模したディープラーニングの世界に惹かれるのは必然だったと思います。人間×AIの可能性を引き続き追求しつつも、当社では、AIを中心としたテクノロジーを事業に転換する役割のテクノロジーチームを統括しています。
[石動]
三者三様のご経歴ですが、事業をつくったり牽引してきたりといった共通点がありますね。
[釼持様]
そうですね。実は中村とは、互いに学生起業家として活動していた縁で知り合ったのです。私は、日本人学生と海外のスタートアップ企業とをつなぐ事業を、彼はシステム開発や研修業など、多岐にわたる事業を展開していました。
[中村様]
学生時代からこれまでいろんな役割・立場を担ってきましたが、「どのようにすれば会社はその目的を達成出来るのか」を考え抜いて戦略を立て、実行に移してやり抜くということを常に続けています。
[石動]
事業開発には、学生時代から携わっていたのですね。釼持様が貴社を創業するにあたり、どのような想いや背景があったのでしょうか?
[釼持様]
私がenableXを立ち上げたきっかけは、事業開発力を本気で底上げしたいという想いからです。これまで自ら事業を創出した経験や、他社の事業開発を支援してきた中で、成功確率を高めるための体系的なスキームが存在せず、また事業開発を担うパートナーも「サステナブルな事業を自ら生み育てた経験」が乏しいケースが多いと感じてきました。結果として、単発的な支援で終わってしまい、成果につながらない場面を何度も目の当たりにしてきました。 現状では、事業開発に挑戦したい企業が「本当に頼れるパートナー」を見つけづらく、多くの場合は手探りの独学になっているのが実情です。
だからこそ私たちは、事業開発に特化したプロフェッショナル集団として、戦略・マーケティング・テクノロジーの三位一体で、AIネイティブな事業創出やグロースを実現する理論と実行力を提供しています。自分自身でも起業から上場・売却まで行った経験を持つ事業開発の専門家がenableXに集まることで、単なるアドバイスに留まらず、本当に結果を出す支援を目指しています。
[石動]
さまざまな選択肢がある中で、中村様や小村様が貴社に参画された理由や決め手は何でしたか?

[中村様]
私の場合は、釼持と共通の目標・価値観を持っていることを長い付き合いから十分に認識しており、統合を果たすことでより遠くへ行けると感じたからです。
また多様な専門性を持った人間が活発な議論を行っており、現時点で自分では予測出来ない事業を展開出来る可能性にも、大きな魅力を感じました。
[小村様]
当社が、経験豊富な起業家・事業家が集うことが決め手になりました。私も0を1にする事業を社会的な規模で成し遂げ、成功させたいという強い思いを抱いていました。当社の社員は事業の開発・推進に対して強い当事者意識を持つ面も含め、独特かつ魅力的なメンバーばかりです。ここでなら、私自身の専門領域ややりたいことを自由に開拓しつつ、メンバーの示唆を受けながら更に大きな形にしていけると思いました。
それまでは、AIや神経科学に関する組織を自ら立ち上げる選択肢も考えていました。しかしそれでは独りよがりで視野狭窄になり、事業を広げる妨げとなる可能性が頭の中で引っかかっていたこともあったため、enableXが唯一無二の選択肢となりました。
また、未開の領域を突き進む際にマネタイズのことを考慮すると、人材面・資金面などさまざまなリソースが必要です。当社には、そのサポート体制も整っていると感じました。
[釼持様]
二人のような理由で参画してくださる方は多いですね。また、自分たちが業界における勝ち馬を作りたいとの思いから入社を希望される方もいらっしゃいます。
昨今のコンサルティング業界におけるビジネスモデルの持続可能性や、AIが台頭する現在・未来におけるより適切なビジネスモデルについて考えた時に「最も新しいモデルの最前線にいたい」「最新モデルの中でビジネスの経験や実績を積み、自らも新たなビジネスモデルを創造したい」など、そのような部分にモチベーションを感じている方々にも参画いただいています。
[石動]
さまざまな思いから貴社に入社する方々へ、代表の視点から釼持様が望むことはありますか?
