学習サービスにはeラーニングなどが挙げられますが、その中でもEdTechの取り組みが加速しており、日本における教育現場に大きな変化の兆しが見えています。
本記事では、EdTechの概要をはじめ、注目されている理由や日本の動向、EdTechを軸に転職するポイントなどを解説します。
EdTechとは
EdTechとは、「Education(教育)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、教育分野におけるしくみやサービスのことを指します。具体的には、生徒向けの学習支援システムや教師のための授業支援システムなどが挙げられます。
EdTechは、従来の教室での対面型授業に加えて、場所や時間に縛られずに学習できるのが特徴です。
また、個別に最適化された教育コンテンツを提供すれば、学習効果をさらに高めることが期待されています。
EdTechとeラーニングの違い
EdTechと似た存在でeラーニングがありますが、どのような違いがあるのかと疑問に思う方は多いのではないでしょうか。EdTechは上述したように教育技術全般を指し、教育をより効率的かつ効果的にするのを目的としています。
一方、eラーニングはオンライン学習に特化しており、インターネットを介して行う講座やウェビナーなどで学習するのが一般的です。時間や場所に制約されず、自分のペースで学習できるので研修などでよく活用されています。
EdTechはeラーニングを含む広い概念であり、eラーニングはその一部であると理解しておくと良いでしょう。
EdTechが注目されている理由
EdTechが注目されている理由として、主に4つ挙げられます。
- 教育格差の是正
- グローバル人材の育成
- 求められるスキルの変化
- 教育現場の働き方・教え方の改革
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
教育格差の是正
EdTechは、教育格差の是正に大きな役割を果たすことが期待されています。現代の教育現場には、親の収入や学歴によって生じる学習機会の差や、都市部と地方で受けられる学習機会の差など、教育格差があるといわれています。
また、大手企業と中小企業では受けられる研修に差があり、学べる環境に違いがあるのも問題視されている格差の一つです。
EdTechのサービスを活用すれば、より安価で学習サービスを受けることができ、地域や規模に影響されることなく一定の学習を促せます。その結果、学習できる機会が増加し、教育格差の是正につながるでしょう。
グローバル人材の育成
EdTechは、グローバル人材の育成にも大きく貢献しています。従来のインプット中心の英語学習では、世界でも通用するネイティブな英語力を持つ人材を輩出することは難しいとされています。
EdTechを活用すれば、ビデオ通話を活用したオンライン英会話やAIを利用した英会話など、アウトプット中心の英語学習を促すことが可能です。
また、グローバル会社で求められる知識やスキル、マインドセットなども併せて身につけられるようになります。
国際的に活躍できるグローバル人材育成を行いたいと考える企業にとって、EdTechによる学習は有効な手段となり得ます。
求められるスキルの変化
社会のデジタル化が進むにつれ、教育現場で求められるスキルも変化しています。近年では、AIやロボットが発達していることにより、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(ものづくり)」「Art(芸術)」「Mathematics(数学)」の5つの分野を統合的に学ぶSTEAM教育への注目が高まっています。
STEAMを学習すれば、現実で起こり得る問題を解決する力や独創的な発想力などが身につき、人間にしかできないスキルを会得することが可能です。
EdTechは、個々の生徒の理解度に合わせた学習やプロジェクト型の学習を可能にすることで、これからの時代に求められる資質・能力の育成に貢献すると期待されています。
教育現場の働き方・教え方の改革
EdTechの活用により、教育現場の働き方改革や教え方の転換が進んでいます。現代において、非効率なしくみやITツールの活用不足などにより教育現場の負担は大きく、労働環境の改善が課題としてよく取り上げられています。
課題解決を図るべくEdTechを活用すれば、オンラインでの教材配布や課題提出により指導者の負担軽減でき、AIを活用した個別最適化学習の実現も可能です。
EdTechは教育の在り方を大きく変える存在であり、効率的に活用することで働き方や教育環境の改善につながるでしょう。
日本政府のEdTechの取り組み
