世界を代表する戦略コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニー(以下、ベイン)。徹底した「結果」へのこだわりと、クライアントの企業価値を最大化させる卓越した支援スタイルは、長年、日本企業のCXO(経営層)から絶大な信頼を寄せられてきました。現在、ベイン東京オフィスは過去5年を見ても年平均二桁成長という驚異的なスピードで拡大を続けています。2026年度には、中途・新卒ともに過去最大規模の採用を予定。その背景には、単なる規模の拡大ではなく、複雑化する日本企業の課題に対し、より深く、より広範にコミットしていくという強い意志があります。
今回、フォルトナは同社の最前線で活躍する二人のプロフェッショナルにインタビューを実施しました。一人は総合商社からオックスフォード大学MBAを経て、現在はパートナーとして製造業や消費財業界の全社変革をリードする島田 淳司様。もう一人は、財務省、ハーバード・ケネディ・スクールを経て、ベインに飛び込んだコンサルタントの藤音 眞生子様です。
「総合商社や官公庁での経験は、どうベインで生きるのか」「ハードワークの先にある、真の心理的安全性が保たれた組織文化とは何か」。同社特有の“Ways of Working”と、求める人物像の本質について、深く掘り下げます。
インタビュアーは、フォルトナの大野と岩崎が務めます。
島田 淳司様 プロフィール
パートナー。
新卒で三井物産株式会社に入社。鉄鋼部門にて戦略企画業務に従事。その後、オックスフォード大学経営大学院にてMBAを取得。ベインに入社後は、製造業、消費財、を中心に、企業再生、全社変革、業績改善など多岐にわたるケースをリードしている。
藤音 眞生子様 プロフィール
コンサルタント。
新卒で財務省に入省。国際局や主税局などで国際金融や税制政策立案に従事。ハーバード・ケネディ・スクールへの留学も経験。ベインに入社後は、消費財、ヘルスケア業界の戦略策定、デューデリジェンスなどのケースに携わっている。
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大企業を動かす「企業参謀」へ━━総合商社・官公庁からベインへと至った決断の背景
[フォルトナ]
ベイン×フォルトナ初インタビューということで、本日はよろしくお願いいたします。
まずは、お二人がなぜベインを選ばれたのか、その背景からお聞かせください。
[島田様]
新卒で三井物産に入社し、鉄鋼部門で戦略企画、貿易実務、営業、海外駐在など一通りの仕事を経験しました。
非常に良い会社で仕事も充実していましたが、10年目を前にして自分の成長に限界を感じました。
また、三井物産含めた日本企業の総合職は、幅広い業務経験を通じてゼネラリストとして成長しやすい環境がある一方で、自分固有の専門性や強みが見えにくい側面もあると感じていました。実際にキャリアを重ねる中で、「自分は何のプロフェッショナルなのか」を明確に言語化し、個人としての価値を高めたいという思いが強まりました。
そのため、体系的な知識と専門性を身につけると同時に、グローバルな環境で切磋琢磨できる機会を求めて、MBA留学を決意しました。
[フォルトナ]
そこから、なぜコンサルタントという職業を選び、ベインに参画したのですか?

