カスタマーサポート領域に改革をもたらす自社開発のAIプラットフォームを展開し、多くのエンタープライズ企業から選ばれ続ける株式会社RightTouch(以下、RightTouch)。同社は2026年2月、事業拡大に伴いオフィスの移転・拡大を実施しました。
旧オフィスでの課題を踏まえて設計された新オフィスでは、「社内外のコラボレーションの活性化」を促進する仕掛け、そして働く環境を「社員が一緒に創り、育てるもの」とする姿勢に表される同社のカルチャーが随所に散りばめられています。
今回は、代表取締役・野村 修平様と、新オフィスの空間設計に携わったデザイナー・木村 和寛様に、社内を案内していただきました。世の中に新たな価値を生み出し続ける同社のアイデアの「新」本拠地——フォルトナの佐賀が、その全貌に迫ります。
※前回実施した、代表およびRightTouch InX事業責任者へのインタビューはこちら
※オフィス内の様子等は、取材日時点(2026年2月末日)の情報です

野村 修平様 プロフィール
代表取締役。
新卒入社した日系大手ERPベンダーにて、執行役員としてセールスチームを統轄。北米事業の立ち上げを牽引したのち、帰国と共に2018年12月、株式会社プレイド(以下、プレイド)へ参画。エンタープライズセールスの立ち上げを経て、RightTouchを創業。現在は同社代表取締役としてビジネス全般をリードしている。

木村 和寛様 プロフィール
デザイナー。
大学・大学院にてHuman-Centered Design / 人間中心設計(※)を研究後、人材紹介・ITサービス企業に入社。2019年にプレイドへ参画し、UIデザイナーとしてデジタルプロダクトの機能開発やデザインシステムの構築、新規プロダクトの立ち上げに携わる。2023年より、RightTouchに1人目のデザイナーとして移籍。現在は自社プロダクトの開発や組織設計などに携わる。
※製品やサービス開発において、人間の特性やニーズを第一に考え、使いやすさや体験(UX)を最大化するアプローチのこと
偶発的な交流を生む、「開かれた空間」を目指して
[佐賀]
本日はRightTouchの新オフィスにお邪魔させていただき、ありがとうございます!
広々として開放的で、感性が刺激される空間ですね。
[野村様]
こちらこそ、ようこそお越しくださいました。今回はオフィスツアーということで、私、RightTouch代表の野村と、新オフィスの設計に関わったデザイナーの木村が案内いたします。よろしくお願いします!
[佐賀]
よろしくお願いいたします!
では、まずお二方の、ご経歴を含む自己紹介からお願いします。
[野村様]
私は大学を卒業後、ERPパッケージソフトウェア導入を主力事業とする日系大手ERPベンダーに新卒で入社しました。最年少で新規開拓法人営業チームのマネージャーに昇格するなどの成果が評価され、既存顧客専任の営業チームの立ち上げに加えて、北米事業の立ち上げも牽引しました。日米間の商習慣の差異から苦戦し、結果的に撤退することになりましたが、学びは多かったです。
帰国後は国内のスタートアップに絞って次のキャリアを模索し、2018年よりSaaS型の顧客体験プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を主力プロダクトとするプレイドに入社しました。そこでエンタープライズセールスの立ち上げを経て、2021年12月、社内起業によりRightTouchを創業。現在は、代表取締役として当社の事業を統括しています。

RightTouch 野村様
[木村様]
私は学生時代、工学系の大学・大学院にて、デザイン科学を専攻していました。卒業後、2015年に人材紹介・ITサービス企業に入社し、デザインリードとしてQ&AサイトのUIデザインを担当。プレイドに参画したのは、2019年のことです。主力プロダクトであるKARTEの機能開発や新規プロダクトの立ち上げを経験した後、2023年からRightTouchに移籍しました。当社のデザイナー第1号として、現在は自社プロダクト開発をはじめ組織設計などにも関わっています。

RightTouch 木村様
[佐賀]
ありがとうございます。ツアーを始める前に、オフィス移転の背景や目的についてお聞かせいただけますか?
[野村様]
移転の目的は、社外の方々を自社のオフィスに気兼ねなくお招きできる環境を整えることでした。旧オフィスは非常にコンパクトで、10人程度を招くのが精一杯という空間だったのです。候補者の方や外部のお客様を積極的にお招きできる広さとは言えず、開催イベントによっては外部施設も活用せざるを得ない状況でした。
もともとオフィスは「開かれた空間」である方が良いと考えていましたが、こうした状況を踏まえ、候補者の方や外部のお客様をいつでも呼べるオフィスの方が、社内外における偶発的な出会いや交流がより活性化するはずだという確信を強めていきました。
[佐賀]
場所探しにおいて、条件やこだわりなどはありましたか?
[野村様]
まず重視した点は「ワンフロア」であること。先ほど話した「開かれた空間」は対外的な意味だけでなく、社内においても同様です。部署やチーム間で物理的な隔たりがあると、偶発的な会話の発生を妨げてしまいます。
私たちの事業は、プロダクト開発・セールス・コンサルティングとの相乗効果でより大きな価値を生み出します。したがって、社内のコミュニケーションも自然と循環するような設計にしたいと考えていました。
加えて、「通勤時のアクセスが悪すぎない」ことも大切です。そのため、2024年の4月頃にはオフィス移転の必要性が議論され始めていましたが、実現できたのは、今年(2026年)の2月でした。場所探しだけでも1年ほどかかり、全体では2年弱という長期プロジェクトになってしまいました(笑)。
[佐賀]
その長い時間軸の中で、木村様はいつ頃からオフィス移転に関わっていたのでしょうか?

