A.T. カーニー ×フォルトナ スペシャルインタビュー

公開日:2026年07月13日

最終更新日:2026年07月13日

創業100年を迎える世界有数の経営コンサルティングファーム、A.T. カーニー。
「本質的な正しさ(Essential Rightness)」への徹底したこだわりと、クライアントと現場で協働し「目に見える成果(Tangible Results)」を実現する卓越した支援スタイルは、長年、日本企業のCXO(経営層)から絶大な信頼を寄せられてきました。

そして2026年4月、同社シニアパートナーの福島 渉様が上梓された書籍『2050年の保険業界』が今、その内容の密度とポジティブかつ豊富な示唆で、保険/コンサルティング業界関係者を中心に話題となっています。今回は著者である福島様に、この書籍を出版された思いや、戦略コンサルティングキャリアをお考えの方に向けたメッセージなど、さまざまなお話を伺いました。

インタビュアーは、フォルトナの大野が務めます。

福島 渉(ふくしま わたる)様 プロフィール
シニアパートナー。
東京海上グループにおいて、コマーシャルビジネス推進、資産運用、規制改革、グループ経営戦略の立案・推進など多岐にわたる分野で経験を積み、その後デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト)でコンサルタントに転身。主に保険業界の戦略領域で数多くのプロジェクトを手掛けるとともに、日本の保険プラクティスリーダーとして同グループ全体のビジネス拡大に大きく貢献。戦略コンサルタントとして、保険業界向けの戦略立案・実行、オペレーション改革、新事業開発、海外展開を中核の専門領域としている一方、業界を問わずビジネスを通じた社会課題の解決や新技術の社会実装においても豊富な実績を有している。

幅広い立場の方から、熱量の高いリアクション

【大野】
早速ですが、書籍の出版お疲れ様でした。まだ2か月しか経過していませんが(本インタビューは2026年6月中旬に実施)、反響が大きいですね。私どものご相談者様にもこの書籍を読んだ/読んでいる最中という方が多いです。

【福島様】
ありがとうございます。おかげさまで、想像以上に多くの反響をいただいています。
特に印象的なのは、これまで直接の接点がなかった保険会社の経営層の方々からご連絡をいただいていることです。「書籍の内容について議論したい」「経営陣でも読んでいるので意見交換したい」「取締役会でこのテーマについて話してほしい」といったご相談をいただく機会も増えています。

また一方で、保険会社の若い世代の方々からも多くのフィードバックをいただいています。「自分が何を意識して仕事をしていくべきか整理できた」「保険業界の将来像と自分のキャリアを重ねて考えることができた」といった声をいただくことも多く、とても嬉しく思っています。

インタビュイー:A.T.カーニー シニアパートナー 福島 渉様

【大野】
保険に関わるさまざまな立場の方に読まれていて、読んだ方々はただ情報をインプットするだけに留まらず、アクションにつながる衝撃を受けられているということですね。

【福島様】
はい。
経営層と若手社員では立場も関心も異なりますが、それでも共通しているのは、多くの方が保険業界は大きな転換点にあると認識されていて、その方向性について考えたり議論したりするきっかけとして本書を活用してくださっていることです。
私は、この本が単なる業界分析の本ではなく、「保険という社会システムの未来」を考えるための議論の起点になればと思って執筆しましたので、お読みいただいた方々の中でさまざまな議論が生まれていることを非常に嬉しく思っています。

保険業界の枠を超え、社会全体のレジリエンスを議論するきっかけとしてほしい -書籍で「踏み込んだ」理由

【大野】
今おっしゃった『「保険という社会システムの未来」を考えるための議論の起点になれば』という思いについて、これからこの本をお読みになる方への導入として、もう少しお伺いしてよろしいですか?

【福島様】
そうですね。
保険業界ではここ数年、残念ながらさまざまな問題が顕在化していて、業界構造そのものを見直そうという議論が起こってきています。ただし、私はこれらの諸問題は保険業界だけの問題ではないと捉えています。

私は以前から、保険とは単なる金融商品ではなく、世の中に存在するさまざまなリスクに対して、それを吸収するためのリスクバッファーとしての資本を最適に配置する社会システムであり、インフラであると考えています。そしてそれが今の姿になったのは、

・ そもそも資本主義経済においては、資本は基本的に儲かるところに集中する。
・ しかし社会自体のレジリエンスを考えると、市場原理に任せていてもあるべき配置にならない。
・ それを最適化するためにさまざまな創意工夫をしてきたのが保険のシステムであり、
・ そうした創意工夫の積み重ねがあり今の姿になっている。

といった過去からの経緯があり、今問題視されていることは「積み重なってきた創意工夫の副作用」という側面でもあるのです。そうした「文脈」を理解せずに対応を考えても対症療法に留まり、より一層複雑な事態を招くのではないかと懸念しているのです。

