PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は、戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供しています。グローバルに広がるPwCのネットワークと連携しながら、クライアントが直面する複雑で困難な経営課題の解決に取り組み、国内はもとよりグローバル市場での競争力強化を支援しています。
なかでもTechnology Advisory Service(以下TAS)チームでは、ビジネス、テクノロジー、データ、組織、人材等幅広い専門性と豊富な経験を兼ね備えたプロフェッショナルが、不確実な時代を勝ち抜くためのアーキテクチャを描き、クライアントのアジリティの獲得に向けた変革を支援しています。
今回は、TASチームのパートナーである福田 健様とマネージャーの霜田 理沙様、同じくマネージャーの多田 祐太様にお話を伺いました。
インタビュアーは元PwCコンサルティングのフォルトナ弓本と、小野が務めます。
福田 健様 プロフィール
執行役員 パートナー。
PwCコンサルティング合同会社テクノロジー&デジタルコンサルティング部門 Technology Advisory Serviceチームリーダー。
IT戦略立案から実行支援まで多岐にわたるプロジェクト経験を有している。
M&AにおけるITデューデリジェンス(以下IT DD)およびITのポスト・マージャー・インテグレーション(PMI、M&A後の経営統合プロセスのこと)支援を専門領域としている他に、直近では、MaaSプラットフォーム構想立案、コネクテッドサービス企画立案および導入などのサブスクリプションビジネスモデルのアドバイザリー支援業務を推進。
加えて、商社、自動車、ハイテク、素材製造業、精密機械、情報機器等の各種製造業、ガス、重電、食品、医薬品製造業等の業界において、販売物流・購買改革、在庫削減等のSCM領域、営業改革などのCRM領域、管理会計、IFRS対応等の会計領域のコンサルティングを、業務改革構想立案からその実行施策となるITの導入まで一貫して従事。
霜田 理沙様 プロフィール
マネージャー。
IT DDとIT PMIのプロジェクトに多数従事。商社、ファンド、IT企業、製造業、運輸業等の複数の業界において、対象会社のITの調査およびカーブアウトリスクの検出、システム統合やスタンドアロン計画の策定、PMIフェーズの立ち上げおよび実行支援といった一貫した支援実績を有している。
また、製造業を中心としたデジタル戦略策定および推進支援、AIを活用した品証業務改善支援、クライアントのBMR計画策定やその実行支援などのコンサルティング案件に従事し、戦略策定からシステム化構想立案・設計・導入・運用に至るまでの各領域における支援経験を有する。
多田 祐太様 プロフィール
マネージャー。
プライベートクラウド製造・小売業の顧客を中心に、ITインフラの企画構想、および設計・構築の推進管理を中心としたコンサルティングに従事。オンプレミス・仮想化基盤・クラウドIaaS等、さまざまなインフラ形態におけるシステムや基盤全体の、構築や移行に関する企画・構想・実行プロジェクトの支援実績を有する。
インフラエンジニア職の経験、MBAの知見に基づくビジネス理解、海外赴任経験を生かしたグローバル対応など、多面的な視点での企画構想を強みとする。
コンサル未経験からパートナーに至るまで その時、PwCを選んだ理由とは
[弓本]
本日はよろしくお願いいたします。まず、お三方のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか?
[福田様]
電機メーカーのグループ会社で、SEとして販売物流管理システムの開発・運用・保守系の案件をメインに携わっていましたが、最大のチャレンジをしたいと考えコンサルタントに転身しました。
転職先の外資系総合コンサルティングファームでは、ERP(Enterprise Resource Planningの略。ヒト・モノ・カネなど企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法・システム)領域のコンサルタントとして従事。当時はSCMチームに所属し、ERP導入を通じて、販売や物流、業務知識等を得ながらコンサルティングの幅を広げていきました。
コンサルタントからシニアコンサルタントに昇格しましたが、マネージャーやパートナーになるには案件獲得のスキルが求められます。SCMチームはERPのような大きな案件が多かったため、小回りが利くCRM(顧客関係管理)チームでマネージャーとして3ヶ月単位で営業改革プロジェクトの経験を積みました。ただ、提案の機会はあるものの大きな案件が取れないことから、その先のパートナーに至るには大きな壁がありました。
そんな折、2000年代のコンサル業界再編のなかで、現在のPwCコンサルティングが立ち上がるタイミングでPwCコンサルティングに入社しました。これがキャリアの転換期となります。
[小野]
私も未経験からコンサルタントに転身し、最終的にはマネージャーまで経験しましたが、お気持ちよくわかります。
福田様がさらにパートナーまで至ることができた要因は何だったのでしょうか?