フォルトナ 佐賀
[木村様]
私が参画したのは、移転先の物件が決定したくらいのタイミングでした。
私が主に担当したのは、空間設計の手前となるコンセプトやカルチャー策定の領域です。他のプロジェクトメンバーと共に、「どのようにつくるべきか」を議論しながら共創していきました。具体的な空間創りは、空間設計により専門性のあるメンバーを中心に進められました。
[野村様]
以前から、木村さんにはカルチャー形成を目的とした社内ワークショップのデザインなどを主導してもらっていました。そのため、新オフィスへの移転を成功させるにあたり、彼の力が必要不可欠だと思ったんです。
[佐賀]
そんな木村様が新オフィスに込めた、こだわりやポイントなどがあれば教えてください。
[木村様]
居ぬき前の企業から引き継いだ設備が残る部分もあり、最初から明確なイメージが固まっていたわけではありません。まずは「この広々としたオープンなスペースを有効に活用したい」と考えていました。
そして、せっかく出社するからには作業に終始せず、「社内外のコラボレーションをもっと活性化したい」というニーズも満たしたいと思いました。単に広い空間があるだけでは、空間の使い方が各々の社員でバラバラになってしまい、効率的ではありません。
そこで社内を4つのエリアに分け、各エリアに大まかな「役割」を持たせることで、社員の自発的な行動を促そうと考えました。その役割も明確に規定するのではなく、用途に応じて「集中」と「発散」、「内省」と「対話」を行き来できるような設計にしました。各エリアの境界に物理的な隔たりなどを設けていないのは、こうした意図もあります。
社内外のコミュニケーションが循環する——「マグネットスペース」
[佐賀]
では、社内を歩きながら、各エリアについて詳しく伺っていきたいと思います!
まずはエントランスから真っ先に目に飛び込んでくる、円形のカウンターとRightTouchのロゴが印象的なエリアについてお聞かせください。

マグネットスペース
[野村様]
ここは「マグネットスペース」と呼ばれるエリアです。新オフィスの「シンボル」として最も人が集まり、自然と会話が生まれるような設計しました。
オフィスを「開かれた空間」にしたいという話にも通じますが、対照的に「閉ざされた空間」では外部からの刺激が入りにくく、改善のサイクルが滞ってしまう。その結果、業界内の最新のテクノロジーや知見から遅れを取る可能性が出てきます。特に私たちが向き合うカスタマーサポート業界のコールセンターでは、個人情報保護の観点などから外部の目を入れにくいという実情があります。
だからこそ、まずは自分たちが「開かれた」存在でありたい。社外の方々を積極的にオフィスへお招きし、開放的な空間で交流することで、実務的な話にとどまらない「未来のカスタマー体験」に関する対話を促進したいと考えました。
[木村様]
設計の際も、このマグネットスペースという「社外との接点」を定義してから、内部の他のエリアを配置していきました。
隣接スペースと連携しやすくするため、円形のカウンター形式を採用しています。また、各エリアをあえて明確に区切らないことで、オフィス全体を見渡せる高い視認性も重視しました。
[佐賀]
移転してから実際に使われてみて、このスペースの効果はいかがですか?
[野村様]
意図した通り、しっかり機能していると感じています。移転直後に、社外の方々も招いたキックオフイベントを行いましたが、この円形カウンターを中心に自然と人の輪ができていました。また、奥のワークスペースから社員が飲み物を取りに来る際に、ここで誰かと鉢合わせて自然と雑談が始まる、などといった光景が日常的に見られます。

RightTouch 野村様
[木村様]
移転してから、このスペースで本格的なコーヒーを淹れ始める社員が現れましたが、それが社内で大人気なんです。彼が「コーヒー淹れました」と社内チャットを流した途端、社員が集まってすぐなくなってしまうほど。まさに「磁石(マグネット)」のように人を引き寄せてくれる場所になっています。
使い方はあなた次第——「イベントスペース」
[佐賀]
続いては、社内でも良い意味で「オフィス」らしくない空間。階段と一段下がった床に芝生が広がる、このスペースについてお話を伺いたいと思います。非常に特徴的な、このエリアは…?