また書籍でも詳述しましたが、高齢化による認知症や介護の問題、気候変動、地政学リスク、サイバーリスクなど、リスクの質が変容してきており、性質によっては保険業界が対応することに馴染まないものも生まれています。
ただ、だからといってプロテクションギャップを放置しておいて良いというわけではなく、何か解決策を考える必要があり、そのためには、これまでの保険業界が培ってきたものを生かしながら、社会全体のリスクやレジリエンスについて議論を深めていかなければいけないと思っているのです。

【大野】
保険業界だけの問題ではないということですね。

インタビュアー:フォルトナ 大野

【福島様】
そうです。
私がこの本を書いた背景は、このような考えに基づき、保険業界という枠を超えて、社会全体のリスクやレジリエンスについて議論するきっかけを作りたいという思いが強くありました。

【大野】
本の内容がイシューの指摘に留まらず、実際の取り組みや将来的な解決の方向性などにまで踏み込んでおり、コンサルティングの現場でも議論されるような具体性を備えたレベルに感じました。ここまで書籍として公開されたのも、そうした思いが影響しているのでしょうか?

【福島様】
議論のきっかけとなるためには、課題を提示するだけでは不十分だ、あえてその解き方や方向性についても踏み込んだほうが、より効果的な議論につながると考えたからでした。
これまでも保険業界の課題や変革の必要性についてはいろいろ議論がありました。ただ、どうしても「既存の業界」と「それにチャレンジする異業種からの参入やスタートアップといった新興勢力」の対立構造みたいに取り上げられることが多かったと思いますし、今でもその論調はあると思います。

しかし、私がこれまで議論や支援をさせていただいた経験からしても、既存の保険業界のみなさんも危機感を持って変わろうとされているし、実際に変わってきていると思います。ただ、護らなければならないものもあり、環境変化の大きさやスピードに対応できない部分があるので、そこを異業種からの参入やスタートアップのみなさんが補うという構図ができると、業界としての「進化」が加速するのではないかと思っており、その羅針盤のひとつのアイデアを示したかったという思いがあります。

もちろん、そこで示した私の考えが唯一の正解だとは思っていません。賛同でも反対でも構いません。大切なのは議論が生まれることです。保険業界の未来を考えることは、突き詰めれば社会の未来を考えることでもあります。その議論のきっかけになればと思っています。

トップ企業のトップランナーが、40歳を超えてコンサルタントに転身した理由

【大野】
福島様ご自身のキャリアについてお伺いします。東京海上でグローバル/企画領域というトップランナーとしてご活躍されていた中で、しかもキャリアの中盤でコンサルティング業界に転じられていますが、この時はどのようなお考えだったのでしょうか?

【福島様】
いろいろな考えの結果であり説明するのが難しいのですが…
敢えてシンプルにいうと、この産業に関わる以上、ひとつの企業の視点だけではなく、産業全体や社会全体の視点からこの産業を考えてみたいという思いが強くなったということだと思います。
東京海上では、企業営業、資産運用、規制改革、経営企画とさまざまな経験をさせていただきました。その過程で、保険会社の経営や業界の構造、さらには金融市場、資本市場、社会との関係性を比較的広い視点から見る機会に恵まれました。そうした経験を通じて、保険という事業がさまざまなステークホルダーと連動し、そのバランスによって成り立っている事業だという考え方を持つようになりました。

【大野】
この頃からすでに、「いち保険会社を超えて保険業界が社会システムの中で果たす役割」という視点をお持ちだったのですね。

【福島様】
そうですね。幸いグループ全体の将来などを考える立場を経験させてもらっていたので、いろいろ考えているうちに、前段で述べたとおり、より広い視座で産業を考えたいと思うに至りました。それがコンサルタントを志した理由です。

当時は、「コンサルティングファームへの転職で成功できるのは30代前半まで」と言われることも多かったです。その中で、40歳を超えてからの転身だったので、周囲は結構びっくりしていましたが…なぜか私自身はそれほど不安を感じてはいませんでした。というのも、保険会社でのキャリアの中で、さまざまな難しい課題に向き合い、課題を設定し、関係者を巻き込みながら解決していく力については、それなりに磨かれてきたという自負があったからだと思います。

実際にコンサルタントに転身してみると、思っていた以上にこれまでの経験が役立ちました。もちろん新しいチャレンジでうまくいかないこともたくさんありましたが、苦労したかというとそれはそれほど感じませんでした。

また、前職のグローバルファームに身を置けたことも非常に大きかったと思います。保険業界の動向を把握するという意味でも、仕事の進め方という意味でも、自分自身をグローバル化することができました。世界中の保険会社や金融機関がどのような課題に向き合い、どのような変革に取り組んでいるのかを日常的に議論する機会があり、日本だけを見ていては得られない視点を数多く学ぶことができました。これは私にとって非常に大きな財産ですし、本書で示したような、グローバルかつ長期的な視点で保険という産業を捉える考え方も、そうした経験を通じて培われたものだと感じています。