[島田様]
私がオックスフォード大学に留学したのは2016年ですが、その頃、大学の研究所では、どのような業務がAIに代替されるかの研究が盛んに行われていました。確か、当時の研究では、高度な社会的スキル・対人スキルが求められ、且つ人間ならではの高度な思考が求められる仕事は代替されないという話がされていたので、戦略コンサルタントの道を選びました。
その中でベインを選んだのは、大企業の経営戦略のど真ん中を扱うテーマの面白さに惹かれたからです。また、国際的で多様な価値観やバックグラウンドを持つ社員が多く、自分にとっての居心地の良さやカルチャーフィットを感じたことも大きな決め手でした。
現在はパートナーとして、製造業や消費財業界の全社変革(トランスフォーメーション)を主に担当しています。ベインの特徴は、単なるコストカットに留まらず、売上アップも含めた全社戦略の立案から実行までを一気通貫で支援することです。最近では、日本企業の海外子会社や海外事業の立て直しのために現地へ赴き、ターンアラウンド(事業再生)に携わるケースを数多く手がけています。
[フォルトナ]
よく貴社の魅力として、「ピュアな戦略案件が多い」「グローバル」というキーワードが挙がりますが、まさにその通りのファームということですね。
続きまして、藤音様よろしくお願いします。
[藤音様]
私は新卒で財務省に入省し、国際金融政策や税制に携わり、留学期間含め、7年在籍しました。
「日本経済のために働きたい」という思いがあり、予算や税といった強力なツールを持つ財務省に魅力を感じて入省を決めました。
ただ、実際に働いてみると、マクロ政策を所管する距離のある立場から、企業・家計が抱える実体経済の課題を理解し、効果のある形で政策に落とし込むことの難しさを痛感しました。政策と実態経済の関係をよりよく理解するためにアメリカへの留学も経験しましたが、「企業の現場で何がボトルネックとなり、どうすれば改善するのかを身近なところで経験したい」という思いを深め、特定業界に限らず、幅広く知見を深められるコンサルタントへの転職を決意しました。
なぜベインを選んだのかというと、まず、経営の根幹である「CXOテーマ」を数多く扱っている点に惹かれたこと。次に、留学時代の同級生たちの中で、ベイン出身者は非常に切れ者でありながら物腰が柔らかく、極めてサポーティブなカルチャーを持っていると感じたことが大きな決め手でした。
実際、入社してからの2年半は、幅広い業界のプロジェクトを経験し、期待通りのキャリアを歩むことができています。最近では、ファンドが買収した企業の価値向上のための「100日プラン」や、コストと成長の両面を見据えた全社改革などに携わっています。官僚時代に目指していた「日本経済を良くしたい」という志を、今はコンサルタントとして、より現場に近い場所で体現できていると感じています。
IT全盛の時代に、戦略特化で二桁成長。積極採用の背景は、CXOが最後に頼るファームの独自性
[フォルトナ]
お二人とも、扱うテーマが「戦略」や「CXO」に特化しているということに魅力を感じたというのが共通点なのですね。その2点について、貴社のビジネス概要や競合ファームとの比較を踏まえてお教えいただけますか?
[島田様]
ベインのビジネスの核にあるのは、一貫して、「CXO(経営層)の悩みに向き合う」ことです。これは私が入社したときから変わっていません。
競合ファームと何が違うのかとよく聞かれますが、われわれは「全社レベルの重大な経営課題」に注力しています。いわば「企業参謀」として、経営の根幹に深く切り込むことに注力し続けています。
[フォルトナ]
他の戦略ファームにはデジタル領域に進出し、案件の大型化を図るところもあるなかで、貴社は戦略に特化し続けているにも関わらず、二桁成長をし続けているとお伺いします。その理由は何でしょうか?
[島田様]
「全社的なお悩み」が世の中で急増しているからだと感じています。
かつての日本は、高度経済成長の波に乗って「正しいことを正しく」やっていれば自然と伸びる時代でした。しかし、現在はビジネス環境の変化がとにかく激しくて複雑です。外的要因に舵取りを阻まれることも多く、経営陣が自力で正解を見出すのが非常に難しくなっています。
以前、あるクライアントからいただいた言葉があります。「自分たちで何をやるべきか見えている時は、ベインさんには声をかけません。本当に困り果てて、どこにも答えがない時だけ、ベインさんを頼るんです」と。