[福田様]
私がマネージャー、パートナーへの壁を突破できたきっかけは2つあります。
1つ目は、M&Aのプロジェクトに関わることで、数字を獲得できるようになったことです。入社時はPwCコンサルティングの立ち上げ期だったこともあり、クライアントがほぼゼロの状態からのスタートでしたが、PwC Japanグループの監査法人やアドバイザリーのメンバーと、IT関連の案件を通じて関係性を築いていきました。
そうした状況のなか、金融機関のM&Aプロジェクトで、当時方法論も確立されていなかったITDDを行うことになり、M&Aの知見がないにも関わらずリーダー的な立ち位置でプロジェクトを完遂できたことが、私の非常に大きな転機となりました。3週間という短い期間でクライアントのITリスク調査から、PMI計画策定、シナジー効果まで考慮し、プロジェクトを推進しました。この経験がベースとなり、ITDDやPMIのプロジェクトを獲得できるようになり、基幹システムの見直しなど大きなプロジェクトにつなげることもできるようになりました。
2つ目のきっかけはDXです。DXがテーマとなり始めた2018年頃、私はITマネジメント系の改善プロジェクトに従事していました。そこで関係を築いた自動車メーカーの案件に携わり、現在も継続的にご支援をさせていただいています。DXのプロジェクトの立ち上げにも成功し、ビジネス面や実力面でも自信をもってパートナーになることができました。
[弓本]
なかなかパートナーに至る過程をお話しいただける機会はないので、読者の方にも大変参考になるお話かと思います。ありがとうございます。
多田様はいかがでしょうか?
[多田様]
私は大手通信企業で8年働いた後、PwCコンサルティングに転職して5年目となります。大学院でネットワークについて研究していたことから、前職ではインフラエンジニアとしてキャリアをスタートしました。ビジネスサイドにも興味があり、プロジェクトマネジメント系の業務を担うようになり、自社IaaSサービスに関するさまざまなプロジェクトを経験しました。
プロジェクトマネジメントの仕事は与えられたゴールに向かって正しく進めていくことが役割ですが、その設定を誤ると間違ったゴールに辿り着いてしまいます。業務を進めていくうちに、ソリューションに縛られず、上流工程から関わり、明確なゴール設定ができるような人材になりたいと思い、コンサルタントへの転職を考えました。
[弓本]
そのなかで、PwCコンサルティングを選ばれた理由は何ですか?
[多田様]
数多あるコンサルティングファームの中でも、PwCコンサルティングを選んだ理由は「人」です。選考を通じて会った方全員が誇りをもって働いている姿に心惹かれました。実際に入社後も同じ感情を抱いています。テーマや領域に関わらず、会社外でプロボノ活動(仕事を通じて習得した専門的な知識やスキルを無償で提供する社会貢献活動のこと)をし、世の中をより良くしていきたいというメンバーが多いです。PwCの「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパスが浸透していることを実感します。
現在関わっているプロジェクトは、製造業のクライアントに対し、社内のプライベートクラウドなどのインフラ領域の企画構想から実行段階のご支援をしています。また、グローバル展開するクライアントに対してデータセンター統合の企画構想をし、実行に向けて進んでいます。
[弓本]
私もSIerからPwCコンサルティングにジョインしましたが、プロフェッショナルとして品質に対するプライドを全員がもっていたということはよく覚えています。
霜田様もSIerご出身だったかと思いますが、いかがでしょうか?