[釼持様]
事業開発ファームと謳っているくらいなので、一人ひとりが事業を立ち上げ、推進・成長させられる人材になってほしいと考えています。
私も長らく会社経営に携わってきましたが、事業開発や事業推進をフロントラインに立ってこなせる人材は非常に少ないと感じています。当社では、そのような人材をしっかり育成したいです。
そしてゆくゆくは、当社の人材がさまざまな新規事業を創出して推進・成長させることで、大きな経済へ貢献していきたいと願っています。
事業開発×テクノロジー。2つの領域を軸に事業を展開
[石動]
現在、貴社が推進する事業の概要について教えてください。
[釼持様]
当社では、従来からより一層進化させた事業開発支援を主に提供しています。その際に最先端テクノロジーを掛け合わせることで、効率性や専門性、ビジネスの成功率や持続性を高めています。また、戦略や構想だけでなく、フロントラインに立った実行まで当然のごとく行い、お客様と協業をしながら成果に強くコミットメントすることも特徴です。
さらに、並行して技術力の強化にも注力し、小村を中心に事業開発を加速させるためのAIを活用したプロダクトやサービスを開発して顧客へ提供しています。
[石動]
よろしければ、具体的なプロジェクトの内容や事例を伺えますか?
[釼持様]
まず、事業開発の領域から2件ほど紹介します。
1件目は、中期経営計画で定めた目標に向けて伴走している大手企業の事例です。
既存事業の持続的な成長に加え、M&Aなど外部の力を活用した成長可能性も含めて戦略を検討。そして、実際のM&Aの交渉部分も当社が担い、M&A先とのアライアンスの交渉や関係性構築の糸口づくり、ビジョン共有などといったあらゆる調整を実施しています。
2件目は、お客様の既存産業の成長支援です。
お客様先の顧客基盤拡大に向けて、全社的なビジネストランスフォーメーション(BX)を構築。その中で新規のデジタルチャネルの企画・開発、サービスの成長までを全方位的に支援しました。ターゲット層のデジタルタッチポイントを拡大し、それらを通して取得した顧客のファーストパーティーデータをマーケティングに有効活用することで、新規顧客の獲得を実現しています。

[小村様]
続いて、テクノロジー領域についても2件お話します。
1件目は、LLM(Large Language Model・大規模言語モデル)を使用したデータ分析の自動化の案件です。高い自然言語処理能力を持つLLMを活用して、テキストデータや表形式データなどから洞察の抽出・分析を行うプロセス全般を自動化することで業務の効率化を促進し、事業としてのバリューアップを図っています。
このような案件のお客様は、フロントで売上を司るような部署の方々が中心です。このような部署の方々が新規事業を立ち上げる際、社内に蓄積されたマーケティングデータやセールスデータの分析を行いますが、これには多くの時間がかかる上に専門知識も必要になります。
そこで当社は、このデータ分析の仕組みをより効率化しました。具体的には、日本語や英語といった自然言語による質疑応答形式で自動分析できる環境を整えたのです。これにより、お客様はノンコアワークから企画などのコアワークにもっと人員を割けるようになります。
結果として、データ分析に充てていた人員が20名から1名になりました。また、日本語や英語など自然言語さえ話せれば、このようなデータの自動分析は専門知識をもたない人材や新卒社員でもこなせる業務になります。
2件目は、AIを活用したデジタルクローンのプロジェクトですね。
一人の人間が1日の内に業務に割ける時間は、法律的にもある程度定められています。その業務外の時間をデジタルクローンに稼働させることで、さらなる生産性の向上を狙うものです。例えば、カスタマーサポートや営業事務など具体的な業務が可能なデジタルクローンを作り、それをお客様やM&Aの出資先企業などに提供しています。
例えば、CMOの情報を組み込んだデジタルクローンを生成し、某ブランドと共に運用している事例があります。
マーケティング部門の中でもブランドマネージャーというポジションは、代理店のコントロールや社内各所の調整なども行っており、作業量が非常に多くなりがちです。加えて人材育成も難しいことから、ブランド数が増やせず業績が伸び悩むなどの課題を抱えていました。そこで、ブランドマネージャーの方々の思考や業務をインプットさせたデジタルクローンに、彼らの仕事をサポートさせるサービスを作っています。
[石動]
貴社がこのような案件を獲得する際には、どのような流れが多いのでしょうか?