実際にすでに決まった方針を実行するだけのフェーズなら、われわれのバリューは出しにくいこともあるのですが、「どう進むべきか、全く解が見えない」という極限の状況において、経営者の方と膝詰めで議論し、一緒に答えを導き出していく。そんな「正解のない問い」に挑むプロセスにこそ、今、強いニーズが集まっているのだと確信しています。
[フォルトナ]
積極採用をする背景も、戦略以外のプロジェクトをやるからではなく、純粋にCXOアジェンダが増えているからということですね。
[島田様]
はい。プロジェクト数自体も増えていますし、1プロジェクトあたりの期間が長くなってきています。クライアントの需要に応えるべく、採用は重要なテーマです。
[フォルトナ]
具体的にはどのようなプロジェクトに取り組まれているのでしょうか?可能であれば、事例をご紹介ください。

[藤音様]
私が一番印象に残っている、入社して最初に関わったプロジェクトをご紹介します。ある大手の商業施設デベロッパーの中期経営計画を策定する1年弱のプロジェクトでした。
テーマは、人口減少が進む中で地方の施設運営が厳しくなっていくなか、いかに「社会的な構造変化」に立ち向かいながら「企業の成長」を両立させるか、という非常に難解なものでした。
商業施設は、単なるお店ではなく地域のインフラとしての側面が強くあります。そのため「利益が出ないから即撤退」という単純な話にはいきません。地域インフラとしての使命を果たしつつ、会社として5年、10年と成長していくためのストーリーをどう描くか。これこそ、私が官僚時代にやりたかった「社会課題と向き合いながら、企業成長を実現していく」というテーマそのものでした。
[フォルトナ]
民間企業だと利益第一で「ダメなら撤退」というシビアな判断になりがちかと思っていましたが、そうではなかったのですね。
[藤音様]
はい。クライアント自体がもともと強い社会的使命感を持っていらっしゃいましたし、われわれもそこがそのクライアントの「コアバリュー(核となる価値)」だと確信していました。
ですから、単に儲からないからやめるのではなく、「地域インフラの提供」という形に役割を再定義しながら、どうやって事業を持続・成長させていくか。その整合性をとるためのストーリー構築に、ほぼ1年かけてじっくり並走させていただきました。
[フォルトナ]
貴社はTrue North(真北)「常にクライアント、社員、コミュニティに対して正しいことを行う」を信条として掲げ、クライアントにとっての価値=利益を徹底的に追求するイメージがありました。ですが、今の話をお聞きすると、目指すべきTrue Northというのは、単なる数字上の利益だけではなく「クライアントが真に目指すべき道」を指しているんですね。
[藤音様]
まさにおっしゃる通りです。もちろん、クライアントに対して時には厳しいことも含めて「お伝えするべきことはお伝えする」のがベインのカルチャーです。ですが、その会社の価値の源泉が社会貢献にあるのなら、われわれはそこを大切にします。必ずしも利益一辺倒ではないと、最初のケースで実感できたことは私にとって非常に大きかったです。
[フォルトナ]
ある意味では、公務員以上に公務員らしい、志の高いお仕事ですね。
[藤音様]
そうですね。まさに「企業の財政健全化」を中長期で一緒にやり抜くような、そんな手応えのあるケースでした。
シニアパートナーから突然のチャット。全社で「一人の成長」にコミットする、ベインの圧倒的育成文化
[フォルトナ]
とはいえ、最初のケースでは官僚とコンサルタントの働き方にギャップを感じられたことと思います。実際にご入社後はいかがでしたか?
[藤音様]
正直、かなり苦労しました。
財務省在籍時代はまだ若手だったこともあり、大臣まで続く長いレポートラインの末端として、「決められたことを、細かいところまで調べ尽くして正確にレポートライン上にあげること」を期待されていると思っていました。
一方、ベインでは、どんなに小さなタスクでも「最後まで自分がクライアントにデリバーすること」が求められます。答えを自分で考え出し、パートナーやマネージャーから厳しいインプットを受けながら、自らケースをドライブしていかなければなりません。この「当事者として前に出て、デリバリーの責任まで持つ」という働き方は、官僚時代とは異なっており、マインドセットを切り替えるのに必死でした。
[フォルトナ]
藤音様のように、前職で豊富なご経験を積まれた方にとっては、新たな環境に適応し、ご自身のマインドセットを大きく変えるプロセスには大変なご苦労があったかと思います。その困難はどのように乗り越えられたのでしょうか?