イベントスペース
[野村様]
「イベントスペース」です。実はこの一段低い構造と芝生は、居ぬき前の企業の設備をそのまま生かしています。公園のベンチを思わせるような階段や一段下がった芝生に腰掛けることで、リラックスかつ集中した状態で話を聞けるようです。
主に全社ミーティングや社外イベントなど、人が一カ所に集中する場所として活用しています。しかし大きなミーティングやイベントだけでなく、各チームのキックオフミーティングやカジュアルな1 on 1など、日常的にも使われています。
[佐賀]
当初の想定以外にも多彩な用途で活用されそうなエリアですが、移転後、意外な使われ方を見かけたことはありますか?
[野村様]
ここはオフィスの中央付近に位置するにもかかわらず、時々昼寝をしている社員を見かけます(笑)。しかし、それだけ落ち着ける空間だということでしょう。芝生の上は靴を脱いで上がる仕様ですが、それも安らげる理由の1つかもしれません。
また、このイベントスペースがあることで、以前のように会議室に閉じ籠ったりオンラインでミーティングしたりするのではなく、オープンな場所で議論が行われるようになりました。そして、そこを通りがかった他部署の社員が、興味を示して様子を覗くといった場面も見受けられます。こうした偶発的な情報への接触が交流のきっかけを生み、社内のコラボレーションの活性化にも貢献するのではないかと感じています。

RightTouch 左:野村様、右:木村様
[佐賀]
今後、イベントスペースでやりたいことや狙っている使い方はありますか?
[野村様]
採用関連のイベントにも、ぜひ使いたいですね。大々的なものも含め、これから企画していきたいと思います。ぜひ、積極的に遊びにきていただけたら嬉しいです。
身体性による思考の活性化を狙え——「イノベーションスペース」
[佐賀]
さらに奥へ進むと、今度は段差がない芝生エリアがありますね。壁一面のホワイトボードが印象的ですが、こちらはどのようなスペースですか?

イノベーションスペース
[木村様]
ここは「イノベーションスペース」です。作業中、急に訪れる「アイデアを考えたい」「ちょっと議論したい」といったような瞬間に、サッと移動できる場所として設計しています。デスクの上で黙々と考えながら完結させるのではなく、席を立ちホワイトボードに手書きしたり、他のメンバーとアイデアを共有して同じ空間でディスカッションしたりしながら、思考を拡張・発散させる。こうした体験がシームレスにできる空間にしたかったんです。
[野村様]
また、ここは私や木村さんが在籍していたプレイドの文化を継承している空間でもあります。プレイドのオフィスには、いつでもすぐ書き込めるホワイトボードが社内の至る所にあり、社員が日常的に活用しながら議論するカルチャーがあったんです。イノベーティブな活動において、このような「身体性」を伴う活動体験は非常に重要であり、新オフィスでも譲れない要素でした。

RightTouch 野村様
[木村様]
リモートワークが浸透した昨今、こうした「身体性」の重要性を痛感する場面が多々あるため、オフィス内にその機能が存在する意味は大きいと思います。また、先ほどのイベントスペースと同様にこちらの芝生も靴を脱いで上がりますが、こちらでは「靴を脱ぐ」という行為が身体や脳への刺激になり、思考の活性化につながることも期待しています。
このスペースが運用され始めてから「靴を脱いで、そのままホワイトボードに書き込めたほうが良いのではないか」という意見を基に、ホワイトボード付近まで芝生を拡張しました。実際に試しながら、自分たちでどんどん使いやすい環境に変えていく。こうした動きにも、RightTouchらしさが表れていると思います。

RightTouch 木村様
[佐賀]
ホワイトボードに書き込みの跡がうっすら残っているのを見ると、相当活発に使われているようですね。
[野村様]
そうですね。個人から複数人まで、常に誰かが何かを書き込んでいる姿を頻繁に見かけます。
また、ここをはじめオフィス内の各所には、展示会やユーザー会で使用した備品やオブジェなども置いています。それらを倉庫に仕舞い込むのではなく、今後開催するイベントでもすぐに使えるようデザインとして日常の風景に取り込むなど、空間を大切に使う工夫もしています。

新たなオフィスで、活躍の機会を待つオブジェの数々

RightTouchの看板プロダクト「QANT」のオブジェも
雑談は、ひらめきの源泉——「ワークスペース」
[佐賀]
最後に、デスクとパソコンがズラッと並ぶエリアについて聞かせてください。このエリアは実務作業を行う場所かとお見受けしますが、旧オフィスから変更された部分はありますか?