[霜田様]
私は日系大手SIerに新卒入社し、営業をしていました。しかし、クライアントがすでに運用・保守をしているものに対しての営業活動が多く、新しい提案ができませんでした。また、営業という立場上、仮にその提案が通ったとしても、SEにPMをお任せし、その後の工程に深く関わることができませんでした。自分の提案を自身の責任でデリバリーしたいという思いが強くなりました。
そのなかでPwCコンサルティングに入社した理由は2つあります。
1つ目は、前職で担当していた当時のクライアントにPwCコンサルティングのTASチームがPMOとして入っており、最適な提案をし、それを実現していくのを目の当たりにしたことです。その経験により、コンサルタントの役割の重要性に気づき、コンサルティングファームへの転職を考え始めました。
2つ目は、多田と同じく「人」です。福田が面接官だったのですが、私の営業というバックグラウンドに対して「こういうプロジェクトだったら生かせそうだね」「こうした働き方が合っているかもね」と具体的にイメージを示され、ここなら頑張れると思えました。
実際コンサルタントとしてクライアントに価値提供する立場になりましたが、もともとやりたかったデリバリーまで責任をもって全部やりきれることにやりがいを感じているとともに、自身の責任の大きさも実感しています。
[小野]
多田様、霜田様からみた、福田様の印象を教えてください。
[多田様]
非常にフランクでカジュアルな方です(笑)。1on1で興味があることを相談すると、後日そのことで話しかけてくださったり、個別のメッセージをいただいたりします。
[霜田様]
私は入社して間もない頃に福田のプロジェクトでデューデリジェンスをしたことがありますが、当時は厳しかったです(笑)。が、細かいところまで丁寧にレビューいただき、品質に対する誇りを肌で感じることができました。ちなみに今は非常に優しいです(笑)。
[弓本]
たしかに、PwCコンサルティングのパートナーは、メンバーとの距離が近いと思います。
逆に福田様の立場から、若手の方はどのように見えますか?
[福田様]
スポーツ選手も若手で活躍されている方が多いように、当社の若手も負けていません。新卒で入社される方は、社会人として何もない真っ白のなかで立ち上がってきますが、スピード感があり優秀な人材が非常に多く、これからの成長が楽しみです。メンバーが楽しいと思えるような仕事ができるように、チームをリードしていきたいと思っています。
多様な専門性を兼ね備えたエンタープライズアーキテクト集団
[弓本]
ここからはTASチームの概要についてお伺いできればと思います。まずはチームの特徴や構成について教えていただけますか?
[福田様]
私たちがビジネスの中心にしているのは「エンタープライズアーキテクチャ(以下、EA)」。これは、組織全体の業務やシステムをモデル化し、未来を見据えて実現可能な全体最適化をするための「見取り図」です。EAは単なるインフラではなく、ビジネス、テクノロジー、データ、人・組織、ガバナンス等幅広い領域を網羅するものです。これらの構造をしっかりと理解し、最適なEAをデザインすることで、事業の収益を向上させることを目標に活動しています。
この領域において、私たちはトップレベルの実績を誇っています。昨年から人員も拡大し、300名規模の組織になりました。大きな組織ですが、メンバー一人ひとりがビジネスドメインを理解し、それぞれの専門性を深めながらキャリアを築くことで、組織に貢献できる体制になっています。また、チーム全体で助け合いながら、品質を上げていこうという仲間意識が醸成されている組織です。
[弓本]
特にお付き合いが多い業界や注力していきたい業界などはありますか?
[福田様]
私たちTASチームは業界全体にわたってサービスを提供するソリューションチームであり、特定の業界にこだわらず、満遍なく関わっていきたいと思っています。
注力という点では、新しいクライアントを増やしていくべく、シニアマネージャー以上を各アカウントの担当に充て、PwCコンサルティングの各インダストリーチームとコミュニケーションを取りながら、どんな案件を提供できるかを意識して活動しています。実際に、このやり方で良い循環が生まれています。
[弓本]
クライアントからのニーズや案件のトレンドなどはいかがでしょうか?
[多田様]
子会社に関する案件が多いです。ITの組織やDX人材の育成などの延長にあり、子会社を吸収するべきか、売却して新しい組織にし、アウトソースにするべきかといったCIOアジェンダのご依頼を受けることが多いです。
[弓本]
具体的にプロジェクトをご紹介いただけますか?特に印象に残っているものなどがあればお願いいたします。
[霜田様]
福田が立ち上げたデューデリジェンスプロジェクトです。子会社を売却することでどのようなリスクがあるのか、売却後何をしていく必要があるのかということを限られた期間内で洗い出し、クライアントと一緒にリスクの対策法や今後の展望を考えていきました。
その結果、クライアントにとって「PwCコンサルティングのTASチームなら何でも相談できる」という、信頼を得ることができました。
また、このプロジェクトではマネージャーとしても成長できました。自分が全てプレイヤーとして携わるのではなく、メンバーにノウハウを伝えることで独り立ちを目指し、どのようにチームをマネジメントするかという経験ができたのは良かったです。福田への相談の方法なども含め、初めての経験が多く、大きな学びがあったプロジェクトでした 。
[多田様]
私はデータセンター統合プロジェクトが印象に残っています。このプロジェクトでは、ITやインフラに関するグローバルコミュニケーションが必要で、企画の段階から投資の計算やプロジェクト収支などビジネスの観点も考慮する必要がありました。そのため、異なる分野の要素を統合することが求められましたが、全てをこなせる人材は限られており、そうしたスキルをもつディレクターやマネージャーは、関与が限定されてしまいます。
そこで、異なる強みをもつメンバーを集め、チームを編成しました。私自身も、霜田のようにマネージャーとしてリーダーシップを発揮する立場となり、チームをうまく導けたことが印象に残っています。
[弓本]
グローバル案件に興味をもたれる候補者も多いと思います。具体的にどのように携わったのでしょうか?