[藤音様]
まさしくその点に向き合っていくという意味において、私はベインを選んで本当に良かったと実感しています。
ベインには「A Bainie never lets another Bainie fail(ベインの仲間は、決して他の仲間を失敗させない)」という助け合いの文化が、言葉だけでなく実態として深く根付いています。
私が先ほどご紹介した最初のケースで苦戦していた時、マネージャーがほぼ毎日30分、マンツーマンで時間を割いてくれました。業務の進め方はもちろん、「マインドセットをどう変えるか」を一緒に考えてくれたり、社内で相談すべき人をつないでくれたり、多くのサポートをしてくださいました。
さらに驚いたのは、ある日突然、最終面接をしてくれたシニアパートナーからチャットが来て、「30分だけ時間を空けて」と言われたんです。何事かと思ったら、「最近どこで悩んでるの?」と。「官僚出身者はこういうところで苦労するんだよね。この本を読んで考え方を変えてごらん」と、全く別のケースをやっている、当初雲の上の存在のように感じていた方が、私のことを気にかけてアドバイスをくれました。
[フォルトナ]
シニアパートナーから突然チャットですか!
[島田様]
ベイン東京オフィスのサイズ感が、ギリギリ全員の顔が見える規模だということも一つの要因だと思いますが、それ以上に人を育てる仕組みを何重にも設計していることが大きな要因です。
私は現在、マネージャークラスの育成責任者を務めていますが、毎月、人事や責任者が集まって、30人ほどのマネージャー全員について「今どんな状況か」「パフォーマンスはどうか」「環境を変えてあげるべきか」を一人ひとり徹底的に議論しています。
[フォルトナ]
ファームの幹部の方々が育成に深くコミットされているのですね。差支えなければ、島田様が実際にどの程度のリソースを「育成」に割いているかお伺いできますか?
[島田様]
業務時間の少なくとも2割くらいは常に「人」のことを考えています。パートナーは、一度に複数のプロジェクトを担当しますが、各プロジェクトのメンバーとは、必ず月に1回は1on1をしていますし、それがパートナーとして当然の責務だという感覚です。
「正しい機会を提供し、正しく成長してもらう」こと。これが、ベインが誇るべきカルチャーであり、システムの根幹です。
[フォルトナ]
パートナーというお忙しい立場の方が、若手を育てることにモチベーションを保たれているのもすごいですね。
[島田様]
私個人の本音を言えば、優秀な若手と一緒に仕事をするのが単純に「面白い」から、というのが大きいですね。投げかけたことを猛烈な勢いで吸収していく姿を見るのが、純粋に楽しいです。
実際、去年半年ほど藤音さんと一緒にケースをやりましたが、彼女にとっては初めての分野だったにもかかわらず、終わる頃にはもう立派なエキスパートと言えるレベルまでノウハウをマスターしてくれました。そんな風に、成長のプロセスに立ち会えるのは、自分にとっても刺激になりますし、最終的にはチームとしての成果として自分に返ってきますから。
[フォルトナ]
ベインの社員の方とお話ししていると、一様に「人への投資」や「育成」への意識が驚くほど高いですよね。コンサルティング業界にはまだ「背中を見てついてこい」というスタイルのファームも残っているなかで、なぜベインはここまで「育てること」にベクトルが向くのでしょうか?

[島田様]
コンサルティングファームにとって、最大アセットは「人」です。なので、人に投資をして競争力を高めるのは、ある種当たり前で必然のことではあります。ただ、「なぜベインが特にそうなのか」という固有の理由を挙げるなら、ベインには「手柄」という概念がほとんどないから、という点があるかもしれません。
個人の売上や成果とリターンが強烈に紐付いていると「このプロジェクトは自分のおかげだ」「このノウハウは私だけのものだ」といった壁ができてしまいがちです。
しかし、ベインはあえてそこを切り離しています。誰という属人的な手柄に固執させない仕組みにしているからこそ、ファーム全体でノウハウを惜しみなく共有しよう、みんなで人を育てて組織を強くしよう、というメンタリティーが自然と生まれるのだと思います。
[フォルトナ]
育成に関連してですが、島田様ご自身は、パートナーになられるまで、各職位でどのようなチャレンジや視座の変化を経験されたのでしょうか?