現在の日本では主体的にEdTechの活用に取り組んでいるため、今後も市場規模が大きくなって参入する企業も増えると予測されています。
日本政府でのEdTechの代表的な取り組みとして、以下の3つが挙げられます。
- 文部科学省 GIGAスクール構想
- 経済産業省 未来の教室
- 総務省 ICT関連の環境整備
ここでは、日本政府の取り組みについて具体的に紹介します。
文部科学省 GIGAスクール構想
文部科学省のGIGAスクール構想では、1人1台の学習用端末と高速ネットワーク環境の整備をし、多様な子どもに合わせて最適化された教育を実現しています。
ICTを活用した教育環境を整えた結果、教師は授業中でも一人一人の反応を把握できるようになり、双方向型の一斉授業が可能になりました。
GIGAスクール構想の影響により、教育現場のICT化が大きく進むことが期待されており、子どもの可能性を広げた教育環境の整備が促進されるでしょう。
経済産業省 未来の教室
経済産業省が推進する「未来の教室」は上述したGIGAスクール構想を中心に、1人1台端末とさまざまなEdTechを活用した学びの環境づくりを目指すプロジェクトです。「学びのSTEAM化」「学びの自律化・個別最適化」「新しい学習基盤づくり」の3つを柱に、全国の学校などで多岐にわたる実証実験が行われています。
現行法令の合理的な解釈の範囲内で実現できることは明日からでもはじめるべきという考えがあり、3年後をターゲットに現場の創意工夫の背中を置く政策を実行していくことを目指しています。
総務省 ICT関連の環境整備
総務省は、教育現場におけるICT関連の環境整備に力を入れています。具体的には、「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」を文部科学省とともに取り組んでおり、教育現場でクラウド活用を議論する有識者会合を立ち上げるといった環境整備が促進されています。
また、通知表をつけるなどの教職員が利用する校務系システムと、児童生徒も利用する授業・学習系システムとのデータ連携方法なども検討されており、ICT化の推進が活発的です。
EdTechの今後の課題
EdTechの普及には、課題が残されています。具体的には、EdTechを活用すると便利になる反面、個々の学習行動によって差が開いてしまうことや、利用者と指導者の環境が整っていないことなどが挙げられます。
また、海外と比べると認知度が低いことや、学習者の行動を分析してツールや指導の発展も同時に行わなければならないことなども解決すべき課題です。
EdTechの真価を発揮するには、さまざまな課題を一つずつ丁寧に解決していく姿勢が求められます。
EdTechの広がりと日本の市場規模
世界的にEdTechへの注目が高まっており、日本でもEdTech市場は急速に成長しています。野村総合研究所が2020年に発表したデータによると、日本のEdTech市場規模は2019年に約2,000億円となっていますが、2025年には約3,200億円にまで拡大すると予測されています。
海外と比較すると日本の市場規模は小さいものの、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを1人1台所有できる環境が整えれば、EdTechの活用が広まっていくでしょう。
有名なEdTech企業を紹介
日本でも多くのEdTech企業が誕生し、注目を集めています。代表的な企業は以下の通りです。
スタディプラス株式会社 | 大学を受験する高校生の2人に1人が利用しているといわれている学習管理アプリ「Studyplus」を提供しており、「いつ」「何を」「どの程度学習したか」などの記録や分析が可能です。また、各教科の進捗状況や目標達成率なども確認でき、どこまで進んだのかを把握しやすいのが特徴です。 |
株式会社ベネッセコーポレーション | 幼児から高校生までの幅広い方に向けた学習サービス「進研ゼミ」を提供しており、質の良いカリキュラムが魅力です。2014年度からはタブレットによる学習サービス「チャレンジタッチ」を提供開始しており、近年ではAIやプログラミングといったビジネス向け講座もオンラインで開催しています。 |
株式会社リクルート | 4万本以上の動画を配信して学習を促すWeb学習サービス「スタディサプリ」を運営しており、EdTechの最大の特徴ともいえる学習記録アプリを導入しています。2012年より、社会人に向けたインターネット学習支援サービスも行っており、PCやスマホなどがあれば気軽に受講できるのが特徴です。 |