[釼持様]
事業開発や事業成長における当社の知見を借りたい、などといった相談から始まる場合が多いです。
当社は事業の創出や起業、上場や売却といった経験・実績を持つ人材が非常に豊富で、社内の知見が圧倒的に事業開発に向いています。
これらの経験や知見に基づいた話に興味がある方、事業の開発や成長についてアドバイスを求める方々が当社へ相談にいらっしゃるのです。
まずマネージャーやディレクターたちが、アドバイザー的な立ち位置からお客様とコミュニケーションをとり、お客様先の事業について把握した上で、さまざまなプロジェクトに切り出していきます。
また、中村の場合は、著書を経由してのお問い合わせから始まるケースもあります。
[中村様]
昨年秋に出版した『インサイト中心の成長戦略』というビジネス書ですね。私は勉強を重ねて作り上げた自分の考えを整理して発信することが好きなので、自著だけでなく各所への登壇なども積極的に行っています。それをきっかけに、コンタクトをくださる方もいらっしゃいますね。
それでも、まずは軽いアドバイスや単一事業における相談などから始まります。互いに目的意識や価値観が共鳴出来れば、全社的な戦略や組織変革など、もっと大きな話になることも多いです。
コンサルティングの本質は、あるべき姿の定義と実現
[石動]
全社的な事業の話を伺ったところで、中村様や小村様が牽引する領域についても深掘りさせてください。まずは、事業開発の戦略領域を担う中村様からお願いします。

[中村様]
私が現在注力する案件は、大きく2つの方向性に分けられます。
1つ目が、会社の中核となるコア戦略の策定です。
「そもそも、なぜ会社を運営するのか?」という根本の部分から始めます。意外と難しいこの問いについて考え抜き、社長や常務などの経営陣と相対して徹底的に議論を重ねながら、社会的な体裁などを取り払った先にある会社の存在意義を明らかにしていきます。「わざわざ限られた生きている時間を何故とある事業に費やすのか」という問いに合意形成を行うのは意外と難しいですよ。有能な人材、つまり会社が掲げた目標に熱意を燃やせる人材であるほど、この問いに真剣に向き合うのではないでしょうか。
そして全社的な戦略が定まったら、実際に組織に落とし込んでいきます。場合によっては人事異動を提案するケースもあります。
そして2つ目が、アライアンスのコーディネート。
例えば、ある大企業がアメリカ市場における事業開発を希望する場合、まずは戦略の策定や社内に向けた合意形成が必要になります。外部企業の買収やパートナーシップの提携を考慮するにしても、やりたいことを明確にできなければ適切な選択はできません。
次は実現に向けて、必要なリソースを最適な方法で確保するためのネットワーキングやソーシングを行います。必要な場に出向いて最適な協業者を見極め、選定し、交渉をリードします。パーティー会場などでも出会いを探すので、足で稼いでいくことが重要ですね。能動的に動かなければ良質な相手と出会うことは出来ません。そして互いが納得できる形でパートナーシップを締結し、実際に事業を進めていくのです。これが、私が“アライアンスのコーディネート”と呼ぶプロジェクトの一連の流れになります。
このような、従来の戦略コンサルティングファームや人材派遣的なビジネスモデルでは限界があるような仕事に挑むことに、今は大きなやりがいを感じています。
[石動]
これらは一般的な戦略コンサルティングファームの範囲からは逸脱した仕事かと思いますが、競合はいるのでしょうか?
[中村様]
そもそもこの仕事への需要が非常に大きいと感じていますので、他企業については参考にしても、直接の競争戦略は考えないですね
むしろ従来から存在したような企業がサービスを提供出来るならば、われわれがやるべき役割ではないと感じます。実際に他のコンサルティングファームと併存しているケースもよくあります。
考えるとすれば「なぜ顧客自身で完結するのではなく、われわれがいるべきなのか」は常に問われますし、回答するべきとも考えます。
[石動]
従来の戦略コンサルティングファームとの違いは、業務内容以外にもありますか?
[中村様]
お客様に提供する成果の形においても異なります。
私はお客様に対して、資料や成果物、調査結果等の提出をゴールにはしていません。お客様にとって望ましい具体的な状況を“成果”として定義し、一定の期日までに実現することを目指しています。そして私は、このような本質的な価値の追求を信条にしています。