[島田様]
コンサルタント、マネージャー、パートナーという3つのレイヤーで考えると分かりやすいと思います。
まず、コンサルタント。最初は問題解決の「引き出し」が圧倒的に足りませんでした。新卒からコンサルティングファームにいるメンバーに比べて、思考や実行のスピードが遅いことに苦労しました。「こういうテーマが来たら、こう解くんだ」という型を、とにかく必死に自分の中に叩き込んでいくフェーズでした。
次にマネージャー。ここでのプレッシャーは、また質が違います。クライアントミーティングにおいて、自分が「最後の防衛ライン」になるんです。コンサルタントの時は、変化球の質問が来ても上が拾ってくれましたが、マネージャーはそうはいきません。パートナーはハイレベルな議論が中心になるし、コンサルタントは必ずしもディテールの全貌が見えているわけではない。その狭間で、すべてのボールを受け切る責任の重さは、相当なものでしたね。
そして現在のパートナー。1ケースに投下できる時間が極端に減ります。だからこそ、短時間のインプットで「要はこういうことだよね」というシャープな示唆を出さなければなりません。私はもともとクライアントに深く入り込んで関係を作るタイプなので、実はこれが最も難しいことでした。たった30分の相談で「どうですか?」と聞かれたときに、いかに高い視座で価値を出すか。そこが私にとっての新しいチャレンジです。
「Day 1から世界と通じ合える」。グローバルで統一された“共通言語”がもたらす真のOne Firm
[フォルトナ]
少し視点を変えて、ベインの「グローバル」という側面についてもお伺いします。総合商社などのバックグラウンドを持つ方にとっては非常に気になるポイントだと思いますが、特徴はありますか?
[藤音様]
まず、ファーム内の話で言うと、グローバルオフィス全体の交流が盛んです。
トレーニングの面では、私は入社半年後にバルセロナで開催されたグローバルトレーニングに参加しました。
アジアやヨーロッパから集まった100名近い同僚と、ツールを学ぶだけでなく、それぞれの国のメンバーが「今何に苦労しているか」というエクスペリエンスをシェアし合いました。その時にできた横のつながりは今でも続いていて、世界中に相談できる仲間がいるのはベインならではの強みです。
[島田様]
プロジェクトの面では、ベインはグローバルで真のOne Firmだと感じます。最大の特徴は、どのオフィスのメンバーとチームを組んでも、Day 1から完璧に意思疎通ができることです。言語が英語か日本語かという話ではなく、問題解決のメソドロジーというビジネス言語がグローバルで完全に統一されています。
[フォルトナ]
ファーム外の観点で、前職の総合商社との違いはいかがでしょうか?
[島田様]
総合商社や日本企業の海外展開は、どうしても「日本の親会社が株主として現地を管理する」という、資本関係上の上下がある中でのマネジメントになりがちです。ある意味、働く場所は海外だけど、オフィスの中は日本企業。本社のルールや人間関係がそのまま通用する働きやすい環境です。
しかし、ベインは違います。今、日本企業のオーストラリア子会社を支援するプロジェクトをやっていますが、東京とオーストラリアのメンバーが対等な関係で、「どうすればクライアントのためになるか」という一点でプロとしてぶつかり合っています。
こうした、真にフラットで多国籍な環境でプロジェクトを推進できる体験は、他ではなかなか得られない、ベイン独自の魅力だと思います。
戦略コンサルはどれほどハードなのか?納得感とコントロールが生み出す、サステナブルな働き方の真実
[フォルトナ]
ここからは少し踏み込んだお話を伺わせてください。戦略コンサルタントというと、どうしても「激務」といった、いわゆるハードワークなイメージを持つ候補者の方も多いと思います。実際のところはどうなのでしょうか?