インタビュイー:A.T.カーニー シニアパートナー 福島 渉様

【大野】
福島様はその後、デロイトからA.T. カーニーへ移られています。その理由についてもお聞かせください。

【福島様】
私がコンサルティング業界に入ったこの10年で、この業界は大きく変化しました。多くの企業がコンサルティングを活用するようになり、またコンサルタントとして活躍する人も増え、業界全体が大きく拡大しました。それ自体は非常に良いことだと思っています。

一方で、その過程で課題解決の方法論やフレームワークが整備され、サービスの標準化が進んできた傾向もあります。一定の型があることでコンサルティングというサービス提供の効率化や、クライアントにとっても取り組むべきことが明確に示されているほうが安心できるという側面もあり、このような傾向になっているのでしょう。

しかし、社会や産業が抱える課題はますます複雑になっています。以前であれば数年単位で起きていた変化が、今では数か月単位で起きており、これから先進国の人口減少、分断する社会、自律的な技術進化といった未曽有のステージに突入しています。そうした変化のスピードに対応するには、個別の文脈をもっと深く理解し、本質的な課題に向き合う姿勢がより重要ではないかと思うようになりました。
そのような考えをきっかけに、次のキャリアオプションを考えはじめ、私の考え方に最もフィットしたのが課題解決に拘るA.T. カーニーだったんです。

実際に入社してみて、その判断は間違っていなかったと感じています。ファームとして「Impact First」という理念を掲げていますが、それは単なるスローガンではありません。本当に社会や産業の本質的な課題を解決し、世の中にインパクトを生み出していこうという思いを、世界各国のパートナーから若手に至るまで、一人ひとりが真剣に持っています。私自身もそうした姿勢に強く共感し、日々大きな刺激を受けています。

 コンサルタントを志す人へのメッセージ

【大野】
弊社のサイトをご覧になる方の多くは、コンサルティング業界や戦略コンサルティングファームへの転職を検討されている方々です。そうした方々へメッセージをいただけますか?

【福島様】
もしコンサルタントを志すのであれば、特に戦略コンサルタントとして活躍したいのであれば「自分は何のためにコンサルタントになるのか」という目的を持つことがとても大切だと思います。

それは単にキャリアビジョンをしっかり持ちましょうという概念的なものではなく、コンサルティングという仕事はそういった目的を持っていなければ、本質的に受け身になりやすい仕事だからです。クライアントから依頼を受け、若手であればプロジェクトにアサインされる。その中で、「自分は本当にこれがやりたかったのだろうか」と感じることもあると思います。
しかし、自分なりの目的を持っているコンサルタントは、どんなプロジェクトからでも学びや意味を見出すことができます。それがモチベーションを維持し、成長し続ける原動力になると思います。

また、これはコンサルタントに限らずですが、キャリアは偶然のチャンスに大きく左右されるものだと思います。チャンスそのものは運かもしれませんが、やはり目的を持って行動をしている人に対してのほうが、より多くのチャンスが訪れているように思います。さらに、そのチャンスをつかめるかどうかも、自分が何を実現したいのかを明確にできているかで大きく変わると思います。 

もう一つお伝えしたいのは、自分がこれまで積み重ねてきた経験を大切にしてほしいということです。

転職を考えると、多くの方は自分に足りないものに目が向きがちです。しかし、本当に大切なのは、自分がこれまで何を経験し、その中でどんな強みを培ってきたかを理解することだと思います。私自身、コンサルタントへの転身を支えてくれたのは東京海上での18年間でした。そして今、A.T. カーニーで新たな挑戦ができているのも、デロイトで積み重ねた10年間があるからです。キャリアはリセットではなく積み重ねです。
自分が積み上げてきたものを理解し、それを次の挑戦につなげていくことが大切だと思います。 

A.T. カーニーは、社会や産業の課題に本気で向き合い、独自の専門性を持ったプロフェッショナルが集まるファームです。単に優秀な人材を求めているのではなく「なぜその課題を解きたいのか」「なぜ社会を変えたいのか」という強い問題意識や当事者意識を持ち、自らの知見や能力を仲間と掛け合わせながら、大きなインパクトを創出していきたい人材を求めています。そのような環境で、自身の志を本気で実現したいと考える方には、ぜひA.T. カーニーでの挑戦を選んでいただければ嬉しいです。

編集後記

これから本を読まれる方、読み返される方にとり、とても参考となる福島様の思いを伺えたと思います。
福島様は業界内で「温かく誠実なリーダー」として知られている方で、 今回のインタビューも穏やかで謙虚で、とても話しやすい空気でご回答いただきました。

冒頭部分で書籍に対するリアクションとして、経営陣だけでなく若手まで、保険業界の未来についての議論を呼び起こしているという話がありましたが、そのような反響を巻き起こしたのは本の内容に加え、おそらく冒頭から末尾まで一貫して感じられる著者福島様の「社会はより良くできるはず」「多くの人にその議論に参加してほしい」という世界に対する優しい目線やお人柄があるように感じます。

これからの方はぜひ福島様の語り口を想像してお読みください。

インタビュー後 A.T.カーニー入口にて 左:A.T.カーニー福島 渉様 右:フォルトナ 大野

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