ワークスペース
[野村様]
こちらの「ワークスペース」、配置自体はオーソドックスな島型の配置ですが、デスク間のスペースを旧オフィスよりも広めに取りました。以前は椅子を引くと後ろの人とぶつかってしまう状態でしたが、今は空間にゆとりがあります。
また、通路を通る際に誰かと目が合ったり、少し立ち止まって数分だけでも言葉を交わしたりといった偶発性が生まれやすい設計を目指しました。実際に、社員同士が通路ですれ違いざまに雑談する光景をよく目にするようになりました。
しかし、このスペースはまだまだ未完成です。今後はワークスペースでも立ち話ができたり、アイデアを書き留めたりできる流動的な仕掛けをさらに増やして、進化させていきたいと考えています。

ホワイトボードやディスプレイなども随所に配置され、機能性も抜群

オープンスペースが豊富な社内だが、集中できる会議室や応接室も十分に備えている
[佐賀]
エリア内には、デモスペースも設置されているようですね。
[野村様]
はい。お客様に、私たちのプロダクトを体感していただくための場所です。加えて、社内の開発チームの社員がユーザーの反応を間近に感じられたり、開発以外のチームの社員がエンジニアのこだわりを吸収できたりする環境になればと思い、会議室ではなくあえて開放感のある場所に設置しています。
[佐賀]
オフィス全体を通じて、風通しの良さを強く感じます。こうした空間設計は、組織のコンディションにも良い影響を与えているのでしょうか?

RightTouch 野村様
[野村様]
そうですね。組織が大きくなりオフィス空間にも余裕がなくなると、どうしても「意図しない会話」が減ってしまいます。同じチーム内なら業務上の連絡で最低限のコミュニケーションは確保されますが、他部署や異なるチームの社員と「最近どう?」などと声をかけ、お互いの仕事の情報共有をするといった機会は、意識的に作らないと失われてしまう。しかし新オフィスに移転してから、こうした雑談は明らかに増えました。
[木村様]
雑談とは一見無駄に見えるかもしれませんが、人間関係を円滑にしてくれるものだと思います。雑談を通じて部署やチーム間の情報共有が活発になることで、以前よりも横の連携が進んでいるように感じています。

ワークスペース付近にはソファスペースも。ここでも日々さまざまな雑談が交わされている
社員皆で「育てる」新オフィスへようこそ!
[佐賀]
オフィスツアーも終盤に差し掛かったところで、今後のビジョンについてお伺いします。RightTouchの代表・長崎様と「RightTouch InX」の責任者・関様へのインタビューにて、現在の貴社は新たな挑戦のタイミングを迎え、「第二創業期」の局面を迎えていると感じました。ここで改めて、お二方が新しいオフィスで描きたいRightTouchの未来についてお聞かせいただきたいです。
[野村様]
まだまだ市場機会が大きいタイミングなので、スタートアップならではの機動力や新しいものを生み出し続ける熱量は引き続き、いや今以上に必要となってくるはずです。
そのため、新オフィスをつくる際、オフィスを働く環境として「与えられるもの」ではなく、「皆で一緒に創るもの」と定義しました。皆が満足しきらない未完成な状態から「次はもっと良くしよう」という意欲を燃やし続けて欲しいという意図から、あえて「完成させない」ことも大事にしています。

RightTouch 野村様
[木村様]
新オフィスに点在するたくさんのホワイトボードも、総務など特定の部署の社員だけが組み立てたのではなく、社員皆が有志で集まって一緒に組み立てたものです。移転に伴うスペースの使い方もルールを定めるのではなく、全社ワークショップを開催して有効活用する方法を議論しました。社員皆の声を積極的に取り入れながら、日々より良い環境に更新していきたいと考えています。
[佐賀]
ありがとうございます。皆様で創り上げたこの魅力的なオフィス環境を、候補者の皆様にもぜひ体験していただきたいですね。
[野村様]
「開かれた」新オフィスですから、お越しいただくタイミングも特に決めていません。選考中でも選考後でも、いつでも歓迎です。
移転後、内定者や選考中の候補者の方々を呼んだり、オンラインで画面越しに新オフィスを紹介したりする機会がありました。オフィス全体を見渡せる開放的な設計であることから「働いている雰囲気が分かりやすい」と好評をいただいています。
ぜひ一度お越しいただき、この空間や活気を味わってほしいですね。

RightTouch 野村様(左)、木村様(右)
[佐賀]
今回のオフィスツアーを通じて、プロフェッショナルたちが互いの領域を良い意味で侵食し合いながら、新たな価値を生み出し続ける様子がひしひしと伝わってきました。新たなオフィスそのものが、RightTouchの在り方を体現しているのだと感じます。
本日はありがとうございました!
[野村様・木村様]
ありがとうございました。ぜひ、一度遊びに来てください!

左から、フォルトナ 武中、佐賀、RightTouch 野村様、木村様