[藤音様]
私は、働きやすい環境だと感じています。もちろん、クライアントへの価値を最大化するのがわれわれの存在意義ですから、労働時間は長くなる傾向にあります。
ただ、「メンタル的な負荷」は高くないです。「何のために頑張っているか」が明確なため、精神的なストレスは少ないと思います。
メンバー全員で「目の前の問いに対して、いかに最高の答えを出すか」という一点に集中して議論している時間は、長くても辛くありませんし、プロジェクトには必ず終わりがあります。むしろ文化祭前夜のような、みんなで1つの目標に向かって走り抜けるワクワクを感じながら仕事をしています。
[島田様]
「ハードかどうか」の物差しをどこに置くかですよね。
労働時間は確かに世間よりは長いですし、総合商社と比べても大きくは変わらないと思います。しかし、われわれは「成果」で評価されるため、自分のスキルを磨いて効率を上げれば、コントロールできる余地があります。10時間かけて出したアウトプットと、1時間で出したアウトプット。同じ質の場合、ベインでは確実に1時間で出したほうを高く評価します。
[フォルトナ]
自身の努力次第で働き方をデザインできると。

[島田様]
はい。さらにパートナーの目線で言うと、「徹夜をさせるのはマネジメントの敗北」だという強い意識があります。
われわれの仕事は「頭を使うこと」ですから、寝不足でパフォーマンスが落ちた状態でクライアントの前に出るのは、スポーツ選手が練習過多の疲労困憊状態で試合に出るのと一緒です。ちゃんと休息を取ってコンディションを整えるまでがプロの仕事。ですから、もしチームが「ハードすぎる」と感じているなら、それはスコープ(業務範囲)の区切り方が悪いか、クライアントからの依頼の取捨選択ができていない、私たちパートナーの責任です。
[フォルトナ]
パートナーの方が「チームが疲弊していないか」を把握するのは、組織が大きくなると難しくなりそうですが、何かベインならではの仕組みがあるのでしょうか?
[島田様]
ここはベインが非常に真剣に取り組んでいるところで、毎週、チーム全員から匿名でアンケートを取っています。「今週の働き方はサステナブルだったか」という点数をつけてもらいます。
もし点数が下がれば、それはパートナー自身の評価に直結します。なので、いかにサステナブルな環境を作るかには、死に物狂いで取り組んでいます。
[藤音様]
そのアンケートも、ただ回答して終わりではありません。毎週、その結果を受けて、パートナーから若手まで全員が集まる30分間のミーティングが必ずセットされています。若手の立場からも忌憚なく意見を言える場がルールとして確保されています。このコミュニケーションが徹底されていることが、ベインならではの工夫です。
[フォルトナ]
コミュニケーションが仕組み化されているのですね。
[島田様]
ただ、このアンケート、実は満点を取るのがすごく難しいです。
質問項目には大きく分けて「クライアントに価値を出しているか」「サステナブル(持続可能)に働けているか」「自分の学びがあるか」「チームに多様性が認められているか(インクルーシブか)」といったものがあります。
難しいのは、「クライアントへの価値」と「サステナビリティ」の両立です。仕事が楽すぎると「学びがない」「価値を出せていない」と不満が出る。逆にコンテンツを詰め込みすぎると「学びは多いけど、大変すぎる」となります。
この絶妙なバランス、いわゆる「心地よい負荷」をどこに設定するか。毎週スコアを見ながら、マネジメントのやり方を微調整し続けています。
[フォルトナ]
メンバーをサステナブルに働かせるのが上手なマネージャーやパートナーには、どんな共通点があるのでしょうか?
[島田様]
一言で言えば「問いの設定」が上手い人だと思います。
クライアントからいただいた膨大な課題に対して、「何が最も解くべき本質的な問いなのか」を見極め、解決への最短アプローチを提示できるかどうか。ここがブレると、チームは迷走して無駄な作業が増え、一気にハードになります。
「クライアントがこう言っている、パートナーAはこう言っている、Bはああ言っている…とりあえず全部やろう。」とチームメンバーに思わせてしまうことは避けなければなりません。「これはやる、これはやらない」という段取りを効率よく、かつ芯をずらさずに決められるのが、マネージャー以上に求められる最も重要なスキルだと言えます。
[フォルトナ]
メンバー毎に、設定する問いのレベルを調整されるということですか?
[島田様]
そのイメージです。
「どこまでを自分が巻き取り、どこまでをメンバーに委任するか」という役割分担の調整に集約されると考えています。
理想は、週の初めに1〜1.5時間ほどじっくりチームと話し合い、「今週の論点はここ」「アプローチはこう」と方針を出し切ることです。これがパートナーとしての最低限の仕事だと考えています。
もしメンバーから「学びが少ない」という声があれば、あえてプロセスの設計を彼らに任せてみる。逆に「負担が大きすぎる」という状況なら、方針を示すだけでなく、具体的なアウトプットの作成まで私が踏み込んでサポートする。
このように、現場にどこまで介入するかという「深さ」と、何を任せるかという「範囲」のバランスをとることが、ベインのパートナーに課せられた終わりのない挑戦でもあります。
「正論だけでは人は動かない」。IQとEQを兼ね備え、自らの手で変革を起こせる人材を求めて
[フォルトナ]
それではいよいよ、お二人が考える「ベインらしい人」について伺わせてください。
前職とベインでは人材の「タイプ」や「求められること」に違いを感じることがあると思います。
島田様は総合商社と比較して、いかがでしょうか?