株式会社エナジード | 学校や塾に向けた教育コンテンツ「ENAGEED」を提供しており、全国の約900校の教育現場をサポートしています。また、企業に向けた人材育成サービス「ENAGEED for Biz」も提供しており、「自ら考え、動き出す。」を身につけられるように支援しています。 |
株式会社Schoo | ビジネス系コンテンツをオンラインで提供する「Schoo」を運営しており、配信動画数は19カテゴリで8,500本以上を誇っています。授業は双方向ライブコミュニティで行われるため、唯一無二の授業を受けられるのが特徴です。 |
EdTechを軸に転職するポイント
EdTechを軸に転職したいと考えるものの、どのような点に注意すれば良いのかと悩む方はいるのではないでしょうか。転職活動において押さえておきたいポイントは主に3つです。
- 企業やポジションに応じて必要なスキルを理解する
- 教育やテクノロジーに関心を持つ
- 企業の規模やフェーズを理解する
ここでは、各ポイントを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
企業やポジションに応じて必要なスキルを理解する
EdTechを軸に転職する際、各社やポジションに応じて必要なスキルが異なる点に注意が必要です。EdTechを軸に転職活動を行うといっても特別なスキルが求められるわけではなく、企業が募集しているポジションによって求められる経験やスキルは異なります。
たとえば、子ども向けの教育サービスを提供している企業に応募する場合は教育に関する知識はもちろんのこと、教材開発経験などが求められる可能性があります。一方、企業向けの教育サービスを手掛ける企業に転職する際は、企画やマーケティングなどのスキルが問われる場合も多いです。
EdTechを軸に転職を考えている際は、志望企業の事業内容や募集職種を見極め、自身の強みとなるスキルを効果的にアピールすると良いでしょう。
教育やテクノロジーに関心を持つ
EdTechに携わる上で、教育やテクノロジーへの関心は非常に重要です。具体的には、教育の課題意識を持ってどのように解決できるかを常に考えたり、テクノロジーの可能性を探求して教育への応用方法を模索したりする姿勢が求められます。
また、国内外のEdTechの動向をウォッチして最新トレンドを把握し、ユーザーの声に耳を傾けて現場のニーズを的確に捉えるのも大切です。
EdTechに関心を持ち、教育とテクノロジーの両面から課題解決を図る意欲があれば、大きなやりがいを感じられるでしょう。
企業の規模やフェーズを理解する
EdTech企業を選ぶ際は、企業の規模やフェーズを理解しておくのもポイントです。
EdTechは上述した通り、日本において比較的新しいトレンドであるため、大手企業だけが提供しているとは限りません。スタートアップ企業やベンチャー企業が手掛けている場合も多いので、自身が興味ある企業がどの程度の規模でどのようなフェーズなのかを知っておく必要があります。
それと同時に、「どのようなメリットがあるのか」「リスクはどの部分にあるのか」などの把握も欠かせません。
EdTech企業への転職を目指す際は、企業の規模やフェーズを理解した上で自身に合う企業を選ぶのが大切です。
EdTechを軸に転職するならエージェントに相談
EdTechへの転職を考えている方は、転職エージェントに相談することをおすすめします。転職エージェントでは、EdTech企業の求人情報を幅広く保有している可能性が高く、求職者のスキルや経験を踏まえた最適な企業やポジションを提案してくれます。
また、自身の市場価値を知ることができ、スムーズに転職活動を進められるようになるでしょう。
フォルトナは、マイナビやエン・ジャパンなどの大手人材紹介企業にトップ転職エージェントとして選出された転職支援サービスであり、ハイクラス転職やコンサル転職に強みを持っています。
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EdTechを軸に転職活動を行いたい場合は、一度フォルトナをご検討ください。
まとめ
EdTechは教育分野におけるテクノロジーを活用したしくみやサービスのことを指し、教育格差の是正やグローバル人材の育成など、さまざまな課題解決に貢献すると期待されています。日本政府も積極的に取り組んでおり、市場規模は拡大傾向にあります。
EdTechを軸に転職する際は、必要なスキルや企業の規模・フェーズを理解し、教育やテクノロジーへの関心を持つことがポイントです。転職エージェントを活用すれば、スムーズに転職活動を進められるでしょう。
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