[多田様]
具体的には、役割分担と連携強化を意識して進めました。グローバルコミュニケーションができる人、クラウドに強い人を集め、情報を取りまとめてプロジェクトを進めました。
また、日本のベンダーとの技術的な会話は日本語で行い、それをグローバル担当者が海外のクライアントやエンジニアと英語でやり取りするということも意識したポイントです。グローバルなプロジェクトでは、言語よりも文化や根底の思想の違いを理解することが重要であり、システムのあり方、運用に対する考え方も異なるため、両国の違いをしっかりと理解したうえで計画を立てたことが、信頼関係の構築につながりました。
また、こうしたことを意識しながら役割を分担して連携したことで、チームとしての大きな成果につながったように思います。私にとっても成功体験になり、心に残るものとなりました。
[小野]
お二方ともマネージャーとしてのプロジェクトが印象に残られているのですね。マネージャーの立場になってから考え方の変化はありますか?
[霜田様]
複数のチームをマネージャーとしてリードするなかで、チームによってマネジメント方法を変える必要があると感じています。メンバーそれぞれの個性や強み、弱み、モチベーションの源は全く異なるため、それらを見極めることがプロジェクトの成功につながると考えています。
一方で、メンバーの実力を見極め、最適な目標設定を行うことなど、チームマネジメントの難しさも感じています。今後は私自身の課題として、チームマネジメントについてより深く学び、良いチームを作っていきたいと考えています。
[弓本]
多田様は、何か自身として今後こうしていきたいというものはありますか?
[多田様]
私は、キャリアを通じて、サステナビリティの文脈でプロジェクトを立ち上げ、テクノロジーでそれを実行・解決することに携わりたいと考えています。個人でのプロボノ活動を通じて、社会におけるITの価値は必ずしも最新技術にあるわけではないと感じました。しかし、大企業でテクノロジーを駆使してクライアントにサービスを提供する立場であれば、クライアントや社会に与えるインパクトを深く考えられると思っています。社内でも社会課題に取り組むチームに参加しており、そこで得た知見を生かして、脱炭素や循環経済などのテーマでクライアントの課題解決にテクノロジーを活用していきたいと考えています。そのような案件が増えていくことを願っています。
[弓本]
私もプロボノ活動に参加していましたが、メンバー全員が前向きに取り組んでいる印象でした。
こうしたプロジェクト外の活動が、プロジェクトでの成長や役に立った経験はありますか?
[多田様]
はい。サステナビリティの分野では、欧州諸国が地球規模の課題の取り組みを主導していますが、日本国内にも貧困やジェンダー格差などの課題があります。社内でもこれらの課題に取り組んでいる人がおり、国内外の課題についてインプットできるのが良い点です。テクノロジーがソリューションの中心となることが多いので、多くの人がもつ課題とソリューションをつなげる役割が重要になると思います。
また、こうした社内活動を通じて、他のチームとの関わりが非常に広がりました。
[弓本]
福田様は、今後TASチームとしてどのようなビジョンをおもちでしょうか?
[福田様]
チーム全体のビジョンでは、EAの専門集団としてTASチームが責任感をもって成長していくことで、会社全体の成長につなげてきたいです。コンサルティングビジネスを牽引するうえで、テクノロジーやAIは欠かせないものになっています。そのためにも、テクノロジーを効率よく取り入れ、今までの人工(にんく)ビジネスから脱却し、新しいサービスやビジネスモデルを作るといったことにチャレンジしていく時代だと感じています。ファーム全体としても益々拡大していくので、チームとしてのビジネスモデルをしっかり考え、みんながワクワクするようなことをやっていきたいと思います。