[島田様]
求められる能力が全く別物だと思います。あえて対立構造で言うなら「IQ(知能指数)とEQ(対人関係の知能指数)」とか「右脳と左脳」という言い方もできるかもしれません。
コンサルタントの仕事は、「企業の経営課題をどう解いて実行するか」を体系的に、ロジカルに解き明かしていくことが生業です。なので、ある程度カッチリと構造化された「プレイブック(型)」の中で物事が動いていきます。
一方で、私が総合商社で勤務していた時には、プレイブックがない中、自分で試行錯誤しながら仕事に取り組んでいた感覚をもっていました。その経験を通し、現場でいわば「野生の勘」のようなものがものすごく鍛えられたと思います。お客様が本当に求めているものを理屈ではなく肌で感じ取る力が養われました。前任者から引継書のようなものは貰いますが、それは、顧客との商売内容が纏まっているもので、問題の解き方が書いてあるわけではありません。
ビジネスパーソンとしては最終的にどちらの力も必要になるので、どっちが良い悪いという話ではありません。ただ、私個人としては、この全く異なる2つの世界を両方学ぶことには、ものすごく大きな意味があると思っています。
[フォルトナ]
現場は理屈だけでは動かない、ということですね。
[島田様]
その通りです。ビジネスを完遂させるには、お客様の真のニーズを理解し、それをどう伝え、どう動いてもらうかが重要です。論理のど真ん中はコンサルスキルですが、その両端にある「人間理解」や「実行の胆力」は、総合商社で培われたなスキルが非常に生きていると感じています。
ポジションが上がれば上がるほど、実はそういった「非論理的な領域」の重要性が増していきます。だからこそ、異業種での経験も、ベインという環境では大きな武器になるのです。
[フォルトナ]
藤音様にもお伺いします。財務省と比較してどのようなことをお感じですか?

[藤音様]
根底にある「仕事を通じて社会にインパクトを与えたい」という志や、結果を出すためのハードワークをいとわない姿勢は共通していると感じます。ただ、そのエネルギーの「出し方」はかなり違いますね。
官公庁という組織に在籍していた時は、一定の年功序列や人事決定の部署配属を所与としたうえで、最大限のパフォーマンスを出すために努力を惜しまない人が多かったと思います。
一方でベイン、特に若手のコンサルタントたちは、驚くほど「自分でチャンスを掴みに行く」という姿勢が強いんです。プロジェクトとは別に自分で勉強会を立ち上げたり、「次はこういうアジェンダに携わりたい」と自らパートナーに売り込みをしたり。キャリアに対する「主体性」や「貪欲さ」が強い人が多いと感じます。
[フォルトナ]
組織に守られる環境か、自ら道を切り拓く環境かの違いによるのですね。
それを踏まえて、どのようなマインドや資質を持った方に入社してほしいですか?
[藤音様]
私自身が最初に苦労した経験から強く感じるのは、周りのアドバイスを「素直に受け止めて吸収できる人」ですね。
ベインの中途採用に応募される方は、前職で輝かしい成功体験を持っている方が多いと思います。もちろんそれは大きな武器になりますが、入社直後はあえてそれを一度脇に置いて、ベイン流の働き方やマインドセットに自分を「柔軟に変えていけるか」が、その後の成長スピードを左右します。
ベインには人を育てる仕組みや、フィードバックをくれる仲間が本当にたくさんいます。その環境を最大限に生かして、「まずは何でも吸収してやろう」という貪欲な姿勢がある方は、間違いなく向いていると思います。
[フォルトナ]
島田様はいかがでしょうか?
