Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社は、2020年に創立した富士通グループの総合プロフェッショナルファームです。「Transformation Design for Alternative Futures」(未来を変える、変革を創る)というビジョンを掲げ、自らを「変革創出企業」と定義しています。Ridgelinezという社名は「稜線」を意味する英語で、顧客企業の伴走者として山の頂を目指し、「変革の稜線を共に進む」との意味が込められています。「人」を起点としてすべての変革を発想し、ストラテジー・デザイン・テクノロジーを組み合わせ、人や社会の持続的な幸福が実現する未来を描き、新たな価値を創出し、変革の実現を目指している企業です。
戦略策定からビジネスモデル・ソリューション設計、業務プロセス・アーキテクチャ設計、オペレーションシステム開発、戦略実行、エコシステム構築・運用まで、業務内容は多岐にわたっています。変革プロセスの最初から最後までを支援するコンサルティングサービスの展開という点が、大きな特徴です。今回は代表取締役社長CEOの今井俊哉様に、これまでの経歴、会社の特徴、キャリアパス、求める人物像、今後のビジョンについて、お話を伺いました。
インタビュアーはフォルトナ佐津川と坂本が務めます。
今井 俊哉様 プロフィール
代表取締役社長CEO。
約30年にわたり、メーカーを中心に戦略立案、組織・風土改革、ターンアラウンドの実行支援などのプロジェクトを多数手がける。富士通を経てブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PwCコンサルティング ストラテジーコンサルティング(Strategy&))に14年在職。その後、SAPジャパン バイスプレジデント、ベイン・アンド・カンパニー パートナー、ブーズ・アンド・カンパニー(現PwCコンサルティング ストラテジーコンサルティング(Strategy&)) 代表取締役、PwCコンサルティング 副代表執行役を経て、2020年4月より現職。
新卒富士通、海外MBAと戦略コンサルを経て、Ridgelinez代表に就任
[坂本]
これまでの今井様のご経歴を教えていただけますか?
[今井様]
新卒で富士通に入社し、4年ほどで富士通を辞めてアメリカに留学し、ビジネススクールで学び直しました。
帰国後はブーズ・アレン・アンド・ハミルトンでコンサルティングの基本を学び、最後の5年間はハイテク通信領域のパートナーを務めました。その後、ベイン・アンド・カンパニーに転職し、ハイテク通信領域のリードパートナーを担当するとともに、企業再生を担当しました。そのような中でカムバックしたブーズ・アレン・アンド・ハミルトンより派生したブーズ・アンド・カンパニーという戦略コンサルティングファームで2012年から日本代表を務め、この会社がPwCコンサルティングに買収されたことにより、PwCコンサルティングの副代表に就任しました。
そして、2020年4月に富士通の出資によりRidgelinezを設立することになり、代表取締役社長CEOに就任して現在に至ります。
“スピード×コラボレーション” 富士通発の総合プロフェッショナルファーム
[坂本]
設立からもうすぐ4年が経とうとしています。この期間での変化、感じたことを教えていただけますか?
[今井様]
正直なところ、Ridgelinezの立ち上げ当時は不安もありました。会社は2020年4月1日にスタートしましたが、まさにコロナ禍が始まった時期で、最初の緊急事態宣言が出たばかりでした。正体がよくわからない病気に対して、世の中全体に恐怖感が広まっているタイミングでの船出です。オフィスを用意するにしても、職人さんが現場に来られない状況で、半分しかできていない状況でのスタートとなりました。
しかし、コロナによってさまざまな制約が生じ、危機感の漂うときだったからこそ「新しいことに挑戦せねば」との気運が高まったところもありました。「天の時、地の利、人の和」という言葉がありますが、メンバーにも恵まれ、富士通のトップマネジメントとも良好な関係を築けて、恵まれた環境でやらせていただいていることを実感しています。
会社がスタートした時点での社員数は300名未満で、そのほとんどが富士通グループからの出向者でした。現在では400名を超え、7割弱が中途採用者となり、今後も毎年100名ほどのペースで新たに採用していく予定です。
[坂本]
貴社の概要を教えていただけますか?