[島田様]
やはりIQとEQの両方を持ち合わせる素養がある人、これに尽きます。どちらが欠けてもダメなんです。
IQが高いだけなら、「論理的に正しい答え」を出すことはできます。でも、実はクライアントも「何が正しいか」は頭では分かっていることが多いです。それでも首を縦に振れない、動けない理由が現場には必ずあります。
「ソリューションは正しくご理解いただけているはず。でも、なぜこの方に納得して実行していただけないのか?」という部分にまで思いを馳せられるか。クライアントの背中を正しく押して、実際のアクションにつなげられるか。この「EQ」の部分が、プロのコンサルタントには不可欠です。
大企業の運命を決めるような大きな意思決定を、論理と共感の両面から後押ししたい。そこにやりがいを感じられる方と一緒に働きたいですね。
[フォルトナ]
今おっしゃった「EQ」という能力は、入社してからトレーニングで鍛えることができるものなのでしょうか?
[島田様]
EQは座学のみで学べるものではありません。「ロジックだけでは物事は一ミリも前に進まない」という手痛い挫折を経験するしかないと思っています。
クライアントと直接向き合い、必死に考えたロジックが通じない壁にぶつかった時、初めて「相手が本当に考えていることは何だろう?」とアンテナを張れるようになるんです。
[フォルトナ]
あえて厳しい場に身を置くことでしか身につかない能力なのですね。
[島田様]
そうですね。なので、私たちパートナーの役割は、若手にそういう「ヒリヒリする場」を用意すること、そして、彼らがそこで挫折した時にしっかりバックアップすることでもあると思っています。
実際のケースでも、単なる分析手法だけでなく「この状況でクライアントはどう感じていると思う?」といったEQに関わるイシューについて、メンバーと議論する機会は非常に多いですよ。
[フォルトナ]
本日は貴重なお話をありがとうございました。最後になりますが、現在キャリアに悩み、コンサルティング業界やベインへの挑戦を迷っている方々へ、メッセージをいただけますでしょうか?
[藤音様]
ベインの仕事の醍醐味は「正しい答えを論理的に構造化して出す」だけでなく、「それを持って実際にアクションにつなげる」ところまでやりきることにあると思っています。
ベインでは、クライアントの方々と膝を突き合わせ、一緒に悩みながら、現場が動くところまで並走します。さらに、若手であっても一定のリスクを取ってチャレンジさせてくれる場があります。
「自分は組織の歯車にしかなれないんじゃないか」「このままでは外の世界で通用しないんじゃないか」という不安を持って転職しましたが、今では「自分一人でもここまで価値を出せるんだ」という確かな自信がつきました。自らの手で変化を起こしたいという方には、これ以上ない環境だと思います。
[島田様]
よく「戦略コンサルタントは社会へのインパクトが大きい」と言われますよね。日経新聞の一面に載るようなプロジェクトに携わるとか。確かにそれは事実ですが、では前職でそれができなかったかと言えば、そんなことはありません。
私が感じる明確な違いは、インパクトの「大きさ」ではなく、プロジェクト完遂までのスピード感です。ベインでは、一つひとつのプロジェクトが数週間、長いものでも1年単位で完結し、毎回全く違うテーマに向き合います。そこで学んだことを都度体系化して短いスパンで身に着けていく。ベインは厳しい環境だと思われがちですが、その中身は驚くほど人間らしく、人を育てることに情熱を注いでいる組織です。
高い志を持ち、自分をさらに高いステージへ引き上げたいと考えている皆さんと、ぜひ一緒に「答えのない問い」に挑んでいけることを楽しみにしています。

左からフォルトナ岩崎、藤音様、島田様、フォルトナ大野
編集後記
ベインに対し抱いていたイメージが大きく覆ったインタビューでした。
従来は同社にクールな印象を持っていたのですが、
・メンバーを一人も漏らさず成長させることへのこだわり
・クライアントの目標を単純に利益に置くのではなく、その価値の源泉に遡り考える深さ
・論理と同様に共感も重視することで相手のアクションを変える当事者意識
を知り、思いの強い熱量の高いファームであると理解できました。
また、最近のファームインタビューでは珍しく、難しく厳しさのある仕事であると自認されていたのも印象的でした。
同社のこうした特性を理解し、我こそはという方にぜひチャレンジいただければと思います。