[今井様]
われわれは自社を「戦略から実行までを支援する総合プロフェッショナルファーム 」と位置付けています。特徴的なのは、戦略コンサルティングを担う「インダストリー・グループ」、業務テーマ別の専門家集団である「コンピテンシー・グループ」、先端テクノロジーのスペシャリスト集団である「テクノロジー・グループ」という、3つの異なるグループを持つ構成になっていることです。
[坂本]
貴社ならではの強みを教えてください。
[今井様]
われわれの強みは、大きく2つあります。
1つ目は、インダストリー、コンピテンシー、テクノロジーという3つのグループの壁がないことです。必要があれば、三位一体となりグループの枠を越えてプロジェクトを推進します。
われわれが大切にしているのはスピード感です。変革はそれぞれの企業の内部でも実現可能ですが、自前で進めようとすると、時間がかかります。変革を実現するには、膨大なエネルギーが必要になり、全く異質のエネルギーをぶつける必要が生じますし、それを担えるトップパフォーマーのリソースにも限界があるからです。そこで、外部からわれわれが三位一体の仕組みを生かし、スピード感をもってお客様に伴走しながら、提案から実装まで取り組んでいます。
一般的なITベンダー系の企業が半年かけて行う案件でも、われわれならば1~2か月というスピード感をもって対応できます。それは「これが終わったら、次にこれをやる」のではなく、「これとこれを同時に考えて同時にやる」動きができるからです。やはり、グループ間の壁のないことが大きいと感じています。
強みの2つ目は、最初から日本企業のビジネスや文化の特徴を理解したうえで変革の支援を実装まで伴走できることです。大企業に勤務する何千・何万人単位の人々の行動変容を促すのは、簡単なことではありません。KPIを変更したくらいでは、ほとんど変わらないのが実情です。日本企業のカルチャーを踏まえた取り組みを実装まで実現して初めて、日本企業のトランスフォメーションは動き始めると考えています。
[坂本]
三位一体のコラボレーションが、他社との大きな違いなのですね。
[今井様]
われわれはプロジェクトの最初の設計段階から、ストラテジー・デザイン・テクノロジーの各メンバーが一緒にいます。つまり、テクノロジーの人間も設計段階から事情を理解・把握しています。これまでのコンサルティングは、ここが大きな問題だったわけです。実装の前段階の議論を知らないと、決定事項が書かれたドキュメントを見ただけでは、わからないことがたくさんあります。最初からテクノロジーの人間が議論に参加していたならば、「こういうやり方もあるのではないですか」と、提案の選択肢を増やすこともできるでしょう。
われわれの場合は、チームの全員が同時に動いているため、それぞれの動きを整理するために多少の時間が必要になります。しかし、その調整時間を考慮しても、かなりスピード感のある展開が可能です。また、一緒に仕事をしているがゆえに、専門外のことへの学びも多くなり、引き出しも増えます。メンバーの成長という点でも、大きなメリットになっていると感じています。
[坂本]
富士通との関係性は現在どのようになっていますか?
[今井様]
富士通との関係性については、富士通社長から「放し飼い」と言われることもありますが、その言葉通り自由にやらせてもらっています。富士通自体がDX企業として変革に取り組んでいるなかで、Ridgelinezも先進性をもって新しいことにトライし続けることを期待されていると感じており、われわれとしても、常に「このままでよいのか」と自問自答しながら、より良いビジネスモデルを構築し続ける企業でありたいと思っています。
また富士通グループの中で、われわれは“出島”のような存在だと考えています。基本的には独立していますが、助けが欲しいときには、助けてもらうこともあるし、逆にこちらが向こうを助けにいくこともあるでしょう。つまり、一般的な親会社と子会社のような関係性ではなく、相互補完的な関係だと考えています。
[坂本]
グループ企業があるからこそ、提案にしがらみがあるという企業もあると聞きますが、貴社の場合、いかがでしょうか?
[今井様]
お金の面でRidgelinezは富士通による100%出資の完全子会社です。しかし、会社設立時点で、富士通の経営層から「クライアントファースト」でビジネスを行うことに対して了承してもらっています。クライアントの企業からフィーをいただいているのだから、お客様のためにベストのご提案をするのが、コンサルティングファームの当然の使命です。富士通の提供するサービス・ソリューションを優先的にレコメンドすることはありません。完全にフラットに判断しています。
[坂本]
富士通グループで良かったと感じていることを教えてください。
[今井様]
富士通グループという冠の恩恵はあります。たとえば、富士通のアカウントセールスがお客様と良い関係を築いていて、富士通では解決できない課題が浮上した場合に、われわれを紹介してもらえるケースもあるでしょう。
また、コンサルティングという仕事は、アドバイザリーだけで何千万円の報酬をいただくこともあるため、ドアを開けてもらう前段階で、大きな壁のあるケースもあります。しかし、「富士通グループの会社」であることから、話を聞いていただける段階に進めるのは、大きなアドバンテージです。
富士通グループの広範囲かつ分厚い顧客基盤を活用できる環境で、Ridgelinezという新しい組織で活動できることの動きやすさを実感しています。また、実装という段階で、われわれのバックヤードに、富士通の巨大なエンジニアのプールがあるのはやはり大きいです。
このように動きやすい環境があるのは富士通の経営陣のおかげだと思っています。Ridgelinezは富士通グループの中で異質な会社ですが、その異質さを好意的に捉えてもらえていることは、とてもありがたいことです。